SAO 〜しかしあいつは男だ〜   作:置物

33 / 33
タイトル通りコノハは出てきません
あれ?主人公だよね?

今回難産というかもう大変でした


episode21 コノハ「出番がない件」

このゲームって落下して何処とも分からない場所から始まるのか?と下半身が地面に埋まった状態で思った。

9つある種族の中から全身黒装備が初期装備のスプリガンと呼ばれる種族を選択し、スプリガンのホームタウンと思われる街に向かって落下していたのだが、激しいノイズが視界を遮ったかと思うと今の状態に至る。

よいしょ、と腕の力で地面から下半身を引き抜き、ズボンの砂を叩いて落とし、周りを確認する。

数多の木が天に伸びる森の中に俺は落ちてきたようだ。真上を見上げると暗い空に満月と星が煌いている。

現在地と所持アイテムを確認すべく右手を上げ、人差し指と中指を揃えて下に下げるが、メニューは開かれない。まさかさっきのあれはバグか!?と焦ったがキャラメイキングの時にメニューの開き方はSAOの時とは違い、左手ですると言ってたっけと思い出し、左手で同じ動作をすると、今度は軽快な電子音と共に見慣れた半透明のウィンドウが開かれた。

SAOの時とは細部が違うが似たようなメニューをタッチしていくが、マップらしき物は存在しなかった。代わりにログアウトボタンはあったので一応安心した。

続いて自身のステータスを確認するが、ここでおかしな事に気付く。

名前と種族の下には初期値と思える程の低さのHPとMPが書かれていたのだが、その下に書かれている習得スキルの数がおかしかった。

まだスキル設定をしてないことから何もないと思われていたそこには10を超えるだろうスキルの名前がずらりと並んでいたのだ。

《片手剣》《体術》《武器防御》と言った戦闘系スキル、《釣り》《料理》《裁縫》と言った生活系スキルと種類は豊富でどっちに傾けてるんだよと言われてもおかしくない一貫性のないスキルの選び方だ。

開始直後の画面のノイズ、始まる場所が違う事、なにもないはずのスキル欄に多くあるスキル…。

 

 

「初めからゲームマスターの厄介になるのは勘弁してくれよ…」

 

 

そう愚痴りながら適当にスキル欄をタップして長い時間をかけて上げていくはずなのにちらほらとカンストもある習熟度を確認していると、ふと、既視感のような物を感じた。

いや、既視感を感じるのも当然だった。何故なら、それらはSAOで長い年月をかけてあげてきたスキルと全く同じだったからだ。

 

 

「一体どうなってるんだ?」

 

 

もしかしてここはSAOなのか?ALOのソフトでSAOに来れるのか?いやそれならエギルが何かしら言うはずだ。

様々な憶測に頭を捻るが答えなんて思い浮かぶ訳もなく、現状を把握してから整理しようとまだ開いていないアイテム欄を開く。

しかしアイテム欄が開かれたと同時に目に飛び込んで来たのは数字やアルファベット、記号などがランダムに書かれた、所謂文字化けの羅列だった。

スキル同様、アイテムもSAOから引き継いだのだろうかと新たな発見に適当な考察を付け、とりあえずこういうのは危ないと判断し捨てていく。もしかしたらこれがあの時苦労して手に入れた武器だったりレアドロップだったりする可能性もあるが下手に抱えてバグに巻き込まれるのも勘弁して欲しいし、優先度はコノハが上だと割り切る。

そして一つ一つを処理していくと、最後のアイテムだけは文字化けと思えない文字が書かれていた。

普段なら迷わず捨てる所だったが、何故だかそれだけは捨ててはいけないという直感が働いた俺はそのアイテム、『yui-smsya』をオブジェクト化した。

手のひらに現れたのは水色の結晶だった。月の光を受けて光るそれを見てこの世界の回復結晶か何かか?と指先でつつくとその行動がキーであったかのように結晶は輝き出し、その輝きを増しながら2メートルもの高さまで浮いた。

やばい!やってしまったか!?と思っているとガラスが砕けるような音を鳴らした後、ゆっくりとその光は地面に降りる。

光が収まり、そこに立っていたのは黒い長髪に白いワンピースの出で立ちをした少女だった。

少女は閉じていた瞼をゆっくり開き、満開のヒマワリのような眩しい笑顔を見せる。

 

 

「お久しぶりです、キリトパパ!」

 

 

少女、ユイは俺にタックル気味に飛びつき腰に抱きつく。

突然の再会に唖然としていた所にタックルで踏ん張りが利かず、地面に尻餅をつく。

 

 

「元気そうでよかったよ、ユイ」

「はい!キリトパパも元気そうでなによりです!あれ?ここどこですか?あと少しだけキリトパパの見た目が違うような?」

「それはだな」

「それにコノハパパはどこですか?」

「そこらへんの事情も話すよ」

 

 

俺はアインクラッドをクリアしたこと、現実世界に帰ったがコノハが起きないこと、この世界でコノハらしき人物がいることを話した。

ユイは目を閉じてそれらを黙って聞き、俺が喋り終えると「なるほど」と目を開く。

 

「けどどうしてユイは俺のアイテム欄にいたんだ?一部スキルがソードアート・オンラインの時のままあるし」

「キリトパパの話を聞きながらこの世界について調べたのですが、この世界は《ソードアート・オンライン》サーバーのコピーだと思われます。なのでソードアート・オンラインで所持していたアイテムやスキルもあっても不思議ではありません。私がキリトパパのアイテム欄にいたのはキリトパパとコノハパパの愛の力です!」

「なるほど」

 

 

つまりSAO事件でアーガスが解体後、アーガスの技術を吸収したレクトがその技術をそのまま流用し新しくVRMMOゲームを作った。しかもそれを元に新たに作ったのではなく丸ごとコピーし、それを土台に作り上げたのだろう。そして俺のスキルの習熟度やアイテムが引き継がれていた事からセーブデータのフォーマットなる物も同じだろうと推測出来る。

いまだに帰還しないSAOプレイヤー、コノハに似たキャラ、SAOをコピーした世界。益々きな臭くなってきたな。

 

 

「そういえばユイはこの世界ではどういう立ち位置なんだ?前みたいに管理者権限みたいなのはあるのか?」

「この世界だとプレイヤーをサポートする擬似人格プログラム、《ナビゲーション・ピクシー》と呼ばれるものに分類されるようです」

 

 

パッとユイの体を眩しい光が包み、光が消えるとユイはちょこんと手に乗るほどのサイズになっていた。

 

 

「管理者権限は剥奪されてるみたいで、コノハパパの居場所が分かりません。ごめんなさい…」

「いや、場所は分かってるからそこに案内してくれればいいよ。あ、後飛び方とか教えてくれたら嬉しいな」

「はい!任せてください!…あっ」

「どうした?」

「こちらにプレイヤーが向かってきてますね。数は8、6人が2人を追いかけているようです」

「お、戦闘中かな?この世界の戦い方見てみたいし行ってみようぜ」

「流石キリトパパです!なら向かいながら飛び方を教えますね」

「頼んだ」

 

 

 

 

 

 

 

リーファは木が乱立する森をウネウネと撹乱するように飛び、背後に飛ぶクラスメイトさえいなければと舌打ちをした。

いつものようにサラマンダー領にちょっかいをかけに行こうとシルフ領にある宿屋から出る時、タイミング悪くクラスメイトに捕まり、「僕も連れて行ってよ!」としつこく付き纏われ、折れてしまったのが彼女の運の尽きだった。

サラマンダー領である程度暴れ、誰かに気付かれる前に帰ろうとした時、クラスメイトが罠を踏み、近くにいたサラマンダー近衛兵に居場所を教えてしまったのだ。来る時にあれだけ口が酸っぱくなるほど言ったにも関わらずだ。

最初のうちはよかった。主に接近戦を仕掛けてくる戦士しかいなかったから。しかし少しして、魔法を主体とする魔法使いの集団が現れ状況は一変、前線を崩せなくなったリーファは分が悪いと悟りクラスメイトの首根っこを掴み、サラマンダー領から離脱した。

何度と暴れてきたリーファをサラマンダーは見逃す訳もなく、追っ手に戦士3、魔法使い3という2人に対して破格の戦力で追いかけてきた。破格と言ったが、正直リーファに対してその人数は少ない。現に今もリーファは逃げ切れないにせよ、追いつかれず倒されないのだから。

しかしその鬼ごっこももうすぐ終わりを迎えようとしていた。

 

 

「(羽の色的にあと一分くらい…一度地に降りないといけないわね)レンコン、一回地面に降りて隠行魔法で隠れるわよ」

「だからレコンだって!」

 

 

スピードを落とし、地面に近づき、靴底を滑らせながら制動をかけ、近くにある膝あたりまで伸びた草むらに飛び込み隠行魔法を唱える。

風がリーファの全身を覆う。これでリーファの姿は味方であるレコン以外には見えないが、高度の索敵スキル、もしくは看破魔法を使われたらその限りではない。

やがてサラマンダーが次々と近くに降り立つ。

 

 

「ちっ、どこ行きやがったあの辻斬り野郎!」

「いや女郎じゃね?」

「そんなのどっちでもいいんだよ!」

「もしかしてここら辺で隠行魔法使ったんじゃないか?」

「なら看破魔法を使おう」

 

 

そのままどっか行ってよ、とリーファは地面に伏しながら悪態を吐くが、そんな事彼等が知る訳もなく、魔法使いの1人が看破魔法を唱える。

魔法使いの杖から現れた轟々と燃える炎は、上空に上がって爆発し、落ちた幾多の火の粉は赤い鱗を持ったトカゲのような生き物になった。隠行中のプレイヤー、もしくはモンスターと接触すると爆発して場所を伝えるサラマンダーの看破魔法である。

トカゲの進行方向はランダムだ。あっちに行ったりこっちに行ったりしてリーファの方向には奇跡的に一匹も来なかった。が、代わりにレコンが隠れる太樹の後ろに数匹向かっているのが見えた。

やがてレコンを覆う風に触れ、トカゲは大きく鳴き爆発した。

 

 

「いたぞ!」

「あ?こいつ付き添いじゃねぇか」

 

 

そう言ってサラマンダー達は「ひっ!」と震えるレコンを囲む。この時のレコンの位置はサラマンダー達がリーファに背に向けるようになる位置だった。

リーファは殺れると判断し、草むらから音もなく立ち上がり、腰にぶら下がる愛剣を抜き、音を立てないよう慎重に、しかし素早い動きでサラマンダーに迫った。

が、視界をサラマンダー達に狭め、足元への注意を疎かになってしまい、まだ索敵している看破魔法のトカゲが木の陰から出てきたことに気づかなかったリーファは、それに触れてしまった。

トカゲが隠行魔法を解いてなかったリーファの存在を鳴き声と爆発する事で知らせ、サラマンダー達が後ろを振り返る。

リーファは構わず前進、厄介な魔法使いに狙いを定め、額に向かって突きを放つ。

防御に阻まれないその突きは綺麗に魔法使いの額に突き刺さり、人体急所補正、スピード補正などのボーナスによる大ダメージから魔法使いは一撃でポリゴン片になった。

隣に立っていた魔法使いも突き出した剣を横に振るい、首を二度斬り、前の魔法使いと同じ結末を迎えさせる。この間僅か二秒。

しかし二秒もあれば再起動するには十分だ。

最初に落ちた魔法使いの右隣に立っていた男がブォンと斧を振るう。背後から迫るそれをしゃがむことで回避するが、同時に炎がリーファの視界を覆った。

最後の魔法使いからの攻撃を受けたリーファは炎に包まれる。炎の厄介な所は消えない限り続く継続ダメージだ。リーファはそれを消すべくバックステップで距離を取り、地面を転がって炎を消し、すぐに立ち上がり状況を確認する。

 

 

「(今の一回で魔法使いを2人殺れたのはでかいけど、状況が悪いのは変わらないわね)」

 

 

相手は4人、リーファはレコンを含め2人。しかしレコンはいつの間にか両腕を切り落とされ、剣を持てないようにされている。しかもレコンは魔法を唱えるのが苦手だ。短い低級魔法でも唱えきるのに五秒もかかるレベルな為もう戦力としては数えられないだろう。

HPはまだあるもMPは残り僅か、飛行も出来るまでまだ時間がかかる。

この圧倒的戦力差の前にリーファはギリッ、と歯を食い縛る。

逃げるにもこの人数差ではすぐに囲まれる。挑むのも以ての外。

どうする?と彼女は頭の中で様々な事を考える。

しかしその中に投降するや挑んで負けるなどの選択肢はない。何故なら、彼女はこの世界の住人を、この世界を愛する人を倒す事でこの世界を否定し、ストレスを発散しているのだ。

例え多対一という不利な場面であろうとも、負けてしまったら…。

 

 

「おわぁぁ!?」

 

 

恐怖に身を震わせそうになった時、それはリーファとサラマンダー達の間に落ちてきた。




前回忘れた一言キャラ設定

直葉【お兄ちゃん娘】
ヤンデレではないのかって?いいえ重度のお兄ちゃん娘なのです(

原作とは違い追ってくるサラマンダー達の人数が多いのはやはり被害を多く出した他種族でしかも名のあるリーファちゃんだからね、仕方ないね
けどリーファを殺りたかったらその三倍は持ってこい(AUO並の感想

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。