とかシリアスっぽく書きましたがシリアスは特にないと思います、はい。(=゚ω゚)ノ
前編なのはまぁ全部書いたら5日とかなる可能性もあったので区切りのいいところで投稿しようかと。
シリカはプレイヤーの中では珍しい、モンスターの飼い慣らしに成功した、モンスターテイマーと呼ばれる存在だ。
しかもその飼い慣らしに成功したモンスターはフェザーリドラと呼ばれる、水色の体毛に包まれたドラゴンだ。彼女は現実で飼っていた猫と同じ「ピナ」という名前を付けた。
ピナは滅多に出会う事が出来ない、所謂レアモンスターで、直接戦闘力は使い魔としての域を出なかったが、代わりに幾つかの特殊能力を身に付けていた。
その特殊能力の中にプレイヤーのHPを回復させるヒール能力があり、アイテムを使わない回復手段は多くのプレイヤーにとって喉から手が出るほど欲しい物であり、シリカは様々なパーティやギルドから勧誘を受けてきた。
数ある中でシリカは女性が一人いたパーティを選んだが、その女性プレイヤーに不満が少しずつ溜まり、35層北部に広がる森林地帯、通称《迷いの森》での冒険を切り上げる時に、女性プレイヤーの「アイテム分配だけど、あんたはそのトカゲで回復出来るし回復結晶いらないわよね」の一言に「あなただって槍使いの癖に前線に出ないで後ろでちょこまかしてただけじゃないですか。パーティの貢献度の低いあなたの方がいらないでしょ?」と即座に反撃。売り言葉に買い言葉の後女性からのビンタにシリカぷっつんと切れて鳩尾に頭突き、その後キャットファイトが始まり、パーティメンバーに止められた後フーフーと興奮した状態でシリカは「もういいです!アイテムなんていりません!こんなおばさんといたらわたしまで老けそうなのでパーティ抜けます!」と言ってパーティ解除をして引き止めるリーダーに耳を貸さずに枝分かれした道をずんずん進んで行った。女性プレイヤーの「まだおばさんじゃないわよ!」という台詞にだけ「わたしから見たら20代後半はおばさんです!」と反撃していた。
しかしこの時シリカは、例え気に食わなくて化粧が濃くて香水がきついおばさんがいようともこのパーティと一緒に行動すべきだった。
彼女達がいた《迷いの森》と呼ばれるダンジョンは、碁盤状に数百のエリアで分割され、一つのエリアに1分留まると東西南北の隣接したエリアがランダムに入れ替わるという厄介な設定が施されている為に《迷いの森》と呼ばれていた。森を抜けるには1分以内に次々とエリアを踏破するか、主街区の道具屋で販売している高価な地図アイテムで四方の連結を確認して進んでいくしかないのだが、地図を持っているのはリーダーで、制止を振り切り別れた手前戻るのも躊躇われるし、何よりあの年増がいるのがシリカにとって耐え難い苦痛だった故にシリカは後ろを振り返らず森を突き進んだ。
だが、曲がりくねった小道を木の根を避けながらを突き進むというのは思っていたより時間がかかり、北へ進んでいる筈が、エリアを超える前に1分が経過してしまい、どことも分からない場所に飛ばされを繰り返し、シリカは疲労困憊してきてしまった。
やがてエリアを1分以内に抜ける事を諦め、運良くエリアが森の端に飛ばないかなと期待して歩き始める。
時間が経ち、やがて辺りは宵闇に包まれ、モンスターが活発に動き始め、モンスターと出会う頻度が高くなる。
レベル的には余裕なのだが、足場が悪い森の中、二対多を連戦していれば疲労は加速的に溜まっていく。
シリカが森最強クラスのモンスター『ドランクエイプ』3匹を相手取り、そのうち1匹を倒した時、疲労で注意力が落ちていたシリカは足元を張っていた木の根に足を取られ転倒してしまう。
その隙に襲い掛かるドランクエイプの頭に自身の武器である短剣を投擲スキルで投げて倒すが、倒された1匹の後ろからもう1匹が棍棒が振るわれる。
それはシリカの頭をヒットし、大きく吹き飛んだ体は木にぶつかり、少しの木の葉が舞い落ちる。
運悪く状態異常「目眩」になってしまったシリカは、揺れる視界の中、HPが4割も失われ危険域である赤色になっている事に気付く。
ドランクエイプが低い唸り声を口から漏らしながらシリカに近づく。
武器は手元にない。回復アイテムを出そうにも定まらない視点でメニュー欄を操作する事も叶わない。
絶対絶命の中、粗雑な武器がシリカに目掛けて振り下ろされた。
ここでわたし死んじゃうんだ…と他人事のように思うと同時に現実にいる父に会いたい、死にたくないと涙を零す。
その時、視界が青で埋まり、衝撃音と共に体に何かがぶつかった。
目眩が治り、飛んできた物を見ると、それは1年共に戦い、生きてきたピナだった。
ピナのHPバーは消滅し、ピナは小さくキュルル…と鳴いて小さなポリゴンとなって砕け散り、その後に蒼い羽がふわりと落ちた。
「ぴ…ピナ…」
シリカは落ちた蒼い羽を拾い、呼びかけるも返事は返ってこない。
顔を上げると残り1匹だったドラングエイプが5匹増えて6匹になって逃げ場なんてないぞと言わんばかりにシリカを囲んでいた。
「ごめんねピナ…」
それは自身の不甲斐なさの謝罪か、せっかく助けてくれた命をそのまま散らしてしまうことに対する謝罪か。シリカは羽をぎゅっと抱きしめそう呟いた。
ドランクエイプが一斉に襲いかかり、シリカは無残に殺されようとしたその時、木の上から真っ黒な物体が静かに降り立つ。
目を凝らして見ると黒いのは服で、落ちてきた物体は男のようだ。
男は腰にぶら下げていた鞘から美しい緑色の剣を抜き、翡翠色の残像が残る程の速さで横に振るうと、一瞬にしてドランクエイプ達6匹の体が上下に分断され、ポリゴン片に変わってしまった。
シリカはその光景に目を見開く。シリカは中層プレイヤーと呼ばれる、攻略組までとは言わないがレベルを上げているプレイヤーだ。しかも中層プレイヤーの中でもシリカは上位に位置しているのだが、ドランクエイプの群れを相手取る事は出来るが一瞬で倒す事はまだ出来ない。つまり目の前でそれを成し遂げた黒服は自分以上の力量の持ち主だと分かる。
因みに今現在攻略組が攻略しているのは56層だが、なぜ35層にある迷いの森をシリカ達が探索しているのかというと、攻略組はその名の通り攻略に専念しているため《迷いの森》のようなサブダンジョンを全く手を付けずに行く為お宝目当てで探索していた。それ故にここに攻略組と思われる程の力量の持ち主がいる事に驚いたのだ。
男は振り返り、木に凭れるシリカを、シリカは振り返った男を見た。
短く切り揃えた黒髪に黒い金属が貼り付けられたような服、黒い金属ブーツに黒い小さな盾と全身が黒に染められ、持っている剣も闇に溶け込むような漆黒の刃で、全身が黒で統一されていた。
「あ、あの、助けていただいてありがとうございます」
助けてくれた人にはお礼を言いなさい。父からの言葉を思い出しシリカは礼を言う。
男は剣を鞘に仕舞い、口を開く。
「礼はいらん。偶々寝てた場所が揺れ、俺の目が覚めた時、目の前で惨事が起きようとしていた。そしてそれを防いだ。ただそれだけだ」
男はぶっきらぼうにそう答え、シリカは男の言い方にむっとする。
「わたしの名前はシリカって言います。あなたの名前は?」
シリカは自己紹介をするのが自然のようにそう言った。シリカはピナを飼い慣らした時から「竜使いシリカ」として幅広いプレイヤー層に名を馳せている。この男も自身の名前を聞けば少しはその態度を直すだろうと考えた故の自己紹介だったのだが、男は微塵も気にしたような顔をせず名前を告げる。
「俺の名前はコノハ。闇に紛れる一匹狼だ」
「ぶはっ!」
この自己紹介にシリカは盛大に吹いた。
これがコノハとシリカの初会合であった。
コノハこの時中二病なんだよなぁ…。そして今回のお話はキリトがいません!(出ないとは言ってない
オマケ
シリカから見たロザリア
シリカ「化粧濃いですし香水臭いですしリーダーじゃないのにパーティ仕切りますしこれだから年増は困ります」
ロザリアから見たシリカ
ロザリア「子供の癖に目上に対して態度がなってない上に口煩いちやほやされてるくそうざったいガキよね」
シリカ「やりますか?」
ロザリア「やる?」
なお本編でシリカが20代後半と言ってますがそんな事ないです。(多分