SAO 〜しかしあいつは男だ〜   作:置物

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え〜、大体の人は忘れているであろう(というか作者自身そこまで使ってなかった)転生という設定を処理しとかないとと思いまして書きました


extra6 コノハ「過去編」

目を覚ませばそこは見た事ない天井だった。

 

 

「…ここどこだ?」

 

 

今寝てるベッドから上半身を起こして周りを見る。6畳の畳部屋に台所、冷蔵庫、本棚、箪笥、ちゃぶ台、敷き布団を詰めた、一部の壁には修復痕があるというボロく狭い部屋が俺の部屋なのだが、今いる場所は床はフローリング、本棚は壁1面にあり、勉強机や小型薄型テレビなど俺の部屋に無い物や俺の部屋より色々あるのに俺の部屋より広い。この部屋の住人が妬ましいという感想しか浮かばない。

 

 

「てかなんでおれここにいるんだ?

 

 

昨日酒飲み過ぎて誰か自宅に運んでくれたのか?と最初考えたがそもそも俺は酒飲まない人間だし俺のどの友達の部屋とも違う。なら拉致監禁か?とも考えたが俺は学生しながら4つのバイト掛け持つくらいには貧乏人な為そんな事される覚えもない。そもそも拉致監禁ならこんな良い部屋に監禁しないだろう。俺の部屋より上等だしここに過ごしたいくらいだ。

 

 

「とりあえずベッドからおりよう」

 

 

そいやとふわりとしたベッドから降りる。が、少しおかしい。この部屋が広いからだろうか、俺自身が縮んだ感覚に陥る。まぁたった1日で縮むなんてありえないし気のせいだろう。

さて、これからどうするか…とあれこれ思考してるとこんこんと控えめなノックが扉から鳴り、数瞬して扉が開く。そこから現れたのは烏の濡れ羽色と称するに相応しい髪を肩まで伸ばした、二十代前半から後半と思しき大和撫子だった。

 

 

「やっと起きた。もう朝食出来てるから着替えたら降りてきてね」

「あ、はい」

 

 

そう言って女性は扉を閉めた。え?あれ誰?俺あんな美人と知り合いだっけ?タイプなんですが。てか着替え?え?ここに俺の着替えあるの?と混乱したが腹が鳴る音で少し冷静なった。

 

 

「めしくったらなんでおれここにいるのかきいてみよう」

 

 

まず着替えだよな、と箪笥に近づく。近づいて分かったが箪笥めちゃくちゃ大きい。俺の身長は170あるのだがそれより大きい。上の方にあったら詰みだよなぁと思いながら一番下の段を開くと服があったのだが、明らかに小さい。手に取って見ると…という現実逃避はやめよう。ああ、気付いてたよ。起き上がって声出した時には声高いなと思ってたし手を見た時に明らかに手が小さかったしもう色々気付く点があったがありえないと思ってきたがもう無理だ。最初から誤魔化しきれなかったが誤魔化しきれない。

俺、絶対縮んでる。てか若返ってる。

 

 

「なんでこうなった…!?」

 

 

額に手を置き昨日の出来事を思い出す。朝起きて大学行ってバイトして寝て…うん、いつも通りだ。少し1日の出来事が数秒で済むことに涙を流しそうになった。

本当に寝ただけかと更に思い出そうとするが寝た以外記憶がない。

ふと、これは夢なのではないか?とほっぺを抓るが痛かったから夢ではない。

もしかして、と俺は一つの結論に辿り着く。

 

 

「てんせい、もしくはひょうい?」

 

 

だとしたら俺は死んだ事になるが死ぬ要素が一つも見当たらない。バイトを4つ掛け持ちしてたが時間はそれぞれ2〜3時間と短いし睡眠もちゃんと取っていたから過労死ではないだろう。貧乏と言っても趣味にお金をかける程余裕が無いだけで飯はしっかりしたものを食べてたし衰弱死もないし、病死も大学の健康診断で元気過ぎワロタと言われるくらいだったからない。人付き合いも良かった方だしうちは貧乏だから強盗に押し入られて寝てる間に殺されたとかもないだろう。寿命は…数値として見れないしこれが一番ありえるだろうけど、22で寿命って日本人なのに早過ぎだろ…。

 

 

「まぁかんがえてもかんがえきれないか」

『朝ご飯冷めちゃうわよ』

「いまいきます!」

 

 

取り敢えず着替えて降りよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝ご飯を食べ終え、さっき起こしに来てくれた女性、木葉(きば)早百合(さゆり)が仕事の為家を出る。

どうして女性の名前を知っているかと言うと、俺の頭の中には前世の記憶だけでなく今世の記憶があったからだ。木葉早百合を母親だと知りちょっと残念に思った。

母親は父親、木葉桐継(きりつぐ)が勤める会社に一緒に勤めているが、俺の子育てもある為出社時間は遅く、退社時間が早いようだ。桐継って見ると某魔術師殺しを思い出す。

それで、俺の名前は木葉花林(かりん)。女っぽい名前だが男。生まれは2007年5月23日、血液型はO型、年齢は今年で5歳のようだ。つまり今は2012年で、前世は2015年だったから少しだが過去に戻ったという事になるのか。てことは今の内に成長すると思われる企業に株を投資すれば大儲け出来るんじゃね?と思ったが5歳児が急に株を投資とか異常だしその投資するお金はどこにあるんだよというか俺全く株情報覚えてねぇよと問題多発で諦める。

そもそもここが俺の元いた世界と同じとは限らない。てことで情報収集の為にリビングにあるテレビを付ける。しかし俺の部屋にあったテレビはどうやら教材を見る用のようで、電源を付けたがなにも映らなかった。

本棚から地図の乗った本を探し、調べていくが特に変わった地名はなく、ここは俺の前世の世界とは変わりないという事がわかった。結構残念だ。

 

 

「かみさまとかにもあわなかったしほんとにじゅみょうでしんでたまたまぜんせのきおくをもってうまれたってことなのかな」

 

 

俺は前世を少しだけ惜しんだが、まぁ裕福な家に生まれたし強くてニューゲーム出来るしいっかと結論付けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして10年後、暑苦しい夏の休日に親父(最初は父さんと呼んでいたが見た目の親父感と喋り口調から親父に変えた)とテレビのチャンネル権を争っている最中、偶々映っていたチャンネルであるニュースが流れる。

 

 

『今年の冬発売予定の完全仮想空間を実現したゲーム、ソードアート・オンラインがβテスターの手元に明日届く予定ですね』

 

 

ソードアート・オンライン、略称SAOは天才茅場晶彦の手によって作られたゲームだが、何を思ったのか茅場はゲーム中に死んだら現実でも死ぬというデスゲームに変貌させる。そして主人公キリトとヒロインアスナが仲間と共にクリアを目指すと言った話だったはず。

そう、俺が転生したこの世界は前世()の世界ではなくSAOの世界だったのだ。

SAOは原作は読んだ事がないが二次小説は結構読んでいたからキャラの名前は覚えているのだが、この世界に転生して10年、どんな出来事があったのかは完全に忘れた。確かフェアリー・ダンス?とか別の奴が店頭に出てた気がするからSAOはクリアしたのだろう。

俺がこの世界がソードアート・オンラインと知ったのは2年前、親父の読んでる新聞紙の裏側に茅場晶彦、VR(バーチャルリアリティ)実現という記事を見てからだ。見た時飲んでいたお茶を鼻から出したのはいい思い出だ。

まさか俺がSAO世界に転生していたとは思わなかった。前世ではSAOの世界の事を何度想像したか数え切れないだろう。

しかし、それは客観的に見るから盛り上がるのだ。自分には危険がないから心踊るのだ。もし俺があんな状況になったらキリトみたいな行動には出れないだろう。良くて最初の街の近くでお金を稼いで宿で寝るを繰り返してクリアを待つくらいだ。

当時はあれこれ考え悩んだが、

 

 

「てか買わなければいい事か」

 

 

という事に気付く。そう、何故かSAOをやる前提で考えていたがそもそもやらなければいいのだ。デスゲームなのに大量の人がやるのはデスゲームと知らないからだ。しかし俺はデスゲームになる事を知っている為回避できる。

せっかくSAOに転生したのにSAOをしないのは残念だが命あっての物種だ。後にフェアリー・ダンス?とか出てるんだし今はβテスター募集にハガキを送って当たる事を祈ろうと決定した。明日全国一斉配達だが届くかなぁと思っていると、

 

 

「そういや花林、今テレビでSAOっていうゲームの発売とかの話あったよな?」

「あったね」

 

 

唐突に背中を孫の手で掻く親父がそんな話を切り出してきた。え、嫌な予感するんだけど。

 

 

「うちの会社に、てか俺にSAOのβテスターになってくれねぇかって話が来たんだけどよ、お前やってくんね?ほら、俺ゲームとかさっぱりだろ?」

 

 

セーフ!てか当選云々なくなってラッキー!

俺は即座にいいよと親指を立てる。

 

 

「んじゃあ明日ナーヴギアとソフト持って帰ってくるわ」

 

 

そう言って親父はチャンネルをお笑い番組に変え爆笑し始める。

俺は二階の自室に戻り、SAOが出来るという興奮と誰かに自慢したいという欲望を抑え切れず電話で生粋のゲーマーの友達に連絡した。

 

 

「なぁ聞いてくれよ!俺SAO出来るんだ!」

『どういう事だよ?明日発送でβテスターにまだ届いてないはずだろ?』

「うちの親父が会社からβテスター頼まれてさ、親父ゲーム苦手だから俺にやってくれって!」

『え!?いいなぁ!もし外れたら少しさせてくれよ?』

「いいぜ!もし当たったら一緒にしようぜ!」

『あぁ!それじゃあもし当選したら届くの明日だし切るよ。おやすみ』

「おやすみ」

 

 

電話を切った後、すぐベッドに入り明日が早く来ないかと思いながら意識を闇に沈めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、ゲーマーの友達、桐ヶ谷和人も当選したようで、朝一番に電話で報告してきた。

これで一緒にゲーム出来るなと喜ぶと和人は俺はどんなキャラネームでするんだ?と聞いてきた。

俺は上の名前をもじったコノハですると言うとじゃあ俺も名前をもじろうかなと言って電話を切った。あいつのキャラネーム聞いてないけどまぁ俺のは教えたし向こうが見つけてくれるだろう。

時刻は11時57分、サービス開始まで3分を切っていたが俺はまだログインの準備が終わってなかった。

俺は朝8時には親父からナーヴギアとSAOのソフトを受け取っていたのだがキャラメイキングにめちゃくちゃ時間を掛けてしまい、というか今も掛けている。

キャラは一つの機体に一つまでなのだが、キャラメイキング時点では最大3つまでキャラが作成でき、その中から一つを選択してゲームを開始するのだ。

俺は一発で俺様キャラと見える金髪の男、電気を発しそうな茶髪の女、自分によく似たキャラの3つを作り上げどれにするか迷っていた。

 

 

「はっちゃけて金髪男にするか、ネカマプレイするか、ほぼ現実の俺で行くか…」

 

 

悩んでいたら残り1分、和人がいるし流石に自重しとくかとほぼ現実の自分のキャラを選び、ベッドに横たわりゲームスタートのコールをする。

 

 

「リンク・スタート!」

 

 

体の力が抜け、俺の意識は一瞬で途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体の感覚が徐々に戻り、聴覚がざわざわとした賑わいを拾い始める。

目を開けると、そこは自分の部屋ではなく何処かの広場のような場所で、同じような装備をした人々が大声をあげて感動していた。

さて、後は和人を探すだけだが、ヒントが名前をもじっただけなのはきついな。

 

 

「あの、すみません」

「あ、はい」

 

 

背後から話しかけられ、振り向くとそこにはイケメンが。イケメン死すべしと普段は思っているがここの場合キャラメイキングで外見はどうとでもなるので気にせず返事する。

にしてもこのイケメン、和人に似てるなぁ。和人を20くらいにしたらこうなるんじゃないか?

 

 

「もしかしてですけど、名前木葉さんだったりしますか?」

「……あ、もしかして和人?」

「あぁ、良かった!間違えてたらどうしようかと思ったよ!」

 

 

どうやら俺の待ち人、和人のようだ。しかし、現実とは違って大人びたイケメンお兄さんキャラだな。現実で妹と歩いたら姉妹に間違われたって話は聞いた記憶があるが和人的にはやっぱこんな感じになりたいのか?

 

 

「どうして花林は現実と同じような感じにしたんだ?」

「いや、最初はっちゃけようかなと思ったけど流石にリアルで友達の前ではっちゃけるのも…あと分かりやすいように」

「なるほど。それじゃあ合流出来たことだしこれからどうする?」

「フィールド出ようぜ!俺剣が振りたくて仕方ない!」

「わかった。パーティ組んでフィールドで狩りしようか」

「よっしゃ!で、メニュー出すにはどうするんだっけ?」

「こう、右手を縦に振りながらメニューって頭の中で思えば出てくるよ」

「…おぉ、すげぇ」

「パーティ申請したからOK頼む」

「あいよ…ん?これ?」

「それ」

 

 

パーティ申請のウィンドウが現れ、OKを押そうとした時、その申請主を見て和人に聞くとと申請主=和人と確認した。そしてその申請主の名前はキリト。つまり申請主=和人=キリト=SAOの主人公の式が成り立つ。

お前が主人公だったのかよ!!




主人公の本名まさかのextraで公開and前世の情報バレ
ほんとにただの主人公紹介回ですね(

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