SAO 〜しかしあいつは男だ〜   作:置物

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3500字行きたかったですがもしかしたら次回にネタを回すかもと思い少し短くな(ry


extra1 ヒースクリフ「薬は友達」

私は夢見てたんだ。

あらゆる枠や法則を超越した世界を作り出す事を。

そして想像してたんだ、空に浮かぶ鉄の城を、ありとあらゆるフィールドを、そこで様々な生活をする人々を、そして自分自身を…。

いつからその夢を持っていたか分からなくなるくらい、私は長い間その夢を実現する為に尽力した。

βテストを経て遂に、私はソードアート・オンラインを、己の夢を実現する(創り出す)ことが出来た。

広がる草原、点在する町々、跋扈するモンスター、聳え立つ迷宮…私が長い間夢見てた景色そのものがそこにはあった。

しかし私にとって、プレイヤー達にとってこの世界(ソードアート・オンライン)が現実世界になって三日、彼等は私が想像していた感じとは違った。

私が想像していたのはーーー

 

 

「もう嫌ぁ!!家に帰りたい!!」

「明日大事な会議があるんだぞ!?」

「ざけんなよ!?なんなんだよ!?これ一体なんの冗談だよ!?」

「どうして…ただ私はゲームをしていただけなのに…」

 

 

といった阿鼻叫喚の図だったのだが、実際はーーー

 

 

「え?帰らなくていいの?あざーす!」

「こんなテロみたいなのにあえば会社行けなくても仕方ないよな!」

「ふっ、死ななければいい話だろ?」

「フヒヒ、現実世界じゃ既に社会的に死んでいるようなものなので関係ないですな」

 

 

混乱が起こるどころか草原を駆け巡り、モンスターを狩り尽くし、クエストを熟し、酒場でその日あった事を話し合うといったように現状を楽しんでいた。いや、ある意味想像に近いのだがその逞し過ぎる精神と行動力に何か違うと頭を抱えた。

まぁいい、もう暫らくすればこの恐怖が分かってくるだろうと思っていた時期も私にはあった。プレイヤー達は私の予想を反し、着々とフィールドを、ダンジョンを、迷宮区をギルドも組まず攻略していった。それも一人も死亡者を出さずに短期間に。無駄にプレイヤー達が高スペックで頭痛がした。

しかし九層までほぼノンストップと言っていい程の速さでクリアしたことが仇となったのか、十層の迷宮区ボスで死亡者は出なかったものの、想像以上の強さに手こずりーーー

 

 

「やべ、安全マージン取るの忘れてた」

「これデスゲームなのを忘れて死ぬとこだった」

「ふん、今回の所は見逃してやろう」

「フヒヒ、武器防具最強にするしかないですな」

 

 

と攻略速度が大幅に減速した。それもそうだろう。何故なら区切りとも言える十層ボスは対ギルドを想定した今までのボスより広範囲な攻撃パターンを持ち、更に取り巻き達もこれまでの取り巻きより一段と強くなっているのだから。役割分担やギルドも組まずに挑む事自体間違っているのだ。

なのに不思議な事に、そのようなことがあったにも関わらず、誰もギルドを設立しようとせず、数人単位で十層ボスに何回も挑む。

まさかギルドの設立の仕方が分からないのか?と思ったがいや、そんな筈がないと一瞬で否定した。彼等は一層一層のクエストを余す事なくクリアしているのだからギルド設立のクエストの存在も知っている筈だ。

しかし十層のボス部屋発見から二週間と三日、誰もギルドを設立せず、先の攻略速度が嘘のように攻略も進まない事に焦れったく思った私は十層の攻略の為だけに血盟騎士団を設立、街で団員を募集。募ったギルドメンバー計二十六名で見事十層ボスを攻略してみせた。

永らく(当時の一層毎の攻略速度は最長で十日だった)硬直状態が進んでいたからか人々は私を最強の騎士だと崇め、敬い、団員になりたいと参加希望してきたが私は全てを一度拒否した。ゲームの制作に携わったなら誰でもあの程度クリア出来るだろうからだ。だからこそ私は一層限りのギルドとして解散しようと思ったのだが、団員達の熱意に押され、結果一層限りのギルドにならず、今現在もトップギルドとして名を馳せることになる。そしてつられて多くの者達がギルドを設立していった。何故今になってギルドを設立したか、あるギルドの団長曰くーーー

 

 

「だってよぉ、ギルド設立しようぜ!俺団長な!とか言い辛いだろ?誰かがギルド設立したら流れに乗ろうと思ったけどよ、誰も設立しねぇし。よぉは切り出すタイミングがなかったんだよ」

 

 

余りの下らなさに胃が収縮するような感覚に襲われた。飲む薬の種類が増えた。

その後、ギルドを解散しなかった私は前線には出来る限り出ないようにしようと、団員の中で最もリーダーシップに優れ、腕も全プレイヤーの上位に位置すると思われたアスナという少女に副団長を任命した。

当時私を含めた五十五人のギルドメンバーはアスナ君の素晴らしい働きに期待した。そしてアスナ君もその期待に応えるべく前線でその指揮能力と戦闘力を遺憾無く発揮し迷宮区を攻略していった。

しかしいつからだろうか。彼女が攻略を怠り何処かへフラフラといなくなってしまうようになったのは。

流石にボス攻略の時にいなくなるようなことはなかったが、迷宮区マッピングの時にはいつの間にか居なくなることが多くなってきたのだ。

気になった私は真面目なクラディールにアスナ君を尾行させた所、アスナ君は黒の剣士で有名なキリト君をストーカーしていたらしい。目眩がした。飲む薬の種類が増えた。

アスナ君に話を聞いた所ーーー

 

 

「一目惚れです!あ、でもこの間低層ギルドのお手伝いもしてて優しい所もあるんだなぁって見てて思いました。あと彼ったら凄いんですよ!隠蔽スキル使って200mぐらい離れた草陰から見てたのにキッ!ってわたしを見たんですよ!流石キリト君!もしかしたらプレイヤーの中で一番強いんじゃないでしょうか?はっ!?血盟騎士団に入団させれば攻略速度が早くなり尚且つキリト君と長い間一緒にいれて一石二鳥!?団長!今からわたしキリト君に入団催促して来ます!」

 

 

失礼します!とアスナ君は窓から飛び降りていった後、私は自然と薬に手を伸ばしていた。

 

 

「失礼します。こちらにアスナ様は居られますか?」

 

 

アスナ君が出て三秒後、クラディールが厳粛な顔つきで入室してきた。

 

 

「今さっき窓から出て行ったが、どうした?」

「アスナ様が遂に書類に手を付けなくなりました」

 

 

その日の内に頭痛薬と胃腸薬が空になった。

彼女の仕事は攻略メインの為、書類仕事は他の者に比べて少ないのだがそれすらしなくなるとは…。

一体どうすれば真面目に仕事に取り組んでくれるか…と考え目の前のクラディールが目に入る。

そうだ、真面目な彼にアスナ君の補佐をやってもらえばよいのだ。

 

 

「クラディール、君に頼みがある」

「はっ、何でしょうか?」

「君を本日より副団長補佐の職に付けたいと思う」

「一体どのような事をすれば?」

「なに、アスナ君の行動抑止と仕事を手伝うだけの仕事だよ。その分君には優遇措置を取る」

「はっ!不肖私クラディール、その任ありがたく就かせていただきます」

 

 

きっちりと礼をした後、クラディールは執務室から出て行った。アスナ君にクラディール並の真面目さまでは言わないが、もう少し自制してくれれば…。




ヒースクリフ【苦労人(レベル1)】から【苦労人(レベル3)】まで駆け足で上がった話でした
もしヒースクリフをメインにした話がまたあったら次は薬は心友になると思われ

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