やはり魔法科高校の魔王の青春は間違っているストラトス 作:おーり
――うぇいッ!?もう3週間っ!?
どもお久しぶりです
PCを立ち上げる気力の湧かなかったおーりがようやく更新に来ましたよ
ちょっと、風邪ひいてまして…
前回について
読み直してみれば前半分と後ろの方で微妙に噛み合わない部分がややありました
それもこれも時間配分間違えてプロットを立て乍ら執筆に移った所為です
書き始めてゆくうちにネタの神が降臨して来て「ハジケロ…!モットハジケルンダ…!」と煽られたせいでもあります
きっと アイツは 邪神
あと云わせてもらうと、
別に俺は八幡を作者の代弁者にしようとは思ってはいません
特に前回で『俺自身の意見』なんて言うのは某剣豪将軍に呟いた物書きとしての同情票程度ですからしてけぷこんけぷこん
さてまおがいる26話目
今回はやたらと票の多かった小町咄。夜咄ではございませんのでビバップもツービートも携わりません悪しからず
既に去年の話だけど、曲がコンビニで流れた時はちょっとびっくりしました
え?前書きが冗長?
久方振りなんでご勘弁ください
その代り後書きを削りますから(ぇ
「小町は断固アテナちゃんに異議を申し立てるよっ! 全裸で寝るのを止めてっ! パジャマを着てっ! 朝チュン小町のインパクトが激烈に薄れて酷いラキスケテロだよっ!」
「就寝時に衣服を纏わぬは常識ぞ。そも、この国の肌着は妾の肌に合わぬ」
「何処の国の常識なのっ!? 千葉には千葉の法律があるんだよっ! 兄リウムを吸収するための折角の時間を邪魔されたら妹は三日と持たないって古事記にも書いてあるんだからっ!」
「妾の常識は神の常識ぞ。そんな蛮族の言葉なぞ聴かぬ」
「よくわかんないけど今千葉をディスったね小娘ッ! 確かに田舎で間違ってないけどさッ! 県境を跨ぐときにパスポートが必要だけどさッ! でも残念でしたー! ごーに逝ってはごーにしたがうのが世界の常識なんですぅー! というかアテナちゃんが毎晩パンイチにしているお相手もその“バンゾク”の一員じゃん! 偶には兄妹水入らずしっぽりさせてよっ!」
「よくわからぬが断る。妾の女神としての勘が、小町を放置してはならぬと囁くのじゃ」
「ぬあーーー!!!」
朝からなんちゅう会話してるんだお前ら。
自家製Maxコーヒー吹きかけたわ。
ラウラと深雪の調理で台所が埋まり、みそ汁の匂いとスクランブルエッグの焼ける匂い。更には焼けたトーストと1膳のご飯が目前に揃えられた状況で、“いつもの”朝が始まる。
というか見たことあるわこんな光景。
具体的に言うならぱられるでルンルンなハーレム系ロボットアニメの朝食風景だよ。
4人同居している各ヒロインの得意料理で持て成され
まさか自分が其処に至るとは、件のアニメを視聴していた頃は微塵も思っていなかったなー……。
……アレ? アレがリアルタイムでやっていた頃って、確か15、6年m――うん、深く考えるのはよそう。
今日はその光景に加えて、小町とアテナの応酬が始まっている。
普段から朝目が覚めると俺のベッドに収まっている2人なのだが、お兄ちゃんスキルがカンストしている俺の前では所詮妹系よ。微塵も動揺してないもんね(震え声。
そんな俺の事情よりも、とうとう小町の堪忍袋の緒が切れたらしい。
まあ兄と、自分より下っぽい美少女が、ほぼ半裸で毎朝一つの蒲団の中に居れば。ブラコンとしては許せることではないのだろう、きっと。
俺としては小町を相手にしているみたいで気に掛けることではないのだが。
そもそも気怠い覚えも無いのだし、眠っているうちにヤラれちゃっているというわけではないはずだ。
アテナのアレは人肌が恋しい幼女系の性質だと見たのだが、真相や如何に。
あ? 小町が居るのはいいのかって? いいんだよ妹なんだし。妹に手を出す奴は兄じゃねぇ(断言。
というか千葉に戻ってからの小町の俺に対する依存度がカンストしている気がするし、下手に放置したら中にはだーれも居ませんよ?なniceboatエンドが待っている気がしてちょい怖。
そんなスクールでデイズな方向性へ妹を敢えて煽るつもりは毛頭ないので、しばらくのところはされるがままになっているのが現状であったりする。
やだ、俺の尊厳度低すぎ……!?
いえ、千葉の兄なんてこんなもんですから(涙声。
というかツッコミどころが多すぎる。
まず5、6個突っ込ませろ。
ラキスケテロって何? らき☆すたの変化系?
アテナ、普段着ているのはなんなんだよ。神の衣か何かで出来ているの? あの既製品っポイ女子中学生風スタイルの一式。
小町、謎の栄養素を
そして毎朝俺の服を剥ぎ取っていたのはアテナだったのかよ。気づかないうちに自分で脱いでいたんだと思っていたわ。
最後に。千葉の国境を跨ぐのにパスポートが必要って、それ都市伝説だからァ! うちの県はグンマーとは違うからァ!
「……とりあえず、お前ら朝から騒ぐなよ。ラウラを見習え。俺から返すものなんて何一つとして無いのに、毎朝俺より早くに起きて、文句ひとつ言わずに朝食の支度。炊事洗濯なんかの家事手伝いだって進んでやってくれてるんだぜ。まさに良妻賢母の鑑だと思わんか?」
「いや、ラウラはハチマンが起きる前に蒲団から出て行っているぞ。妾は気にせぬが」
「むしろ毎朝全裸でお兄ちゃんの両脇を固められているのになんで気づかないのかな。あ、小町はその後だけど」
その2人の自供に、水場で支度をしているラウラへと視線を向ける。
聴こえていたのか、オッドアイが明後日の方向へと華麗に逸らされた。
「……とりあえず、お前ら朝から騒ぐなよ。深雪を見習え。俺から返すものなんて何一つとして無いのに、毎朝俺より早くに起きて、文句ひとつ言わずに朝食の支度。炊事洗濯なんかの家事手伝いだって進んでやってくれてるんだぜ。まさに良妻賢母の鑑だと思わんか?」
「「リテイクしたっ!?」」
五月蝿い黙れ。
俺は眼帯を止めたシルバーブロンドなんぞ褒めなかった。イイね?
「まあまあ、ラウラさんも『仮』にも『本妻』ですから。旦那様の寝床に潜り込むなんて泥棒猫みたいな真似をするのも仕方がないことなのですわよ。その幼児体型で満足させることも出来ないジレンマを抱えているのですから、大目に見ては如何ですかお兄様?」
と、適当な褒め方とはいえ良妻賢母扱いされたのが嬉しかったのか、深雪がニコニコとラウラのフォローに……違う! コレフォロー違う!
深雪さん怒気は窺えないけど嫁いびる小姑みたいなことしてるよ!
一応間違っちゃいないけどさ!
「……まだやってるのかよその擬似嫁姑戦争」
「意外にラウラさんが頑固で。一言も「お義母様……っ!」って言ってくれないんです」
「そりゃあそもそも母の役どころじゃねーからね。というか、もう怒ってはいないんだな?」
「ええもうそれはもう。そもそも噂を流したのはIS学園の方々ですし? お兄様に分不相応なモーションを掛けた雌豚どもが原因ですし? たとえその結果ラウラさんがお兄様の『本妻』として世間に認知されようとも、決して怒るようなことでは無いと身を正した。それだけですからええそれはもう」
めちゃめちゃ気にしてるんじゃねーか……。
でも藪蛇になるから銀髪番長スタイルで放置(そっとしておこう……。
「ホラ、ひとまず朝飯にしようぜ。ラウラも、怒ってないからはよこい」
「うん」
とてとてとキッチンよりサラダを持ってくる銀髪オッドアイにやや癒されつつ、手を合わせる。
「いただきます」
「「「「いただきます」」」」
幼稚園みたいに、家族の唱和が吹き抜けのリビングに響いていた。
× × × × ×
千葉に舞い戻って、真っ先に片づけたことは、実家の周辺だった。
というか実家だった。
考えて観れば、女性人権団体に襲撃されてから実家の場所は変更されておらず、ところどころ焦げ目が付いた家壁と四六時中周囲の警戒を続ける黒服の警備員さんらを遠目に見て、いっそのこと別の家を用意しよう。
そう判断つけてからは、意外にもとんとん拍子に事は進んだ。
ISの襲撃に焦げ目だけで耐え抜いた『がんじょう』(+ヌケニン)を上位置換するような実父のローンで組まれた家を手放すのは惜しいが、そもそもその両親が既に行方が知れず、家に残っていたのは俺が偶に来ることを笑顔で受け入れる妹だけである。
両親が居らず、そこそこ立派な一軒家に独り暮らし状態であった小町のメンタル面は酷く弱っている筈で、そう考えると一緒の蒲団で眠ってやるくらいなら許しても構わないオレガイル。
基本形は次世代型ハイブリットボッチの実妹であるが、同時に妹系の極致でもある寂しがり屋なのだ。
ならばと妹を引き連れて、八王子の『家族』も引き連れて、これまでの住所とやや近い位置関係にある、とある知事会議員名義のマンションへと引っ越しを済ませる。
というか、その時物件を用意すると名乗りを上げたのが雪ノ下のおっさんだったわ。そういえば。
何処から話を聞きつけたのか一か月前、御付きの秘書だと名乗る妙齢の美女が話を持ってきたので、そっちの件が気になって全体的にスルーしていたのだけどな。
昨今の女尊男卑社会の在り様の中でそれでも女性を部下に添えていられるんだから、普通に有能なんじゃないの? あのおっさん。
用意された物件は、駅からほど近い、15階建て120㎡の敷地条件を持つ適度なマンション。
しかも最上階とかではなく、俺の立場という観点から『狙われた場合』を考慮し、中階層にそれぞれ『家族』1人1部屋用意され、他の階層には別の住人を用意したという徹底ぶりだ。
その上で、目的の階層には俺たち以外は踏み入れないセキュリティまで保持している、無駄に高性能なマンション。
住人采配の配慮は完全に俺を封殺するためとしか思えないけれど、俺からの信用を勝ち得ようと画策する上でその手腕は見事としか言いようがない。
だってよく考えるとアレだぜ? こちらの事情を通達していない住人を用意したってことは『もしも』の時には俺が彼らを守るように、という目論見にしか思えない。
もしもの場合に敵対する第一勢力がISだからこそ、攻撃された場合はマンションそのものが倒壊させられる攻撃が来るのは明確だ。
其処へ敢えて埋め込まれた『事情を知らぬ他人』を、『肉の壁』の如く扱っても良し。
そう言う“つもり”も見透せるけれど、守れるものなら守ってみろ、っていう挑発にも思えてくるから、少しだけ乗り気にもなるのは仕方がない。
アレだ。ゲームの難易度を勝手に上げられたけれど、むしろそっちの方がやり甲斐があるんじゃね?みたいな心理状況。
『もしもの時』の為に政府内に繋がる拙いパイプを補強する、情報整備をちまちま手がける小技で、そろそろ甘粕さんとかの胃も限界が来ている気がする。
仕方ないのさ。遣り甲斐云々は別にしても、『味方の作り方』なんていうものは生まれてこの方成功したためしがないのが俺だからな。其処は出来る人にやってもらうというわけだ。
週一で顔を合わせる自称秘書さんの話では、雪ノ下のおっさんも似たような精神状態だとか。頑張れ。俺の為に。
でも
さて敷地状況とは別に、部屋割りの話。
外観からは分からないが、実は7階と8階のフロアを吹き抜けにしたアクロバティックな出来栄えで、窓が南向きの吹き抜けリビング、更にロフトみたいな手すり付きの通路を通じて各部屋と行き来できる仕組みとなっている。
寝室と洗面台、風呂とトイレもしっかり各部屋に完備してあり、しかも実は部屋は5人で使ってもまだ余っていたりする。
つまり、エリカの要求を難なくクリア出来る間取り、というわけである。
……が、やはり家族以外は此処へ呼びたくはない。
そもそも鍵付きの部屋の筈なのに、
そうなると間取りのキャパはともかく俺自身のキャパが意外と限界。
ちょくちょく顔を見せていたにせよ、一年近く独り暮らしをさせて放っておいた妹との邂逅を、ハニトラで邪魔されたくはない。
なので、八王子の方に居る元亡国機業所属即ち俺専用のIS部隊とそのサポートメンバーが経営する喫茶店も、魔法科校からほど近い『美人店員の揃う喫茶店』として有名なままである。
もしも戸塚とか戸塚とか彩加とかあと深雪とかに何かがあった場合は、真っ先にサポートを入れられるような配慮も依頼してあるし。
ちなみに深雪は小町を毎朝学校へ送る時、一緒に転移で毎朝魔法科校へと俺が送っている。
そのついでに、朝カフェを楽しむという建前での彼女らからの報告待ちだ。シャルロット(元)先生が従業員として未だにハニトラを誘致している以上、1人千葉へ引き込めば芋づる式に他のメンバーも引き入れる羽目に陥りそうなので警戒に値する。
……え? シャル先生がなんで居るのかって?
いや、なんか学園で専用機盗られた所為でクビになったとか……。
……今更だけど、個人所有のアイテム盗られて責任取らされるって、意味わからんよな。
多分だけど適当な理由つけてハニトラ要員を押し付けられたんじゃね? IS委員会辺りにさ?
と、近況を回想していたところで、ふと思い出したことがある。
「小町ー、お前雪ノ下さんってどう思う?」
昨日、件のおっさんの娘さんに誘われた件について。
「ユキノシタサン?」
……なんか、発音が若干不穏に響いたのだが。
微妙に目のハイライトが喪失した小町を幻視しつつ(疲れ目感)、思わず二度見すれば「んー」と考えるような素振りを見せていた妹は、僅かな沈黙の後に口を開く。
「……今のマンション用意してくれたんだし、悪い人とは思いたくないけど……。でもお兄ちゃんの現状を作った原因の人だから、小町的にはポイント最底辺だね」
「そのポイント制兄以外にも適用されるんだな……。じゃあ、娘さんの方は?」
「……それって雪乃さんのこと? それとも陽乃さん?」
小町ポイントの汎用性に驚きつつ問えば、今度こそ嫌そうに苦虫を噛み潰したような顔を見せる。
ところでハルノサンって誰。
「雪乃さんの方な。つか、ハルノサンって誰」
疑問をそのまま問うてみた。
ちなみに、件の雪乃さんはこのマンションの最上階に居を構えていたりする。
いや、ストーカーじゃございませんよ? 昨夜に帰宅した後姿をマンションの入り口で偶然見かけただけですから。
念能力者でもないのに咄嗟に『絶』を発動させたけど、案外気づかれずにスルーされたご様子。
中学時代に培ったステルス能力は、やろうと思えば未だに健在であるようだ。
「陽乃さんは毎週来ているヘルパーさんだよ。ていうかお兄ちゃん偶に部屋のお掃除してもらっているのに、名前覚えてなかったの?」
「……あー、おはるさんな。なに、あの人雪ノ下さんって言うの?」
衝撃の事実。
雪ノ下のおっさんの秘書をしていると自己紹介していた、毎週顔を出す掃除婦さんの苗字がたった今発覚した。
家族の内3人が学生である以上、家事がラウラのみでは追いつかない(アテナは当初より除外する)と見たからのヘルパーを要求し、紹介された人らを俯瞰視的アガリアレプトで『面接』して安全圏であると判断した人を採用させてもらったのだが。
つーか苗字同じってことは姉妹か、あの2人? 名前の語感も似ているしね。
否、でも体型的には説得力無いな。親戚かな?
ちなみに俯瞰視的アガリアレプトは権能のアグレッシブな偏用法。
“こちら側”が『視点』を変えれば、相手に気づかれない限りは
「気づいてなかったんだ……。一緒の部屋に居てドキドキな展開も無かったの……?」
「別に、何も?」
そういえば、部屋でのんびりしているところに掃除に入って来られたような事が何度か。
あったけれども、何も起っちゃいないことを伝えると頭を抱えられてしまう。
なんでさ。
「それはそれで酷いラキスケテロだよ……。ラブコメの神様仕事してよ……!」
「さっきも思ったけど、ラキスケテロってなんぞ? 陵桜学園かなんかか?」
泉こなた、とか……かがみん……つかさ、うっ、あたまが……!?
意識すると襲い来る正体不明の頭痛に悩まされていると、
「ラッキースケベテロリズムの略」
と、さらりと語られた。
それが実際に存在しているとしたら、リト=サン的系列系主人公が一番実装を待ち望んでそうだな。
でもそれ、意味的にはラッキースケベブレイカー若しくはデストロイが適切じゃね?ひょっとしたら。
「話戻すけど、雪乃さんは嫌い。人間的に
「そんなことは無いと思うけどな」
外見的には美少女であるのだし、鈴に対して懐いていた頃の小町ならば口癖であった『嫁候補』とやらに推薦していた可能性も無きにしも非ず。
ひょっとしたら並行世界の妹様はガチでそうやって余計なおせっかいを焼いているかもしれんね。
などと思考が逸れるので回避回避。
「お兄ちゃん、いやごみいちゃん、」
「おいなんで言い直した今」
「妹とは成長する生き物なのです」
聞けよ。
「ポニテの大和撫子未満には切り捨てられ、ギャル系は寝取られ、後輩は腹黒で、鈴ちゃんには裏切られ。美少女系には酷い目に遭ってばかりのお兄ちゃんを見てきた小町的には、もう見た目だけでお義姉ちゃんを探すのは諦めました」
「ナチュラルに兄の黒歴史を抉るのやめてくれませんかねぇ……!?
……ギャル系って、折本か。アレは美少女と違うだろ。つか腹黒い後輩って誰」
「五反田さんちの蘭さん。ちなみにIS学園に進学したんだって」
腹黒かったのか……。
……でも俺、件の後輩ちゃんと特に大した面識も無いけど?
「とにかく! 美少女をお嫁さん候補にするには比較対象が悪すぎるので、進化したニュー小町的には内面をしっかりと見極めようかと思います! 例えるならわた天海春香さんタイプとかがお勧めだね!」
「春香さんは美少女だろーが!」
リボンだけじゃねーだろ!
リボン取ったら凡人とか止めてやれよ!
そして此処までで全く会話に混じってこれない家族らは皆ぽかーんな表情である。
すまんね、内輪ネタばっかりで。
「方向性は違うけども、ラウラさんのことも認めてるよ? でもね、やっぱり小町的にはキチンとお姉さんと呼べる外見が欲しいです。あとおっぱい」
ヤメロ。
今の、一言で、ラウラが、酷く、暗い、
抱えられるほどの胸も無いですけどね(失笑。
「ひ、貧乳で悪かったなぁ!」
イカン、内心を読み取られた。
怒り声というよりは完全に涙声で、つーか涙目で上目遣いの嫁に萌えざるを得ない。
――抱きしめていいですか?
「ところでお兄ちゃん、なんで今更雪乃さんのこと持ち出してきたの?」
と、思考が傾きかけたナイスなタイミングで問われる。
むしろ小町がラウラといちゃつこうとするのを邪魔しているようにも思えて来るがそんな事実は微塵も無いので正直に、
「いや、同じ学校に通っていたからさ。あと部活に誘われた」
そういえば、一年ほど前だけど交流したのは1回きりだったんだよなー。
なんて曖昧に考えていると、烈火の如く怒り出す。
「はぁ!? お兄ちゃんそれ断ってよね! あの人と関わったらお兄ちゃん絶対人生損するんだからっ!」
「そうかぁ? ちょっと気にはなっているんだけどなぁ」
なんせ、部活紹介じゃ一切活動内容を把握できなかった部活なのだし。
「あ、あとこのマンションの最上階に住んでるっぽい」
思い出したように告げて置く。
多分だけど、あのおっさんも嫁入りを諦めてない可能性も微レ存(笑。
「それ下手に買い物も行けないじゃん!?」
行動範囲を察した小町の絶望の慟哭がリビングに谺した。
まあ近所で鉢合わせるだろうしなぁ、下手したら。
物資をバリエーション豊かに揃えるには駅ビルや大型ショッピングモールが候補なのだが、其処に赴かんとする雪乃さんも軽く幻視できることだし、品数に不備は有りそうなれども庶民性豊かな商店街を根城にしたらどうなのかね?
いっそのこと商店街のアイドル目指そうぜ! 大丈夫、小町なら成れる!
× × × × ×
将来のご当地アイドル候補を中学へ送り届けて、現在地は八王子。
転移でついでに深雪を魔法科校へと送り届けて、ようやく自分の登校のお時間だぁー。
が、その前に恒例のコーヒーブレイク。
何人かの魔法科高校性に不躾染みた視線を向けられながら、件の茶店へと足を運ぶ。
「――八幡っ!」
そんな俺に、横合いから腰へと
え、誰!? 戸塚じゃねーだとっ!?
「……会い、たかった……っ!」
泣きじゃくる、見覚えの在り過ぎるツインテール。
――鈴だった。
ていうか、メンタルがステンレス製と名高いコイツがこの有様って……。
一体何があったし……。
日本に一校しかない、新規の新参の前例の無い『将来の日本を背負うエリートを育成する』という“名目”を請け負った実験高校。
第一魔法科高校と俗に言う、一種フラ●コ計画にも似得る箱庭の一角。
具体的に言うならそんな彼らの筆頭責任者である『生徒会長』の治める居城『生徒会室』に、1人の編入生が足を踏み入れていた。
学園の制服では無く、去年に起こった『とある事件』に引っ掻き回され日本政府の手入れで廃校を寸での処で免れた世界的なエリートを一足早くに育成していた女子高『IS学園』の制服に身を包んだ、活動的なツインテールと意志の強そうなツリ目、そして悪意を持って見れば寸胴と言い換えても可笑しくない程度には小柄で平坦な肢体を備えた少女。
凰鈴音と言う中国の国家代表候補生であるその少女は、IS学園との交換留学という名目でこの高校へ通っている。
が、それは名目と銘打ったことからも判るとおりに、完全なる建前である。
彼女の本来の目的は、この学校に通っている筈の幼馴染・比企谷八幡に会うことだ。
そしてその交流自体は、中国の国政側からも推奨されている。
彼女が幼馴染であった事実を好意的に解釈した中国政府は、彼女自身の手で
無論、本気で応援したりはしていない。
まかり間違って政府側の意向なんていうものをご本人に悟られでもしたら、総てが水の泡となってしまう。
彼女がかってにやる分には問題ない、というだけの『後押し』は、彼女本人の抱えている八幡に対する『淡い恋心』を勢いづかせるだけの補正を見事に促したのである。
しかし、その勢いも留学後、見事に失速した。
「――八幡が居ないってどういうことなのよッ! 何処に隠したの、言いなさいッ!」
「『おいおい、』『言いがかりも甚だしいぜリンインちゃん。』『彼は彼本人の意向で、』『ちょっと兄弟校に出向しているだけだよ』」
バァン! とテーブルを叩き、詰め寄るIS操縦者。
それに対しては、平然と平坦と泰然と淡々と、『生徒会長』が何処かの負完全に匹敵する勢いで括弧つけた口調で、八幡の不在を手広げ述べた。
その人を喰ったような仕草に、鈴は当然の如く更に更に激昂する。
「ッ! だから何処に行ったのかを教えなさいって言うのよ! いつ戻ってくるのよッ!」
「『わからないなぁ。』『なんせ九州の方に出来るっていう第二魔法科高校の、』『補佐&研修生として実績のある生徒を要求』『って言うのが向こうの言い分であったわけだし。』『帰ってくるのは半年後か、』一年後くらいじゃないかな?」
「~~~~ッ!!!」
縋りつきたくなるような嘘を並べ立てる会長に、傍で会話をそれとなく聞き耳立てていた北山雫がうわぁ、と怒りに震える留学生にひっそりと同情した。
彼女の要求が件の彼であることは、彼女が転校してくる前から明白な事であったので今更感は半端ないが、それにしたって煽り過ぎではないか、とも密かに会長へ向ける眼差しが翳る。
しかも何気ない真実を織り交ぜているのだから、余計に反骨精神を煽られるようであるとも言える。
その対処の仕方に、よく八幡が『四つに組んだら駄目なタイプ』と会長を揶揄していたことを思い出し、ああなるほど、と納得もしていたが。
それにしても何処かで聞いたような話である。
具体的に言うなら、某週刊少年漫画雑誌でかつて連載していたプリティフェイスな作画の魔法高校漫画の打ち切り臭い終わり方みたいな。
しかし、『彼』ならば的確に何処のM0かとツッコミを入れるであろう烏丸会長の週刊少年誌系嘘八百に付き合うつもりは一切無いらしく、鈴音は的確に己の行使出来得る“手段”を取る。
それはある意味、北山雫も予想がついていた手段でもあった。
「『……』『おいおい、』『これは流石に許容できないぜ』『?』」
「オーケー、アンタがそうやって人を食ったような態度を取るなら、こちらとしても容赦する気は無いわ。風穴を空けられたくなかったら大人しく八幡の居場所を教えなさい……!」
部分展開された鈴音の専用機『甲龍』の籠手と武器を目前に付きつけられ、それでも烏丸は不敵に嗤う。
要するに、脅迫であった。
無論、
だが、それが問題視されるよりも早く、表沙汰にされるよりも早くに、その前に武器を振り下ろす方が格段に速い。
それも全ては彼女の、逸る気持ちに歯止めが利かなかったこと。
そして、それを“知りながら”も煽ることを止めなかった烏丸の『口撃』が原因である。
鈴音風に言うならば、人の恋路を邪魔するのだから馬に蹴られても文句は言わせない、という独善だろう。
流石に『殺す気』までは無くとも、二度と舐めた口を開かない程度には痛めつけてやろう。と、彼女は思う。が――、
――如何せん、その対処では『相手』が悪すぎた。
「『いいぜ』」
「……あ?」
「『俺は暴力には屈しない。』『殺りたければ、』『殺ればいい』」
「……ッ、言ったわね……ッ!」
態度は、決して改められない。
その烏丸に、完全に自分を見下しているのだと『勘違い』した鈴音は、勢い良く片腕に装備展開された籠手を、偃月刀の様な双天牙月という其れを、躊躇いなく振り下ろし――!
――その腕を、こぶし大の螺子が武器掴む掌ごと貫通した。
「――は……?」
一瞬遅れて、己の現状に気づき、しかし、
「……ッ!?」
痛みよりも、より凶悪な“モノ”が、鈴音の身を苛んだ。
「ひっ、あっ、がぁ……ッ!」
――父に手放され、
――母に引かれる手が、
――二度と会えなかった友との握手が、
――『彼』に触れられなかった後悔が、
あらゆる『手』に纏わる記憶が、後悔が、無念が、心の痛みが、フラッシュバックのように彼女の躰を硬直させた。
「な、ん、なにを、し、」
――次の瞬間には、胸に螺子が、
「――ッ、いやぁああああッッッ!!!」
より凶悪な記憶が、苦汁が、懺悔が、悔恨が、トラウマが、彼女の精神を容易く蝕む。
自身に訪れた“それ”を知覚した、その瞬間には、悲鳴を上げて仰け反り、逃げるように踵を返そうと、
――その脚を、螺子が縫い付けた。
「ああああああああああああああああああああ!!!!??!?!」
身動きすら取れなくなり、生徒会室の真ん中にへたり込む様に、小さい子供の様に泣きじゃくりながら蹲る。
泣き声は止むことは無く、過呼吸に陥りそうになるほど嗚咽を繰り返し、恐怖を恐怖だと自覚せざるを得なかった彼女の周囲を、
――『螺子』が檻の様に取り囲み、
「心は、何処にあると思う?」
初めて、烏丸が格好つけずに席より立ちあがった。
「とある人は、人と交流するからこそ心とは繋がれる“手”に生まれるのだと言った」
全ての恐怖の根源が、ゆっくりと声を掛け乍ら歩み寄る。
蹲り、自然と顔を背ける姿勢でいた鈴音は、恐れているからこそ、それを振り返ることなどできやしない。
「ある人は言った。人の感情が胸に来る、と言うのだからこそ心とは“心臓”即ち“胸”に集うのだと」
声は、既にすぐ後ろから届く。
それでも鈴音は動かない。動けない。
「歩み進む、前進することこそが人の抱える最大の“意志”だ。即ち人の心は踏み出す“脚”にこそある。そう言った人もいる」
通り過ぎ、彼女の視界にその姿が現れる。
正面へと歩を進める彼に、部屋にやって来た時の自分を後悔する程の恐怖を、彼女は抱えていた。
「もっと単純に、人がモノを考えるのは頭だから、心とは“脳”に在るべきだ。どれもこれも、然るべき答えだと思う」
振り返り、不敵な笑みが、目に、映った。
「じゃあ、全部打ち抜けば、その心に逃げ場なんてものは無いのが道理だ」
酷い暴論だが、それはある意味真理でもある。
そして、彼のやろうとしていることを、その身で体感した鈴音は、恐怖で碌に働かない頭でありながらも自覚した。
否、自覚させられたと言うべきであろうが。
烏丸は、更に言葉を重ねる。
猛禽の様な笑みを浮かべたままに、非常に愉しそうに、それでいて何処か、――沈痛に。
「キミは攻撃をしようとした。
武装していない相手に対して、自分の要求を推し進める為だけに、もっとも原始的で野蛮な方法で、言うことを聞かせようとした。
これは唾棄すべき恥ずべき行為だ、故に、正当防衛も成立する。
後は、――無力化させてもらうだけだ」
その手には、自分を貫き、磔にし、取り囲んで身動きさせない『螺子』が――、
「な、なんで、あんた、こんなことができるの……? わ、わたしは女の子なのに、」
「『関係ない』」
「しょ、正気? そんなことしたら、こ、国際問題に発展するわよ? 貴重な代表候補性を傷つけたら、この国だってどうなるか、」
「『知ったことじゃない』」
言葉は、既に届かない。
何よりそれは鈴音が終わらせた。
一刀両断に情に訴えることすら、国を盾にすることすら切り捨てられたことで、彼女の退路が断たれていることを知る。
「っ、や、止めなさいよ、武器を下して、わたしも、反省しているから、だから、」
「『嫌だ』」
「~~! こ、今回の事は後で問題視する気も無いから、だから、」
「『駄目だ』」
「っ、わ、わかったわ、八幡の事はもう聞かない、だから、」
「『断る』」
「……ごめんなさいにどとさからいません、ゆるしてくださいゆるしてくださいゆるしてくださ、」
「『許さないし、』『俺は、』『悪くない』」
――鈴音の目前に突き付けられていた螺子の先端が、震える声で壊れたように泣きじゃくる彼女の、頭蓋へ、
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!」
――容赦なく、振り下ろされた。