魔法先生ネギま~とある妹の転生物語~   作:竜華零

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第73話「麻帆良祭三日目・逆襲」

Side フェイト

 

「・・・流石、と言った所カナ、フェイト・アーウェルンクス」

 

 

超鈴音・・・と名乗るその少女は、不思議な戦い方をする少女だった。

僕がこれまで戦ってきた、どんな魔法使いとも違う戦法を使う。

あの人形から情報を得ていなければ、初撃で倒されていたかもしれない。

 

 

僕ともあろう者が、情けない話だね。

もちろん、僕が全力かと言うと、それはまた別の話になるのだけど。

 

 

「カシオペアへの対抗策を持たない貴方が、ここまで粘るとはネ」

「・・・キミのような少女に、そう上から物を言われると言うのも、不思議な感じだよ」

「すまないネ・・・ただ私は、貴方がなぜ私の邪魔をしようとしているのか、不思議でネ」

 

 

まさに、その通りだ。

僕は何故、この少女と戦っている?

 

 

超鈴音が旧世界に魔法を公表したとしても、僕ら「完全なる世界(コズモ・エンテレケイア)」にとっては、大局的には関係の無い話だ。

確かに、不確定要素が増して計画に支障をきたす可能性もあるが。

それでも、僕が今ここで戦う必要性は、少ないはずだった。

 

 

「貴方は、私の計画を知らない、フェイト・アーウェルンクス」

「そうだね・・・でも、知る必要も無いさ」

「つれないネ・・・しかし、私としては、これだけは聞いておきたいのヨ」

 

 

超鈴音は、どこか試すような目で僕を見た。

・・・気に入らないね。

 

 

「貴方が今、戦っているのは、アリア・スプリングフィールドのためカ?」

「・・・」

「・・・沈黙は、肯定と捉えるヨ」

 

 

超鈴音は、僕の沈黙を、そう受け取ったようだ。

そうなのだろうか?

 

 

僕は、アリアのためにここに立っているのか?

だとすれば、何のために?

あの人形に何をどう言われようと、僕には関係の無い話だろうに。

答えない僕に何を思ったかは知らないけど、超鈴音は誘うように僕に片手を差し出した。

 

 

その姿は、いつかの彼女にダブって見えた。

 

 

「フェイト・アーウェルンクス、私の仲間にならないカ?」

「・・・」

「悪を行い、世界に対し僅かながらの正義を為そう」

 

 

超鈴音のその言葉に、僕は瞬きもせずに答える。

他のことはともかく、それに対する答えは、聞かれるまでもない。

 

 

「お断りだね」

「・・・貴方は、そう言うと思っていたヨ」

 

 

超鈴音の顔は、どこか安堵したような表情を浮かべていた。

意味のわからない子だ、と思う。

 

 

いずれにせよ、僕は彼女の仲間になどなるつもりは無い。

僕はあくまでも、「彼」の意志を継ぐ人形であって、それ以外でもそれ以上でも無い。

・・・さらに、付け加えるのであれば。

背後を意識しながら、僕は言った。

 

 

「また、浮気だ何だと言われたくないからね」

「あら、それだと私がまるで、凄く嫉妬深いみたいじゃありません?」

 

 

僕と、超鈴音・・・さらに、眼鏡をかけた少女の3人しかいない飛行船の上に、もう一人。

振り向けば、箒を片手に降り立ってくる、白い髪の少女。

 

 

「来たカ・・・」

「ええ、来てあげましたよ、超さん。貴女を止めに」

「そうカ、なら・・・」

 

 

超鈴音は、白い髪の少女(アリア)と、そして僕を見ながら、告げた。

 

 

「ならば私も私の想いを通すため、持てる力の全てを揮うとするネ!」

 

 

 

 

 

Side アリア

 

フェイトさんの傍に降り立って、『ファイアボルト』を消します。

続けて懐から赤い『リボン』を取り出し、髪をまとめます。

石化魔法を使う方が傍にいますし、万が一に備えて、ステータス異常予防を。

 

 

「・・・なんですか?」

「別に・・・」

 

 

視線を感じたと思えば、フェイトさんが私を見ていました。

ただ、声をかけると目を逸らされました。変な人ですね。

 

 

ポニーテールが珍しかったんですかね・・・?

 

 

「・・・ラブコメってる所悪いガ・・・」

 

 

不意に、目前の超さんの姿が消えて、背後に。

ひゅっ・・・と、時間跳躍弾らしき物を持った右拳が、私に振り下ろされます。

 

 

しかし、私はそれを防ぐための行動は取りません。

『時空間固定杭』―――以前使用した、魔法具を再び創造します。

ライフルの銃身をパイルバンカーに換装したような外見。しかしこれでも立派な魔法の杖。

500mlペットボトル大のパイルを適当な場所に撃ち込む事で、半径200m内の時空間を固定します。

 

 

その魔法具を創造する3秒の間に、超さんの攻撃が私を捉えていても、不思議はありません。

ですが・・・。

 

 

「・・・ご苦労さまです、フェイトさん」

「良い気な物だね、キミは」

 

 

超さんの右腕を、フェイトさんが掴んで止めていました。

ギリギリと言う音が、私の耳にまで届いています。

その間に『時空間固定杭』を射出、この近辺の時空間を固定します。

 

 

超さんが顔を軽く歪めて、フェイトさんの手を振り払い、私達から距離を取ります。

ただ、カシオペア無しの移動では、やはりそれほどの速度では無いようですし。

ザシャッ・・・と、身を屈め、強い瞳でこちらを見つめて来ます。

超さんは懐から、何かのカードを取り出しました。

 

 

「・・・アデアット!」

 

 

アーティファクトですか!

これは、純粋に驚きました。私の「知識」に彼女のアーティファクトなど、存在しません。

しかし呪文を唱えても、彼女の手にそれらしきアイテムは出現しません。

一瞬、超さんの両眼が紅く輝いたような気がしますが・・・。

 

 

「・・・フェイトさん、とりあえず前衛、お願いします」

「・・・僕もやるの?」

「あら、淑女(レディ)だけに戦わせて、自分は傍観だなんて・・・殿方として、許されるとお思いですか?」

「手厳しいね」

 

 

そんな会話をしながら、フェイトさんの背中に隠れるように移動します。

この間待ってくれるのですから、超さんも律儀ですよね。

 

 

「後で膝枕して差し上げますから、そんな冷たいことを言わないでくださいな」

「それなら仕方無いね・・・・・・何?」

 

 

思わず、まじまじとフェイトさんを見つめてしまいました。

貴方・・・それで良いんですか? 軽くありません?

 

 

「彼女は正体不明のアイテムを使うようなので、気を付けてくださいね。でも例の瞬間移動もどきは、もう出ないかと思いますので」

「構わないよ。そう言うのには、キミで慣れてる」

「あら・・・経験豊富なことで」

「おかげさまでね」

 

 

フェイトさんと視線を交わし合った後、フェイトさんは前へ、私は後ろへ。

最後に超さんを見つめた後、蝶の絵が描かれたカードを取り出し、砕きます。

それから・・・。

 

 

右眼、『複写眼(アルファ・スティグマ)』を発動しました。

 

 

 

 

 

Side 超

 

ハカセが詠唱完了するまで7分弱、それまで、なんとしても時間を稼がねばならないネ。

強制認識魔法さえ発動してしまえば、私達の勝ちネ。

学園結界はその機能を最小にまで失い、ポイントの過半は陥落している。

今の状態でも、即座の認識は無理でも、魔法使い達の認識阻害を無効化することはできる。

 

 

しかし、その時間稼ぎが尋常では無いネ。

相手は、あの2人なのだから。

 

 

「ラスト・テイル・マイ・マジック・スキル・マギステル」

 

 

呪紋回路の封印を解き、魔法の詠唱を行う。

出し惜しみはしない。

多少のリスクを覚悟してでも、抑え込んでみせるヨ!

 

 

「・・・魔法を・・・」

「私が魔法を使えるとおかしいカ? 私は、サウザンドマスターとネギ坊主の子孫ヨ?」

「サウザンドマスターの・・・?」

 

 

フェイトが、訝しそうに私を見る。

無理も無いネ、よもや私が未来から来た火星人だとは思うまい。

 

 

しかし、それも一瞬、フェイトは即座に私に肉薄してきたネ。

その瞬間に、両眼に「装着」した『千の未来』が発動する。

フェイトの右拳は空を切り、カウンター気味に繰り出した私の右掌底が、彼の腹を打つ――直前に、フェイトが身体を捻り、それをかわした。

 

 

次の行動。

くんっ・・・と、フェイトが身体を回転させ、私の背後に回り込む。

そこから、左手の手刀を私の首筋に叩き込もうとするも、やはりそれも、空を切るネ。

タンッ・・・と、距離を取り、右手を前に掲げる。

 

 

「『火精召喚(エウオカーテイオー・スピリトウアーリス)槍の(デ・ウンデトリーギンタ・)火蜥蜴29柱(サラマンドリス・ランキフエリス)』!」

 

 

さらに次の行動。

呼び出した炎の精霊が、フェイトに殺到する。

しかしこれは当然、フェイトの多重魔法障壁の前には意味を成さないネ。

本命は、この次・・・目の前に幾十もの跳躍弾を展開し、一斉に射出。

 

 

キュボボボボボ・・・と、着弾と同時に展開される黒い渦。

 

 

さらにさらに次の行動。

炎の精霊の爆発によって生じた煙から、フェイトが飛び出してくる。

しかし私は、それすら予測、いや視えて・・・。

 

 

「・・・散りなさい」

 

 

その瞬間、桜色の花弁が、私の周囲を取り囲んだネ。

これは・・・アリア先生カ!

 

 

「『千本桜』!」

 

 

私目がけて殺到してくる、千本の刃。

しかし、それもかわせる、いや、かわせるようになって―――。

 

 

「かっ・・・!」

 

 

千本の刃をかわせるように行動した、次の瞬間。

フェイトの右拳が、私の腹部に突き刺さっていたネ。

だが、それだけネ。私は震える身体を叱咤して、跳躍弾を構えた右拳を振り下ろそうと・・・。

 

 

瞬間、再び殺到する千の花弁。

それを視界に収めるだけで、私の眼は、思考は一杯になる。

千の花弁が視せる『千の未来』で、私の行動は制約されてしまう。

次の瞬間には、視えない場所から放たれるフェイトの攻撃で、私は吹き飛ばされてしまう。

 

 

・・・何と言う膂力!

触れ合っている段階から、気迫だけでここまで飛ばされるか・・・!

飛行船の上からも弾かれ、空中でなんとか静止する。

 

 

「ああ・・・なるほど、やはりソレが、貴女のアーティファクトなのですね」

 

 

右眼を紅く輝かせたアリア先生が、そう言った。

フェイトの横に並び、空中で踏みとどまる私を見上げながら。

 

 

「その・・・コンタクトレンズが」

 

 

 

 

 

Side ハカセ

 

む、むむむ!

ここに来て、超さんが苦戦しています。

とはいえ、私も強制認識魔法の詠唱を止められません。

これは、中断できないタイプなんです。

 

 

あと3分強。

なんとしても、それだけの時間は欲しいです。

早口で言えば良いと言う物でもないので。

 

 

「貴女のアーティファクトは、コンタクトレンズ型の物ですね、超さん」

「まぁ・・・そうネ」

 

 

アリア先生の言葉に、超さんは否定しません。

カシオペア、アーティファクトと言う切り札を封じられた超さんには、会話でしか時間稼ぎができないからです。

魔法と魔法具は、アリア先生に対しては効果が無いと、超さんは言っていましたから・・・。

 

 

「アーティファクト・・・『千の未来』と言うのが、その名前ヨ」

「なるほど、言い得て妙ですね・・・千種の未来を見せるアイテム。そして、千種の未来しか視えないアイテム・・・」

 

 

アリア先生が説明した超さんのアーティファクトの効果は、以下のような物でした。

アーティファクト『千の未来』。

効果は、対象の未来行動を最大千通りまで視せると言う物。

さらに特異な点は、その千通りの未来の中で「最善の行動」を知ることができると言う効果。

 

 

ただし、欠点がいくつかあります。

 

 

第一に、千通り以上は視えない。

たとえば先ほどのアリア先生がやったように、千の攻撃を放たれると、それ以上の物を視ることができない。

現に、あの白髪の少年の攻撃をかわせなくなりましたから。

言ってしまえば、千人までの人間の行動は視えても(その場合、一人につき一つしか行動予測ができません)、千一人目の未来は視えない。

よって、多人数で来られれば来られるほど、超さんのアーティファクトの効果は薄くなります。

 

 

第二に、使用者への負担が重いと言うこと。

千種類もの未来予測を処理するためには、使用者の脳に多大な負担をかけます。

だから、連続使用もなるべく控えるべきです。

 

 

「流石ネ・・・アリア先生。これは結構、レアなアーティファクトなんだがネ・・・」

「まぁ・・・これでも、解析とかは得意なのですよ。対象が小さかったので、少々手間取りましたが」

 

 

控えめな自慢。

ある意味、アリア先生らしいですね。

しかし、腑に落ちませんね。

 

 

超さんが時間を稼いでいることは、アリア先生達にもわかっていることなのに。

なぜ、わざわざそれに付き合うようなことを・・・?

 

 

「だが、それがわかったから、どうだと言うのカナ?」

 

 

超さんが不敵に笑ったその時、4つ目のポイントが落ちました。

光の柱が新たに立ち昇ったあの場所は・・・例の「田中さん」のいる場所ですね。

それに伴い、強制認識魔法の効果が増大します。

詠唱も・・・。

 

 

その時。

 

 

「・・・世界樹が・・・」

 

 

アリア先生の呟きに、超さんが振り向きました。

私も、詠唱を続けながら、そちらを見ます。

世界樹が・・・。

 

 

世界樹が、大発光を!

 

 

「ハカセぇっ!」

「・・・く!」

 

 

超さんが叫び、アリア先生達が慌てて私の方を見た。

しかし、詠唱は終わりました、後は発動させるだけです!

 

 

世界樹の枝葉の全てから、おびただしい量の光の玉が発せられました。

世界樹の魔力が、臨界点に達した証!

予定より、47秒早いですが・・・。

強制認識魔法発動の、絶好のタイミング!

 

 

「――――『強制認識魔法』、発動!」

 

 

カッ・・・と、私を中心に、光の柱が・・・!

これで・・・!

 

 

「私達の・・・勝ちネ!」

 

 

超さんが、そう叫んだ直後。

超さんの身体が、下から放たれた光の槍に貫かれた。

 

 

「・・・!?」

 

 

・・・私が驚く中、アリア先生は。

 

 

「さぁて・・・それはどうでしょう?」

 

 

アリア先生は、クスクスと笑いながら・・・。

パチン、と、指を鳴らしていました。

 

 

 

 

Side クルト

 

「ふむ・・・案外、即席でも上手く行く物ですね」

 

 

上空―――それも、4000m上空―――を眺めながら、そう呟きます。

はるか遠方の飛行船は、世界樹の発光も手伝って、かろうじて捉えることができます。

こちらを誘導するように蠢く、桜色の光も。

 

 

視線を転じれば、私が陣取る世界樹前広場にも、敵ロボット軍団が侵攻して来ていました。

そう、私がアリア様に任されて陣取る、この世界樹前広場に。

大切なことなので、二度言いましたよ。

 

 

中には、ガトリングや重砲などで武装した強力な固体も存在します。

しかし、強力な固体が敵だけだとは、限らない。

 

 

「雷鳴剣!」

「葛葉、右から来るぞ!」

「わかっています!」

 

 

葛葉刀子さん、と申しましたか、その女性の放つ雷撃が、周囲のロボットを吹き飛ばします。

神多羅木さんと言う、無詠唱魔法を多用される魔法先生も、屋根の上からそれを援護しています。

 

 

「きばれや、お前らぁ!」

「やかましい、貴様らのような、ギャグとユーモアの差もわからんような連中に言われたく無い!」

「西洋魔法使いは、細かいからあかんわ!」

「ノリで突破しかできん旧世界の遺物が、何を言うか!」

 

 

関西の術者が符術と簡易式神で敵の銃弾をガードし、我がメガロメセンブリア兵がその間から敵を魔法槍で砲撃する、と言うような姿も、随所で見ることができます。

その中には、通信・支援を行う麻帆良の職員や魔法生徒の姿も。

敵対勢力を糾合するには、共通の敵を用意してやれば良いのですよ。

 

 

そして、これら連合軍の存在以上に、我が軍の戦線を支えているのは・・・。

 

 

「拡散斬光閃!」

 

 

四方八方に気の斬撃を飛ばし、周囲のロボットを問答無用で排除している、あの女性の存在です。

素子と言う名前、そしてあの剣技。

さらに彼女がいるだけで、関西勢の士気と勢いが跳ね上がります。

 

 

「素子様ぁ! 一時方向から新たに50機でさぁ!」

「殲滅します。支援をお願いします」

「あい、さー! ゴルァ、素子様に続くぞ野郎共ぉっ!!」

「「「いぇあ――――っ!!」」」

「そう言った言葉遣いは、感心しませんね」

「「「お供させていただきます、オラァ―――――ッ!!」」」

 

 

そう言うわけで、戦線を支えるのは何とかなりそうですね。

湖岸部隊だけでなく、拠点防衛を終えた残存の部隊も、スケジュールに従って集結してきています。

全ては、我が計画の内です。

 

 

私が左手を掲げると、ザッ・・・ガチャッ、と、背後から音が。

そこには、『精霊式120mm迫撃砲RT』を装備した、我が直属の砲撃分隊。

迫撃砲とは言っても、射程は8000m強、精霊補助の上で魔力の砲弾を飛ばすので、直上方向に撃てば、大砲と変わらぬ効果が発揮できます。

外しても、着弾はロボット軍団の中心ですしね。

 

 

「青二才に、用兵の何たるかを教えて差し上げなさい」

 

 

左手を、前に倒します。

次の瞬間、九つの火線が夜空を駆けました。

桜色の光の、導くままに。

 

 

 

 

 

Side タカミチ

 

硬い・・・そして、速いな。

何より、以前はただの科学制御のロボットだったのに。

 

 

「『麻帆良ヨ! 私ハ帰ッテキタ!』」

 

 

10m程もある巨大な刀を振り下ろしてくる、ロボット。

居合拳の数発程度では、彼を止めることはできない。

『豪殺・居合拳』でようやく、拮抗することができる。

 

 

理由は、彼が科学の力だけでなく、魔導の力も備えているからだ。

おかげで、擬似的だけど魔法障壁も展開されている。

 

 

「超鈴音・・・何と言う物を!」

 

 

弐集院先生の言葉に、返事をしないまでも肯定する。

こんな兵器、魔法世界でも見たことが無い。

魔法と科学の融合物。

しかも、自我を持っているかのような行動!

 

 

「一発ハ、一発デス」

「・・・?」

「アノ人ヲ殴ッタ貴方ハ、殴ラレネバナリマセン」

 

 

言っていることの意味はわからない。

ただ、どうも彼が「個人的」に僕に用があることはわかった。

けど、ここの拠点を奪還せねばならない。

 

 

時間が無いから、急ぎで行くよ。

 

 

「『豪殺・居合拳』!」

 

 

至近距離から直接、『豪殺・居合拳』を叩き込んだ。

それは擬似障壁を突破し、彼の両足を砕いた。

さらに背後に回り、背中の移動用と思われる機械―――スラスターって言うのかい?―――を、破壊する。

さらに、彼が持っていた巨大な刀を、やはり『豪殺・居合拳』で叩き折った。

 

 

ここまでやってようやく、彼は地面に倒れた。

まぁ、中枢部分は壊していないから、修理すればまた動くだろう。

 

 

「高畑君!」

「弐集院先生、お待たせして・・・」

 

 

ガシッ。

 

 

「申し訳な・・・!」

 

 

突然、足を掴まれた。

振り向けば、あのロボットが腕を伸ばし(ロケットパンチ的な物で)、僕の足を。

 

 

即座に、居合拳で腕と彼の身体を繋ぐケーブルを千切り、吹き飛ばす。

しかし、その直前にケーブルを巻き戻したらしいロボットが、そのままの勢いで僕に衝突してきた。

咸卦法で強化されている僕の身体には、ダメージは無い。

だが、重量差はある。

 

 

その場から吹き飛ばされ、数m背後にあった壁に叩きつけられる。

と言うより、彼の身体ごと押し付けられている。

 

 

「いけない、『ニクマン・ピザマン・フカヒレマン』!」

 

 

弐集院先生が、魔法を唱えようとしている。

しかしそれよりも早く、ロボットのかけているサングラスの奥が、青く光ったような気がした。

 

 

「『Hasta la vista,baby』」

 

 

地獄で会おうと言われた、瞬間。

彼の身体が、高濃度の熱と魔力で満たされ・・・これは、自爆か!?

なんてありがちな・・・と毒づきながら、咸卦法を強める。

 

 

そして、衝撃に備えて・・・。

 

 

「・・・・・・?」

 

 

いつまで経っても、来るはずの衝撃が来ない。

不思議に思って、前を見ると・・・。

 

 

ロボットが、動きを止めていた。

それどころか、腕をパージして、僕の上からどいた。

な、なんだ・・・?

胸の苺のアップリケが、淡く輝いている。

 

 

「『龍力攻奴(ろんりこーど)』発動、確認致シマシタ。基礎プログラム書キ換エ、優先順位ヲ入レ替エマス。初期化実行、新マスターコードヲ発行。新設定ニ従イ、予定ポイントニ向カイマス」

 

 

何か、よくわからないことを言いながら、彼は僕達を無視して移動を始めた。

残った片腕のロケットパンチを上手く使って、その場から消える。

 

 

しばらく、僕と弐集院先生は、呆然とその場に立ち尽くしていた。

な、何だったんだ・・・?

 

 

 

 

 

Side アーニャ

 

鬼ごっこと言うには、あまりにも無様だわ。

そういえば昔は良く、アリアやバカート達とやったわね。鬼ごっこ。

 

 

アリア、意外とムキになる所あるから・・・全然、手加減してなかったわね。

ロバートは、ヘレンばっか追いかけてたし。

ミッチェルは決まって、部屋の中に逃げ込んでたし。

ドロシーはひたすら、「お姉さま~」だったし。

 

 

「でもあんたとは、結局、そんな遊びは一回もしなかったけどね」

 

 

私自身の体内の熱を操作して、瞬間的に加速する。

そして左手で掴んだネギの後頭部。

それをそのまま、勢い良く地面に叩き付けた。

 

 

最初の場所から、随分と移動したみたいだけど・・・ここは、何? 女子寮?

誰かに助けでも求めるつもりだったの?

 

 

「それとも、あの一般人の子達でも盾にしようとでもしたの?」

「そんな、こと・・・するわけないだろ!」

 

 

跳ねるように、ネギの片足が私の顔を蹴ろうと動く。

私はネギの頭から手を離すと、数歩下がってそれをかわした。

それをチャンスと思ったのか、ネギが例の指輪を振るってきた。

 

 

「『來のかたの獣よ」

「ネギ」

 

 

パシッ・・・と、ネギの指ごと、その指輪を掴んだ。

驚いたような、ネギの顔。

私は、それから。

 

 

その指を、折った。

 

 

「・・・っつあああぁぁっ!?」

「あんたに対しては、同情も憐憫も感じないわ」

 

 

私の手に残った金の指輪を見ながら、私は溜息を吐いた。

もっと早く、誰かがこうしていれば良かったのかしら。

 

 

この子から、力も権利も、何もかも取り上げて。

叱るべき時に、ただ叱り付ける誰かが。

アリアも私も、そこの判断は下手だったし、ネギの言うことは全部通るような環境だったから。

と言うか、同年代の私やアリアが、何でこいつの面倒を見なくちゃいけなんだろう。

そう言うのは、大人の仕事なのに。

 

 

腕を抱えて蹲るネギを見下ろしながら、私は、自分でもビックリするくらいに冷めていた。

だからもう、付き合う気も無かった。

 

 

ゴッ・・・と、私の炎魔法を、『アラストール』が底上げする。

右拳に炎を纏って、ネギに向けて振り下ろそ・・・。

 

 

「やめてくださいっ!!」

 

 

聞き覚えのある声が、そして見覚えのある女の子が、飛び出してきた。

ネギを抱き締めて、私から庇うように。

 

 

「やめてください・・・!!」

 

 

宮崎のどか・・・だったかしら。

そんな名前だったと思う。

宮崎さんは、ネギを庇いながら、怯えた目で私を見た。

 

 

「や、やめて・・・ネギせんせーに、酷いことしないでください・・・!」

「・・・貴女には、関係の無い話だわ」

「か、関係なく無いです。わた、私は、ネギせんせーの、パートナーです・・・から!」

 

 

ああ、そう言えば、仮契約してたんだってけ。

それを言われると、私としても無視はできなかった。

 

 

「ね、ネギせんせーは、悪くないんです・・・!」

「・・・」

「こ、今回は、その・・・でも、ネギせんせーは本当は優しくて、良い先生なんです・・・!」

「・・・そうね、ネギは、優しいかもね」

 

 

私の言葉に、一瞬だけ宮崎さんの顔が輝く。

でも、私の次の言葉で、再び曇ることになる。

 

 

「でも、その優しさは全部、自分(ネギ)のためよ」

 

 

 

 

 

Side 超

 

真下から、砲撃のような一撃が私を襲った。

障壁も粉砕されて、右の脇腹に灼熱感。

肋骨が何本か折れた、その内の一本が、内臓を傷つけたかもしれない。

口から、少なくない血が流れる。

 

 

でも、それはどうでも良いネ。

それよりも、何故、何で。

 

 

「何で・・・『強制認識魔法』が発動しない!?」

 

 

上空1万8000mまで打ち上げられた大魔法は、世界樹の魔力を吸い上げて発動する。

それが、何で発動しない!?

 

 

「その世界樹の魔力が、足りないからじゃ無いですか?」

 

 

耳に届くのは、機嫌の良さそうなアリア先生の声。

世界樹の魔力が足りない?

バカな・・・有り得ないネ! 大発光を起こす程に魔力を溜めた世界樹ヨ!?

この2年間、計算を続け、今日が最善の環境だと・・・。

 

 

だが、下から絶え間なく砲撃されている私には、考えをまとめるゆとりも無いネ。

な、何・・・いったい、何がどうなって。

 

 

「『千本桜』+『火(ファイアリー)』・・・」

 

 

私の周囲を取り囲んだ桜色の花弁の全てに、ボッ、と火が灯ったネ。

そしてそれらが、私の周囲を激しく旋回した。

 

 

「『千本の業火(ホノオノウズ)』!」

「ぬぅあああ、あ・・・!」

 

 

炎とそれを纏う刃は、大したことが無いネ。

しかしそれに取り囲まれた私の周囲の酸素が、急激に失われていく。

思考力が、奪われていくのを感じる。

さらに不味いことに、これでは。

 

 

「が、ぐ・・・!」

 

 

砲撃の、良い的ネ!

精霊で制御された砲撃は、寸分の狂い無く私に直撃する。

この状況では、『千の未来』も効果をなさない。

魔法具は、アリア先生の前では使えない。

 

 

「ぐ・・・」

 

 

フラフラになりながらも、炎の渦の薄い所から、外に出る。

だがそれは、アリア先生に誘導されただけだと、すぐに気付いたネ。

なぜなら・・・。

 

 

渦を抜け出た次の瞬間、小さな手に、顔を掴まれたからネ。

それも、小さな手からは想像もできない程の、強い力で。

頭蓋骨が軋む音が、頭の中に響く。

 

 

「お前は、私が怖いんだ、超鈴音」

 

 

その声に、心臓が締め付けられたかのような錯覚に陥る。

 

 

「私が怖いから・・・一番最初に私を消しに来た。私が怖いから、私をコケにして、自分の目の届く場所に置きたがったんだ」

 

 

まさか。

そんな、そんなはずは無いネ。

だって、貴女は私が。

 

 

「まさか本気で、私が貴様の策にかかったと思ったのか・・・? 本当に私が、慢心するままに不意を突かれたと、思っていたのか?」

「あ、あ・・・!」

「私にも、学習能力と言う物はあってな。15年前に慢心から罠にかかり、封印されてからは・・・自分を戒めて生きている」

 

 

まさか。

まさか、まさか、まさか。

 

 

「ああ・・・良い物だな、やはり。罠に嵌めたはずの相手に、逆に嵌められた人間の顔は」

 

 

ぱ・・・と、顔を掴んでいた手が、離れる。

開けた視界に飛び込んできたのは、金髪の少女(エヴァンジェリン)の顔。

そして私は・・・。

 

 

私は、何もわからぬままに、殴り飛ばされた。

 

 

 

 

 

Side さよ

 

『戻(リターン)』と呼ばれるカードがあります。

端的に言えば、過去に戻るためのカードです。

これを使って、私とエヴァさんは戻って来ました。

 

 

3時間後に集合した、エヴァさんと私が。

 

 

「お疲れ様です、相坂さん」

「刹那さんこそ、ここまで来るの、大変だったでしょ?」

 

 

ここは、世界樹の中枢。

魔力が溜まる、世界樹の中心。

刹那さん達が予定の時間までにここに到達していなければ、どうにもならなかった。

 

 

3時間後に飛ばされた私とエヴァさんは、影を使った転移で、刹那さんのいる場所に移動しました。

つまり、3時間後のここで、私達と刹那さん達は集合する計画だったんです。

エヴァさんが封印されるのも、折り込み済みでした。

だから念のため、もう一人、3時間後に飛ばされる必要がありました。

 

 

これは、飛ばされた人間が同じ場所で解放される、と言うアリア先生の「知識」があって初めて可能になる計画でした。

私がエヴァさんを封じていた『強欲王の杭』を引き抜き、封印を解除。

後は未来の刹那さん達と合流して、世界樹の魔力を使って『戻(リターン)』です。

 

 

「はぁ~、流石に疲れたえ」

「木乃香さんも、お疲れ様です」

「ええよ~、うちは『光(ライト)』と『灯(グロウ)』で世界樹の発光を偽造しただけやし」

 

 

そう、3時間後と今の世界樹の魔力をリンクさせて、『戻(リターン)』の座標を固定した。

つまりその分、世界樹の魔力を使うから・・・大発光は最低でも数時間、遅れます。

それを、超さん達に気取られないようにするためには・・・。

 

 

エヴァさんを除けば、私達の中で最大の魔力量を誇る、木乃香さんの力が必要でした。

『光(ライト)』と『灯(グロウ)』の二枚のカードを使って、大発光を偽造するために。

 

 

「いやぁ、今日はたくさんのお客様が来ますねぇ・・・」

「あ、クウネルはんも案内、ありがとなぁ」

「いえいえ、お礼はそうですね、この衣装を着てくれれ」

 

 

クウネルさんが何かの服を取り出そうとした時、クウネルさんの足元に、白い西洋剣が突き立った。

ビィン・・・と、音を立てるそれは、刹那さんが投げた物です。

 

 

「・・・何か、言いましたか。クウネル殿」

「いいえ、何も?」

 

 

刹那さんの言葉に、クウネルさんはにこやかに首を横に振りました。

でも、その額には汗が滲んでいます。

 

 

あれは、『白い太陽の剣』。

クウネルさんが効果を知っているとは思わないけど・・・。

あの剣で幻を斬ると、自身の幻を投影していた術者も同じように傷を負う。

つまり、あれで刺されると、本体のクウネルさんにも傷がつくわけです。

 

 

・・・そういえば、すーちゃん、どうしてるかな。

 

 

 

 

 

Side アリア

 

「・・・本当、人手が必要な計画だったんですよね」

「し、しかし・・・そうだとしても!」

 

 

私の解説に、ハカセさんが、納得できないと言わんばかりの表情を浮かべています。

彼女は、自分の周囲に計器のようなウインドウを展開すると。

 

 

「たとえ、外面上は偽造できても・・・計器を見ていた私が、見逃すはずが!」

「ああ、それは・・・コレですよ」

 

 

つい・・・と私が指を掲げると、ハカセさんの足元から、一羽の蝶が。

薄青色の、シーアゲハ。

名を、『C』。

 

 

「この蝶も、立派な魔法具でしてね・・・電気で動く機械を遠隔操作できます」

「え、遠隔操作・・・でも、いつの間に」

「フェイトさんが頑張っている間に、強制認識魔法の魔方陣の光に紛れて、少々」

 

 

傍のフェイトさんに、ふわりと微笑みかけながら、そう言いました。

私の能力の最大の特徴は、「万能性」です。

魔力が続く限り、相手が予想もできない行動を取り続けること。

 

 

最強でも、無敵でも、全能でも無い。

良く言えば万能、悪く言えば器用貧乏。

それが、私の力。

 

 

「まぁ、これ以上の説明は不要でしょうから・・・QED、とさせていただきますね」

「待っ・・・」

「『そして誰もいなくなるか?』」

 

 

ハカセさんに背を向け、一枚のスペルカードを発動。

四方八方から「ババババーン!!」と言う、弾幕が張られたような音が響いた直後、どさっ・・・と、誰かが倒れる音。

・・・怪我一つありませんよ? 気絶するだけですから。

 

 

ふと、飛行船の内部と外を繋げる階段が、視界の端に映りました。

そこには、四葉さんの姿が。

ペコリ・・・と頭を下げる四葉さんに、私も目礼を返します。

ハカセさんのことは、四葉さんに任せておけば大丈夫でしょう。

 

 

「うむ、流石は私の従者だ。私も超を殺したんじゃないかと思う程の力で殴れたし、満足だな」

「そうだね・・・吸血鬼の真祖(ハイ・デイライトウォーカー)

「まぁ、強いて言えばやはり、超のロボット軍団を薙ぎ倒してみたかったかな」

「・・・派手好きなことだね、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル」

「そうか? あっはっはっはっ・・・・・・・・・ん?」

 

 

超さんを殴れて上機嫌だったエヴァさんが、受け答えしているフェイトさんに気が付きました。

満面の笑顔が、固まりました。

あ・・・不味いかも。

 

 

「き、きぃさぁまああああああああぁぁぁぁぁ――――――っっ!!」

 

 

物凄い声量、物凄い魔力。具体的に言うと、目の色が反転するくらい。

飛行船が、今にもバラバラになるんじゃないかってくらい、揺れました。

見た目が多少変わっていても、普通に見破られましたね。

 

 

「ちょ、ちょっと待ってください、エヴァさん!」

 

 

慌てて、エヴァさんとフェイトさんの間に割り込・・・うわ、殺気が半端無い!?

 

 

「そこをどけアリア! そいつが殺せない!!」

「い、いえ、ちょっと殺されるのは不味いと言うか・・・」

「・・・難儀なことだね、エヴァンジェリン。僕を倒した所で、何一つケリなどつきはしない・・・」

「え、ここでその台詞ですか!?」

 

 

実は、フェイトさんも相当テンパッてますか!?

そしてエヴァさん、相当キてますか!?

 

 

「何故、そいつを庇う! そいつはお前を殺しかけた男だぞ!?」

「ま、まぁ、そうなんですけど・・・」

「なら・・・ん、なんだ、そのブレスレット・・・お揃い!?」

「え・・・うぁ、これは違くて・・・フェイトさんもそれ隠して!」

 

 

フェイトさんは、きょとんとした顔で私を見ると、わざわざブレスレットをしている方の腕を掲げて。

これ? みたいな顔をしました。

・・・って、フェイトさぁぁぁんっ!?

 

 

「どぉゆうことだアリア・・・私だってお揃いなどしたことが無いのに・・・!」

「そ、その、ですね・・・エヴァさんも何だか本音が透けて見えますよ!?」

「おい貴様! アリアとはどういう関係だ!? 答え次第では、首を刎ねるぞ・・・!!」

 

 

しゃきん、と魔力の刃を腕に作って、エヴァさんが言いました。

あれはたぶん、どんな答えでも首を刎ねるつもりです。

 

 

一方でフェイトさんは、私を見て、エヴァさんを見て、最後にまた私を見てから。

 

 

「・・・わからない」

「あ・・・」

 

 

胸の奥が、少し痛みました。

そう、なんですか。わからない、ですか・・・。

まぁ、私も良くわかりませんし・・・。

 

 

「けど・・・」

 

 

続けて、言葉を紡ぐフェイトさん。

フェイトさんは、無機質な瞳で、飾り気の無い、素直な言葉を。

 

 

「僕は・・・」

 

 

シンシア姉様、人の気持ちとは、わからない物ですね。

直接的でなくても・・・。

 

 

 

アリアは、嬉しかったから。

 

 

 

 

 

Side 千雨

 

「ラブコメってんじゃねえぇ―――――っ!!」

 

 

この、リア充が!

そんなことを考えながら、ガチャガチャとキーボードを叩き続ける。

人が必死こいてヤバい映像や情報の外部流失を防いでんのに、何やってんだあいつら!

 

 

私の周囲には、ぼかろ共が映し出す麻帆良中の映像やデータが、空中に浮かんでいる。

SFとかで良くある、宙に浮くウインドウだな。

と言うか、アリア先生を含めて知ってる顔がいくつかあるんだが!?

 

 

「アリア先生は、比較的まともだと思ったんだけどな・・・」

『またまたぁ、10歳で教師の時点でアウトですよぉ』

「ま、そうか・・・ってお前ら、アリア先生知ってんのかよ」

『おかーさんですから』

「へー・・・何ぃ!?」

『あ、禁則事項でした。てへり☆』

 

 

前々から気になってた創造主とか、おかーさんとか・・・それ、アリア先生かよ!?

くっそ、社会的に抹殺・・・と言うか、本名をハンドルネームにすんなよ!

 

 

「だぁっ! もう良い、とにかく、学園のシステム中枢部の敵プログラムを排除すんぞ!」

『あいあいさー!』

「魔法なんて、広められてたまるか・・・夢と現実をごっちゃにされてたまるか!」

『夢と、現実・・・ですか』

 

 

・・・!

ぼかろじゃねぇ、この声は!?

 

 

「ぼかろ!」

『ぐらんどまざーです。大丈夫、こっちの正体はバレてません、音声もアトランダムに変声されています!』

 

 

なら、私のことがバレたわけじゃねぇってことか・・・。

 

 

『比較的過酷な人生を送ってこられた超さんに言わせれば・・・』

「・・・」

『ここでの生活の方が、よほど夢のようだとおっしゃっていました・・・』

「は・・・知るかよ、そんなの」

『・・・!』

 

 

超の奴には悪いが、あいつが何を望んでいるにしろ、それは私には関係の無い話だ。

あいつだって、私の都合を考えて事を起こしたわけでもねーだろ。

なら、私が超の都合を考えてやる義理は無い。

 

 

それに、夢だか何だか知らねーが、ここに生きている以上、ここが私の現実だ。

私は私の大好きな、この現実を守る。

てめーらの好きには、させねぇ。

 

 

「・・・以上だ」

 

 

タンッ・・・と、エンターキーを押して、エンド。

それで、全ての色が塗り変わって行った。

 

 

 

 

 

Side 超

 

「か、は・・・う・・・ぐ、ぅ・・・」

 

 

4000m上空から、叩き落された。

普通なら問題無いのだガ、飛行ユニットは熱でイカれたし、カシオペアも砲撃で壊れていた。

魔法障壁以外、防御手段が、何も無かったネ。

移動用の魔法具も、あんなスピードで落下していれば、座標固定ができない。

 

 

うぷ・・・と、口から生温かい液体が、溢れ出たネ。

月明かりに照らされるそれは、真紅の色。

 

 

「ぐ・・・ふふ、ふ・・・エヴァンジェリンを消した時計塔に飛ばされるとは、皮肉だネ・・・」

 

 

そう、ここは時計塔。

今は、私が衝突したせいで、頂上が崩れてしまっているガ。

 

 

不意に、私の前に誰かが立った。

誰かと思い、顔を上げれば・・・苺のアップリケが、擦れる視界に映った。

例の、田中さんカ・・・。

 

 

「ち、ちょうど良かった、ネ・・・私を、運んで・・・」

「了解致シマシタ」

 

 

田中さんは、残った最後の腕を私に向けて、ロケットパンチ。

 

 

「・・・ガッ!?」

 

 

首を掴まれ、そのまま時計塔の柱に叩きつけられる。

後頭部を強く打ち、意識が飛びそうになる。

 

 

「ターゲット、捕縛致シマシタ」

「な・・・なぜ・・・?」

「魔法具、『龍力攻奴(ろんりこーど)』」

 

 

朦朧とする意識の中で、|金髪の少女(エヴァンジェリン)と、|白髪の少年(フェイト)を伴い、時計塔の縁に降り立った少女の声が聞こえたネ。

 

 

「本来は、他人の使い魔やアイテムを支配して自分の物にする魔法ツールなのですが・・・多少アレンジして、田中さんのアップリケに仕込ませていただきました」

 

 

わざわざ私に説明しながら、アリア先生は携帯電話を取り出すと、どこかに電話をかけたネ。

この上、何を・・・。

 

 

「・・・ああ、瀬流彦先生ですか? お疲れ様です、アリアです」

 

 

ま、魔法先生、カ・・・。

その時、時計塔の階段の方から、誰かの話し声が。

 

 

「なんや、面倒やな、もう・・・って、大破壊やないか!?」

「かー、出遅れたなーこれは」

「結局、人間は斬れませんでした~」

 

 

関西呪術協会の・・・!

天ヶ崎千草、犬上小太郎、月詠・・・!

 

 

「おーう、アリア。敵の航空方が沈黙したんだが・・・って、相変わらず容赦ねーなオイ」

 

 

アリア先生達の後ろで、箒に乗った赤毛の少年ガ。

ローブのあの校章は、メルディアナ。

しかもアリア先生の知人で、赤毛・・・ロバート・キルマノック、カ・・・!

 

 

「ええ・・・では、それで」

 

 

ぱたん、と携帯電話を閉じて、アリア先生が私を見た。

どこか、苦笑しているようだったネ。

 

 

「瀬流彦先生達もじきに来ます」

「ち・・・雑魚ばかり集まって、何がどうなるというんだ?」

「まぁまぁ、エヴァさん・・・・・・あ、それと・・・ジョリィさん、いますか?」

「は、これに」

 

 

アリア先生の傍に、いつの間にか黒髪の女性が跪いていたネ。

ジョリィ、と・・・!

 

 

「本当に、いたんですね・・・」

「は・・・畏れ多いことながら」

「まぁ、それは後でも良いですし・・・超さんも、申し訳ありませんね」

 

 

アリア先生が、不意に私に声をかけてきたネ。

 

 

「何分、連合軍と言うことになっていますし、私としても、身内だけで独占するとロクなことにならないことはわかっていますので・・・」

「・・・?」

 

 

何の話かは、わからない。

アリア先生は、本当に申し訳なさそうな顔で、しかし口元には笑みを貼り付けて。

告げた。

 

 

「<皆の手柄>にしないと、いけないんですよ」

 




エヴァ:
エヴァンジェリンだ! 見たか! やはり私はアレでは終わらなかったのだ!
くっくっく・・・超に拳を突き入れたあの瞬間は最高だったな!
今までの鬱憤も晴らせると言うもの・・・。
しかしだ!
あの白髪のガキは何だ!?
聞いていないぞ私は! 茶々丸、説明しろ!


今回の新規魔法具は、以下の通りだ!
「仙術超攻殻ORION」より龍力攻奴:月音様提供だ。
赤い『リボン』(FF):剣の舞姫様からだ。
ギャラリー様より、C (ムシウタ)だ。
そして誰もいなくなるか?:東方projectから、スコーピオン様だ。
灯 (CCさくら):haki様提案。
『デルフィニア戦記』から、『白い太陽の剣』:司書様だ。
120mm迫撃砲RT:黒鷹様提供だ。現実にある兵器だな。
「麻帆良ヨ!私ハ帰ッテキタ!」:黒鷹様提供だな。
「Hasta la vista,baby」:黒鷹様・月音様提供、と。
今回は特に多かったな・・・皆、世話になった。例を言う。


エヴァ:
では次回は、三日目の最後だな。
長かった学園祭も終わりだ。本当に長かったなな・・・。
超は、まぁもう良いとして。
あのガキは、絶対に認め・・・ではなく、許さん!
では、また会おう!

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