魔法先生ネギま~とある妹の転生物語~   作:竜華零

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主人公がネギを拒絶した翌日のお話です。

つまりネギが山にこもる時のお話です。

では、どうぞ。


第12話「冷える関係」

Side アリア

 

「あえて言いますが、私は当然のことをしたまでです」

 

 

無駄とわかっていても、抗ってみたくなる。

そういう時って、ありますよね? 

私にとって今がまさにその時です。

 

 

「・・・アリアちゃん、どうしてあんなことを言ったんだ」

 

 

現在学園長室にて、学園長及びタカミチさんに呼び出されています。

絶賛、尋問中です。

そしていい加減「ちゃん」付けで呼ばないでください。

 

 

「・・・では、どうすればよかったと? 茶々丸さんを見捨てればよかったとでも?」

「そうじゃない。でもあんなことを言う必要はなかったはずだ」

 

 

話題は昨日、ネギ兄様が茶々丸さんを襲った時のことです。

正確には、その時の私と兄様たちとの会話ですね。

まぁわかってはいましたけど、ばっちり見てやがりましたね。

 

 

「・・・最後の言葉は、特にいけない」

 

 

最後? ああ、あの「消えて」発言ですか。

でも、普通あれくらい言っても罰は当たらないと思うのですけど。

私の立場からすれば、特に。

 

 

「・・・ネギ君の行方がわからない」

 

 

あら、本当に消えたんですか。

後悔はしてませんけど、打たれ弱いですねぇ・・・。

と言うかそんな話を私にされましても、困るんですけれども。

 

 

「・・・・・・それが何か?」

「・・・ッ!」

 

 

パァン!

 

 

ため息混じりに答えた瞬間、頬を叩かれました。

気も魔力もこもらない普通の張り手だったので、魔眼での自動防御が発動しませんでしたか。

・・・・・・痛いですね。

 

 

「・・・他に言うことは、無いのかい。たった一人の兄だろう?」

「・・・・・・・・・」

 

 

・・・どいつもこいつも兄様兄様と・・・。

 

 

叩かれた頬を片手でさすりつつ、無感動にタカミチさんを見上げます。

その瞳は、怒りとも、悲しみともとれる感情に染まっていました。

・・・昔から。

 

 

「・・・相変わらずですね」

「え?」

「タカミチさんはネギ兄様のことは何かと世話を焼いていましたが・・・私には、何もしてくれない」

 

 

ネギ兄様の、ことばかり。

そう言うと、タカミチさんはうろたえたような表情を浮かべました。

私はタカミチさんを無視する形で、学園長と向かい合いました。

 

 

「・・・それで? 狙い通りのシナリオで、何か問題がありましたか? 学園長」

「む・・・」

「ありませんね? なら失礼させていただきましょう。私も暇ではありませんので」

 

 

ああ、もうひとつ言っておきませんと。

 

 

「・・・それと、いい加減監視するのをやめていただけません? ストーカーで訴えられたくなければ、ですがね」

 

 

というか、女子寮に監視つけないでください。

社会問題になりますよ?

一部の女生徒は気がついているようですし。

 

 

「・・・あぁ、タカミチさん」

「・・・なんだい」

 

 

学園長室から出る直前、タカミチさんに声をかけておきます。

まぁ、どうでもいいことですが。

 

 

「兄様と父を重ねるの、やめたほうがいいですよ?」

「そんなことは・・・」

「ならいいです、失礼しました」

 

 

そう言って、私は学園長室を出ます。

さて、風邪を引いた生徒の様子でも見てきますかね。

 

 

 

 

 

Side 学園長

 

「・・・本当に、恐ろしい子じゃ」

「・・・ええ」

 

こちらの手の内を全て看破しておるだけでも恐ろしいのに、あの年であの物の考え方。

母親に似たのかの・・・いや、環境がそうさせたのじゃろうな。

しかも・・・。

 

 

ちら、と何かを考え込むタカミチ君を見て、思う。

タカミチ君がネギ君にナギを重ねていることまで、見抜いておったとは。

 

 

「・・・恐ろしい」

 

 

わしはもう一度、呟いた。

そしてそれ以上に危険じゃとも、考えた。

 

 

 

このままでは、彼女は闇に堕ちてしまうかもしれぬ。

 

 

 

彼女はあまりにも周囲の人間を受け入れなさすぎる。

生徒を守るというあの姿勢も、職務に忠実というだけの気がしてならん。

 

 

・・・監視に関しては、超長距離からのもののみに絞るかの・・・。

近距離では、気付かれてしまう。

アリア君の魔法探査能力は、そこらの魔法先生など問題にならんほど高い。

下手に近づけば、暴発する可能性が高い。

といって、無視するわけには絶対にいかん。

 

 

なんとかしたいが、どうすれば良いか検討がつかん。

どうするのが良いか・・・。

場合によっては・・・・・・。

 

 

 

 

 

Side 明日菜

 

昨日の夜、結局ネギは帰ってこなかった。

 

 

木乃香は心配そうにしていたし、カモは探しに行こうとかうるさかったけど、私は構う気にはなれなかった。

昨日アリア先生に言われたことがどうしても気になって、気持ちの整理がつかなかった。

 

 

「姐さん、昨日からおかしいですぜ? 兄貴のことも放りっぱなしで」

「ちょっとね・・・」

 

 

正直、ネギの手伝いはしてあげたいと思う。

ちょっと、いやかなり抜けてるやつだけど、一生懸命なのはわかる。

そういうのが報われないのは、気に入らない。

 

 

でも、だからって、犯罪者になるのは困る。

それでも見てられない。

そういう気持ちで手伝うのは、だめなの・・・?

 

 

「・・・ねぇ、ネギがしようとしてることって、そんなに危ないの?」

「そ、それは・・・う~ん」

 

 

危ないってことね。

 

 

「兄貴は、なんというか、よくも悪くも一直線というか、なんというか・・・」

「一生懸命、お父さんを追いかけてるのよね・・・」

「それは、そうっスね」

 

 

私は両親の記憶がないから、そういう気持ちはあんまりよくわからない。

でもやっぱり、がんばってるネギの姿を見ていると・・・いてもたってもいられなくなる。

 

 

 

私は、どうすればいいんだろう・・・?

 

 

 

 

 

Side ネギ

 

あれから一晩、長瀬さんと山で過ごして、いろいろと考えた。

自分の力のこと、魔法使いのこと、そして、これからのこと。

アリアの言うとおりだった。

僕は、周りの人たちに迷惑をかけてばかりだった。

 

 

アリアに嫌われるのも、仕方がないのかもしれない。

 

 

謝ろう、そして、今度はちゃんとするんだ!

 

 

そう思って、まずエヴァンジェリンさんの家に来ると、エヴァンジェリンさんは風邪で寝込んでいた。

しかも花粉症も併発しているらしい。

最強の吸血鬼なのに・・・?

そう思ったけれど、彼女も僕の生徒。

茶々丸さんが薬をもらってくるまで、しっかり看病しなければ!

 

 

「やめ・・・」

「ひぃっ!?・・・ごめんなさいっ」

 

 

で、でもやっぱり怖い!

・・・って、寝言か、なんだ・・・。

 

 

「サ、サウザントマスタ-・・・ま・・・やめ・・・」

 

 

サウザンドマスター? ・・・父さん!?

エヴァンジェリンさんは今、父さんの夢を見ているの?

もしかしたら父さんのことがわかるかもしれない!

 

 

僕は杖を取り出して、エヴァンジェリンさんの夢を見ようと・・・。

 

 

「・・・兄様?」

 

 

 

 

 

Side アリア

 

そっと、兄様の杖を抑えます。

エヴァさんの家に来てみれば、そこにはエヴァさんを看病している兄様の姿。

少しは反省したのかと思いきや、この兄様は。

 

 

「・・・今、何をしようとしたんですか?」

「え、あ、その・・・」

 

 

聞くまでもありませんね。

この魔法の構成は夢見でしょう。

 

 

「アリア、お願い、チャンスなんだ」

「は?」

 

 

何を言い出すのかわかってしまうので、なんだか悲しいです兄様。

 

 

「今、エヴァンジェリンさんが父さんのことを・・・きっと、何か知ってるんだよ!」

「いや、あの、兄様? だからって人の夢を勝手に見ちゃいけませんよ。プライバシーの侵害にもほどがあります」

「でも!」

 

 

でもと言われましても。

というか、最近兄様の株が私の中でストップ安です・・・。

 

 

「アリアは知りたくないの!? 父さんのことが分かるかもしれないんだよ!?」

「・・・あの、果たして兄様に私の言葉は届いているのでしょうか・・・?」

 

 

最近、本当に自信がなくなってきます。

この兄の中に・・・果たして、父以外の存在はいるのでしょうか?

 

 

「やっと、何か掴めるかもしれないんだ! 父さんのことを!!」

 

 

興奮してきたのか、半ば突き飛ばすように私を振りほどく兄様。

 

 

「兄様・・・?」

「ごめんなさい、エヴァンジェリンさん・・・」

 

 

そう言って魔法の詠唱を始める兄様。

・・・ああ、もう。

 

 

『全てを喰らう・・・』

 

 

『殲滅眼(イーノ・ドゥーエ)』を発動、兄様の魔法を打ち消し、強化された身体能力で、兄様の頭を殴りつけます。

 

 

「・・・頭を、冷やしなさい」

 

 

床に叩きつけられ、気を失う兄様。

当分目を覚まさないでしょう。

ぐったりとした兄様の姿に、溜息を吐きます。

ここから女子寮までの距離を思うと、溜息のひとつも出ます。

 

 

「む・・・なんだ・・・?」

 

 

おっと、エヴァさんを起こしてしまいましたか。

 

 

「む、アリアか」

「はい、アリアです。お加減はいかがですか?」

「いいように見えるか?」

「・・・見えませんね」

 

 

とりあえずエヴァさんの氷枕に氷を詰めなおして寝かせます。

 

 

「・・・よーしよし、すぐに茶々丸さんが薬を持ってきてくれますからねー」

「子供扱いするな!!」

「熱上がりますよー」

「お前のせいだっ!」

 

 

いいですね。打てば響くとはまさにこのことですか。

ふん、と鼻を鳴らしながら、エヴァさんがベッドに潜り込みます。

可愛いですね。

 

 

「・・・今、なにか失礼なことを考えなかったか? 少なくとも主人に向ける言葉ではない感じの」

「・・・・・・まさか」

「ならその間はなんだ!」

「熱上がりますよー」

「お前のせいだっ!」

 

 

いいですね。

ネギ兄様の相手をするよりよっぽど気が楽です。

 

 

「・・・ところでなぜぼーやが床で寝ているんだ?」

「さぁ、兄様はお子様ですからね」

「同い年だろう、お前・・・」

 

 

同い年、ですか・・・。

そこで、再び床で伸びている兄様を見ます。

面倒な兄様、幼い頃から、迷惑以外のモノをいただいた記憶が無い、そんな兄様。

 

 

一途に父親を見ている兄様。

父しか見えない、歪んだ兄様。

別にどのような人生を歩もうと、もはや私の関知する所ではありません。

 

 

でも。

もし私の邪魔をしたり、私の大切な人たちに手を出すというのなら、その時は。

貴方は私の敵です。

・・・悲しまないでくださいね、シンシア姉様。

 

 

 

 

アリアはもう、兄様に関心を持ちたくないのです。

 




最後まで読んでくださりありがとうございます。

いよいよ主人公がネギに直接手をあげるようになりました。
何かここだけ聞くと主人公が一方的に悪いみたいに聞こえますが。

次回はいよいよ吸血鬼編クライマックスです。
更新頑張りますので、よろしくお願いいたします。

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