A.中身が薄いからですすみません
ほんとならキリトALOでリーファと出会うとこまでしたかったがそれ込みにしたら凄い文字数になりそうと一回カット
誰だよ次回ALO編入るみたいなこと言ってたの!(
玄関に綺麗に揃えて置いてある靴を見て嫌な汗が額から顎にかけて流れ、抑えようとしている激しい息と動悸が誰かに操られているように早まる。
行く時にはなかった少し汚れた運動靴。それがあるということはつまり、あれが部活を終えて学校から帰ってきてるということだ。
だが、玄関のドアを開ける時に直感で嫌な気がして音を立てずに開けたのはファインプレーだ俺。このまま音を立てずに静かに二階の部屋に行って鍵を閉めれば
「おかえり、お兄ちゃん」
靴を脱ぎ、階段の一歩目を踏み出した時にその声はリビングの方向から聞こえた。
錆びついたブリキのおもちゃのようにギギギ…と顔を向けると、そこには俺の妹、直葉がまだ帰ってきてからそんなに経っていなかったのか制服姿のままで立っていた。笑顔でこちらに歩いてきたが、その目にハイライトはない。
目の前まで来たスグはひしっと俺を抱き締める。体中にぞわっと鳥肌が立ち、足が震える。
「今日は何処に行ってたの?お兄ちゃん」
「あ、あぁ、知り合いの所だよ。気になる事があってな」
「そうなんだ。あ、今から暇かな?」
「あ、いや、ちょっとゲームしたいんだけど」
「ゲーム…?」
ただでさえ怖い雰囲気を纏っていたスグがもはや殺気ではと思える凄みを発する。やばい、これは非常にやばい。胃がキリキリする。
「まさかVRMMOとかじゃないよね…?」
「ま、まままさか!ただの携帯ゲームだ!」
「ならあたしもしたい」
「ごめん、これ一人用なんだ」
「横から眺めてる」
「多分詰まらないぞ?」
「お兄ちゃんがしてるから詰まらなくないよ」
「一人でしたいんだ」
「なんで…?あたしに見せれない物でもするの…?最近お兄ちゃん誰かのお見舞いばかりであたしと余り一緒にいないよね?あたしの事嫌いになったの?」
「そういうのじゃないけど、わかった。一緒にいるから一回離れてくれ」
「わかった」
スグが体から離れた瞬間、俺は階段を駆け上がる。
階段のすぐ横にある自室に入って鍵を閉めた数瞬後、ドンドンと扉が揺れる。虚を突いた筈なのにすぐ追いつくとは。
「お兄ちゃん?ねぇお兄ちゃん?嘘ついたの?あたしと一緒にいてくれるんじゃないの?ねぇ、なんで?」
「悪いスグ!夕飯時には帰るから!」
俺はソフトをパソコンに挿入し、ナーヴギアを被ってスグから逃げるように「リンクスタート!」と現実から仮想世界に身を投じた。
「お兄ちゃん?お兄ちゃん?」
何度呼びかけてもお兄ちゃんからの返事はない。十中八九、あの忌々しいゲーム機を被って意識をシャットアウトしたのだろう。
あたしは扉を叩くのを止め、隣の自室に入る。
ベッドと勉強机だけという閑散とした部屋だけど、隣にはお兄ちゃんがいると思うだけで寂しいとも思わなかった。
けどそのお兄ちゃんも茅場晶彦が起こしたSAO事件に巻き込まれて仮想世界に囚われ、病院に入院し、隣の部屋は二年も過ごす人のいない空室と化した。その間あたしは不安と寂しさを感じながら過ごした。
あたしは大好きなお兄ちゃんを奪った、お兄ちゃんが大好きなVRMMOが憎い。長い年月あたしからお兄ちゃんを奪ったそれが憎くて堪まらない。
でも、少し気になった。お兄ちゃんが没頭するほどに好きなそれが。少しでもお兄ちゃんを知りたいが為に知りたくなった。
余り仲良くないがゲームに詳しいとよく聞くクラスメイトにオススメのゲームがないか聞いたらアルヴヘイム・オンラインを勧められた。
なんでも、レベル制ではなくスキル制なので時間のない学生でも身体能力とセンスさえあればプレイできるらしい。
勧められたその日に今までお兄ちゃんとお母さんの誕生日プレゼントを買う時くらいしか使わなかった貯金でゲーム機のアミュスフィアとソフトを買い、仮想世界に飛び込んだ。
現実と遜色ない世界に驚きはしたものの、やはりそれまでで楽しいという気持ちよりお兄ちゃんを奪ったことに対する憎さのほうが上回っていた。
あたしはストレス発散の意味も込めて別勢力のプレイヤーをキルした。このゲームは元々そういうものだと聞いてたし文句は言わせない。
剣と剣の激しいぶつかり合い、空を飛ぶ感覚、相手が四散して出来たポリゴンが消えていく様、これらは私が思う以上に私のストレス軽減に大きく貢献した。
その理由は、この世界にいる
その日から、お兄ちゃんと面会出来ない夜は宿題を終わらせた後、アミュスフィアを被り妖精の世界にストレス発散の為に潜った。
来る日も来る日も、剣を振り、魔法を唱え、敵を屠った。そしていつの間にかあたしは『疾風のリーファ』と同勢力には敬意を、他勢力には畏怖を込めて呼ばれるようになっていた。クラスメイトは二つ名が付くなんて凄いよ!と言っていたがそんなの本当にどうでもよかった。
そんなどうでもいいことから暫く後の事。お兄ちゃんを含めた四人のSAOプレイヤーがいる病室、いつものようにベッドの横に備え付けられた椅子に座り、面会時間が終わるギリギリまでいるつもりでお兄ちゃんを見ていたら向かいのベッドから呻き声が聞こえた。
振り返ると向かいのベッドで寝ている無精髭が目立つ男が目を覚ましていたのだ。そしてその後、その隣のベッドで寝る浅黒い肌の男が、次はお兄ちゃんの隣のベッドの青年が、と次々に目覚めていく。
最初の人から一分と経たずに、お兄ちゃん以外の病室のプレイヤー達全員が目を覚ました。
その事をどこから知ったのか、病室に医者二人が慌てて来て、一人が面会中のあたしを追い出そうとした。
あたしはお兄ちゃんがもうすぐで起きるかもしれないと言うが、医者は私の言い分なんて聞きもせず、私を病室から追い出した。
起きるかもしれないという喜びは、今日はもう面会出来ないというショックとぶつかり合い、あたしは心ここに在らずといった幽鬼のように外に出た。病院の入り口でどこにそんな力があるのと思えるくらい細くなった肢体を点滴で支える栗色の髪の女の人とすれ違った。
そして次の日、あたしはお母さんには内緒で学校を休んでお兄ちゃんの病院に向かった。病室に入ると、リクライニングベッドを起こして上半身を起こしていたお兄ちゃんが「ただいま、スグ」と昔と変わらない笑顔で迎えてくれた。私は「おかえり、お兄ちゃん」と涙を流してお兄ちゃんに抱きついた。
ヒューヒューと囃し立てる無精髭の男にお兄ちゃんが一睨みして黙らせた後、お兄ちゃんと色々話した。剣道大会で全国一位を取ったこと、生徒会副会長になったこと、そのせいで色々な部活に助っ人として参加していることなど。逆にお兄ちゃんは今までゲーム世界であったことを話してくれた。が、正直VRMMOが嫌いなあたしには余り聞きたいとは思えない話だったけど、話している時のお兄ちゃんは笑顔で、あたしはその笑顔を見てまぁ聞きに徹するのも悪くないかなと思っていた。
けど、お兄ちゃんはあたしとの会話途中、その笑顔に偶に寂しいと印象付ける変化を浮かべる。
「どうしたの?」と聞いても「いや、なんでもない」と取って付けたような笑顔で誤魔化す。あたしはならいいかとその時は深くは聞かず、もやもやとしたなんとも言い難い奇妙な感覚を胸に抱えて最近出来たクレープ屋さんの話をしようとした時、病室の扉を開けてお母さんが入ってきた。心臓が止まるかと思った。私は学校を勝手に休んだ事に対して怒られるかとビクビクしていたが、お母さんは「会社休んで来ちゃった!」と舌を出してコツンと頭に拳をぶつけた。
そしてカツカツとヒールを鳴らして座っている私の横に来て、「おかえり」とお兄ちゃんに言い抱きついた。その時やっぱり親子なんだなぁとなんとなく思った。
一ヶ月くらいして、日常生活に支障が出ないと判断されたお兄ちゃんは退院した。
お母さんが家に帰ろうと車に乗った所でお兄ちゃんが「寄りたいところがある」と助手席に座りカーナビである場所を目的地にした。その場所は今いる場所から車で僅か十分といったところだったのでお母さんは「用事は短めにね」とそこに走らせた。隣にお兄ちゃんが座る予定でいたのに空席となり、寂しかった。
着いた場所は病院だった。お兄ちゃんは「十分以内に帰ってくる」と言って病院に入り、残されたあたしとお母さんは首を捻らせた。何処か具合でも悪いのだろうか?でもそれならなんでこの病院を?と色々な疑問が浮かんだ。
その日から、お兄ちゃんはほぼ毎日その病院に通っていた。理由を聞いても笑って誤魔化された。
毎日夕方から晩御飯までの間、お兄ちゃんはそこに行く。学校に通っているあたしはお兄ちゃんと話せるのは放課後から夜にかけてなのだけど、放課後は病院、夜は自室に引きこもり何かしているためスキンシップが取れないでいた。そんな毎日が続き、もやもやが溜まりに溜まっていった。
あたしは少しぼーっとした後、ベッドの下からこの部屋唯一の娯楽品であるヘッドギア、アミュスフィアを取り出して被り、ベッドの横になる。
「リンクスタート」
この鬱憤を、このもやもやを、今日もサラマンダー領にちょっかいをかけることで発散しよう。
この世界の直葉、物騒である
サラマンダー領のみなさん御愁傷様です…
というかこのキャラなに?作者自身も分からない