咲-Saki-消えゆく京-   作:神狼K

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どうも、徹夜した神狼Kです!果たしてヒロインは?ではどうぞ!


第一章京の旅立ち
あなたに救いの手を…


「(あの人……どこかで見たような……?)」

 

「……あの」

 

俺が考えていると、あっちから声をかけてきた。

 

「はい、何ですか?」

 

「もしかして……京君?」

「えっ。……もしかして照さんですか?」

 

俺が驚きながら、思い浮かんだ幼なじみの姉の名前を言うと、彼女………宮永照さんはコクリと頷いた。

 

「うん………久しぶりだね」

 

照さんは何故か嬉しそうな笑顔で俺に話す。

 

「はい! 本当ですね……。咲とまだ仲直りしてないんですか?」

 

そう、咲がインターハイに出るきっかけになったのは照さんと仲違いになったから。そして咲は照さんと仲直りするためにインターハイを目指しているのだ。

 

俺は仲直り出来ているのか、とても心配していたため、聞いたんだ。

 

「……どうしてもまだ許せないの」

 

照さんは笑顔が一転して、表情が曇らせながら、俺から視線を逸らした。

 

「仲直りできるといいですね」

 

「…うん」

 

俺がそう言うと、照さんは少しだけ明るくなった気がした。

 

やっぱり、照さんや咲には太陽のように明るい笑顔が一番なんだよな。

 

『…………』

 

それにしても、なんか湿った空気になっちゃったな。せっかく照さんに会えたのに。

 

「あっ、そういえば照さん、全国出場おめでとうございます」

 

「あ、ありがとう京君…(わぁ// 京君凄くかっこよくなってるよぉ)」

 

俺がそう言うと、照さんは少し照れくさそうにお礼を言う。

 

はは、やっぱり照さんは照さんだな―――――

「………っ!?」

 

ドグンッ

 

―――突然、俺の心臓に激痛が走った。

 

「京君!?」

 

照さんが、何か言っているが、激痛に………、襲われた、俺に……は……聴力も、低下したようで、全く、聞こえない。

 

この痛み……、今までよりも一番激しい痛みだ。

 

「戻った……京ちゃん!」

タッタッタ

 

遠くから、誰かが走ってくる。多分、千冬姉なんだろうな。

 

「ぐぅっ!!!! はぁああぁぁぁ!!!」

 

「息がまともにできてない! ……病院に運ぶ、手伝って!」

 

「は、はい!」

 

そして俺はとうとう…

 

 

 

 

 

意識を

 

 

 

 

失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side照

 

 

 

 

 

私………宮永照は、幼なじみの京君と再会した。

 

久しぶりで、何を話せば良いのかも分からない中、京君は真っ先に私と咲の仲の事を心配してくれた……。

嬉しかった。

 

誰にも相談出来ずに、時間だけが過ぎていく時に、京君は『仲直り出来ると良いですね』って言ってくれた。

 

「点滴は?」

 

「準備出来ています」

 

「よし、さすがに手術は難しい!薬で落ち着かせなくちゃいけない」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

「京君……いったいどうしたの……? それになんで東京に?」

 

私は現在、色々医療器具で痛々しい姿になった京君を見つめながら混乱していた。

―――京君は長野にいたはずなんじゃないの?

 

―――なんでこんなに苦しんでいるの?

 

「京君……死なないで」

 

混乱する中、私はただ京君の無事を祈る事しか出来なかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一時間後…

 

「あの! 京君は……どうですか?」

 

私は京君を運んでくれた人に問いかける。

 

「一命はとりとめたけど……、いつまた発作が起こるか分からない危険な状態……」

 

「なら私がついてます!」

私が叫ぶように言うと、その人は若干驚いような表情になる。

 

「……貴女は京ちゃんの知り合いなの?」

 

彼女は怪訝そうにしながら、私に聞いてきた。

 

「そうです。……私は宮永照といいます!」

 

「……わかった、薬を今から作るからその間貴女が面倒を見てくれる?」

 

「わかりました」

 

私の目を彼女は見た後、私が京君の側にいる事を彼女を承諾してくれた。

 

「…お願い」

 

「はい!」

 

「京君……私がついてるからね…」

 

「――――」

 

私は京君の手を両手で握りながら、そう決心した。

 

 

 

 

 

side京太郎

 

 

 

 

「―――あれ? 俺は…………」

 

「……う……ん。きょう……くん」

 

俺が目を覚ますと、照さんが隣で寝ていた。看病してくれたのか……?

 

「…ありがとう照さん」

 

「ふ…にゅう//」

 

俺が照さんの頭を撫でると、照さんは気持ち良さそうにしていた。

 

「ん……。……っ! 京君!!」

 

「ファっ!?」

 

照さんは突然目を開けた後、俺に抱き付いてきた。

 

俺は驚きと気恥ずかしさから、ヘンテコでマヌケな声を上げてしまった。

 

「……よかったぁ。心配、したんだよ……? 目が覚めなかったら私……、私………ぐずっ」

 

照さんは涙を流して、俺に必死に不安な思いを明かした。

 

……照さんはなんでこんなに優しいんだろう……。今まであまり会ってなくて……、なのに……暖かいなぁ。

 

人に抱かれるなんて久しぶりだな。前までは咲とばっかりいて常に温もりを感じてたのに……。良い匂いだなぁ。

 

「照さん……っ!」

 

「京君……泣いてるの?」

照さんが言った通り、俺は泣いていた。涙腺が崩壊したように涙が止まらない。

「すいません……。俺は、ずっと、孤独だったんです」

 

「……」

 

照さんは黙って、俺の話を聞いている。

 

「最初の……、うちは、皆から麻雀を、たくさん、教えてもらえて……」

 

涙が溢れて言葉が途切れ途切れになりながら、俺は照さんに胸の内を明かした。

「でも! そのうち、買い出しや雑用ばかり、やらされて! ……存在意義がぁ、それをやり続ける事でしか示せないで!!」

 

今思えば心が弱っていたからこんなに話せただけなのかもしれない。だけど今は感情を爆発していて止まらない。止まれない。

 

「でもぉ! 俺が悪いんでず! 強くなれないがら! 弱いがら! 結果が出ぜないがらぁ!!!」

段々と自分の声の大きさがヒートアップしていくのがわかる……。だけど照さんは静かにそれを聞いてくれた。

 

俺は子供のように、泣きじゃくる。恥ずかしさは今の俺にはない。

 

「クラスの皆にも! 沢山文句や罵倒を受けて! 『お前なんかあの場所に相応しくない!!』『消えろ!!』だの『お前なんて役に立たない奴死ね』って言われてぇ!!」

 

「……っ!!」

 

いつの間にか、俺は照さんに抱き締められた。

 

まるで、俺を引き留めるように、消えそうな俺の心を包むような温かさが伝わる。

 

「それで……ぞれでぇ」

 

「……辛かったんだね」

 

照さん、泣きじゃくる俺に優しい声をかけてくれた。

「ずっと一人でどんなに辛くても皆のためにがんばったんだね……。京君は優しいよ」

 

「てる…さん」

 

俺は優しくなんかない。そんな言葉が今の俺には出なかった。

 

多分完全に心が疲弊しているせいだ。そうに違いない。

 

「でも……あまり一人で背負わないで? ……今京君には私がついてるから」

 

俺が……、悪いんだ。

 

「私は何があっても君についてるから。だから……」

「照さん!!!」

 

俺はとうとう、照さんを抱き締め返した。

 

 

 

 

side照

 

 

私は黙って、京君の頭を撫でている。

 

「(咲……私はずっと我慢してた。でも、もういいよね? 咲、あなたがわざわざ突き放したんだもんね? ……京君は渡さない。京君はもう傷つけない。だって……私が守るもの)

 

私はずっと自分に嘘をついてた。妹の咲が京君の事好きだと思ってたから。

 

…………でも咲、あなたは京君を傷つけた。……それがたとえ傷つける意思がなくても、結果的にあなたは傷つけつけた……っ!

 

「…照さん、ありがとう……」

 

「当然だよ、だって私はあなたの事が……」

 

私がそう言おうとした時、病室に一ヶ所ある扉が開いた。

 

「薬の調合が終わった……」

 

「千冬姉……、ありがとな」

 

「と、当然よ。可愛い愚弟が困ってるんだもの」

 

京君は千冬さんにお礼を言うと、千冬さんは照れくそうに、自身のスノウホワイトの髪の毛を撫でている。

「はは……、愚弟はひどいなぁ」

 

京君は心から笑っていた……。

 

「そういえば咲達元気かな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side咲-Saki-

 

一方清澄では……

 

「えっ?」

 

今、私こと宮永咲は困惑していた……。京ちゃんが学校をやめた……? なんで?

 

「そうよ。最初は私も、先生から聞いて驚いたけどね。……ま、というわけでこれからは五人で部活動ね」

「ちょ、ちょっと待つじぇ! なんで京太郎はやめてるんだじぇ! ……なんであたし達が合宿いってる時に……」

 

部長が締めくくろうとすると、優希ちゃんが食い下がるように部長に問い詰めた。

 

「……須賀君は、本当になんで……」

 

「…………」

 

優希ちゃんだけでなく、あの原村さんまで困惑していた……。

 

まこ先輩は思考が止まったかのように沈黙していた。

なんで? 私なにか悪い事した? 謝るから、京ちゃん戻ってきて、居なくならないで……っ!

 

「…とりあえず大会に向けて「待ってください!!」……なにかしら?」

 

「部長は心配じゃないですか!?」

 

「心配よ、だけど大会がそれ以上に心配なのよ」

 

私はあまりにも過ぎた部長の言い方に…

 

「……っ!!」

 

パシンッ!!!!

 

乾いた音が部室に響く。私は部長にビンタをした。

 

普段の私の腕力では考えられない程に、力の籠ったビンタだった。

 

「……」

 

「咲さん…」

 

「咲ちゃん…」

 

「あなたは!! ………あなたという人はぁ!!」

 

「咲! 落ち着くんじゃ!」

 

私は部長に掴み掛かろうとした時、まこ先輩が私を止めた。

 

「はなしてください!まこ先輩!」

 

「落ち着くんじゃ! ……久!」

 

私がまこ先輩に叫びながら、まこ先輩の顔を見ると……、まこ先輩も怒ったような顔をしていた。

 

その表情は入部当初の私なら分からないほど、感情をグッと抑えた表情だった。

「……今のは悪かったと思うわ。だけれど咲、もう少し今をみなさい」

 

「っ!」

 

「……私達の今目指しているのは、全国優勝よ。それを理解しなさい。………じゃあ今日は解散よ」

 

「…この人でなし!」

 

私は生きてきた中で、こんなにも怒りが湧いたのは、これが初めてかもしれない。

 

私は部室のドアを開けて出ていった。

 

 

 

 

 

side久

 

「この人でなし!」

 

「咲さん!」

 

「咲ちゃん!のどちゃん!待つじぇ!」

 

私……竹井久は、お怒りながら、出ていった咲を追いかける和と優希を見送りながら、無感情にそんな光景を見ていた。

 

「……久、おんしは本当に自分を悪役にして場を納めるのが得意じゃのう」

 

「あら? なんの事かしら私は本当に「そんくらいにしとけえよ…」……」

 

「たとえ学校を辞めようが、京太郎はわしの後輩じゃ。いくら久でも余りにもドが過ぎておるぞ………っ!」

 

まこは本気で怒ったような表情で私に怒号に近い声を浴びせる。

 

「………」

 

「少しは頭冷やしんしゃい……」

 

バタンッと、まこは強く扉を閉めた。

 

―――はぁ、私って本当に最低ね……。

 

まこが出ていった後、私は思考する。

 

私の夢はインターハイに出場する事。だから夢のためなら誰だって犠牲にできるわ。

 

それが部員でもね………。だけど須賀君は良い後輩であり、……私の麻雀部の誘いに唯一まともに応じてくれた男子……。

 

……彼の周りの評判は散々だったわ。

 

学校をやめた理由の噂だって、……周りの空気に耐えられなくなったとかヤクに手をだし逃亡したとか、雑用に嫌気がさした……。

 

どれもこれも在られもないない噂だけど、最後のはゾッとした……。

 

……須賀君、あなたの事は大事な後輩だと思ってる……。

 

だけど今は大会が大切なの、今この部活を壊すわけにはいかないの……。

 

だから、この大会が終わったら私は…………。

「あら……?」

 

私の頬に水が伝った。アマもれかしら?

 

さっきから目や頬に水が入って視界が歪む……。

 

「須賀君……っ!」

 

本当に私って勝手な女ね。

こんなにも胸が痛むなんて、……違う、これは雑用する男子を失ったくやしさよ。

ぜったい……そうにちがい、ない……わ……っ!

 

 

 

 

 

 

side京太郎

 

病院での翌朝。

 

「ふぁぁ……」

 

俺は目を覚ました。

 

気分は爽快だな。……今のところはだが。

 

「……起きた?」

 

「あ、おはよう千冬姉」

 

「うん、おはよう京ちゃん」

 

俺が隣を見ると、千冬姉がいた。

 

「今日は歩けそう?」

 

「大丈夫ですよ」

 

千冬姉の言葉に、俺はそう返した。

 

「そうか、じゃあとりあえず、朝食をとって照に知らせて、出掛けようか」

 

「……ふふ、楽しみにしてますよ」

 

千冬姉の言葉に、俺は小さく微笑みながら言う。

 

「とりあえず、食事は何が良い?」

 

「だったら千冬姉の作ったご飯がいいな」

 

「なっ/// ず、随分可愛い事いってくれるわね//」

 

「もしかして照れてる?」

俺が少しニヤニヤしながら言うと、千冬姉は更に顔を真っ赤にした。

 

「わかった! 調理するから、いってくる!」

 

「…あっ、行っちゃったな。……ん?」

 

少し弄り過ぎたかな。……っと、千冬姉とすれ違って、照さんが入ってきた。

 

「京君、もう起きてる?」

「はい! 大丈夫ですよ。照さん」

 

「ごめんね、急に来ちゃって」

 

俺が元気よく返事をした後、照さんは申し訳なさそうにしていた。

 

「いえ、嬉しいですよ。照さん」

 

俺がそう言うと、照さんは顔を少し紅く染めた……。

「そ、そう// あっ、そうだ、今日は何か予定ある?」

 

「えっとその事なんですけど、照さんは空いてます?」

 

「う、うん空いてるけど」

俺の言葉に、照さんは期待の眼差しを向けてくる。

 

「じゃあ一緒に出掛けませんか? 千冬姉も一緒だけど……ダメですか?」

 

俺は上目遣いで不安な眼差しになりながら照さんに聞いた。

 

「いいよ!! 全然いいよ!」

 

「そうですか!よかった」

断られないでよかったぁ。ホッとする俺だったが一つ疑問があった。

 

「でも照さん、大会は大丈夫なんですか?」

 

照さんにそうきく。

 

「え? うん、大丈夫だよ。京君は心配しないで。私達はシードだから2日あたりは心配ないよ」

 

「そうですか!」

 

俺が一安心していると、病室の扉が開いた。

 

「ご飯できた……。あれ、来たんだ照」

 

「はい、それは……」

 

「私お手製のご飯だよ」

 

照さんと千冬姉はめっちゃ仲良くなっていた。

 

「なるほど……(……一歩リードされた……)」

 

「じゃあ京ちゃん、どうぞ」

 

「じゃあ、いただきます!」

 

俺が手を合わせて、箸でご飯を食べる。

「モグモグ……。ん! 美味いよ! さすが千冬姉!」

 

「そ、そう?ならよかった」

 

千冬姉は嬉しそうに微笑んだ。微笑んだ千冬姉は女神のようだった。白衣も羽織ってるし、スノウホワイトの髪の毛が合わさって、さしずめ雪の女神だなぁ。

 

「ん? どうしたの?(なんだか視線が熱い//)」

 

「い、いえいえ、なんでもありませんよ!」

 

俺はハッとなり、すぐに視線を逸らした。

 

「京君……」

 

「て、照さん?」

 

照がプクーッと頬を膨らませて、『私怒ってますよ?』みたいなアピールをしている。

 

ヤバい……照さんの膨れ面が可愛いよぉぉぉ!!

 

 

 

 

 

なんやかんやで食事はおわった。このあとはいよいよ出かけるのか……楽しみだなぁ!

 

 

 

 

 

外……。

 

「えっ?ラウンド〇ンですか?」

 

「そうよ、ラウンドワ〇よ」

 

「というか! 隠せてませんよ!」

 

「なにが?」

 

「と、とりあえずいってみる事にした。……というか美少女と美女に挟まれてるなんて役得だなぁ」

 

「ふぇ? 美少女!?///」

「ふ、ふむ美女か///」

 

照さんと千冬姉が顔を真っ赤にしていた。

 

「えっ!もしかして……」

「口に出てたよ」

 

「は、恥ずかしい! ふ、不幸だぁぁぁぁ!!!」

 

どこかのそげぶさんの口癖を叫んだ。

 

ラウンド〇ン

 

「お客様は大人一人学生二名でよろしいですか?」

 

「うむ」

 

「合計で3000円になります」

 

「はい」

 

「ではいってらっしゃいませ」

 

千冬姉がすべて支払いをしてくれた。

 

「うーん、まずはどうします?」

 

ゲートを越えた後、俺は何をしようかと迷う。

 

「えっと、まずはゲームとか?」

 

「えっと、じゃあまず太鼓の〇人で」

 

「うん」

 

ゲームプレイ中…

 

『6億コンボ達成だどん!』

 

「」

 

「ふぅ、太鼓の〇人って楽しいね!」

 

俺は咲が地区予選で言っていた事を言ってみた。

 

「つ、強すぎる」

 

照さんはすごくヘコんだ様子だ。

 

少し心配だが、多分大丈夫だろう。

 

「さて次はどうする?」

 

「ローラースケートはどうですか?」

 

「……っ」

 

「どうした照?」

 

「もしかして照さん…」

 

照さんの動揺に、千冬姉は心当たりがないみたいだが、俺には分かるぜ。

 

「ふぇぇ、ごめんなさいぃ。スケートできないよぉ」

……やっぱり照さんは照さんだな。どんなに麻雀が強くても、一人の少しポンコツな女の子だ。

 

「……教えてあげますから元気出して……ね?」

 

涙を潤ませる照さんに、俺はそう優しく呼び掛ける。

「うん!ありがとう京君!」

 

「ふむ、なら行くか」

 

『はい』

 

千冬姉の言葉に、俺と照さんは同時に返事をした。

 

というわけで

 

「えっとまずはこうして……」

「ふぁあ!?」

 

俺が一瞬だけ手を離した瞬間に、照さんは盛大に転んだ。

 

「い、痛いよぉ」

 

「だ、大丈夫ですか? はい、立ってください」

 

とりあえず頭を擦り、手を取り、立たせる。

 

うーん、これは咲並のボンコツぶりだぞ、さすが姉妹。

 

……しかし

 

 

 

 

 

十分後

 

「できたー!」

 

そこには元気に滑り回る照さんの姿が……っ!

 

「まさかコツを掴んだら……マジか!? ってぐらい早く上達するとは……」

 

「なかなか侮れないな宮永の血は……」

 

俺と千冬姉は感心、はたまた諦めにも近いような声音で呟いた。

 

「京君!褒めて褒めて!」

「はいはい、良くできましたね!」

 

「ふわぁ…///」

 

俺はカピバラのカピーで鍛えた撫で術(?)を惜しみ無く使うと、照さんは気持ち良さそうにしていた。

 

「そ、そんなにイイものなのか?」

 

「ふぁい//」

 

照さんは呂律が回らない状態で千冬姉の言葉に頷いた。

 

「京ちゃん。わ、私にも……して//」

 

「良いよ」

 

「……ッ……ッッ!!」

 

「気持ちいいか?」

 

「あ、ああ……。夢見心地だったよ……正直侮っていたよ//」

 

「そ、そうですか」

 

こうしてたくさんハメをはずせた。

 

 

 

 

 

そして帰り道……

 

「今日は楽しかった」

 

「うん、そうだね京君」

 

「また来れるといいな…」

「……はい!」

 

俺は病気に勝つ! 最初はネガティブだったけど今は違う。掴むんだ明日を! ……しかし

 

「ぐぅっ!!!!」

 

ドグン!

 

病気は非情にもそんな俺を侵食していく……。

 

「京君!!」

 

「ぐぅっ!……はぁはぁ」

「おさまった……?」

 

「大丈夫!?京君!」

 

「な、なんとか」

 

「どういう事?……あの細胞と………ブツブツ」

 

「ち、千冬さん?」

 

「えっとああなった千冬姉は止まらないんですよねぇ」

 

「そうなんだ……」

 

----俺は生き抜けるのかなぁ。

 

いきなり不安になる俺だった。

 

 

 

 

ホテル……

 

「千冬姉病院じゃないの?」

 

「さすがに病院の薬臭い環境ばかりではダメだろう。病院に近いこのホテルに泊まろう、金は心配無用だ」

「ありがとう千冬姉…」

 

俺は千冬さんの言葉に、少し感動しながら言う。

 

「とりあえず移動しよう」

俺達が移動する中……

 

「ん?あれ?照さん?」

 

「あっ!京君?」

 

「………」

 

なぜか照さんと同じホテルだった。そして照さんの隣にいる美少女はいったい?

 


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