IS 〈インフィニット・ストラトス〉 ~運命の先へ~   作:GASHI

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夏休みになって大歓喜のGASHIです。けど書き溜めがヤバい・・・。


第4話 「それぞれの矜持」

「それではこの時間は実戦で使用される各種装備の特性について説明する。」

 

教壇に立った千冬さんがそう告げる。まーた退屈なだけの授業が始まった。しかも教壇には千冬さん。居眠りでもしようものなら頭蓋骨が陥没しかねないだろう。さて、どうするかな・・・。

 

「ああ、その前にクラス代表を決めなければならないな。」

 

思い出したかのように千冬さんが口を開く。クラス代表?学級委員みたいなものだろうか?はっきり言えることはとにかく面倒臭そうな響きだということだ。

 

「クラス代表はまあ、クラス長だな。再来週行われるクラス対抗戦への参加の他、生徒会の開く会議や委員会への出席が義務づけられる。一度決まると一年間変更はないからそのつもりでいろ。」

 

うん、予想通り面倒だな。絶対やりたくない。興味があるとすればクラス対抗戦だが、一年生同士だろうし、どうせ雑魚しかいないだろう。喧嘩になるかも疑問だな。

 

「自薦他薦は問わん。誰かいるか?」

「はいっ、織斑くんを推薦します!」

「私は神裂くんを!」

「私も!」

 

千冬さんの台詞を皮切りに、クラス全体が活気づいた。いや、確かに問わないとは言ったが一人くらい自薦する奴いないのかよ。自己主張のベクトル間違ってるぞー、お前ら。

 

「ちょっ、ちょっと待った!俺はそんなのやらな・・・」

「他薦された者に拒否権などない。選ばれた以上は覚悟しろ。」

 

一夏のささやかな抵抗は千冬さんに一蹴された。一夏め、無駄な足掻きを。さて、拒否権がない以上、誰かに押し付けるのが得策だろう。どうやって一夏に押し付けるかな・・・。

 

「お待ちください!納得がいきませんわ!」

 

お、自薦する奴がいたか。ただ心なしか今すげえ聞きたくない声に聞こえたんだが気のせいだろうか。声のした方を見ると・・・、ああ聞き間違いじゃなかった。

 

「そのような選出は認められません!大体、男がクラス代表だなんて良い恥さらしですわ!わたくしに、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえと仰るのですか!?」

 

うん、自薦は結構だし押し付けたいのは確かなんだが、出来ればお前には黙ってて欲しいんだよなぁ。ってか、嫌だったら祖国に帰れ。日も浅いしどうせ誰も悲しまんよ。

 

「実力からいけばわたくしがクラス代表になるのは必然。それを物珍しいという理由で極東の猿にされては困ります!わたくしはこのような極東の島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!」

 

あらら、日本人は人扱いされないのね。ま、どうでもいいや。とりあえずさっさとその長ったらしい演説切り上げてくれ。下らなすぎて飽きたからさ。

 

「イギリスだって大したお国自慢ないだろ。世界一不味い料理で何年覇者だよ。」

 

遂に我慢の限界に達したようで、一夏が立ち上がって言い返し始めた。元気だなぁ、お前ら。喧嘩が好きなのは実に結構だが。

 

「貴方、我が祖国を侮辱しますの!?」

 

いやいやオルコットさんや、君が先に日本を侮辱したせいだろうに。あれなの?君って今だに白人至上主義でも掲げてんの?思考が古臭すぎんだろうよ。

 

「・・・決闘ですわ!」

「おお、良いぜ。四の五の言うより分かりやすい。」

 

すっげえ脳筋っぽいやり取りしてんなぁ。言葉じゃ埒明かねえから喧嘩しようぜ!ってガキかってーの。

 

「で、ハンデはどうする?」

「あら、早速お願いかしら?」

「いや、俺がどれくらいハンデをつければいいかなーと・・・。」

 

次の瞬間、クラスが爆笑の渦に飲まれた。一夏、キョロキョロしてるとこ悪いが、原因はお前の身の程知らずな言動のせいだからな?

 

「織斑くん、それ本気で言ってるの?」

「男が女より強かったのって、大昔の話だよ?」

 

女子一同の言葉に思わず渋面を作る一夏。まあ気持ちは分かる。女尊男卑の風潮はあくまで「ISは女子のみが使える」ことを前提としている。織斑 一夏と神裂 零、この例外2人が存在している以上、一概にその風潮が正しいとは断じて言えない。そもそも大昔というほど昔の話でもないし。

 

「・・・じゃあ、ハンデは良い。」

「えー?織斑くん、いくら何でもそれは代表候補生をナメすぎだよ。」

 

他の女子生徒はオルコットと違い、程度の差はあれ好意や親切心を持っているので一夏を説得しようとするが、女尊男卑を嫌う一夏には効果がない。しかし、流石に周囲からの説得や非難に困惑したか、一夏がこちらに話を振ってきた。

 

「お、おい零、お前も推薦されただろ。何とか言えって。」

 

・・・仕方ない。俺も言いたいことはあるし、少しカチンときてるのも事実。ストレス解消といきますかね。

 

 

 

 

零は静かに立ち上がる。セシリアを見るその顔は能面のように無表情だが、どことなく近寄りがたい迫力を感じさせる。

 

「・・・オルコット、質問がある。」

「あら、ハンデの申し込みかしら?でしたら・・・」

 

ガンッ!!

セシリアの言葉を遮るように、鋭い音が教室に響く。音の出所は零の手元。彼が机を殴ったのだ。その強烈な衝撃を物語るかのように殴られた部分がひび割れ凹んでいる。

 

「俺は質問があると言った。黙って質問にだけ答えろ。」

 

これにはセシリアどころかクラス中が静まり返った。気の弱い一部の生徒はこの時点で震え上がって涙目である。しかし、彼はそのような些事を気にするような人間ではない。

 

「・・・な、何ですの?」

「お前の先程の演説は日本と日本人に対する侮辱と軽蔑を表したものと解釈して間違いはないな?」

「え、えぇ、そうですわね・・・。」

 

零の迫力に押され、少し歯切れの悪い返事をするセシリアだが、毅然とした態度は崩さない。 きちんと零と目を合わせられているあたり、流石は代表候補生と言うべきか。

 

「生憎、俺は愛国心なんていう高尚な精神は持ち合わせていないし、一夏ほど感情的な人間じゃない。だから、日本が貶されたことは正直どうでもいい。」

「そ、そうですの・・・。」

 

国際問題、ひいては日本と英国が戦争状態に突入したとしても、零はむしろ嬉々としてその状況を受け入れるだろう。理由は簡単、彼は喧嘩が好きだから。

 

「問題はその後。日本人を猿呼ばわりした件だ。・・・お前の言う猿には全ての日本人、つまり一夏や他の女子生徒の他に、そこにいる山田先生やブリュンヒルデである織斑先生も当然含まれてるよな?」

「そ、それは、その・・・。」

 

ここに来てセシリアは自身の発言の軽率さに気づいた。彼女は入学して早々、クラスメイトと教師、それも自分よりも圧倒的に格上の人間を敵に回したのだ。思わず身震いするセシリアを、零は嘲るかのように鼻で笑う。

 

「今頃その反応か。馬鹿馬鹿しい。」

 

だが、零が言いたいのはその事ではなかった。彼は言葉を続ける。

 

「まあ、俗物のお前が世界最強を猿呼ばわりするだけでも十分万死に値すると思うが、俺が言いたいのはそこじゃない。そんなことで怒るのは一夏にでも任せておけばいい。」

 

あまりの言い草に一夏は思わずムッとするが、零は構わずに淡々と言葉を紡ぐ。

 

「問題は、その猿の中にIS開発者、篠ノ之 束が含まれていることだ。」

 

零はセシリアに向かって歩み始めた。彼は表情こそ変わらないが、明らかに殺気を放っていた。思わず後ずさりしようとしたセシリアだったが、一番後ろの席である彼女にはそれが出来ない。

 

「お前がそうやって威張ってられるのも、女尊男卑の風潮が受け入れられているのも全てあの人が開発したISの恩恵があればこそ。まさか忘れたとは言わないよな?そしてそれ以上に・・・。」

 

セシリアは何も言わない。否、あまりに怯えすぎて何も言えないのだ。しかし、目の前の少女の怯えきった表情を見て態度を変えるほど、零は紳士ではない。

 

「束さんは俺の命の恩人であり、親のような存在であり、俺にとって世界で一番大切な人だ。何人たりとも、束さんを馬鹿にすることは絶対に許さない。況してや貴様のような輩など言語道断だ。」

 

零はセシリアの目の前まで近づくと、歩を止めて睨みつける。能面は般若に変わり、先程までの無表情は憤怒に塗りつぶされていた。

「決闘は受けてやる。貴様や一夏のように俺にもプライドがあるからな。俺を怒らせたんだ、相応の覚悟はしておけよ、三下。」

 

そう言うと、零はセシリアに背を向けて自分の席に戻る。腰が抜けてへたり込むセシリアの勢いよく着席する音を聞き流しながら、自分の席に戻るのと同時に彼は千冬に目配せする。その意味を汲み取った千冬が口を開いた。

 

「では、クラス代表は織斑、神裂、オルコットの3名によるリーグ戦形式のISを使用した模擬戦によって決するものとする。それぞれ用意しておくように。では授業を始める。」

 

何事もなかったかのように授業を始める千冬。零もまた何事もなかったかのように頬杖をついて教壇に視線を向ける。左側の少女の鋭い視線を感じながら。




コラボ計画進行中です。一つはオリジナル作品、もう一つは二次創作になりそうです。設定作るのって難しいなぁ・・・。

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