SAO 〜しかしあいつは男だ〜   作:置物

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困りに困った作者です
ちょっとざっくりな感じがしますがそれはおいおい直していきたいですorz


episode17

団長の告白に全員の体が強張ったように感じた。そりゃそうだ。最強のプレイヤーが、一転して最恐のボスに変わるのだ、動揺しない訳がない。血盟騎士団員も信頼していた自分達の団長が最終ボスという激白を受け止めきれなかったのか、あるいは受け止めてショックを受けすぎたのか数名武器を落として尻餅を着いた。

団長はそんな彼等に目もくれず、そのまま話を続ける。

 

 

「しかし、なぜ私が茅場晶彦だとわかったのか、参考までに聞かせてくれないか?」

「最初におかしいと思ったのは剣技大会決勝の時だ。最後、俺の攻撃の方が速かったはずなのにあんたの方が速かった事だ」

「なるほどね。君の力に圧倒されてオーバーアシストの力を借りたとはいえ、人として出せる範囲の攻撃速度にしたのだが、君にはわかってしまったか」

「次におかしいと思ったのはあんたがアスナが仕切っている時に口を出す事がなかったのに、今回初めて口を出した事だ。クォーター・ポイントに細心の注意を払っていると思ったが、この変態的に強い攻略組にあんたは偵察の人数を増やすように言わず全員で行くようにした方がいいと進言した」

「流石に君達でも今回のボスは全力で当たらないと危険だと判断したからね。しかし君達は、私の予想を大いに裏切って余裕を持ってボスを打ち倒した。不確定因子である君も、全十種存在するユニークスキルで最大の反応速度のある者に与えられ、魔王に対する勇者の役割を担う二刀流スキルを使いこなし、私の予想を大いに超える力を見せ、更には私の正体を見破った」

 

 

「こういった予想外の展開はネットワークRPGの醍醐味だな」と言ったところで血盟騎士団の一人がふらりと団長に近づく。あの男は確か現実世界早期帰還を希望していた…。

 

 

「てめぇ…よくも…よくもこんな所に俺たちを閉じ込めて…。しかも予想外の展開もネットワークRPGの醍醐味だと?なら、もっと予想外の展開を起こしてやるよぉぉぉ!!」

 

 

男は大剣を背中の鞘から引き抜き、力の限りと言わんばかりにそれを団長目掛けて振り下ろす。しかし、団長の動きの方が速かった。

 

 

「残念だが、予想の範囲だ」

 

 

団長が左手を振って出現させたウインドウを操作すると、男の体がピタリと止まり、武器を落として倒れ伏せる。HPバーの緑色の枠が点滅している事から麻痺状態なのがわかる。

そのまま操作を続け、周りの人間が麻痺状態になっていくのを見て、一か八かで俺はメニューウインドウを開いて今朝整頓したばかりのアイテム欄から目的の物を引っ張り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒースクリフ、茅場は目の前に立つキリト以外のプレイヤーを管理人権利を使って麻痺状態にし終え、ウインドウからキリトに視線を移す。

 

 

「この場にいる全員を殺して隠蔽でもするつもりか?」

 

 

キリトが睨むと茅場は「まさか」と首を振ってそれを否定する。

 

 

「そんな理不尽で死んでしまっては君達も納得しないだろう?予定より早いが、私は一足先に最上階の紅玉宮で君達の訪れるその時を待つことにするよ。私が育て上げた血盟騎士団、それに追いつこうと切磋琢磨してきた他ギルドに攻略組の君達がいればきっと辿り着けるだろう。だが、その前に、私の正体を看破した君に報奨をあげないといけないな」

 

 

そう言って茅場が左手でウインドウを少し操作するとキリトの目の前に「ログアウトしますか?」と書かれた青色のウインドウが現れた。

 

 

「君に二つの選択肢をあげよう。君だけがこの世界からログアウトするか、この場で私に挑むかの二つの選択肢だ。前者は君だけが確実にログアウト出来るが選択の機会は今回だけ。後者は不死属性を解いた私と1対1で挑み、私に勝つ事が出来たならこの世界に囚われた全プレイヤーがログアウト出来るが、もし負けたなら君だけが死ぬ。さぁ、どちらを選ぶ?」

「……」

 

 

キリトはすっと手を挙げ、拳を作ってNOに叩きつけ、その威力でウインドウが砕けた。

 

 

「あんたに挑むに決まってるだろ…!」

「ほう、確実に助かる道を捨て、賭けに出ると言うのか」

「今ここで俺だけが生きて帰っても、仲間を見捨てた俺は、俺を一生許せない!」

「そうか…。ならば、私は全力で君の相手をしよう」

 

 

茅場は左側に浮かぶウインドウを操作し、HPバーをキリトと同じ赤色到達寸前の黄色の状態に調整し、不死状態の解除をする。つまり、茅場は神の如き存在(ゲームマスター)から人の身(プレイヤー)になったということだ。

 

 

「それでは始めようではないかキリト君、君の最後の闘いを」

「…っ!」

 

 

その言葉が終わる前に、キリトはその体を茅場に向けて走らせていた。

首元を狙った左下からの逆袈裟斬りを茅場は後ろに下がって回避、お返しのようにキリトの額に突きを放つ。

顔を横にずらす事で避けるが側頭部に擦り、それに応じたダメージがHPバーに反映され、HPバーが赤色に変色する。

頭の中で危険域を知らせるアラートが死の穴に一歩近づいた事を知らせ、キリトは背筋が強張るのを感じたが歯をくいしばり、雄叫びをあげる事で打ち払う。

数分、もしかしたら十分超えてるかもしれない。キリトも茅場も隙を狙って殺す勢いで剣を振るうがお互いにその剣は相手に届かず、最初の擦りダメージ以降HPに変動がない。このまま撃ち合いが終わらないのでは…と誰かが思ったその時、状況が急変した。

先のボス戦で酷使し過ぎたのだろう。右のエリュシデータが茅場の盾に命中した時、激音と共にエリュシデータの刃が粉々に砕け散ったのだ。

長年の相棒との突然の別れにキリトの思考が止まり、それに釣られて体の動きが止まる。すぐにはっとするがその一瞬はこの真剣勝負では命取りだった。

 

 

「さらばだ、キリト君」

 

 

茅場の剣がきらりと光り、命を刈り取るべく突き出された。

左のダークリパルサーで迎撃するには反応するのが完全に遅い。

キリトは自身の死を覚悟し目を瞑った。

 

 

「何があっても最後まで諦めるな」

 

 

聞き慣れた声が近くから聞こえたかと思うとキリトの体が後ろに引っ張られた。

キリトが目を開けると、見慣れた背中から白銀の剣が生えている光景が映った。

彼に似た背中のその男のHPバーがどんどん0に近づいていく。

遠くからシリカが絶叫気味に名前を呼ぶ事でそれがコノハだとキリトは理解した。

コノハのHPバーが消滅し、その体が薄く輝き始める。

慟哭の思いを押さえ込むように、キリトは剣を強く握りしめ、地を蹴り前に出る。

コノハの体が強く輝き、砕けて出来た小さな欠片を全身で受け止めながらキリトは茅場との距離をほぼ0にし、左手のダークリパルサーを大きく振るう。

コノハの体が消えた先からキリトが現れた事に茅場は目を見開くが、冷静にすぐに剣を引き戻しダークリパルサーを弾き飛ばす。

茅場が勝利を確信した笑みを浮かべる。

しかし、茅場の目に写るキリトの顔は悲観や絶望といった表情ではなかった。

キリトの右手が振られる。何も持っていないはずの右手が振られたことで茅場の視線が右手に向けられる。

そこには、コノハの愛用していた薄緑色の剣が握られていた。

 

 

「 」

 

 

茅場が何かを呟いたが、キリトの耳にそれは届く事なく、ジャッドシュヴァリエの一撃が茅場の体を横断し、HPを0にした。

茅場の体はコノハと同様に光を帯びて砕け散り、その後すぐに無機質なアナウンスが「ゲームがクリアされました」とアインクラッドにいるプレイヤー達に告げる。

 

 

「これで…よかったんだよな?コノハ…」

 

 

キリトはカランと地面に剣を落とし、今はいない彼にそう呟き、世界が光に包まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を開けると俺は沈んでいく太陽が眩しい、どこまでも続く夕焼け空の上に立っていた。

厳密に言えば、空の上ではなく空の上に浮かぶ水晶のような透明な板の端に立っていて、足元では太陽の光を受けて紅に染まった雲が足早に流れている。

僅かに何かが瓦解する音が聞こえ、その方向に目を向けると、遠くで俺達が長い間囚われていたアインクラッドが下層から一層一層剥がれていくようにゆっくりと、しかし確実に崩れていくのが見える。

 

 

「中々に絶景だな」

 

 

不意に、背後から声が聞こえ、振り返るとそこには茅場晶彦が立っていた。

血盟騎士団団長ヒースクリフの姿ではなく、くたびれた白衣に折れ曲がったネクタイ、フレームが少し歪んだ銀縁眼鏡にボサボサ頭という、いつかに見た雑誌の姿より少しやつれている茅場晶彦だ。

茅場は少しずれていた眼鏡を直し、俺の隣まで歩いてきた。

隣に来た後、そのまま沈黙してしまい、その空気に耐えきれなかった俺は口を開く。

 

 

「…なぁ、あんたはなんでこんな事をしたんだ」

 

 

俺は恐らく、全てのプレイヤーが思っているであろう疑問を茅場にぶつけた。もっと聞く事があっただろうが今はこれしか浮かばなかった。

茅場は右手をズボンに仕舞い、顔を上に向けた。ふわりと風が吹き、白衣を揺らす。

 

 

「なぜ…か。君は幼い頃、色々な事を想像しなかったか?私は空に浮かぶ鉄の城を想像したものだよ。そして一度想像したそれは、年が経っても消える事なく、むしろリアルに、大きく広がっていった。そして私は、私の持てる力全てでこの世界を作り上げた。それだけで私は満足する筈だった。けれど、私はこのゲームに尽力しているうちに見てみたくなったのだよ。この世界がどのような未来を辿るのか」

 

 

茅場はそう言った後「君が聞きたかった事はそれか?」と聞いてきた。

 

 

「…ここで死んだら本当に現実でも死ぬのか?」

 

 

俺は、本当に聞きたい事とは違うが、それについて遠回しに聞いた。このゲームはただ一人を除いて誰も死ぬ事なくクリアされた。しかもその一人も最後の最後に死んでしまった為に、もしかしたらそんなルールは最初からなくて、復活の碑の前で蘇生しているが確認出来なかっただけかもしれない。俺はそんな淡い希望を持って聞いたが、次の茅場の言葉にそれは簡単に壊された。

 

 

「それについては嘘偽りはない。この世界での死は現実での死だ。コノハ君はその原則に従い、死んだ」

 

 

心臓が止まったように感じたと同時に後悔と自身への軽蔑の波が押し寄せてくる。あの時、茅場の選択肢を蹴りみんなと協力して攻略を続けていれば、あの時もっと俺に力があったなら、あの時無理にでも体を動かしコノハを掴んで引っ張っていれば…。様々なifが頭の中を占めていき、十字架のように体にのしかかる。

 

 

「筈だった」

 

 

茅場が続けて言った言葉に俺はピクリと反応する。筈だった?それはどういう事だ?

 

 

「君に倒された後、君をここに呼ぶ為にプレイヤーリストを見ていたのだが、死んだ筈のコノハ君がオフライン状態になっていてね。詳しく調べると外部からのハッキングによって彼の意思とも言える脳波信号が遮断されていたのだよ」

「つまり…?」

「彼は生きている、ということになる」

 

 

コノハか生きている…。

 

 

「よかった…よかった…!」

「…それでは、もう時間のようだ」

 

 

茅場が白衣を翻し俺に背を向けて歩き出す。茅場の歩く先にある雲と空を白い光が飲み込んでいき、ゆっくりと此方に近づいてきている。

 

 

「あぁ、言い忘れていたな。ゲームクリアおめでとう、キリト君。君と彼とは、また何処かで会う予感がするからまた何処かでとでも言っておこう」

 

 

振り返ることなく茅場はそう言い残して光に飲み込まれて消えた。茅場を飲み込んだ光は勢いが衰えることなく空間を侵食していく。全てを飲み込もうと近づいてきた光に俺は抗うことなく身を任せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「退いてナースさん!今ならまだ意識のないキリト君の匂いをくんかくんか出来るのよ!」

「落ち着いてください結城さん!というか貴女の体は二年近く動かしてなかったのにどうしてそんなに動けるんですか!?」

「愛の成せる技よ!」

「愛ってそんな事出来るんですか!?」

「まぁまぁナースさん、そうかっかしないで。というか可愛いですね結婚してください」

「なんで私流れるように求婚されているの!?それに貴方もなんでベッドから起き上がれているんですか壷井さん!?」

「愛の力ですよ」

「愛って言葉便利!」

「16…!17…!18…!」

「ミルズさんは何腹筋してるんですか!?」

「一日でも早く筋肉を取り戻さねぇと…!」

「この筋肉馬鹿!あぁもう!誰かこの人達止めてくださぁぁい!」

 

 

そんな喧騒の中、俺の意識は覚醒した。鼻で思いっきり息を吸うとSAOでは得られなかったつんとした消毒液の匂い、乾いた布の日向くさい匂い、見舞いの品に置かれた果物の匂いといった多くの情報が脳に伝達される。

目を開け、久方振りの光に目が痛くなったが、それに慣れていくと正方形のパネルが並べられて出来た真っ白な天井が見えた。視界の端には金属のスリットがあり、そこから心地の良い風が吹き出ている。視線を天井から横に向けると血圧や血流、脳波を調べる機械に点滴の掛かったスタンドが置かれている。外と隣がやけに騒がしいが恐らくここは病院なのだろう。

喧騒の原因をこの目で見ようと体を起こそうとするが、少し身じろぎするたけで体は思うように動かない。それもそうだ、二年近く体を動かしてないのだから筋肉は衰え凝り固まっている筈なのだから。

ちらりと見えた細くなった両手を動かす。閉じて開いてを繰り返し掌から凝りをほぐしていく。掌が終わったら次は肘の曲げ伸ばし、その次は肩を回し、少しずつ動かせる部位を増やしていき、上半身全ての凝りをほぐして動かせるようにしたら脇にある寝返りによる落下防止の柵を掴み体を起こし、頭を覆っていたヘッドギア、ナーヴギアを外すと、伸びに伸びきっていた髪が視界を遮る。手で髪を整え視界を確保し、体に貼り付けられていた電極を全て取り払い、細くなった太ももからつま先までぐっぐっと揉む。ピリピリとした刺激が足から脳に伝わり、状態異常ではない痺れるという感覚を噛み締め、足全体をほぐし終えたら足をベッドから降ろした。辺りを見てサンダルを発見。足を使って引き寄せ、足の裏から伝わる感覚にこそばゆいと思いながらサンダルを履き、点滴を支えに立ち上がってカーテンを開く。

 

 

「あ、キリト君!」

 

 

右に目を向けると病室の入り口で目測150あるかないかくらいの、童顔の看護師に抑えられている白色の病院着のアスナが点滴の刺さった腕をぶんぶんと点滴が外れるくらいの勢いで振っていた。看護師はそれを見て「あぁ!手を振らないでください外れてしまいます!」と慌てている。その慌てる看護師の隣に立っているクラインがその様子に鼻血を出している。二人はあの世界の体格より少し細くなった程度だが、ベッドの上で筋トレをしているエギルはあの丸太のように太かった腕や筋肉の鎧とまで言われた体は影も形もなかった。

 

 

「おぉ、キリの字、ようやく目ぇ覚めたか。オメェだけ遅ぇから心配したぞ」

「そうよ!もう心配で心配で他の病院からタクシー使って来ちゃった!」

「…コノハの件は…その…残念だったな」

 

 

クラインが鼻にティッシュを詰めながら重い声でそう言った。クラインの言葉にアスナもあっ…と言った表情になり顔を伏せ、エギルも心なしか腹筋する速度が下がった気がする。

 

 

「いや、コノハは生きてる」

「キリの字、一番初めに聞いた唯一にして絶対のルールを忘れたのか?死んじまったら現実でも死ぬってルールを。そんであいつは、最期の最期にあっちで死んじまった…」

「…俺が少しこっちに帰ってくるのが遅かったのは、茅場と話してたからなんだ」

 

 

二人の顔が驚愕に変わり、エギルも腹筋を止めて耳を傾ける。ナースさんが「こ、この娘、下半身に力入ってないように見えるのに全く動かない!?」と別の意味で驚愕している。が、俺は構わず話を続ける。

 

 

「茅場が言うには、あの時、外部からのハッキングでコノハの意思、電気信号は遮断されてたらしい」

「外部からのハッキング?政府かしら?」

「それはわからない。けど、コノハが助かったならなんでもいい」

「そりゃそうだな。けどアイツが何処にいるのか検討は付いてんのか?」

「本名は知ってるからパソコンさえあれば調べられる」

「ここで俺の出番って訳だな」

 

 

そう言ってエギルはベッドの下をごそごそ探り、黒いノートパソコンを引きずり出した。

 

 

「俺と嫁さんに感謝するんだな」

「ありがとうエギルの嫁さん」

「いやそこは俺にも感謝しろよ」

 

 

待ってろよコノハ、いや花林。必ず会いに行くから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

当たり前だがアスナは現れた黒服の男達に元の病院に連行された。




キリト「ってこのパソコン重っ!?」
エギル「そりゃ嫁さんが筋トレ用にって持ってきた奴だからな。重量2.5kgで高さ10mから落としても壊れない優れ物だ」
クライン「なんでパソコンで筋トレしようと思ったんだ…?」


キリトの部屋の隣では
「先生!患者のベッドが半ばで折れました!」
「先生!点滴針が折れました!」
「先生!エアコンが壊れました!」
サチ「あぁ、現実世界に帰ってこれたのね…」



というわけでSAO編終了!
次から二巻の内容であるシリカ、リズ、ユイの出会いとか他イベントなどを書いていきたいと思います!(なおイベント内容は決まってない)。アルゴとサチは見送りで!(
ALOは相当少なくなりそうなのでまさかの本編が番外編扱いになるかもですがご了承くださいorz
あと誤字、脱字などありましたらご報告していただければ幸いです。





以下より主人公が動けた理由


ストレージの肥やしとなっていたエルフの聖水を口に含んだ直後、体中の神経が切られたように力が抜け、地面に倒れた。
口に含んでいたエルフの聖水を飲み込むが即座に麻痺は回復せず、HPバーの上に時計と「あと3分」というメッセージが現れる。
3分!?たかが麻痺回復にそんなにかかるのか!?これやっぱり結晶の下位互換だ!?
俺は顔を上げてキリトと団長を見る。
二人は目にも止まらぬ速さで剣を交えてるが、こんなの下手したら3分以内に終わる可能性もあるぞ?
頼む、頼むから耐えてくれキリト!そう祈りながらメッセージを急かすように睨む。
3分経ち、ようやく麻痺が治った時、キリトのエリュシデータが繊細な硝子が割れたような音を出して壊れた。
キリトが一瞬硬直し、茅場はそこを見逃さず、避け難い突きが放たれようとしている。
俺は使えるか分からなかったが「転移!キリト!」と叫ぶ。一瞬でキリトの背後に辿り着き成功だと確認、キリトの肩に手を掛けて後ろに引っ張り前に出る。その時に「最後まで諦めるな」と決め台詞。茅場は全員を麻痺状態にして誰かが出てくるとは思わないだろうしこれは完全な不意打ちだ。いける!と思った直後、俺は気が付いた。

あれ?これフラグじゃね?

案の定、茅場はにやりとまるで想定してたかのように俺の攻撃をひらりと躱し、淡く輝く聖剣が俺の体の中心を貫いた。
あぁ、主人公以外がフラグ立てたらこうなるんだな…と思いながら俺は意識を手放した。

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