やはり魔法科高校の魔王の青春は間違っているストラトス 作:おーり
「ドイツ軍IS特殊部隊、通称“黒ウサギ隊”の隊長を務めています。ラウラ・ボーデウィッヒです、どうぞよろしく」
銀髪で眼帯の中学生くらいの女の子は、そう切り出して敬礼をした。敬礼て。
そういう世界に慣れていない身としては、どうしても冗談臭く感じてしまうが……。多分彼女にとっては最上級の敬いなのだろう、と見切りをつける。
そんな態度を取らなくては、わざわざ『魔王』相手に会いに来るとか、考えることもないだろうし。
「あ、司波八幡です。ども」
「司波?」
つられるように敬語で反応すると、ボーデウィッヒは苗字に怪訝な顔をした。
まあ、個人情報がある程度知られちゃっているから、名前変わっていたら違和感覚えるのも無理はないよな。
「色々あって苗字が変わりまして、外ではそう呼んでくださるとありがたいっす」
「わかりました。……ところで、私に対しては敬語を使ってもらわなくとも結構ですよ?」
「ん、そんじゃあそっちも無しで。正直めんどくさすぎる」
いつもの態度に戻し、適度な心の距離を取って壁を作る。
突き放した言い方で対応しているのに対し、ボーデウィッヒはくすりと笑うと、
「わかった、ではこちらも普段の言葉遣いに直させていただこう」
と。
こ、こいつのこの喋り方、やたらと堂に入っちゃいるが、何故だか親近感を覚える……。
遺伝子レベルの直感が、コミュ障の気配を微かに読み取っていやがるぜ……!
まさか、こいつもボッチか……?
よんどころのない予感を覚えている俺は、背後で深雪が苦々しい表情をしていることに気づかぬままに、ボーデウィッヒを家の中へと招き入れたのであった。
● ● ● ● ●
司波家は普通の一軒家で、核家族4人程度ならば充分棲み分けられるような広さの二階建てだ。
が、深雪の両親は一向に帰宅する素振りは見せず、尋ねてみたところ母親は研究一本で都内の研究所に棲み込んでおり、父親もまた都内の仕事にかかりきりで、もう5年ほど帰ってきていないのだという。
特に父親の方は政治関係の仕事らしいから、子供に明かせない事情もあるだろうしそれならば納得かなぁ。と思いかけたところで、父親には愛人がしっかりとおり休むにしてもそちらの方へ行く、とどんな表情したらいいのかわからない暴露話を聞かされる。
なぁにその仮面家族ぅ……。
そんなんでよくもまあ俺を引き取れる話に持って行けたものだ、と感心すら覚える。ちなみに父親の近況事情(事情というか情事というか)は、深雪が独自で依頼した探偵に調査した結果なのだという。うん、聞く必要ないよね、その暴露。
そんな司波家に、ようやく足を踏み入れたお客さん第一号がラウラ・ボーデウィッヒであり、従妹の自称する“お兄様との二人だけの愛の巣”へと無頼を働いたお邪魔虫でもあるのだろう。
彼女は、一見するまでもなく年下にしか見えない銀髪美少女の目の前に、ドン、と茶漬けを突き出した。
「どうぞ」
「……いきなり食事を用意してもらうとは思ってもみなかった……。小腹も空いていたのでいただかせてもらう」
「……ッ、お構いなく」
ギリィッ、と奥歯を噛みしめたような表情で苦々しげに表情筋をひくつかせたのも一瞬のこと、引き攣ったままの笑顔で深雪さんは微笑むのである。
……つーか怖ぇぇよ。
呼んでいない客が突然来たからと言ってそこまでダイレクトに威嚇するとか、マジでなんなのこの子。嫁姑レベルの陰険バトルが勃発されても、俺には対応しきれないぜ? つーか対応する気がそもそもないけど。
飄々とした様子で従妹の敵意に気づいていないご様子のボーデウィッヒは、さらさらと茶漬けをかっ込む。
箸の扱いは熟れたもので、来日経験は一日二日程度ではないのだろうと予測された。
「――ふぅ、美味しかった。昼から待っていたので、丁度良く胃に沁みたよ」
「そいつは良かった。で? ドイツ軍だったか? なんでまた日本に?」
「ああ、そうだったな。先ずは、」
茶碗を箸を置いて、床に座り直し、正座の姿勢にて頭を下げる。
そのまま三つ指を着いて、――っておい、
「フツツカモノデスガヨロシクオネガイシマス」
「あ゛ぁん!?」
――俺より先に深雪さんが怒鳴り声を上げた。
怒鳴り声、っつーか完全にメンチ切っているのですが、それは。
「待て待て落ち着け。おいボーデウィッヒさん? いきなり何を言い出しているんでしょうかねぇ貴女は?」
「? 日本ではこれが最上級の感謝の姿勢だと聞いたのだが?」
はて?と小首を傾げてそんなことを応える銀髪少女。
いったい誰から聞きやがった、そこまであからさまな勘違い推奨文化姿勢。
「私に貴方へ取入れと命令した軍の上層部から」
「なるほど、よくわかった」
とてつもなく素直に聞かれたことに応えてくれるボーデウィッヒ。
なるほど、本物のハニートラップとして送られてきたのか、この子は。
こんないい子を送ってくるとは、どうやら俺がシスコンだとかいう根も葉もない噂は既に豪い広域にまで発展しているらしい。だが残念だったな! 俺は例えシスコンであってもロリコンではないのだよ! 幼児体型の中学生を送り込まれたところで、痛くも痒くもないわぁっ! フゥーハハハッ!
……そこまで思考して、一番の問題点は俺がそもそも完全に『そう』だと思われている件、だというのは……。見なかったことにしてもらいたい……。
「――で、感謝って、何がだ? 俺は恨まれることこそあれど、有り難がられる覚えなんぞねーぞ?」
ドイツ軍、と最初に名乗ったボーデウィッヒからすれば、軍の行動を妨げて、神殺しという『成果』を横から奪い取った大悪人。それがあの国での、俺の立場のはずだ。
悲しいけど、それが現実なのよね……。な、泣いてねーし!
「いや、貴方は確かに感謝されるべきだ。貴方が竜退治の際に奪ったISはアンネの専用機なのだが、その寸前に絶対防御が貫通されることは他の隊員らの被害で充分に想定できていたことだったからな。あの位置で気絶した彼女を回収してくれたこと、心から感謝する。……まあ、アンネ並びに軍やドイツ政府から快く思われていないという部分の否定はしないが……」
上げて落とすな。
「少なくとも、私は隊員の命を救ってくれた貴方には感謝してもしきれない。だからこそ、今回のような友誼を図れと言う命令に従うのも吝かではないのだ。こう言ってはなんだが、食べごろだぞ?私は?」
「キシャー!!!」
感謝されたことは、滅多にないことなので非常に嬉しい。
最後の台詞で台無しになったけどな。
あと深雪さん、威嚇するんじゃありません。食べる気は無いから。
というか、いちいち隠し事が出来ない子だな。
精神的にも恐らくは未熟で、ものを知らないからこそそんな命令を受けたのだろう。
「とりあえずドイツ軍並びに関係者各位はギルティということで」
「何故?」
極力そういう方面へは影響出したくないな、と思っていたのだけど。彼女の素直さに思わず絆され、直接関わり合いになった暁には有罪判決を容赦なく下そう。そう心に決めて話題を変えるべく言を発する。
ボーデウィッヒはそんな閑話休題に小首を傾げていたが。
……あと俺、別にロリコンじゃないけど、小さい子のそういう仕草って何処か癒されるよな……。
「とりあえず俺は軍とか政治とか、そういうきな臭い方面に関係を持とうってつもりは毛頭ないからな。残念だけどボーデウィッヒを受け入れるつもりはないんだ。権能を奪っておいて勝手かもしれんけど、そういうことで割り切ってほしい」
「ふむ……、これが『悪いなのび●、この車は3人乗りなんだ』という日本人特有のお断り文化か。確かに日本人である貴方にドイツに友誼を持ってもらうというのは、些か無理があったな」
なんか違ぇーぞ。
正しくない日本文化を教え込まれたボーデウィッヒにどう訂正を入れてやろうか、と頭痛を覚えかけていたところで、
「――では、それとは別に個人的なお願いがあるのだが、そちらをせめて聞いてもらえないだろうか?」
「あー? ……まあ、個人的な話ならいいけど」
悪いとは思っているから、そういう国レベルに発展しないような、言ってしまっては何だが「小さい事項」には極力対応したいと思ってしまう。
普通に彼女に絆されている部分もあるのだろう。やべーわ俺、ハニトラに引っかかっちゃってるじゃん。
「私を、貴方の嫁にしてもらえないだろうか?」
「はぁああああああああああああああああん!!!!!?」
俺より何より深雪さんの方がリアクションでかいし。
……つーか、個人レベルでもそういう話なの?
● ● ● ● ●
なんなの? ドイツ軍人は日本人の意図を読めないとか、そういう制約でもついてんの?
その制約を代償にロリを嫁化する念能力でも発動したの? むしろスタンド攻撃にしか思えない罠。な、何が起こったのかry
「ポルナレフ乙。ところでやっぱり年下の嫁は小町的に受け入れ難いよゴミいちゃん。ついでに調べたけど、ラウラボーデウィッヒってブラックラビッ党の現人神じゃん。ドイツ軍の元看板娘じゃん。本当に今の話って現実?」
お兄ちゃんを精神病患者みたいに扱うんじゃありません。妙に優しげなその眼を止めろ。
まあ見た目もさることながらしっかりとISの国家代表でもある彼女は、軍属であるということで一時期メディアにも引っ張りだこになっていたそうな。
国家代表は確実に『そう』なるのだが、一般社会においては見た目が重視されるので、彼女のような美少女軍人は『看板』として頻繁に相応の所へ顔を出していた。
要するに管理局のエースオブエースさんみたいな扱いだ。年齢とか3サイズとかの細かいプロフィールは暴露されていなかったみたいだけど。
しかしそれも一年前までの話。
軍属である、というのも問題だったのだろう。政治的な判断だと極力顔を出すべきではないはずであった彼女は、一年前を境にメディアへの露出はぱったりと止んだ。
恐らくは上層部の方針転換だったのだろうが、その果てに黒ウサギ部隊はあの失敗である。
責任を追及されて魔王の元へ、とかって、軍の何処かがこういう事態を想定していたとしか思えないのだけど。どーよ?
「残念だけどガチで現実だよ。あと年下じゃない。俺よりも年上で、今年で21歳だ」
「姉さん女房だね。エターナルロリータだけど」
ついでに言うと小町の調べたとおり、彼女のファンは未だに根強い。
彼らは黒ウサギ部隊から名を取って『ブラックラビッ党』を名乗り、その教主的な立場にラウラ・ボーデウィッヒを据えている。勝手に。
ちなみに彼女、IS学園も3年ぐらい前に卒業したガチの成人なのだが、そのISの専用機を纏う奴らは何某かのアンチエイジングが働くのか、一向に衰える様子が無い。
ISが未だ世の主流に乗っかっている最大の理由は、其処かも知れない。
「――で? 結局どういう風に落ち着いたの?」
「ああ、嫁とかそういうのはまあ一旦保留として、ドイツに帰りたくないって言うんで司波家での同居が決定した」
「うわぁ……、流石にそれは小町ポイント大幅減点だよゴミいちゃん……」
「待て、話は最後まで聞きなさい」
犯罪者を見るような目で身を引かせた愛すべき我が妹に、事の顛末を語るべきではなかったか、と兄妹仲に亀裂の危機すら覚える始末。やはり見た目ロリを一つ屋根の下に、というのはアウトだったか。
でも隠し事とかできないんだもん! 話しておくべきことは話しておかないと、特に今回のようなことを隠しておいたら、後になって知った暁にはポイント衰退の危機。
減ったことで何が危機なのかはよくわからんけど。
ともあれ妹を蔑ろにしないのは、八幡的にはポイント高いんじゃないかなーって。
「詳しい事情を聞こうにも、話して同情を引こう、って意思自体がボーデウィッヒには無かったみたいでな。そういう点では男性を利用しようとしない性格的な部分が好感持てたんだ」
「でも年下の“お義姉ちゃん”とか、やっぱり小町的にはポイント低いよ」
「だから年上だっての、一々換算するんじゃありません。大体なんだ、今の“お姉ちゃん”は。発音可笑しいぞ」
「見た目の問題なの。わからないんならいいよ」
「話を戻すぞ。――で、好感持てても内情測れない奴を身内に迎えるつもりは俺も毛頭ないからな。『透視』でボーデウィッヒの隠し事を暴いたんだ」
アガリアレプトの権能『透視』は、相手の隠し事すらも見透せる仕様だった。
アガリアレプトそのものは視ることに特化した識能を持っているからなのだろう。『千里眼』では文字通り千里先も見通せるし、小町の危機を知ることが出来たのもこれのお陰だ。
「……うわぁ、女の子の隠し事暴くとか、ほんと男の風上にも置けないゴミいちゃんだね……」
「おいやめろよ、その本物のゴミを見下すような目つき。転ばぬ先の杖ってよく言うだろ、そういうことをやっただけだよ今回だって」
「ま、そういう点でもお兄ちゃんはお兄ちゃんだってことは小町良く知ってるし。例え留置所に置かれたとしても面会にはきちんと行くからね!あっ、今の小町的にポイント高ーい♪」
八幡的には最低の台詞だよ!
というか、俺を拘束できる留置所って日本にあるんかな。
「ともかくだ、そうしたら出るわ出るわボーデウィッヒの裏事情。人権的にどうなのよ?って突っ込みたくなるような事情抱えていたら、そりゃあおめおめとドイツまで戻れないことは把握できたからさ。ちなみにR―15仕様ですので小町には聞かせられません」
「なにそれきになる。バトルロワイヤルみたいな事情?」
「聞くと人間不信に陥ることは確か」
ボーデウィッヒが試験管ベビーだったとか、ISとの適合実験失敗談や、呪力を見ることのできる眼を片目に埋め込まれているだとか。中学二年生が冗談半分で作ったような黒歴史キャラそのものであったことに、むしろ俺のSAN値が削れたのはまた別の話。
本題を語ると、今回の黒ウサギ隊の成果喪失の責任を取らされて実験施設送りになるところだった、というガチでのっぴきならない裏事情。
それこそ語るべきだろう、とも思いはしたが、そこはボッチならではの思考回路が直感的に俺に理解を齎した。
あいつは要するに、誰かの手を掴むことで迷惑をかけることを避けたのである。
今のあいつの手のひらは、要するに部下を拾うことで手いっぱいだということだ。
誰かに手を取ってもらえば助けてもらえたかもしれないが、そうして自分が助かる分の余白を残していては、部下の行く末を己の手に負えなくなる。
個人が独りで絶対的に何かを成せるわけではないが、手を借りられる部類にも依る。
特に己の出生が胸を張れるものではない、という負い目があるので、其処を突かれる軍属では尚更手を繋ぐ相手が居なかったのであろう。
その延長線上が、今の彼女の狭量さと独善性だ。
言い分が悪くなってしまったが、そこを俺が追求できるほど俺の心の棚は頑丈ではない。
俺は彼女に何も追求せずに―彼女の過去を透視したのはともかく―、快く受け入れた。
受け入れたのだ、が。
「最善の手を尽くしたんだ。ボーデウィッヒが負い目を追わないように、せめてもの時間稼ぎと俺との友誼を図っているという体面を表向きは晒せるように。普通に下宿とか、同居とか、そういう性的な方向性の意図なんて欠片もなかったんだよ」
「……でも、小姑さんと張り合って夕飯の支度からお風呂で背中を流そうとか夜伽の相手とか、そういう方向性でラウラちゃんは積極的でした。と。しかもノリノリで」
「料理に関してはいまいち信用しきれない深雪さんと張り合って対消滅でもしてくれれば、って思っていたけど。……流石に風呂や布団にまで忍び込んで来ようという意図がありありと見て取れたら……、逃げ出したくもなります……。ていうか同居に当たって『そこはどうしますか?』とか正気を疑う相談されたから逃げてきたんだけど……」
最初にそこは気に掛ける必要もない、むしろやめてほしい、って言ったはずなんだ。言ったのにこれだよ。
ほんと、どうしてこうなったし。
● ● ● ● ●
小町の夜伽発言について若干の追及をした昨晩より明けて、翌朝。
自称小姑と自称嫁の居る家へと朝帰りを果たすと、やはり何かしらの言い訳はすべきかな。などと眠気の未だ晴れない頭で玄関を開ける。
「――お帰り、八幡」
――ボーデウィッヒが笑顔で迎え入れてくれた。
心臓が止まるかと思った……!
「ちょ、お前今朝の5時だぞ。なんで玄関に居るんだよ」
「早朝訓練、というものも軍にはあるからな。早起き程度、どうってことは無い。それと、やはり一日の始まりである朝一番に、だ、旦那の顔を見ておきたかったというのもあるな」
恥ずかしいんなら言葉にするんじゃありません。
顔を若干赤らめながらそう口にする年上系ロリータ。くそぅ、普通に可愛い。
……こういう幼な妻を迎え入れれたら、確かに勝ち組かもしれんなー……。
「……いや、まて落ち着け俺。相手の意図が分からん以上迂闊に罠に嵌るな。今までそうやってどれだけの苦汁を舐めたと思っているんだ……」
「何をぶつぶつと……? 朝食は食べたか? まだなら私が用意するぞ?」
聞こえなかったのだろう。小声で己を律していた俺に怪訝な顔をしつつも、ボーデウィッヒは朝帰りの旦那に甲斐甲斐しく世話を焼こうとしてくる。
……なんだ天使か。
……はっ、いやいや待て待て!
何簡単にハニトラに充てられてんだよ! そういう勘違いは止めろって中学の時に戒めたろうがぁ!
「ん、んんっ、あー、ボーデウィッヒ? 何か言いたいこととか、あるんじゃないか?」
「ん? ああ、そうか。パンと米とどちらがいいんだ? 私はやはりパン派だが、八幡は日本人なのだし朝は米を食べたいか?」
「そうだな、やっぱ米……じゃなくて! ほら、不満とか! 俺朝帰りだし!」
なんか本物の結婚生活やってるみたいなこと口走っている気がするけど、今はスルーで!
「不満と言えば、やはり名前で呼んで欲しいな。いつまでも苗字とか、他人行儀過ぎるだろ」
「そっちじゃなくて」
「朝帰りのことか? そこは別に。八幡も男だし、魔王のはしくれだし、私で満足できるわけではないとわかっているし。こうして朝だけでも帰ってきてくれただけで、私は充分だ」
女神か……ッ!!
やべぇわこれ、新興宗教出来るのも納得だわ。
柔らかく微笑んだその笑顔で、俺の疑いの心が浄化されてゆく……ッ! 圧倒的……! 圧倒的なまでの『優しさ』……! これが……、『母性』か……ッ!
鷲頭麻雀で負けたみたいにぐにゃああってなって、その場にorzと落ち込む俺。
そんな俺に尚も、「だ、大丈夫か?」と声をかけるボーデウィッヒに、俺は弱弱しく問いかけた。
「……なぁ、なんでそこまで出来るんだ……? お前にとっては俺は身売りされた相手で、仮初とはいえ主人だからと言って何かを強制するつもりはないって、最初にも言ったろ? お前がそういうハニートラップみたいなことをするはずがない、っていうのはお前自身の発言で理解できるけど、」
そうでなければ、幼児体型を嘆くようなことは口にしないはずだ。
尤も、そこは俺も言葉にしないけど。
「けど、やっぱり疑問しか浮かばない。なんでそこまで俺に尽くせる? 俺がいつか見返りを与えるって、そんな浅はかなことを考えられる性格じゃないだろ、お前……」
つくづく最低なことを言ってるな、俺。
でも疑問は当然浮かぶ。
その果てに、また裏切られるんじゃないか。っていう心情も隠れているから、疑う心は失くせない。
女も他人も、信用できる奴なんていない。
「………………そうだな。八幡ならそういう疑問は浮かぶだろうと、そういうことは分かっていた。昨日のうちに伝えておくことだったかもしれん」
口を開く。が、そもそもの出会いはドイツでの一瞬の邂逅を除けば昨日であったはずだ。
……なんで、さも俺のことを良く知っている、みたいな口調で言葉を紡げる……?
「昨日、八幡が私を此処に置いてくれると言った時、八幡の過去が全て見えた」
「………………………………は?」
は?
「人を信じて裏切られて、それでも誰かを助けたいって願って、その果てに自分を蔑ろに出来たあの特攻があったのだと、あのとき私はようやくあなたのことを知った」
「特攻……ああ、ドラゴン退治のときの……」
「自身を顧みない、命すらも賭けられる武器一本での突貫攻撃。戦える方法も、倒せる方法も、あれしか手段がなかったと後に語れるかもしれない。だが、それを現場で出来るのは本物の勇者しかいない。それを知ったとき、私は其処に至るまで己自身を犠牲に出来るあなたを知ったとき、そこまでどうでも良かったのか、ということにも同時に知れた。
知れたから、悲しくなったんだ」
「………………同居を受け入れた時に泣いたのは、それか」
………………アガリアレプトの権能って、お互いを見透す仕様なんだな。
「あなたが生きたいと願っていなかったのが悲しくなった。それだけの人生を歩んでいたという不幸の程度は、多分そこらの世に幾許かと溢れているのだろうが、それはその不幸を味わっていないものだからこそ言える言葉だ。
私はあなたに感謝をしている。そんな私が出来ることいったら、他に思いつかなかったんだ」
……ははっ。
「要するに、同情かよ」
「同情で悪いか」
見下すように、睨む。
そんな俺を、ボーデウィッヒは真っ向から見返す。
さっきまでのは何処へ行ったのか。
ラブコメみたいな空気は雲散し、一触即発の空気が張り詰めている。
踵を返して、俺は自室へと足を向けた。
「朝食はどうする?」
「いらねー。このまま学校へ行く。……ついてくんなよ」
「行かないさ。嫁は旦那の帰りを待つものだ」
……胸糞悪ぃ。
「――八幡」
意識的に切り捨てたかったのに、堂々とした声音が背中に届く。
思わず足を止めていた俺に、ボーデウィッヒは言葉を続けた。
「同情でも、私はあの時お互いの総てを見せ合えたのではと思っている。それは何千回と互いに愛を囁く以上に分かり合える、最良の時間であったとも。
最初が同情でも、私はお前を愛せるさ」
だから、信じろ。
繋げられた言葉に吐き気を催し、逃げるように家を出た。
なんなの?
最初はのほほんラブコメディをやっていたはずなのに、最後の最後にとんだシリアスモードが食い込んできた完全ラウラ回
キャラクターってこれで合ってる?ぶっちゃけどの原作も、漫画もアニメですらも碌に調べず、二次創作だけで補完していたから改変以外がしっかりと合わさっているのかは正直不明
せっかくの姉さん女房効果を…、これで生かせていたら良いのだけど…
あと感想で四葉ってシバ読みしないって突っ込まれた。マジか…じゃあなんであんな意味深な当て字…。秘密主義な家柄だからか、めんどくさすぎるっすよ佐島さん…
どっちにしろ原作を漫画でしかも一巻しか流し読みしかしていない俺にとっては見果てなかった現実。買う気が起きないのでこれからもちょくちょく勝手な推測で劣等生の設定誤解するかもしれん
つーかそれならなんでこんな話書こうとしたのかって突っ込まれるのが一番多いかと思わry