やはり魔法科高校の魔王の青春は間違っているストラトス   作:おーり

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・いきなり人生から全否定入る、原作詳しくないけどこれくらいが八幡節なんかなーとSSやチラ読みで補完しております
・また他作品も結構ウィキ頼りなところがあるので、ファンの方には色々怒られる部分があるかもしれませんが仕様です
・この作品では、感想には返信しません。しないはずです。しないってばよ
・そのつもりだったんだけどなぁ…
・しかし、ツッコミ、雑談、作品批判、お好きに書き込んでください
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彼が魔王になったのは十中八九世界が悪い
やはり俺の人生は間違っている


 

 かつて「超能力」と類型されていた「魔法」が確立され、それ以前からあった「呪術」や「魔術」との折り合いのもと、「科学」でそれらに拍車をかける技術が確立されたのは、偏に「魔王」または「神」に対抗するための人類の防衛手段である。

 表向きは国力の増強だとか、文化の促進とか、技術の進歩を促すとか、それらしいことを言っているわけだけど、誰もが恐れ敬いながらも理解しているのだ。「魔王」にいつ命を脅かされるかわかったものではない、と。

 「魔王」とは「神」に勝利したものを指す。

 勝利し、「神」の持つ「権能」という特殊能力を簒奪し、人類の手に負えない存在となった完全なる上位種。これを、「カンピオーネ」と一般的に呼ぶ。

 肉体は鋼の強度を優に超え、あらゆる呪いを撥ね退け、人の手では決して殺せない上に、腕を振るうだけで街一つ島一つを壊滅させることが出来るようになり、空を焼き大地を削り、凡庸な人類の命など虫けらのように取り扱える。

 そんなやつらが悠然と自分たちの頭上に胡坐をかいていることに平然となっていられるほど、人類は寛容ではないのである。

 

 さて、そんな超存在に匹敵出来るものが、果たして人の手で用意できるのか?

 答えはYes。

 「インフィニット・ストラトス」通称IS。女性にしか扱えない究極の欠陥機であるそれは、「魔法」と「魔術」の折り合いと「科学」の粋を極端に凝縮した結果、世界最強のパワードスーツとして認識されるようになった。

 それを知らしめたのは10年前に起こった白騎士事件、という「日本に撃ち込まれた数千発のミサイルをたった一機のISが全て迎撃した」事実なのであるが、詳しくは語らない。

 当時は小学校に入学したてのまだ人を信じられる頃だった無垢な少年であった俺は、世間の荒波にもまれるうちに当時の事情などとっくの昔に忘却の彼方なのである。よく知らねーことを詳しく語れるか。

 

 ともかく、そこまで強いんならそのまま技術を突き詰めていけばいずれは「魔王」にも勝てるであろう。

 そうやって時期を見計らっていたのが当時のイイ大人たちだったようで、まあ要するに返り討ちにされて無駄に「魔王」の警戒心を高める必要もない、と判断したのであろう。

 その選択のもとに、ISは研究され、研磨され、見事に「魔王」に匹敵するであろう位階にまで上り詰めたのである。

 なんでわかるかって?

 俺が実際に「神」を倒したんだから、やろうと思えば「魔王」にだって勝てるんじゃねーの?

 ああ、言い忘れていたが。

 俺の名は比企谷八幡、「神」と同等の存在である「竜」を倒して「権能」を剥奪した世界で7人目の「カンピオーネ」であり――、

 ――俺はどうやら世界で最初の男性IS操縦者にもなったらしい。

 

 

 ●  ●  ●  ●  ●

 

 

 高校入学の当日、俺は車に撥ねられた。

 理由は犬を助けたという、テリーマンにも匹敵する優しい心が引き金だったのだが、それを評価してくれるのは血の繋がった実の妹以外にはいなかったみたいである。

 車の持ち主にはややいびられ、犬の飼い主は見舞いに来てくれることなど一切なく、我が両親はケガで動けない実の息子をバカ者と罵った。

 そこまでくると人間不信+荒縄で首括りになるレベルなのだが、俺には可愛い妹の小町がいるし、小町だけは俺の行動を褒めて慰めてくれたので枕を濡らすことなく今も生存しているのである。

 シスコン? 千葉の兄妹はこれがデフォルトだ。だから逆説的に俺は異常ではない。以上、QED―証明終了―。

 

 さてそんな事故であったのだが、事故った車の持ち主は表沙汰にはしたくない立場の御人様であったらしく、示談金ついでに俺にドイツ旅行までプレゼントしてくれたという豪気な方であった。

 むしろそのまま国内に居てほしくないレベルで放逐された可能性が微レ存なわけだが、事故の証拠そのものである俺の所在をあやふやにしておくという理由もあるのだろう。

 松葉杖にてえっちらおっちらと未修理人体のままに国外追放された俺は、若干自棄になるレベルで国外旅行を満喫させてもらったのであった。

 ちなみに付き添いという名の監視の黒服が一人ついてきたのみで、家族は当然ながら小町とも離れ離れである。まあ妹は妹で中学校に進学したてだからついてこれるはずがないのは当然なのだけれども。さ、さみしくなんてなかったんだからねっ!

 

 ドイツに到着して二日くらいたった朝、コーヒーブレイクに興じるつもりだった俺は、街の光景を目に独り思考する。

 女尊男卑の今の世の中、男が不遇になるのはある意味当然の帰結であるのだが、己の人生何処で間違えたのだろうか。

 ひょっとすれば生まれたこと自体が間違いであった可能性が大なので、あまり考えないようにしていたが、さすがにこれはない、と世の総てを呪いたくなった。あ、小町は別な。

 ――街中に突如、赤いドラゴンが顕現した。

 此処まで不幸か己の人生……。実は幻想殺しが俺の身体の何処かに仕込まれているんじゃなかろうな。

 本当にそうだったら儲けものだったのだろうが、現実は甘くない。

 逃げ惑う人々の阿鼻叫喚&ドラゴンの吐き出す炎の暴虐、そして暴れ狂う巨体の奔流に無残に解体されてゆく街並み。現実では有り得なくとも目の前にて展開される神話の権限に包まれたドイツの片田舎にて、護衛(仮)にも投げ出された状態で俺は異国の地に独り残されたのである。

 俺は上手く逃げ切ることができず、ドラゴンの暴虐もとどまることを知らず、街並みは瓦礫の山とされて激風に晒される木端の如くであった俺の目の前で、迎撃に来たドイツ軍に所属するIS乗りらを10何体か、そのドラゴンは返り討ちにした。

 やはりいくら性能を引き上げても「神秘」に「人」では勝てないのか。そんな諦めが、軍属の少女たちの中に芽生えているのが、遠目に見てもよくわかった。

 

 しかし、その数分後、ドラゴンは思いがけない人物に打ち倒されることとなる。

 

 

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 まあ要するに、そのドラゴンを何故か倒せてしまったのが俺であり、その際に放棄されたISを一体操縦したことにより、世界初の男性操縦者の称号まで貰ってしまったのが真相だ。

 キングクリムゾンを働かせたが、概要が通じれば後はきっと問題ない。

 問題なのは、俺がその時点で7人目のカンピオーネとして、世間に「竜倒し」の情景を晒してしまったことである。

 誰が撮った動画だったのか、生き残った何者かが流出させた動画の真実を探って、テレビ局が俺の居場所を突き止めた時には、ドラゴン退治の一部始終を見ていたサルバトーレという「剣王」と同レベルのバトル真っ最中であったのだ。

 そんな証拠をむざむざと見せつけられれば、どんなに現実を認めたくないお人でも理解せざるを得ないというものだ。

 

 義兄と呼ぶことを要求する剣王のそれは、俺の「権能」を覚醒させるためのイニシエーションであったと本人は言っていたのだが、楽しんでいたらしいのも事実。

 カンピオーネは“成った”時点でそれまでの身体的なダメージを完全に回復させて、ついでに人外級の膂力までも付加させる。

 さながら一方通行のようなベクトルバリアを持っているかのごとく、己に叩き付けられた剣戟をワックスに弾かれる雨垂れのように流すことも出来るので、まだ俺は生存していられる。

 そんな俺の「権能」確認も済んだのだが……。

 たった一体の「竜」を打倒しただけでとんでもないチート性能が俺の身に宿っていた。

 俺の権能の名は「グリモリウム・ウェルム―Grimorium Verum―」。

 魔導書の銘を冠するその権能は、その異本である「赤竜」に准ずる性能を得てしまった。なんと、件の異本に記載されているとされる6体の悪魔の識能を、件の悪魔らを召喚もせずに扱える、というドが付くチート性能であったのである。

 

 

 ……まあ、普通に理解できないだろうな。一つずつ消化してくから、ゆっくりしていってね!

 まず「赤竜」ということで、竜の性能はある。

 初めは場所も相まってジークフリートのドラゴン退治にあやかった敵対竜「ファフニール」かと思っていたが、それだったら「剣王」であるサルバトーレお義兄ちゃんが「ジークフリート」の権能を剥奪しているので、未開発なままの俺であれば即座に負けていた筈なのだ。

 「竜」の性能をがっつりと持っているお蔭か、大概の剣は肌を傷つけず、割と自在に空を飛び、やろうと思えば火も吹けることを思い知った。

 ……小町ぃ、お兄ちゃん、つくづく人間じゃなくなっちゃったよぉ……。

 

 ……さて、次に異本「赤竜」に記載されている6体の悪魔。これがまたチートがそろい踏みで、

 サルガタナスは「瞬間移動」と「透明化」

 アガリアレプトは「透視」に「千里眼」

 フルーレティは「気象操作」に「冷却」

 これら半分だけでも十分チートなのに、極めつけは死者を従えられるという逸話持ちのネビロス、この世の財を管理しているとされるルキフグス、女性を従えて祝福するというサタナキア。あとは、わかるな……?

 つまり、この女尊男卑の世の中で俺が全権能を遺憾無く発揮すると、見事なまでにこの世の帝王になってしまうというわけである。そう、あの絶対遵守の童帝以上のまさに「魔王」と呼ばれるに相応しい存在へと。

 ……なりたくねぇ。

 最終的に臣民から刺される未来が見えるのに、そこに至るまでの道のりが冗長すぎてわざわざ進みたくねぇ……。

 せめて普通の人生を、出来ることなら理想的なヒモ生活を送りたい。そんなささやかな願いすらも叶わないというのか……。

 ……くそっ、なんて世の中だっ!

 あと戦闘において決定力が無さすぎる。いや、わざわざ戦いたいってわけじゃないけどさ。やっぱこういうファンタジーな状況になったら、男なら一度は味わってみたいというのがあるじゃん。ねえ?

 

 

 そうして己の性能を確認した後に浮上してきた問題は、俺の個人情報が日本では完全に流出したという点であった。

 発現した「権能」の中に「千里眼」があったので視えてしまったのだが、俺の情報をいち早くに得た権利団体が家族へ手を出そうと暴走している姿が。思わず、発現していた「転移術」で小町に危害を加えられる前にボソンジャンプで帰国した俺に、死ぬほど驚いていたのは言うまでもない。

 ちなみに件の権利団体、どうやら女性上位を提唱する集団であったようで、『魔王の実家』に急襲かけるのだからとISまで連れてきて脅していたのであるが、それもまた俺の権能で無効化されたのである。

 俺の危険性を、これでもか、と日本中に見せつけることとなってしまった……。

 

 なってしまったものはしょうがないから、家族、特に小町に危害を加えようというのなら何をするかわかったものじゃない、とガッツリ脅しておいたら、7人目の魔王はシスコンだというレッテルまで貼られてしまう。だから千葉の兄妹はこれが普通だと、何度言ったらry

 問題はその先で、俺が一緒にいることで迷惑がかかる、という理屈も家族から提唱されてしまった。当然ながら小町以外の両親だ。小町は押し留めていたさ、マジで天使すぎるだろうちの妹。

 まあ親の言いたいことはわかるので、それじゃあ俺はこの『一人暮らし』の扉を選択してみるぜっ!と無理矢理テンションアゲアゲで大フィーb……嘘ですやや引き笑いのローテンションでした……。玄野くんもこんな気持ちだったのかな……。

 

 だがそこで待ったをかけたのが我が家の本家筋に値する『四葉家』。

 まかり間違ってもあずまきよひこののほほん電撃漫画にあらず、同じ電撃系でも若干サブカル色は脂身たっぷり……すまんなんか電波混じった。

 まあとにかく本家筋であってなんだか秘密主義が押し通っている政府的に重要職についているんじゃねーかなー、と慮れる『魔法』関係に一家言あるんでなかろうかっていう方々。

 恐らくだけど俺が魔王化したから政府が辿れるルートから接触しようとしたらそこにぶち当たったか、四葉さんちが俺とそれなりに関係持っているから己の影響力を政府的に知らしめたいか、若しくはその両方か。

 まあどっちでもいい。ところで政府政府って言い方、なんか頭悪そうじゃね?

 

 何はともあれ四葉さん、ちなみに読み方はシバらしい。その件の筋肉系四天王(かませ犬)さんは自分らの養子に入って魔法科高校へと通うように、と俺に提案してみた。折角なので乗ってみた。

 話が早すぎる? いやいや、IS学園にぶち込まれるよりはずっとマシな対応。はなまる程度ならあげたいね。

 ……いや、だって忘れてるかもしれんけど今の俺って男性IS操縦者でもあったりするんだけどさ? コミュ能力がレスし過ぎててマイナス特化しているようなボッチ街道驀進予定の男子を、女の園にぶち込むとかって正直正気を疑うレベルなんすけど?

 小学中学と着実に弄られ虐められて成長してきた俺にとっては女子の集団こそ天敵と言ってもいい。魔王になったからと言ってトラウマが解消するわけじゃない。これ振りじゃねーからな?推すなよ?絶対推すなよ?(転入を)

 ……まあ、只でさえチート性能だと一見して目撃してしまった日本政府関係者一同が、わざわざ治外法権且つ戦力強化になるような囲い方を促してくるはずがないけど。

 そう考えると、別にシバサンの案に乗らずとも、高校へ行かずに引き籠って在宅ワークで生活しても問題無し……いやいや、そうなったらもう魔王どころか引き籠りじゃねーか。小学校の頃の徒名のままに生きるつもりか。しっかりしろ俺!

 ……いやイメージの魔王が大概ダンジョンの奥で引き籠っている、っていうツッコミは無しの方向で一つ……。

 

 

 さて、そんなこんなで魔法科高校というエリートコースへと転身を果たした俺。

 己の人生がどうなろうと他の人間には関係ないのだろうが、負け犬人生を送っていると思われるのが癪なのも事実だし。このまま行けば就職にも有利になるとか、そういう下心もあったりするからこうして進学を受領したわけだけども、……入学してみて初めて思う。

 ……二科生って……、要するに『補欠』じゃねーか……っ!

 詳しくない俺でも結構わかるぞ、アレだろ? 社会の歯車を促すための格差階級を形骸化した学園においてE組は即ちendのE、これより下が無いから皆はああはならないように頑張ろうぜ、っていう見せしめのスケープゴートなんだろ? ソースはジャンプ。渚くんが男だとは断じて認めない。

 魔王扱いとしての唯一の待遇で俺を紹介してくれたいらんことしいの先生がおったけれど、早々に退室して放課後まで戻ってこなかったことから察するに担任教師すら実はいないと見た。担任じゃなかったんかい。ついでに言うなら各教科すらも自習だった。

 ……何を、学べと……?

 ……まあ、元々魔法について詳しくない上に、適正とやらも本来無かった一高校生が突然エリートコースに入れるわけもないし、そもそも人類の天敵を育成しようなんて物好きな余力と暇が政府に備わるはずもないからな。体裁だけ囲っておいて、機を見て暗殺する腹積もりなのかもしれん。

 何をとち狂っているのか養子としてシバの家に入ったはいいものの、何故かシバ家には深雪(遠縁の従妹)しかおらんかったし。あっちは根本的にエリートそのものの才能持ちだから、義妹がそのまま刺客若しくはハニトラな可能性が大。年頃の男女を一つ屋根の下に住まわせるような精神構造が、まともな大人の倫理観で推し通されるはずがないもんな。うん。

 ……確か、大概の呪術や魔法は肌で反射出来るけど、内側からなら弱いんだっけ。カンピオーネって? ……とりあえず、近づいてきたら警戒しておこう。

 魔法込の料理を直接食わせられるかもしれんから炊事も出来る限り自分でやるか。白米の上に卵どーん、野菜炒めどーん、ハッシュドビーフどーん、な男の料理になるけど、誰に食わせるわけでもないしな。見た目に拘って命を危機に晒すとか、マジで有り得ん。

 

 

 ……で、回想とプロローグが終わったわけだけど、未だに話しかけてくるものは誰もいない。

 おいおいどーした? 転校生だぜ? 声かけてくれてもいーんだぜ?

 あ、メガネが必要か? もう正体ばれてんだからいーじゃねーかよ。

 ほらほら、かもんかもん。人畜無害ですよー!

 

 

 ………………結局、俺の転校デビューは誰にも話しかけられることなく放課後を迎えたのは、言うまでもない。

 

 




~ISが勝てる
 んなわけねーじゃん。勝てたのは八幡の主人公力のお蔭ですよ?
 カンピでも元々性能レスな護堂が神を討伐したらしいし、最低限度の武器があれば主人公4人分の絶対値がそれなりに備わっている八幡が負けるわけがない!

~赤竜
 カンピ世界設定なら有り得そうなこじ付け。赤竜(レッドドラゴン)繋がりでサタン顕現してミスターサタンの権能を得る、とかも妄想しかけたけど、そっちの方が酷くなりそうだったのでまだマシな方。魔人ブゥ召喚するとか、ね?

~最後に一言
 喋れ

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