Muv-Luv IGLOO [M.L.I] 記録無き戦人達への鎮魂歌 (再投稿)   作:osias

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第九・五話=幕間2「西暦での休息」

<ピッピッピッ>

 

<ポトポトポト>

 

オレは目を開ける、心電図と点滴の音がする世界に目覚めた

 

「・・・知って・・・いや、知らない・・・病院の天井だ・・・」

 

「良く分かりますね、タケルくん、もう少し意識が朦朧としているかと思いました」

 

首を横にするとそこには、同僚で先輩の金髪、『図に描いた様に尻に敷かれている男』事オリヴァーさんがいた

 

「また、失礼な事を考えてましたね」

 

この人は本当に基本変人で「鈍感で機械オタク、姉さんには頭が上がらず、ピントはズレまくっている癖に変に勘がするどい、NTじゃねぇのか、いやオリヴァーさんこそNTでいいよ、何(嫁)にも恐れずに挑戦する、まさしくNT(新人類)じゃないか!てかNTの意味を誰か説明してくれ、NTがゲシュタルト崩壊しそうだ。まぁ、ともかくオリヴァーさんは奇人という事で」

 

「声に出てます」

 

「ハッ!?」

 

「そんなワザとらしい驚き方をしても騙されません」

 

そういいオリヴァーさんはオレの方に書類の入った極太のバインダーを投げる

咄嗟に両手で掴み

 

「痛っぅ!」

 

両手、特に肩と右肘に痛みが走り、バインダーをベッドの上に落とす

 

「やはり、この世界の医学が進んでいても流石にまだ治ってませんでしたか」

 

そう、観測するように目の前の変人はオレを見る

そこでふとした事に気づく

 

「オリヴァーさんオレ何日くらい寝てました・・・あと起きるまでオレの事待っていたんですか?」

 

「1日と19時間です・・・それと起きるまで待つなどという非効率的な事はしていません。ここの医者が君が起きるであろう時間を割り出したんです。素晴らしい技術です。それに先ほど別病棟の涼宮訓練生にも会ってきました。彼女は元気でしたよ・・・足も順調に治っているようです」

 

オレが気を失ったのが正確には11月1日の13時くらいだから、今日は11月3日の8時くらいか。そして・・・涼宮さんの足・・・治るのか・・・良かった、少しは世界を変えられたのかもしれない。

 

「タケル君も無理をし過ぎです、その怪我で総合技術演習の評価に影響するからと無理に結果を聞きに帝国軍キャンプのベッドから出るとは・・・」

 

少しずつ記憶が戻ってきた、沙霧大尉と文字通り死合って、撃たれて、気づいたら帝国軍キャンプ内、治療が終わっていたからそのまま、まりもちゃん(神宮寺教官)に結果を聞きに行ったけ。何故か帝国軍キャンプ内にいたな・・・後、オレが無理して行くって言ったせいで涼宮さん意地になって速瀬さんに担がせてまりもちゃんい会いに言ったな・・・まぁ、取り合えずは合格した・・・そう言えばその場に居た帝国軍の大佐に『痛みに耐えてよくがんばった! 感動した! おめでとう!』て言われたな・・・

 

「しかし、真剣で斬り合うとは無茶をしますね。下手したら肩や右腕が使い物にならなくなっていたかもしれません」

 

確かに今回はマジでラッキーだった、何せあの『沙霧大尉』だ。前ループじゃウォーケン少佐の犠牲、月詠中尉の武御雷と彩峰が沙霧大尉の注意を奪った事で何とか勝てた相手だ。生身だったら何とか分があるかと思ったが・・・

 

「・・・もし、腕を失ってもこの世界の医術なら治せたかも知れません。残念ですねタケル君、最先端技術を用いて右手に銃を埋め込むとかも出来たかもしれません」

 

「オレはコ○ラか!」

 

西暦にして数日たって気づいたが、

俺が覚えているよりも多少この世界の技術が進んでいる。

 

「冗談はおいといて。演習から帰ってきてこの世界の医療技術をすこし調べたのですが、肉体の再生、人体部位の機械化、精神科も結構進んでいます。下手したら精神世界に潜り込むなんて技術もあるかもしれません・・・中には非人道的な技術もあります・・・そこは我々の世界と変わりません」

 

オレ達の世界にもニュータイプを研究するという名目で非人道的研究を行っていた所はある。連邦側も同じような事をしているらしい。そして月であったあのマリオンという子も何かの実験の被検体だったらしい・・・霞も似たようなもんだな・・・

 

「・・・で、この書類は何なんですか?」

 

さっき落としたバインダーを手に取る、中には計画書、設計図、レポート、スケッチなど色々入っていた

 

「香月博士から預かって来た技術評価品目です」

 

「はぁ!?」

 

少なくとも計画書などが区切った感じでは300以上ある

 

「博士が帝国軍技術科から譲り受けたものらしいです。どれも奇抜、不可能、非効率、生産性無しと思われた草案を含む708品目です」

 

「な、ななひゃくぅはちぃ!?」

 

「タケル君にはその半分354品目の書類を渡しました。博士がタケル君が目を覚ましたら渡すようにと」

 

眩暈がしてきた・・・先生はオレ達を過労死させる気か?

 

「退院は5日後です、その後に任官式だそうです。それまでに終われば休暇をくれると言ってましたよ」

 

「・・・」

 

オレは目の前のモンスター(書類)を見る・・・やる気は全然出ない

 

「終わらないとどうなるんですか・・・?」

 

「知らないが『罰ゲーム』だそうだ」

 

全くいい響きはしない、“アノ”夕呼先生の罰ゲームだ良い事があるわけがない

 

「じゃ気合入れてやりますか・・・」

 

「それが良いかと」

 

「オリヴァーさんもこれからこのモンスターの処理ですか?」

 

と指を刺しながらオレは問う

 

「いえ・・・他の兵器開発もあるんですが・・・この後・・・モニクと・・・デートです」

 

「え!?」

 

何か変な事を聞いたような・・・

 

「デートです・・・」

 

聞き間違いじゃないようだ・・・しかし何で嫁とのデートでこの人は

ここまで震えるのだろう・・・

 

「頑張って下さい・・・」

 

「ああ」

 

そしてオレはオリヴァーさんに敬礼し(何故かしなければならない気がした)、彼は病室を出ようとして止まる

 

「おっと、忘れる所でした。MSの整備状況ですが09(ドム・トローペン)と15(試作高機動型ギャン)は整備を完了したました。15の盾も完成しましたのでシールドミサイルが使えます。モニクや博士と話した結果まだ光学兵器を使うのは早いので接近武器はヒートソードなどになります。ロンズ大尉の要望でツィン・ヒート・スピアも現在開発中です。それに、BETAの性質を考えた場合、現状のビームライフルの連射性では対応できません。その他に06MSS(ヴァル・ラング)は整備が完了しました、後は有線兵器とI・フィールドだけです。この後はミドガルオルムとオッゴを整備します。ガンダム(ルピナス)も後々整備できるかと」

 

相変わらず技術関連の事となると饒舌になる

 

「後はヅダですか・・・」

 

「はい、香月博士の助力を得ればEARTHの安定が図れるかもしれません。それまで使用は厳禁です。何が起きるか分かりません。では、タケル君また」

 

そういってオリヴァーさんは病室の扉を閉めた

 

・・・

 

・・・純夏・・・オレ頑張ってるよ・・・

 

オレは病室の窓から見える青い空を見つめる

 

○○○○●

11月3日9:13

国連太平洋方面第11軍横浜基地・病院3階

 

<バタン>

 

僕はタケル君の病室の扉を閉めた

 

タケル君も涼宮訓練生も元気そうで安心した。

 

本当にこの世界の医術は素晴らしい・・・素晴らし過ぎて逆に怪しい・・・もう少し調べた方がいいかもしれません。

 

僕は国連軍の病院を出るために階段に向かい歩き出す

 

・・・708品目の半分はタケル君が処理してくれるとしても・・・

この708品目全て、一人の人物が考えたと思うと・・・恐ろしいですね、何処からそれ程のアイディアが来るのか・・・

 

タケル君はこの世界に来て少し変わった気がします。

いや元に戻ったというべきなのでしょう。

彼は元々少し明るい性格だったのでしょう。

あっち(UC)に居た時より自然です。

しかし、MSの操縦だけじゃなく、eXtra Maneuver – 3 (XM-3)の開発、サバイバル技術、それに刀を使った生身の戦闘・・・彼も多才・・・いや、世界を3順し、生き残るためについた術(すべ)なのかも知れませんね・・・

 

さて、兎に角やらなければ成らない事が山済みです

 

頼まれている指揮車両などの援護兵器開発、武装開発、整備に帰るための情報集め・・・

 

「はぁ~」

 

僕は溜息を吐きながら階段を下りていく

 

それに・・・先ずは目先の問題を解決しなければなりません・・・モニクとのデート・・・

 

実際、毎回何をしていいのか分からず、結局モニクは段々と機嫌が悪くなっていきます。

だからと言ってデートしなければその日が僕の命日となります・・・

 

結局僕が彼女からリード(主導権)を握れるのは床の・・・

 

<ドン>

 

「わ!」

 

「アッ・・・」

 

階段を下りた先のT字路で車椅子を押している少女に当った

 

「大丈夫ですか?」

 

「(コク)」

 

「君は・・・社・・・霞ちゃんだったか?」

 

「(コク)」

 

少女は前にあった事のある子であった。黒いロングスカート、銀髪に黒いウサ耳のような髪飾り、彼女の感情を表すように動くがどういう仕組みなのだろう・・・

 

「しりません・・・」

 

・・・そう言えば彼女は何となくだが人の考えが分かるんだったな

 

「貴方は」

 

「オリヴァーでいいよ」

 

「オリヴァーさんは・・・オリヴァーさん達は私の事を怖がらないんですね」

 

・・・完全に思考を読まれるならそうかも知れないが、曖昧な表現らしいし、何より本人が意識しなければ出来ない事だと聞いた。それに・・・

 

「NTがいる世界から来ているからね・・・」

 

「そう・・・ですか」

 

そして僕は彼女が押す車椅子に目をやった、そこにはピンクのブランケットで全身を隠した少女がいる。車椅子の後ろには点滴がぶら下っている。

 

「友達かい?」

 

「(コク)・・・大事な人です」

 

その少女は特徴的な・・・タケル君が言う所の『アホ毛』を生やした赤髪の・・・

 

そう・・・モニクと同じ赤髪・・・

 

「あッ!!」

 

「(ビク)」

 

霞ちゃんを驚かしてしまった

 

「ごめん、妻を待たせているんだ。僕は失礼するよ。友達・・・治るといいですね」

 

そう言い僕は出口に向かい走った。

 

まだ・・・時間はある!・・・はず!!!

 

○○○○●

同日9:47

国連太平洋方面第11軍横浜基地・病院1階

 

私は走り去るタケルさんの友達のオリヴァーさんを見つめていた

 

「・・・ヶぅ・・・」

 

「!!」

 

一瞬だけど彼女が喋った気がしました

 

「そうです・・・タケルさんの友達のオリヴァーさんです・・・」

 

彼女の意思が暖かい・・・

 

「大丈夫、スグに会えます・・・」

 

私は彼女を連れて、彼女に病室に向かいます

 

彼女の病室はここの一番奥・・・庭が見える綺麗なお部屋

 

看護婦さん達が彼女をベッドに寝かせました

何時もより寝顔が穏やかな気します

タケルさん達が来てから彼女の思考には色が増えました。

 

タケルさんは不思議な人です。

知らないのに・・・知っている

優しくて暖かいけど悲しくて怒っている人

 

 

私は彼女の病室を出て基地に向かいました

 

・・・

 

夕呼博士の研究室を開ける・・・

凄く機嫌が良さそうです

 

「あら、社~お帰り。彼女はどうだった?」

 

「・・・凄く安定しています・・・色が・・・増えました」

 

「そう、それは良かったわ、やっぱり白銀のお陰かしら?」

 

「(コク)」

 

「白銀達が来てから、物事上手く行って嬉しいわ。国連の上層部(バカ)も帝国軍の高官(むのう)も米国の政治屋(じゃまもの)も皆黙らせられてスカっとするわ。それに、シュミレーターと演習の結果、それに彼らの技術・・・本当に白銀達は『英雄』になれるかもね」

 

「言ってました・・・タケルさんは・・・この世界の宇宙(ソラ)を救うって・・・」

 

「何?白銀はそんな事言ったの?」

 

「(フルフル)・・・マリオンさんです」

 

「・・・誰?」

 

「・・・」

 

「まぁ、良いわ社は今日はもう自由にしていいわよ」

 

「(コク)」

 

私は博士の部屋を出ました

 

・・・今日は・・・オリヴァーさん達のシュミレーターを借りに行きます

 

○○○●●

同日10:05

国連太平洋方面第11軍横浜基地

 

フフフ、本当に順調で気分がいいわ。

 

最初白銀達に会った時は眉唾だったけど、本当に凄いわ

 

文官として文句なしのネゴシエーター、モニク=C=マイ

嫌味たらしく毒舌・・・気に食わないけどその手腕は本物。白銀が『それは同属嫌・・・』と何か言っていたわね・・・思い出したら腹が立ってきたわ、アイツの仕事増やしましょう。そうそう、モニクは交渉にきた帝国軍の高官達を全員黙らせて帰らせたとピアティフが言っていたわね。まぁ、優秀し過ぎて私も油断したら不利な状況を作らされそうになるけど・・・

 

そしてそのモニクの旦那で一流の技術士である、オリヴァー=マイ

技術評価が専門と言っているけど、この時代の戦術機整備士を何人束ねても彼の技術と知識には及ばないわ。それに妻の知識と合せる事で戦略性の高い兵器ばかり計画してくるわ。前に大泉大佐達に渡したTSF-TYPE00Z武御雷改なんてのが良い例ね。ちゃんと整備や費用を考えているわ。考えない帝国軍が異常とも言えるけど・・・ある意味、彼一人で国を動かせるだけの力があるわ。性格は・・・良く分からないわね、恐れ知らずというか・・・あのモニクの旦那をする程だから大物なのかもしれない・・

 

傭兵のケニー=ロンズ

ロンズの操縦技術は白銀と同じかそれ以上。年長者だけあって実戦経験の差が白銀との戦力差を作っているみたいね。伊隅達に彼のシュミレーターデータを見させたけど、その操縦技術と指揮能力に驚いていたわ。確実にこの世界で最高の衛士ね。性格は・・・やはり癖があるわね・・・一言で言ったら・・・エロイ・・・私の事を嫌らしい目で見るけどそれを全く隠そうとはしないわ、それどころか『男はすべからくエロイ!それが真理だ!隠すなど臆病者のする事だ!』と言っていたわ。私は年上好きだけどアイツは・・・好きにはなれそうに無いわ。

 

因果導体の白銀武

流石に過去に2度もこの世界を体験さただけの事はあるわ。オルタネィティブ計画の事は筒抜けね、米国が考えている事も大体コイツは知っているわ。それだけじゃなくて衛士としても一流ね、ロンズが『潜在能力は俺より上だ・・・回避能力だけとれば俺達の世界でもトップだ』と言うだけあって、強いわね・・・伊隅が『最高ではないが最強だな』と言っていたわ。そしてBETA戦を考慮した戦術やこの世界の情報を他の3人に渡す・・・ハッキリ言ってこの4人は隙がないわ。

 

さてと・・・ここに文縁・・・黒藤文縁を入れれば完璧ね。

 

アイツは相変わらず私を避けているみたいだけど・・・

 

部隊名は何にしようかしら~

 

<ジリリリリリ>

 

電話が鳴りそれを取る

 

「もしもし~何、まりもじゃない?」

 

まりもから私に電話をかけるとは珍しいわね

 

「え、沙霧と川本の事?知らないわよ『今回は』本当に私は関係ないわ」

 

先の演習での事件が私のせいじゃないか聞いてきた、言いがかりは止めて欲しいわ

まぁ、面白い余興だったけど・・・あの程度で白銀達がやられるとは思えないわね

付いて行けた訓練生も中々ね。

 

「・・・今度はなに?・・・え?何処で白銀達を見つけたか?」

 

まりもが興奮しながら、彼らの凄さを言っている。

オリヴァーとモニクの成績は高いものじゃないが、二人は技術仕官と文官である。

それが衛士の訓練について行ければ確かに異常ね。

それに今回の演習、最速の2日以内での終了だったし

 

「・・・機密に決まっているでしょ・・・まぁ~今度ここ(横浜基地)が完成してまりもがこっちに来たら教えてあげてもいいかもね~」

 

電話の向こうで「またアンタは!」みたいな事を言っている

 

「他に無いなら切るわよ・・・あ~はいはい、分かったわ、切るわよ~」

 

私は電話を切り、椅子の上でストレッチする

 

「う~ん」

 

・・・さてと、最後の〆が2001年にならないと出来ないと分かっていても、やりましょうか私の研究を!

 

○○○●●

同日10:51

帝国軍練馬駐屯地、国連軍衛士訓練学校

 

また夕呼は・・・

 

適当にあしらわれた気がした。

 

それにしてもロンズ大尉達は凄い・・・

私も相当の修羅場を潜ったつもりなのに、その比じゃないわね

一番若い白銀中尉ですら年下なのに彼には迫力・・・覚悟がある・・・

それに兵士としての技術、知識・・・戦術機訓練も飛ばすというから操縦技術も凄いのでしょうね・・・あんな人達が正規の兵士をせずに戦場にいたとは・・・世の中わからないわね・・・

 

涼宮達には良い経験になったわね、同い年ぐらい(だと思う)白銀中尉をみて何か思ったようだし。

 

それにしても・・・川本少佐と沙霧大尉の事は夕呼が関係していないとなると・・・本当になんだったのかしら・・・沙霧大尉に関しては全く問題になっていないし。

 

取り合えず二人共怪我は治るみたいだし良かったわ

 

私は校舎から国連軍基地内に入ろうとしてグラウンドを見ると

速瀬、大空寺、玉野の3人が走っているのを見る

 

「あの、バカ共は・・・」

 

私は三人に向かい走る

 

「集合ぉぉぉぉぉ!!!」

 

私の声を聞き三人が集まる

 

「お前達は何をしているか!総合技術演習後3日間は自主訓練禁止の休暇を渡しと私は記憶しているが!」

 

速瀬が口を開く

 

「しかし軍曹・・・私は・・・悔しいんです・・・私のせいで遥と白が「甘ったれるな!!!」・・・!!」

 

速瀬は誰よりも責任感が強く、負けず嫌いだ・・・気持ちは分かるが・・・

 

「だから強ければ!誰でも救えると!全員を救えると本気で思っているのか!?」

 

彼女達は私に言われなくても分かっている、それを証拠に苦虫を噛んだような顔をしている

 

「しかし、軍曹、だからといって私には・・・ジッと何ては出来ません!」

 

今度は大空寺が言う、彼女はたまに上官に対しても恐れ知らずな事を言うが根は優しい子である

 

「拙者も!今回ロンズ大尉殿やモニク大尉殿を見て己(おの)が未熟を感じたでござるよ!」

 

軍人には有るまじき口調で玉野が叫ぶ。彼女は他者の実力を一番肌で感じる子だ。

 

「当たり前だ!彼らは貴様ら訓練生とは違いベテランだぞ!未熟?つけあがるな!そう思って当然だ!お前達はやっと殻から出て、尻にまだ殻を着けたヒヨッコだぞ!」

 

三人は押し黙る

 

「・・・彼らならどうするだろうな・・・身体を動かさずともやれる事はある・・・考える事も立派な衛士になるためには必要な事だ・・・」

 

「「「はい・・・」」」

 

「分かったらお前らは着替えて昼食をとりにPX(食堂兼売店)に行け!」

 

「「「はい!!」」」

 

三人は校舎に走っていく

 

「ちゃんと良い顔できるようになったじゃないか、ヒヨッコ・・・」

 

○○○●●

同日11:31

帝国軍練馬駐屯地

 

私達は運動着から着替え、帝国軍基地内にあるPXに向かっていた

 

神宮寺軍曹が言う事は分かる・・・でも同い年(?)の白銀があそこまで立ち回れるのに私は何だ?何をしていたんだ?こんなんで私はBETAと戦う?ハッお笑い草だよ!

あの時・・・私がしっかりしていれば白銀も遥も怪我せずに・・・

 

「水月行くわよ!早くしなさい!」

 

あゆが私を呼ぶ。あゆとまゆだってロンズ大尉の後を突いていっただけだと思っている。

私達は本当に自分の力で今回の総合技術演習を合格したの?

合格した時は嬉しくて涙が出たけど、今思うと恥ずかしさしか出ないわ

 

・・・

私達がPXに入ると帝国軍兵士達が私達を睨む、

居心地は悪いがもう慣れた。

日本人なのに国連軍に居る私達は売国奴と思われていて話かけてすら来ない

 

「よ~速瀬とU2じゃねぇーか」

 

コイツ・・・黒藤文縁以外

 

「誰がアイルランドのバンドよ!」

 

あゆがまた黒藤文縁に叫んでる

 

「ツッコミアザース」

 

45度の綺麗なお辞儀・・・ムカつくわ

 

「何故U2なのでござるか?」

 

「あゆ&まゆ、ゆが2つでU2」

 

「おおー」

 

まゆ!アンタそれでいいの?

 

「それに、音楽のジャンル的にもピッタリじゃね?世界的な意味で」

 

「なんで、ロックが・・・」

 

「いや~特殊なロックでしょヒントは○○○○○○○○」

 

「全部伏字じゃない!」

 

「じゃ最初の一文字はA」

 

「拙者英語は苦手でござるよ~」

 

黒藤は「よしよし」と行ってまゆを撫でる

 

黒藤・・・今は・・・えーと少尉の階級証ね、は変人である

私達が国連軍でも関係無く話してくる

 

「よしゃ、飯をオーダーするぜ!」

 

そういい彼は売店に向かう

 

「お、兄ちゃん新顔だね、ホゥアチャネー?」

 

「え、え?」

 

新しいPXの職員をおちょくっている・・・

 

「名前は?」

 

「伊吹純(いぶき=じゅん)です」

 

「へー髪長いね、軍人なのにいいの?」

 

「「アンタだってヒゲ(ハゲ)じゃない!」」

 

私とあゆが同時に言う・・・あゆ・・・ハゲは酷いような・・・

 

「誰がハゲだ!物凄く短くしているだけだ!1ヶ月もしたらフサフサやんよ?」

 

「ハン、どうだか?フサフサな所なんて見た事ないわよ?」

 

あゆが挑発しているわね・・・あの子普段から容赦ないけど、黒藤と・・・後は孝之(たかゆき)と慎二(しんじ)には本当に容赦ないわね。

 

「く~このツンツン娘め!何時になったらデレるねん!?元祖だから図に乗り腐って!」

 

また意味不明な事を言っている、取り合えず黒藤の言う事の半分以上は意味不明ね

 

「ん~この怒りはぁぁぁぁぁ!!兄ちゃん!ごぉぅぅぅせぇぇいシャァァケェNATO定職一丁(合成シャケ納豆定職)!とGO☆SAY!三度ウィィッチィ!」

 

<バン!>

 

「は、ハイ!」

 

あの売店の人分かるんだ・・・あれで・・・

 

・・・

 

私達は騒ぎながらも席に着いた

 

「で、何で帝国軍首都勤務の黒藤少尉がここにいるんですか?」

 

てかこの人、練馬所属じゃないのに何時もここにいるような気がする

 

「それはだな・・・速瀬・・・ズバリ!」

 

「ズバリ?」

 

「本部に居づらいからだ」

 

<ズコー>

 

あゆとまゆが椅子からずり落ちる

 

「ド○フ的ズッコケあざ~す!」

 

「はぁ~何か黒藤さん見てると悩んでいた私がバカみたい」

 

それを見て黒藤が一瞬笑ったようにも見えた

 

「・・・取り合えず、お前ら総合技術演習合格おめでとう」

 

「・・・ッ!!」

 

「怖い顔すんな速瀬、俺もあそこに居たんだお前らの活躍は直に聞いて見たんだ・・・誰が何と言おうと合格はお前らの実力だ・・・実力が無い奴らが実戦経験のある衛士についていけるものかよ・・・それが証拠にお前らはハプニングを乗り越え作戦を成功させたじゃないか・・・足を引っ張っていない証拠だ。もっと自分に自信を持て」

 

「黒藤殿~~」

 

「フ、フン、あ、あんたに言われなくても分かってるんだから!!」

 

「・・・」

 

「おぃ、速瀬、何泣いてんだ?」

 

気づいたら私の頬に一筋の涙が流れていた

 

「な、泣いて何かいないわよ!ちょっと鼻にツンと来ただけよ」

 

「鼻にツンとくる辛さの麻婆豆腐って・・・あのPXの兄ちゃん何作ってんだ??」

 

・・・そうか私は誰かに認めて欲しかったんだ・・・自分の力だって・・・

 

「さてと、俺はちょっくら本部に行くから失礼するわ。涼宮にも宜しくなー」

 

「そういう場合は『本部に帰る』というのでござらんか?」

 

「そうとも言う」

 

そう良いながら黒藤はPXの外に出て行った

 

私達は無言で立ち上がり彼に敬礼していた

 

 

○○●●●

同日12:11

帝国軍練馬駐屯地・PX前

 

「・・・立ち聞き、立ち見はお客さんご遠慮ください」

 

PXを出た文縁の横にまりもが居た

 

「・・・ありがとう」

 

「何を言っているか分からないな、これは僕のサンドイッチだよ、さっきPXで買ったんだ」

 

と手に持っていたサンドイッチを懐に隠す文縁

 

「・・・誰もアンタのサンドイッチの催促なんてしてないわよ」

 

「そうか」

 

そう言いながら文縁は歩きだす

 

「アンタ、今日はこれからどうするの?」

 

「何、デートのお誘「違うわ、ただの興味よ」・・・本部に帰って移転の準備だよ、色々挨拶しなきゃならん人もいるし」

 

「そう、今度行く所では迷惑かけないのよ」

 

「誰にもかけた覚えはないな」

 

「どの口が」

 

文縁は練馬基地を後にした

 

「・・・PXにサンドイッチなんてあったけ?」

 

・・・・

同日13:25

日本帝国陸軍技術廠・第壱開発局

 

文縁は技術関連の各部署に挨拶周りをしていた。

各方面に『助けて貰った』のは本人も自覚している。

 

最後に第壱開発局に訪れ、ドアを開けようとした時別の誰かの手が伸びる

 

「あっ」

 

「おや」

 

そこには篁がいた。

 

「・・・え~と、篁少尉でしたっけ」

 

「はい、そういう貴方は・・・」

 

「色の黒に、植物の藤で読みがつづら、フミの文に、ご縁の縁でぶんえんです。今は少尉です」

 

「あ、貴方が噂の『黒の道化』・・・」

 

「え、その呼び名はちょっと・・・」

 

「失礼しました。で黒藤少尉はどこに?」

 

「いや、大泉さんと巌谷さんに挨拶しに」

 

「おじ様に?」

 

「おじ様?」

 

「い、いえ。私も丁度巌谷中佐に会いに来た所なので」

 

「それは良かった、どうせ道を聞かなきゃ行けなかったんで手間が省けた」

 

「はい、では付いて来て下さい」

 

二人は第壱技術局に入った

 

○○●●●

同日13:29

日本帝国陸軍技術廠・第壱開発局内

 

私の隣に今、件の黒藤文縁少尉がいる

中央では結構知られている人物である

何故『黒の道化』と呼ばれているかは知らないけど

おじ様曰く、何でもある程度出きるけど、やりたい事以外やらないから出世しない人らしい。それ以外にも結構な激戦を生き抜いてきた兵士である。

 

私達はおじ様の部屋の前に着く

 

<コンコン>

 

「篁少尉、及び黒藤少尉です」

 

「入りたまえ」

 

「はい」

 

中に入ると書類を山のように積んだ机に座るおじ様がいた

 

「面白い組み合わせだね」

 

「いえ、そこで会いまして」

 

「唯依くん少し待ってくれるかな、黒藤少尉の用件を聞いてしまいたい」

 

「はい」

 

「で、何の用かな」

 

「用という程の事ではないですが、転属が決まったんで・・・挨拶に」

 

「・・・ほぅ、で何処に決まったんだい?」

 

一瞬おじ様が変な反応をしたが気のせいだろう

 

「衛生科の軍樂部です!」

 

黒藤少尉は本当に嬉しそうに言う

 

「・・・そう言えば君は昔から音楽をしたいと言っていたね」

 

何故か目尻を押さえて顔を上に上げるおじ様・・・寝不足だろうか

 

「はい、やっとですよ!PXのコックに始まり、補給兵、機械化歩兵、衛士、技術科でやっと書類が通りまして」

 

「そうか・・・歩兵を2年、衛士としても2年だったかな」

 

「はい」

 

「光州作戦、明星作戦、その他多くのBETA戦を生き残り・・・軍樂部隊か・・・」

 

黒藤さんはそんなにも多くの戦場を生き延びて、寂れた軍樂部隊に何をしに行くのだろう?

 

「いやー楽しみですよ、巌谷中佐にもお世話になりました」

 

「う、うむ」

 

「それで、俺がココで研究していた資料や機材、研究機がどうなったか知りたくて」

 

「それなら、引き取り手が出たので、既に我々の手にはない」

 

「・・・そうですか、最後に俺の機体や兵器は見たかったですね、実戦で結局使えなかったですけど」

 

「(いや、機会はあるかもしれんぞ)」

 

何かおじ様が言った気がした

 

「で、大泉少将・・・大佐はいますか?」

 

「残念ながら、大佐は今会議に出ている」

 

「う~んタイミング悪かったかー、まぁ、また今度くれば良いか。では失礼します他の局にも研究資料とか置いてあるはずですから」

 

「(もう無いと思うがな)しかし、君のような熟練兵が軍樂に行くとはな」

 

何か最初に呟いたような・・・それにしても、大泉大佐や沙霧大尉が言うように凄い人なら何で・・・

 

そして黒藤少尉は部屋を出て行こうとする。

 

「黒藤少尉!」

 

「ん?」

 

彼は振り向かずに答える

 

「もう、た・・・戦わないんですか・・・?」

 

聞いて良いのか分からなかったけど聞いてしまった

 

「地獄を見れば・・・心が乾く・・・戦いは飽きたのさ・・・」

 

「!!!」

 

矢張り聞くべきじゃなかった

 

「定めとあれば心を決めるが、選べるなら・・・」

 

「し、しかし」

 

「そっとしておいてくれ・・・」

 

彼はどれ程の事を見てきたのだろう

 

そして彼はドアを閉めた

 

「唯依くん・・・」

 

「おじ様・・・私は・・・聞くべきじゃなかったんでしょうか?」

 

「彼は・・・」

 

「そう言えばさっきから何を呟いて?」

 

「いや、彼が不憫でね」

 

「???」

 

不憫?彼の過去と関係があるのだろうか?

 

「いや、気にしないでくれこっちの事だ」

 

「で、唯依くんを呼んだのはテストパイロットの件でだ」

 

「新型ですか!?」

 

「ああ、これを見てくれ」

 

おじ様は私に書類を手渡す・・・TSF-99・・・99・・・1999年と言う事はもう完成しているのね、全くそんな噂は耳にしなかったけど・・・Type-MS-15K 鳥兜。

 

「MS?聞かない形式番号ですね」

 

「モビルスーツと言う」

 

「モビルスーツですか・・・」

 

「オリヴァー=マイと白銀武という名前に聞き覚えはあるね」

 

「!!はい、この前の演習にも参加していたらしいですし、後、新粒子の研究発表で物理学界では一躍有名人です」

 

「彼らが研究していた新概念の戦術機をMS(モビルスーツ)という」

 

「!!ではこれは!」

 

「香月博士と取引をしてね」

 

「横浜の魔女と!いや、国連軍の力を借りるなど!おじ様!」

 

「我々は技術的挫折をしていた・・・もうそんな事を言っている場合ではないのだよ。それにコイツのライセンスは日本が持つ事になっている」

 

「・・・それでも・・・!!」

 

「残りの資料も見てくれ」

 

そう言われ私は他の資料を見る

 

・・・

 

接近戦特化型・・・確かに私達には合っているわね

 

・・・加熱長刀(ヒート・ソード)!?凄い技術・・・

 

・・・ウソ・・・核反応炉に換装可能?

 

「・・・どう思う?」

 

「凄い、この機体5倍以上のエネルギーゲインがある!」

 

反応炉換装時だけど、それでも普通の機体とは比べ物にならない・・・

 

「これなら!おじ様!」

 

「ああ。日はまた昇る・・・」

 

<コンコン>

 

「おや、今日はお客様が多いな・・・誰だ?」

 

「沙霧です」

 

「入りたまえ」

 

そういうと軍服をピシッと着込んだ沙霧大尉が入ってきた

 

 

○○●●●

同日15:00

日本帝国陸軍技術廠・第壱開発局内・巌谷副局長室

 

「入ります」

 

俺は巌谷中佐の部屋に入る、そこには先日あった篁少尉がいた。

 

「今日は何の用かね」

 

「いえ、用という程の「君もかね」・・・は?」

 

素っ頓狂な声を上げてしまった

 

「先ほど黒藤少尉が来て、彼も同じような事を言ったもので」

 

「黒藤さんが・・・行き違いでしたか・・・」

 

黒藤さんには聞きたい事があった・・・今の我が国の状況について・・・光州作戦と明星作戦の事・・・

 

「聞きたかった事があったんですが残念です」

 

「で、その用とも言えぬ用は何かね」

 

「はい、ここの局員に用があったので来たのですが、来たからには挨拶をしなければ無礼に当ると思いまして」

 

「君も唯依くんも真面目だな」

 

「恐縮です」

 

「特に黒藤くんの後だとな・・・」

 

「「は?」」

 

黒藤さんの後だと何なんだ?

 

「んん・・・先日の合同演習ではお世話になりました」

 

「ああ・・・事件もあったが・・・ご苦労様・・・」

 

「はい、川本少佐の事は残念です」

 

「彼は前々より、心を病んでいたからね・・・明星作戦以降悪化していたようだ・・・それがこんな形で終わるとは残念だ」

 

川本少佐はあの後軍事裁判にかけられるため、現在中央本部の留置所に入れらている

 

「君も何かしていたようだが・・・」

 

巌谷中佐の目が鋭くなる・・・

 

「お答えできません」

 

「そうか、私より上の者の命令か・・・」

 

「!!!」

 

流石・・・か・・・

 

「・・・君も気をつけろ、中央には魔物が住む」

 

「魔物ですか・・・」

 

「ああ、人の皮を被ったな・・・」

 

巌谷中佐の言葉が何故か頭から離れなかった

 

「はい、では私はこれで」

 

「ああ」

 

「では少尉も」

 

「はい」

 

俺は局を後にする

 

この後、その中央に行かなければならない、香月夕呼、白銀武とその一派についての報告だ・・・

 

・・・

 

<バタン>

 

俺は会議室から出てきた

 

「フン」

 

事は現場で起きている、会議室で話し込んでいる者に何が分かるという?

 

俺は廊下を歩き始める

 

白銀武か・・・敵にしとくには惜しい男だな、あの歳であの技量か・・・

あれ程の者が魔女に飼われているのか・・・いや・・・犬ではなく狼かも知れんな。

全員が騙されているのかも知れん・・・どちらにせよ、殿下に牙を向くのであれば、その牙ごと討ち果すのみ!

 

俺は地下に続く階段の前で止まる

 

「地下留置所か・・・」

 

そして地下に下りる・・・

 

人の気配は薄く、全体的に薄暗く、アンモニア臭かほのかにする。

 

俺は唯一人が入っている檻の前に止まる

 

<ブツブツブツブツブツ>

 

そこにはブツブツと呟く川本がいた

 

「・・・ま、まりもちゃんなら、そうだよ分かってくれる、僕じゃない、僕は、僕は?何を?殺す?いや殺すべきだろ!死ぬ?死ぬのは嫌だ!撃つな!殴るな!ぼ、僕は悪くない、なんだ暗いよ暗いじゃないか!あ、明りをつけろよ!耳の横で怒鳴るな!僕に命令するんじゃない!!・・・ぼ、僕はわわわわわ僕だだだだ、お前じゃない、お前は、お前は。お前は誰だ?」

 

と言うと川本が俺の方を振り向く

 

その漆黒の双眼が俺を見つめる

 

「・・・哀れだな・・・川本」

 

「か、川本・・・かわくぁくぁぅわ?誰だ?」

 

「・・・」

 

俺は見るに耐えられず留置所から出た

 

○●●●●

同日22:20

帝国軍中央本部留置所

 

おい、僕、俺、お前、君、殺せよ、何してんだ彼女、が欲しいんだろそうだろ?わかってんだぞ、お前は俺で俺は僕でお前なんだから、なぁ?何やってんだよ、蹲って惨めだな。抑えるなよ、解き放て、楽になんぞ、ホラホラホラホラほら。誰が誰のせいでこんな思いしてると思うんだ、お前のアイツの俺の僕のいやアイツの黒藤か?白銀か?国連軍だろBETAだ!本当に?本当に?僕のせいだろ、いや君でいいんじゃないか、あいつだよ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ手に入らないなら奪え奪え奪え奪え奪え奪え奪え奪え

 

「う、うっさい!!!!ぼ、僕に命令するな」

 

誰か助けてくれ!た、た!

 

<コツコツ>

 

誰かが入ってくる、何人?僕、君?俺、アイツだよアイツらだアイツらか!ぼ、僕を苦しめた苦しめる苦しめに来たのはアイツ?殺れ殺れ殺れ殺れ殺れ殺れヤレヤレやれやれ

 

「・・・評価は・・・成功・・・したというのか・・・これで?」

 

「命令は聞いたぞ・・・」

 

「・・・壊れたようだな・・・」

 

「・・・元々脆弱な被検体だ仕方あるまい・・・」

 

「始末するか?」

 

「いや、まだ使いようがあるだろ。腐っても衛士だ」

 

「・・・ははははははは、確かにそうだな?では見事に散って貰おう」

 

誰かの手が手手手手てててててぼぼぼぼぼく僕を放せ!

 

「・・・連れてけ」

 

西暦1999年11月3日22:22

 




西暦1999年11月3日

死ぬかと思いました

オリヴァー=マイ臨時大尉

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