咲-Saki-消えゆく京- 作:神狼K
そこにいたのは……照さんだった。
「照さん……」
「京君……やっぱり麻雀に未練が……?」
「ははは……やっぱり照さんには何でもお見通しですね。はいそうですよ未練ありまくりで来てしまいました……」
俺は来た理由をあっさり明かした別に隠すことでもないからだ、しかし照さんはやっぱり強いなぁ。
「照さん、貴女の試合は素敵でした憧れましたよ……俺には到底辿り着けない場所にいる照さんにね……」
「京君はなんで諦めるの?」
「……」
「なんでそんなに悲しい目をするの? やっぱり咲が悪いの……」
「違う!! 咲は悪くない!」
俺はつい叫んでしまった。幼なじみの咲は悪くないんだ全て俺が……悪いはずなのに。
『京太郎!もう少し自信を持ちなよ!』
葛藤している時、ふと淡の言葉が脳内に過る。……自信? 自信ってなんだよ。悪いが、今の俺にはとても理解できそうにないぜ、淡。
「とにかく咲は悪くないです」
「京君……君は本当に優しいんだね」
「……俺は優しくないです」
「京君……」
照さんはゆっくりと、しかし力強く俺のことを抱き締めてきた。俺の鼻にはふんわりした柔らかい感触と甘い匂いに包まれる。
「京君、前にもいったはずだよ、一人で背負わないでって……」
「照さん……」
照さんは俺に優しくしてくれる。だが……いつまでも甘える訳にはいかないじゃないか。俺に力がない……この先力がなければ死ぬだけだ。
「照さん、ありがとうございます」
俺はできるだけ優しく、照の抱擁を振りほどいて一歩離れた。
「ですが、俺は大丈夫ですから……ではまた」
そして、俺は照さんの優しさから逃げるようにその場を後にした……。この時、照さんがどんな表情で俺のことを見ていたのかは知らない。
「京君……」
ただ、照さんが悲しそうに俺の名前を小さく呟いていたのは聞こえた。
side咲-Saki-
私は宮永咲。清澄高校に通う平凡な文学少女……のはずだったんだけど、幼馴染の男の子……京ちゃんに麻雀部へ誘われてから、私の人生は大きく変わった。
こんな私が麻雀部のえ、エースとして活躍出来たのも、インターハイの舞台に来れたのも、仲間の力もあるけれど、京ちゃんの支えがあったからだ。
それなのに私は……京ちゃんの苦しみに気付いてあげられなかった。見も蓋もない噂、クラスからの追害……私は幼馴染失格だと思う。
懺悔が海のように大量に溢れてくる中、私はインターハイ会場のロビーにいた。現在は二回戦で永水、宮守、姫松の強豪の三校を下して一位で準決勝を突破して一旦解散となったから、ここにいる。
だけど……私の心には大きな穴がぽっかりと空いているような気持ちになっている。その理由を私は知っていた。
京ちゃん……須賀京太郎がいなくなったことだ。
会いたい……でも私には会う資格なんて無いのかもしれない、でも会いたい。でも場所が分からない。
そんな無限ループのような思いに苦しんでいた。そんな時……見つけてしまった。
「京ちゃ……お、お姉ちゃんっ!?」
あ、ああ。
何で?
何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で。
ナンデ?
そこには京ちゃんを抱き締めるお姉ちゃんの姿があったのでした。
私は訳が分からなくなった、ぐちゃぐちゃな思考を抱えながら無我夢中で、その場から逃げ出した。
side照
私はどうすればいいんだろう? 京君はきっと思い詰めてるんだ……自分が弱いと、周りに力を借りず自分で強くならないといけないと自分自身を追い込んでいるんだ……。私は京君を助けたいけど……わからない、わからないよぉ。
でも!
「……京君、私は君を助けたい!」
こうして私はあることの準備をするために動きだした、時間がない、私にも、京君にも……。
side淡
うぅ、今朝は酷い目に遭ったよぉ。テルーにロン(物理)されちゃって、頭がズキズキするし。ちなみに今私は外でテルーに頼まれごとされてるんだよ。それは京太郎を探すということ! なんでなんだろう?
あれ、おやおやあれは?
「もしかして京太郎?」
「……淡か」
ビンゴ! やっぱり私ったら高校100年生ね! それにしても、なんか京太郎元気ないなぁ。私は心配になりながら、京太郎に声を掛ける。
「ハロー! ハッピーうれぴーよろぴくねー?」
「はは……、おう元気だよ」
なんかさっきより元気になったけど空元気っぽいなぁ。むー、そうだ!
「ねぇねぇ!この近くにパスタやデザートが食べ放題のお店があるんだけどいかない?」
「いや俺は『グゥゥゥ!!!』………おっふ」
突然、京太郎のお腹から大きな音がなって、アイツは頬を赤くして変な声を上げた。ふふ、なんか京太郎らしくなってきたなー♪
「ぷっ! きょ、京太郎?」
「現金なお腹ですいません」
「なんで謝ってるのにドヤ顔すんの……」
京太郎は何故かキリッと顔を引き締めてドヤ顔を私に決めてきた。もう、なんか訳分からないよ!
「「……ぷっ!」」
「あはははは!!!!」
「あはははは!!!!」
なんだか、可笑しくなっちゃって、私と京太郎は周りを気にせずに大笑いしてしまった。うん、やっぱり京太郎は笑顔が一番だね! と思いつつ、これでテルーが連れてくるように言ってた店に案内すればミッションクリア! 報酬はデザート食べ放題と京太郎の笑顔!
よし、早速ご案内だ!
side京太郎
急に淡に連れ出され、店に連れてかれた京太郎です……。まぁ腹が空いてたのは事実だしな。さて、こうなったら、とことん食って腹ごしらえしてやるか!
カランカラン、鈴が鳴り響く中、俺と淡は中に入った。するとパン! といきなりクラッカーを鳴らしたみたいな大きな音が聞こえてきた。
「うわぁっ!?」
なんなんだぁ!? 今の音は? あれ千冬姉と照さん? あと、白糸台の菫さん、誠子さん、尭深さん…なんでこんなところにいるんだよ。
「はぁ……焦ってた私がバカみたいじゃないか」
「すいません、うちの照が急に呼び出してしまって」
「いや、大丈夫だ、そっちこそ京ちゃ……京太郎のために来てくれてありがとう菫君」
「いえ、まだ会って日は浅いが京太郎はもう私達の友ですので」
「おー、菫先輩、格好いいですね!」
「……菫先輩、ユニーク…」
「尭深、お前それキャラ違うからな…」
「…残念」
なんか菫さんに突っ込まれて、尭深さんが残念そうな表情してるし、何の会話してたんだよ……。
「京君!今日は難しい事は忘れて、たくさん食べよう?」
照さんはニコッと微笑みながら、俺の手を握った。あんな逃げ方したのに、……貴女は照さんは本当に……お人好し過ぎだ。
「……はい!」
ごめんな、今日俺はもう少し甘える事にした。照さんに、皆に甘えて難しいはことは、この瞬間だけ忘れることに決めた。
「さぁ! 食べよう食べよう!」
「はい!」
俺はどうなるのかはまだわからない、だが暗く生きるより明るく生きるほうが良いよな! 確かに俺は甘いかもしれない……だが俺は俺なりに病気と向き合ってやる! ……そうだろ? 心臓病! 俺は負けねぇぞ!
「モグモグ、美味いですね!」
「そうだね!ほらもっと食べよう?」
「はい! ……モグモグガツガツ」
こうして俺は食べて食べて食べまくった!
「ふぅ!食った食った」
「…………体重大丈夫かな」
「照……お前」
「な、ななな何!?菫!私は何も言ってないヨ!」
「照さんは綺麗だから大丈夫ですよ」
「き、京君!!」
菫さんの哀れみの視線に気付いた照さんは青ざめた表情から、恥ずかしそうな真っ赤な表情となる。とりあえずフォロー入れておくとしよう。
「むー」
「……京ちゃんはモテモテだな」
「あなたも好きなんじゃありませんか?千冬さん」
「む、何を言う菫君、わ、私は別に……」
「京太郎も大変だな……」
「……京太郎!」
遠くで菫さんと千冬姉が話しているのが気になるが、唐突に淡が俺に抱き付いてきたので、意識は淡に向くことになった。
「京君…」
「うわぁ、淡、照さん!」
な、なんてこった! おもちが両手におもちだぁぁぁぁ!!! 幸福だぁぁぁ!
とまぁ、トラブルもあったが、こうして辛さを忘れてられた楽しい1日は終わりを告げた……。
『今日から最後にカウントをつけます。
ハッピーエンド、バットエンドや様々な報告を行います。
二番を選んだ読者《プレイヤー》様の活躍により最悪バットフラグは見事回避しました。
この調子でハッピー目指して頑張りましょう!』
---照と淡の好感度はあがりました!
---千冬がサブヒロインに加わりました
---京太郎に病気克服フラグlevel1が立ちました!
---ハッピーエンドに一歩近づきました!
----咲に???フラグが立ちかけてます……。