Muv-Luv IGLOO [M.L.I] 記録無き戦人達への鎮魂歌 (再投稿)   作:osias

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第四話「涙は扉を開いた~前編~」

宇宙世紀0081、10月20日

 

「・・・というのが私の聞いた話の全容だな」

 

とシャア=アズナブルはタケル達の話を語り終える。

オリヴァーとタケルから多少の修正(主に、タケルが「いや、MS300機とか!そんなに倒してませんよ!」とオリヴァーが「流石に05(旧ザク)を14(ゲルググ)並みに現地改良なんて出来ません」)を加えながらもシャアは人伝に聞いたタケル達の話をハマーンに聞かせた。

 

「へぇ~こんなヘタレとオタクっぽい人がね~」

 

「うっ!」

「んん?」

 

何気ないハマーンの一言はタケルに大ダメージ、オリヴァーに疑問を残した。

 

「はは、ハマーン、余り人を見た目で判断する物ではないよ」

 

<ピピピ、ピピピ、ピピピ>

タケルがセットしていた腕時計のアラームが鳴る。

 

「あ、大佐、俺達はこれで失礼します」

 

「何処かに行く途中みたいだったね、引き止めてしまって悪かった」

 

「任務で月のフォン・ブラウンまで高速連絡船を用意してもらっていたので・・・」

 

それを聞くとシャアは目を細める。

 

「・・・何をしに行くのか分からんが、気をつけたまえ、この頃月の辺りでは良い噂を聞かない」

 

「テロリストの事ですか・・・」

オリヴァーはそう呟く

 

「マイ大尉は知っているようだね」

 

「ええ、まぁ月の件は特殊ですからね」

 

「ねぇーねぇー何の話?」

ハマーンは無邪気に問う

 

「ハマーン、今、月ではテロリストによる襲撃が頻繁でね。アナハイム社の工場などは手酷くやられているみたいだ」

 

「人的被害は少くなくはなく、襲撃時に物資や兵器も奪っていく・・・合理的です」

 

沈黙。戦争が終わってもなお、戦いが終わる事はない。一年戦争に囚われた過去の亡霊達は未だに戦い、そしてその死骸に群がる害虫もいまだに多く残っていた。

 

「・・・と、ともかく、オリヴァーさん行きましょう。大佐、ハマーン様失礼します」

 

敬礼する二人

 

「ああ、気をつけてくれたまえ」

 

敬礼を返すシャア、それにつられて慌てて敬礼をするハマーン

 

タケル達はその場を離れた

 

「・・・ハマーン・・・彼の事、どう思う?」

 

「彼とは、タケル君の事ですか?」

 

「ああ」

 

「純粋で、強く、信念がある人だと」

 

「・・・ニュータイプとは?」

 

その言葉にハマーンは悩む。見て感じたタケル=シロガネという青年は余りにも彼女が知る、ニュータイプとは違う感じであった。ただ、何か彼がこの世界に干渉している・・・そして、何処かこの世界に存在していない、そうハマーンは感じていた。

 

「分かりません・・・何か違った感じがします・・・でも、暖かい感じかな?」

 

「・・・タケル=シロガネ中尉か・・・私達は違う、人類の革新なのかもしれんな・・・」

 

二人はタケル達が去った方向を見つめ続けた。

 

○○○●●

 

――――超高速連絡船

 

タケル達はフォン・ブラウンに向かう間に試験評価する機体のデータを確認していた。

 

MS-09F/TROP ドム・トローペン(先行量産型)

頭頂高 18.5m 本体重量 44.8t 全備重量 79.0t 出力 1,199kw 推力 57200kg (20500kg×2、3100kg×2) センサー有効半径 6,300m

・砂漠・熱帯用ドムの先行量産型。

今試験兵装:90mmマシンガン、ラケーテン・バズ、ヒート・サーベル、シュツルムファウスト

カラーリング:黒、赤紫

 

「・・・オリヴァーさんドム・トローペンはもう完成したもんだと思ってましたが」

 

「ああ、今回は最終試験運用そして評価だ。何時も回ってくる不安定な試験機とは違い、ほぼ完成された機体だ。問題なく、評価できるだろう」

 

「そうですね、他の報告書でもこれといった問題もありませんし、普段からこういう機体優先的に送ってほしいですね」

 

ここ最近パーフェクト・ジオングやゼロ・ア・ジールなどの規格外超弩級機動兵器を評価していたため、安堵の溜息をつく

 

「愚痴をいってもしかたないだろう」

 

そして、次の資料に目をやる

 

 

YMS-15K試作改良型ギャン

全高 20.0m 本体重量 50.3t 全備重量 60.6t 出力 1,700 kw 推力 150,200kg センサー有効半径 8,000m

・MS-15Rギャン高機動型の後継機として試作改良された機体。

・フレームの強化と機動実験を目的とする。

・マニュピュレーターが同じなため、手に持つ装備ならザクやゲルググのものも使える。

今試験兵装:ヒートソード、ビームソード、ビームランサー

カラーリング:銀、オレンジ

 

資料を見つめるタケル

 

「・・・ツィマッドの侍としては感慨深いかい?」

 

「いえ・・いや、そうですね、俺はコイツとは縁があるみたいですね・・・それにしてもすごい性能ですね、推力が通常のギャンの3倍ありますよ」

 

「それもそうだが、今回はフレーム強化に使われたガンダリウムαの性能評価もある」

 

「まぁ、コイツも他の報告書からする所に問題は無さそうですね、接近戦オンリーで回避重視でパイロット任せな機体ですけど・・・一応マニュピュレーターの統一性のお陰で他の遠距離武器も装備できるでしょうけど・・・」

 

けど、けど、けどっと機体性能に不安を覚えるタケルであった。

 

「次に行うか」

 

MP-02Aa-YOP オッゴ大気圏使用型・バロール装備

 

全高 7.8m全長 11.6m 全幅 14.7m全備重量 65.7t 出力 1021kw 推力 52,400kg

・オッゴを大気圏でも使用可能に改修した機体。

・試験用にYOP-04バロールのコンセプトを引いた観測ユニットを装備している。

・バロールには及ばずとも観測距離は最大400km±50kmであり、サーモグラフィ、振動計など他の索敵機能もついている。

・自律・半自律・手動と機体操縦方法を変えられる。

今試験兵装:6連装ロケット弾ポッド(対艦ロケット弾等装填)、90mmマシンガン、シュツルムファウスト

カラーリング:茶

 

「・・・バロール・・・聞いたことないな・・・」

 

「バロールは僕が第603技術試験隊に居た時に評価した試験観測ポッドの名称だ、これはその時にとった記録を元に月で残ったオッゴを再利用して作ってもらったものだ」

 

「大気圏運用可能ってありますけど、まんまドラム缶に羽着けて目玉着けただけじゃないですが!空気抵抗無視したフォルム!絶対戦闘能力ないですよ!」

 

「元々、戦闘目的ではないからね・・・」

 

頭を抱えるタケル

 

「何かそろそろ、怪しくなってきたな・・・」

 

QCX80-A ミドガルオルム

 

全高 2.8m 全長 23.1m 全幅 1.24m 重量 59.2t

武装 核融合超電磁投射砲

* 有効射程距離500km

* 最大射程距離800 - 1200km

* 射出速度200km/s

・ヨルムンガンドのコンセプト、長距離砲のコンセプトを元にした

・大気圏運用可

・8分割可

・弾丸制限無し(帯電性があるなら何でも可)

・連射性悪し

・最大射程最大出力正射後再発射に30分以上必須。

 

「・・・オリヴァーさんこれ、どうするんですか・・・?ヨルムンガンドってルウムで沈んだ大砲ですよね?」

 

「問題ない、エネルギーは今試験で運用する戦艦のエネルギーを応用できるように製作されている筈です」

 

 

「今更、大砲ですか・・・」

 

「今回は戦艦の兵装として運用しますから問題はない筈です」

 

「筈・・・ね・・・」

 

多少呆れ気味に次の試験運用兵器の資料に目を通す

 

<ペラ、ペラ、ペラ・・・ガタ!>

 

その資料を見て驚きに立ち上がるタケル

 

「オリヴァーさん!流石にマジでこれはないわ!」

 

EMS-10ZFb 最終調整型ヅダ・試験運用装備

 

全高 18.0m 本体重量 43.2t 全備重量 74.0t 出力 2,200kw 推力 334,000kg

・EMS-10ヅダ2号機及び予備機再利用

・MS-18Eケンプファーの技術応用及び、アナハイム社試作スラスターユニット装備

・マグネットコーティング完了

・試験用ビームコーティング

・間接部強度強化(ルナ・チタニウム合金使用)

今試験兵装:専用ショットガン×2、ラケーテン・バズ×2、シュツルムファウスト×2、ビームサーベル×2、ビームマシンガン、60mm頭部バルカン砲×2、チェーンマイン、ヒートホーク、135mm対艦ライフル、シールド(白兵戦用ピック装備)、

 

叫んだタケルを落ち着かせるように静かに語り始めるオリヴァー

 

「EMS-10ZFb最終調整型ヅダ・試験運用装備、通称・・・ヅダ改フルバーニアン。終戦後ヅダ2機を元ツィマッド社社員に預けてね・・・僕が改修案を出した。アナハイム社も試験装備を運用、評価してくれるならと、快く改修の件・・・受けてくれた」

 

タケルは素早く出力、推力、装甲強度のデータをいれ、一般的パイロットのデータを入れる。

 

そして、メインモニターに出た結果をオリヴァーに見せる

 

「・・・俺だって1年以上オリヴァーさんや他の整備士の下で働いた・・・装甲と間接の強化で『もう』空中分解をしないのはわかる・・・」

 

そう、EMS-10ヅダは過去EMS-04と呼ばれていた時期も含め空中分解事故を起している

 

「・・・その問題は解決したようですね・・・でも、このデータ見てください!最大推力・・・過去の6倍・・・これを全力で出した場合・・・全力で出さなくても!普通のパイロットなら良くて気絶!悪ければ死にますよ!?」

 

「・・・その問題はついたら解決します」

 

「どういう事ですか?」

 

「戦略戦術研究所の知り合いにも頼み、この機体の再設計を手伝ってもらいました。そして試作ではあるもののパイロットとMS、両方の性能を最大限に上げるための試作コンピューターを搭載する予定です。これによりパイロットのデータを元に自動的にリミッターを設定します」

 

「・・・それでも、この機体、扱えるものになるんですか?」

 

「タケル君なら出来ますよ」

 

そうオリヴァーは確信を持った笑みを見せる

 

タケルは溜息をつき資料の続きを読む

 

―――30分後

 

「・・・帰っていいっすか?」

 

「残念ながら、駄目です」

 

すっぱり切り捨てるオリヴァー

 

「何ですか、この他の資料・・・後1機のMSは『ルピナス』て名称以外は不明、運送用の戦艦も決定されていない、残り二人の追加要員も不明・・・そして、またデラーズ閣下に部隊運用について淡々と講義を受け、ガトー大尉にMS戦闘でしばかれると思うと鬱です」

 

タケルとオリヴァーは一度デラーズ・フリートに接触しており、その際、“気に入られた”タケルは訓練に強制参加させられ、エギーユ・デラーズ大佐に戦略を、アナベル・ガトー大尉に戦術を他の士官・兵士と共にに叩き込まれた。そして終了後“特別授業”も受けさせられた。

 

「タケル君、これも任務です、我慢してください。もうすぐ、フォン・ブラウン市に着きます。先ずは工場に向かい、試験兵器の確認、次にドックで運送用の戦艦を確認、その後、試作コンピューターの回収、時間があれば月の裏で機動実験はしたいですね」

 

「りょ、了解・・・」

 

○○○●●

 

宇宙世紀0081、10月21日

 

タケル達は問題なく、フォン・ブラウン市に入り、兵器を預けている工場へと向かった。

工場はフォン・ブラウン市の外れに位置し、外からは廃鉄処理工場にしか見えない。

中に入ると、女性の怒声が響き渡る。

 

「これは、どういう事だ!8割も完成していないではないか!」

 

「大尉、ここ最近テロリストの動きが活発で材料の入手が困難でして、それに連邦の警備も厳しくなっています!」

 

「チッ・・・」

 

タケル達が工場の格納庫に入るとそこには赤髪、赤服、20代の女性と、整備士らしき男性がいた。そこにはタケル達が資料で確認したMS達が並んでいた。

 

「「モニク(姉さん)!?」」

 

その声に反応し振り返るモニク、そして時計を確認する。

 

「着いたのね・・・時間通りね」

 

「あの・・・“マイ”特務大尉、彼らが?」

 

整備士もタケル達を確認し、モニクに質問する。

 

「そう・・・そっちの金髪でヒョロイのが技術馬鹿で有名なオリヴァー=マイ技術大尉・・・“一応私の旦那だ”・・・そっちの東洋系のヘタレっぽいのがテストパイロットをやっているタケル=シロガネ中尉、腕だけは確かだ」

 

その自己紹介に溜息をつく二人

 

「相変わらずですね、モニク姉さん・・・」

 

「相変わらずの毒舌だと言いたいのかシロガネ中尉?」

 

タケルを睨むモニク

 

「・・・いえ!マイ大尉殿!失言でありました!」

 

「モニク・・・何で君がここにいるんだい!?」

 

「へぇ・・・数ヶ月ぶりに会う妻に対して言いたい事はそれだけ?」

 

「元気だという事は理解しました」

 

オリヴァー=マイとモニク=キャディラック=マイは戦争後に婚約し結婚をした。実際はモニクが一方的にオリヴァーと婚約。自分に恥をかかせたやら、心配させてやら、責任とれなどのゴタゴタ後に結婚。そんな二人を見ていたタケルは一人「ツンデレ・・・」と呟いたとか呟かなかったとか。戦後数ヶ月は新婚生活を送っていたが、オリヴァーとモニクは穏健派のマハラジャ=カーンに引き抜かれ仕事を再開する。タケルは彼らが軍に復帰する以前にカーンの下で働いていた。オリヴァーは技術大尉としてMS、MA開発、研究、評価をし、モニクは特務大尉として政治、内政などを行っていた。ちなみに、モニクの弟と同い年だったタケルはモニクの事を「モニク姉さん」と呼ぶ事に何故か決定されていた。

 

「政治関係の仕事をする姉さんが何でここにいるんだ?」

 

「タケル、私は今作戦ではカーン閣下とデラーズ大佐の仲介役として派遣されたのよ」

 

「それは詰り、デラーズ大佐の説得役って事ですか?」

 

「ここで暴れている低脳共(テロリスト)よりは組織だっており、計画もしっかりしているが、実際は連邦を打破するにはデラーズ・フリートだけでは不可能だとカーン閣下は思っているのよ。やるならばジオン残党全員で行動を起すか・・・良く分からないけど“箱”とかいう機密単語の物を手に入れないといけないらしいわ」

 

「僕はデラーズ大佐達がその説得に応じるとは思えないな」

 

「俺もです」

 

「それでも、やらないわけには行かないのよ・・・兎も角この話は後でしましょう、今は・・・これを見て」

 

モニクは整備士が手に持った資料を奪い取るとオリヴァーに手渡す

それを確認するオリヴァー

 

「・・・!!これは・・・先、言い争っていたのはこういう事ですか」

 

「どうしたんですかオリヴァーさん?」

 

「タケル君、この資料が正しければ、09F・トローペンの整備は100%完了、15Kは8割、しかも盾は届いていない、EMS-10ZFbは9割、塗装はされていないから銀色のまんまです、オッゴは7割、ミドガルズオルムは6割・・・」

 

「な!?」

 

タケルは信じきれずオリヴァーから資料を取り確認する。

 

「そして、俺の『ルピナス』は5割以下ときたもんだ・・・」

 

男の声が通路奥から響き、タケル達は振り向く。そこには20代後半、190cm前後、ヒスパニック系の褐色肌、長い茶髪を束ね、室内にも関わらず鏡のように反射するサングラスをかけた男がいた。

 

「おや、何時から・・・蝙蝠なだけに暗い所が好きという事ですか?」

 

モニクの毒舌にハハと苦笑する男

 

「モニク、彼は?」

 

「オリヴァーもタケルも“良く”ご存知の方ですよ」

 

タケルは男を凝視するが、全く見覚えがない

 

「彼は、元連邦軍中佐、黄昏コウモリ、ケニー=ロンズよ」

 

「「!?」」

 

驚く二人そして、身構えるタケル。名前を聞いてタケルはやっと何故声に聞き覚えがあるのか理解した。

 

「おいおい、白銀の武士さんよそんなに睨むな照れちゃうだろ。それに嬢ちゃん俺の最終官位は大尉だよ」

 

「嬢・・・!んっん!貴方は記録ではMIA(作戦任務中消息不明)認定されて二階級特進し、中佐であっているはずよ」

 

「そうかい、まぁ今更階級なんて関係無いな、今はフリーの傭兵だ、仕事をするだけさ」

 

「では、ロンズさん貴方は何故ここにいるのですか?」

 

冷静に質問をするオリヴァー

 

「俺はAE社に雇われてな、あるMSをコンバットプルーフ(実践テスト)するように言われたんだよ。だが、このMSが曲者でな・・・まぁ、百聞は一見にしかずだついて来い」

 

そういい、ケニーはそのまま振り返り来た通路を戻る

 

タケル達はケニーの後を追った。

 

彼らは工場の地下に向かう。

 

「ここは先の格納庫に繋がっていてな、俺達が乗る戦艦もそこにある。なぁ?整備士のあんちゃん?」

 

「は、はい」

 

「地下に戦艦、どういう事?」

 

疑問を口にするモニク

 

「俺も、驚いたが、ここの地下はそのまま宇宙ドックに繋がっていて、そこから出航できる・・・こんなもんが隠されていて気づかない連邦も末期だな」

 

ハッと笑うケニー

 

「ついたぞ」

 

ドックには赤紫色の小型戦艦らしき兵器と搭載準備中で布を被せられたMSがあった。

 

オリヴァーとモニクは驚く

 

「「ビグ・ラング・・・」」

 

それはオリヴァーがア・バウア・クー防衛戦で命を預けたMA、ビグ・ラングに酷似した戦艦であった。

 

「いえ、これはMA-06MSSヴァル・ラングです」

 

整備士は資料をオリヴァーに渡し、口頭でヴァル・ラングについて説明をする。

全高 150m 全長 312m 全幅 175.1m 本体重量 14,000t 全備重量 20,500t 出力 25、500Kw 推力 5,500,000kg

・MA-05Adビグ・ラングのコンセプトを引き継いだモビル・フォートレス

・YMT-05ヒルドルブの可変機能があり半人型にもなる。

・弱点が克服されており、ヴァル・ヴァロの部分だけ戦闘中に切り離せる、正し戦闘中に再合体はできない。

・後方支援用の機体であり、MSやMAの補給整備を行える機能は残っている。

・ホバー機能と飛行機能が足され大気圏運用も可能。

・単機での大気圏突入も可能であり、水中でも『移動だけなら』可能で、実質水陸空宇の機体である。しかし、あくまで後方支援であり、回避能力は低く、戦艦・モビルアーマーとしてみた場合の移動速度は遅い。

・モビル形態では、両腕に武器が持てる。

・補給物資スペースを若干少なくし、搭載可能機体を増加した。機体を外部取り付けもでき、最大MS4機とモビルポッド又は戦闘機1機を同時に運ぶ事が可能。

・MSSはMaintenance Supply & Support、整備補給支援機の意味を持つ。

今試験兵装:大出力メガ粒子砲、ミサイル・ランチャー×8、ガトリング砲×2、30連装ビーム撹乱弾発射機×4、3連装大型対艦ミサイル×2、30cm(サンチ)砲、ミノフスキー粒子散布装置、ジャミングフィールド、対ビーム装甲。

 

「ヒュー、こいつの説明は今日初めて聞くが、MAというより戦艦だな」

 

ケニーは説明を聞いた後またヴァル・ラングを見上げた

 

「それだけじゃありません、CAD=CAMシステム等のMS設計に必要な機械、機材、プログラムも搭載しているので、動く工場というのが正しいでしょう」

 

整備士のいった事に呆れる面々。

 

「しかし、これも完成はしていないようですが」

 

「流石、マイ技術大尉、分かりますか。この機体はI-フィールドと有線式兵器を積む予定でしたが・・・未だに配備の予定が立ちません・・・兎も角、ヴァル・ラングがあれば、整備が完了していない機体でも材料さえ積めば現地での整備や改修ができます!」

 

「なるほどね、理解したわ、ではそこの機体が『ルピナス』ね?」

 

モニクは布の被さったMSに指差す

 

「ああ、嬢ちゃん達驚くなよ?」

 

そういい、ケニーは近くの機械を操作し、布をが自動的に巻かれていく。

そこには頭部に2本のアンテナを生やした白とオレンジの機体があった。

 

「こ、これは!」

 

オリヴァーは息を呑み

 

「ガ、ガンダム・・・」

 

タケルは唾を飲む

 

「何でこんなものがここにある!」

 

そしてモニクは叫んだ。

 

「ガンダムね、いや、正確には違うな。これはRX-81X-2、試作量産型ガンダム2号機『ルピナス』だ。量産機は元々ガンダムヘッドにする気はなかったらしいが、開発者の一人がガンダムを名乗るならせめて一機はガンダムヘッドにすると駄々をこねたらしい。」

 

そして説明を始めるケニー

全高 20.2m 本体重量 38.0t 全備重量 78.0t 出力 1,750kw 推力 150,000kg センサー

有効半径 10,000m

・ガンダムの完全量産機開発のための試作機。

・大量の試験兵器を積んだ結果失敗に終った。

・主に新型エネルギー供給によるショートビームライフルと弾種変更可能な中~遠距離支援キャノンが特徴。

・後に増加ウェポンシステムが正規採用され、安定できなかったEパックは一時研究中断、多目的キャノンも別々のキャノンをオプション運用する事となった。

・試験機にはコアブロックシステムがまだ搭載されている。

・正規記録には実験中に大破した事になっている。

・ちなみに花言葉で「多くの仲間」とという意味がある。

今試験兵装:ビーム・サーベル、ツィン・ビーム・スピア、試作Eパック・ショートビームライフル、90mmマシンガン、胸部バルカン、大型シールド、シールドガドリングガン、多目的キャノン、多目的ロケットランチャー

 

「量産機としてのトライアルには既に負けている。1号機の方をベースに『ジーライン』の名称で量産された。こいつを作った科学者がそれが気に食わなかったらしく再度データをとりたいんだそうだ。まぁ、俺から言わせてもらえばこんな高級で不安定な機体が量産目的の試験機だって事自体がおかしいと思うんだけどな」

 

「確かに、そうですね」

 

オリヴァーは相槌を打つ

 

「そして、見ての通り、組み立てすら完成していない、まぁ、航路中か着いてから完成させるんだろうけどな」

 

「これで試験品目は全てですね・・・」

 

「ああ、まぁ数週間の仕事だが仲良くやろうぜ!」

 

笑いながら、タケルの背中を叩き、そしてケニーはドックから出て行った

 

「ロンズ!まだ、話は終ってないぞ!」

 

モニクが叫ぶが、ケニーは無視しそのまま見えなくなった

 

「昔戦った時もそうですが、良く分からない人だな」

 

「パイロットってのはああいうのばっかね!」

 

「姉さん、それは俺も入・・・」

 

余りにも答えが分かる質問だったため、タケルは途中で聞くの止めた。

 

「オリヴァーさん、これからどうしましょう?」

 

「品目も確認したしね、モニク、僕達はヅダ改のコンピューターを回収しに行くよ」

 

「そう、じゃ私は搭載と整備作業の指示とデラーズ大佐への暗号通信を送るわ」

 

そしてタケルとオリヴァーは工場を後にし、フォン・ブラウン市内へと向かった。

 

○○○●●

フォン・ブラウンのとある一室

 

<コンコン>

呼び鈴を使わず態々ドアをノックするオリヴァー

 

「はい・・・」

 

<カチ、カチ>

 

中から金髪の青年が現れた

 

「君が戦術戦略研究所の?」

 

「はい、ジョブ=ジョンです」

 

そう言いジョブはオリヴァーと握手をした

 

「AE社のオリヴァー=マイ技術主任だ」

 

「同じくAE社のタケル=シロガネ技術職員です」

 

タケルもジョブと握手をする。

 

「そういう事にしときますよ、リヴァイヴァーに白銀の武士さん」

 

ニヤリと笑うジョブ

 

「では立ち話も何なんで入ってください」

 

部屋の中に入るとそこには長い青っぽい髪の少女がいた

 

「彼女は?」

 

オリヴァーは場違いとも思える少女に疑問を覚えた

 

「彼女は知り合いから預かってる子です」

 

「マリオン=ウェルチです」

 

少女はそう小さく言った。

 

「彼女も今回のコンピューター製作に参加していますから、完全に無関係というわけではありません」

 

4人はテーブルを囲み座る。ジョブは資料を広げ、コンピューターを運び込む。

 

「ではEARTH(アース)コンピューターについて話しましょう」

 

ジョブの会話の要約すると以下の通りである:

 

EARTHコンピューター(Enhancing Action and Reaction of The Human)

・人間の行動と反応を強化するシステムであり

・パイロットのデータと脳波から、機体性能の限界を自動で判断し、パイロットの体力と反応速度に合わせたサポートをする。

 

「今の我々の技術力じゃここいらが限界ですね。ちなみに自動殲滅プログラムのTHEAR(ティア)システムが搭載されていますが、出きれば使わないでください」

 

「あるのに使わないでくれってのも不思議ですね」

 

「どうにもシステム自体が安定しなくてね、だからといって削除するとコンピューター自体の作動に支障をきたすため、放置されているんだよ」

 

「ジョブさん、発動したらどうなるんだ?」

 

「分かりません、シュミレーションでは普通に全範囲自動索敵、半自動殲滅を行いました。実際にMSに搭載した事がありませんから」

 

「また、こんなんかよ」

 

天を仰ぎ、愚痴をこぼすタケル

 

「僕達への“善意”の提供だからね、試験評価という代価を払うが破格と言えるでしょう」

 

オリヴァーは軽くタケルの肩を叩き宥める

 

「オリヴァーさん、コンピューターをMSに設置するマウントのパーツ確認してくれませんか?」

 

そういいオリヴァーとジョブは別の部屋に行く。

 

部屋に残されたタケルとマリオンはお互いを見つめ、何ともいえない、気まずい雰囲気が漂う。そんな雰囲気に耐えられずタケルがマリオンに話しかける

 

「あ、あの「貴方を傷つけないで」・・・え?」

 

マリオンに言われた事が理解出来ず困惑するタケル

 

「どういう・・・意味?」

 

「優しい人は、好きです・・・、だから」

 

「・・・」

 

「貴方は貴方が取り戻すべき宇宙(ソラ)を持っているわ、その宇宙(ソラ)は貴方を今も待っている。タケル・・・貴方を待っている人がいる」

 

(・・・タ・・・ちゃ・・・)

「クッ!」

 

突然の頭痛に頭を押さえるタケル

 

「あの子は貴方を導いてくれるわ、より良い未来へと、優しい世界になるために、もうあの子は昔の私じゃない、人を救える子になっているだから・・・」

 

マリオンの言葉に反応するかのように見た事のない映像が浮んでは消えていった。

 

そこで自分は何かと戦っていた気がする

そこで自分は誰かを愛していた気がする

そこで自分は悲しみに涙を流した気がする

 

怒りが悲壮が悔しさが心を埋める

 

嘔吐しそうな気持ちを抑える

 

そんなタケルをマリオンは優しく包み込む

 

「もう、貴方を傷つけないで。大丈夫、今度は優しい世界を作れるから・・・」

 

彼女が触れると気分が少し落ち着く

 

オリヴァー達が戻ってくる、頭に手を当て、苦しむタケルを見て、素早く機材を地面に置き、タケルに近づく

 

「タケル君、大丈夫かい?」

 

「マリオン?彼はどうしたんだい?」

 

オリヴァーがタケルに触れると、不思議にも頭痛が和らいだ

 

「だ、大丈夫ですよ、ちょっとした持病ですから・・・」

 

タケルは何事もなかった様に立ち上がり、機材に近づき持ち上げる

 

「オリヴァーさん、行きましょう。ジョブさん有り難うございます。マリオン・・・」

 

少し考えてから答える

 

「多分、ありがとうで・・・いや、ありがとう」

 

「いえ、私は何もしてませんよ」

 

タケルは部屋の外に出た、それを慌てて追うオリヴァー

 

「タケル君!待ってくれ。ジョブさんありがとう、マリオンさんタケルがお世話になりました」

 

「待った」

 

急ぎ出ようとするオリヴァーを呼び止めるジョブ

 

「気をつけて、何か最近のフォン・ブラウンはきな臭い・・・下手したらここ数日で大きな動きがある、工場を狙った資源強奪も有り得る・・・」

 

「これでその注意は二回目です、信憑性が増しました。行動に出るのはテロリストだけですか?」

 

「いや、連邦とテロリスト両方、どちらもだよ」

 

「出航作業を急がせます、そちらも気をつけてください」

 

「僕達も明日の朝には出発するからね」

 

マリオンがオリヴァーの袖を引っ張る

 

「彼を助けて上げて、彼を一人しては駄目」

 

「ああ・・・彼は大切な仲間ですから」

 

オリヴァーはタケルの後を追う

 

○○○●●

工場に到着した、オリヴァーはコンピューターをヅダ改に設置し始める。

タケルは最初整備の手伝いをしていたが、ケニーに捕まりシュミレーターを遣った模擬戦を行う。この時データ上のヅダ改にタケルが搭乗と試作改良型ギャンにケニーが搭乗した。結果はシュミレーターの誤作動による勝負無効。ヅダ改のデータが問題だと分かり、それを考慮した整備は夜中を通して行われた。

タケルはその後気を失う様に眠る。

 

日にちは10月22日に変ろうとしていた・・・




アクシズ技術試験課活動記録報告書
我々アクシズ技術試験課は宇宙世紀0081、10月21日フォン・ブラウン市にて試験品目を回収せり。ここにて、マハラジャ=カーン閣下直属のモニク=C=マイ特務大尉と元連邦軍中佐ケニー=ロンズと合流。フォン・ブラウンでの連邦とテロリストの抗争が整備作業に影響を与え、回収時各機体の整備状況は以下の通りである:
・MS-09F/TROPドム・トローペン(先行量産型)100%
・YMS-15K試作改良型ギャンは84%、盾未装備
・EMS-10ZFb最終調整型ヅダ・試験運用装備92%、塗装未完了、専用コンピュターEARTHは回収、今日22:20に設置完了、22:30にシュミレーター実践を行うも、問題が発生しバグ解除を開始す、作業25:03に完了。
・MP-02Aa-YOP オッゴ大気圏使用型(バロール装備)74%
・QCX82-Aミドガルオルムは64%
・RX-81X-2試作量産型ガンダム2号機『ルピナス』45%
・MA-06MSSヴァル・ラング86%
出航は明日に予定されているが、デラーズ大佐に連絡し、延期する場合もあり。
現在全力で整備、組み立てに取り組んででいる。運用には各機・兵装8割以上の整備状況が必須。その場合全機活動可能になるまで1週間前後かかると想定せし。
―宇宙世紀0081、10月21日オリヴァー=マイ技術大尉

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