魔法少女まどか☆マギカ~紡がれる戯曲~   作:saw

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今はアニメ第二話のところです


謎に満ち溢れた転校生

 目が覚めた。

 昨日と比べると断然素晴らしい朝だといえる。アイツが出てこなければ、基本的に目覚めはいい方なのだ。いつもの朝食をとり、支度を整えて家を出た。

(昨日は色々あったな)

 考えてみれば、昨日は大きな転機といえるだろう。

 まどかに何かしらの因縁がありそうな謎の転校生、暁美ほむら。

 熱い出会いを果たした友達であり、好敵手、佐倉杏子。

 この二人と出会ったのだ。そして暁美はまどかだけではなく、俺(正確には中沢もだが)にも興味をもっていた。彼女の謎は気になるところだ。さらに杏子とは再び勝負をするという約束をし、そのとの心臓の高鳴りは、とても心地よかった。アイツの夢から始まった一日だったが、基本的にいい一日だったといえよう。

 そうこう考えているうちに四人の姿が見えてきた。

「おっはよー、皆!」

 昨日よりずっと自然に、元気に挨拶できた。機嫌が本当にいいんだな、と自分を少し客観視した。

「おはよう、洲道君」

「おっす、裕一」

「おはようございます、洲道君」

「おはよう、洲道」

 皆もそれぞれ挨拶を返してくる。

 いつもと変わらないやり取りのはずだが、そのとき何か違和感を感じた。ここにいる五人以外に別の気配を感じる気がするのだ。その気配はまどか辺りから感じた。よく見ると、まどか、それにさやかもなにか戸惑っているような印象を受ける。

 昨日二人になにかあったのだろうか? 気になった俺はさりげなく探ってみることにした。

「さやか。めぼしいCDは見つかったか?」

「え? CD?」

 いきなり何を聞くんだろう、といった感じに聞いてくる。やっぱり、変だな。

「昨日はそれでまどかとCD屋に行ったんだろ?」

「あ、ああ、CDね。昨日はめぼしいCDは見つからなくてさあ! 収穫はなかったんだよ」

 あわてた様子でさやかはそう返してくる。どうやら、昨日なにがあったか話す気はないらしい。

 しかし無理矢理聞くにも材料がないし、どうしても聞かなきゃいけない事情があるわけでもない。

 ここはあきらめることにした。

「なんだよ、だらしないな。俺はちゃんとネタを探してきたというのに」

 おどけた調子でそう返した。仕方ないのでさやか達から相談してくるのを待つことにした。

 もっとも、状況が変わればその限りではないが。

「ネタ? 昨日裕一はなにしてたのさ?」

「俺は風見野へ行ってたんだよ。そこでダンスゲームをやっていたときにライバルといえる人に会ったのさ」

「へえ、洲道についてこれるやつがいるのは初めてだな」

 中沢が感心した様子で言った。ここにいる皆は俺がダンスゲームが得意であることを知っているのだ。

「けど、どうして風見野へ行ってたの?」

 まどかも聞いてくる。占いが主な理由だが、それを言うと目の前にいる中沢やさやか、さらにはまどかや仁美、つまり全員にからかわれる気がしたので言わないことにした。同じ理由で杏子の名前と性別も言わないことにした。俺は昨日杏子にいった理由をそのまま話すことにした。

「俺と渡り合えるやつがいなくてな。強いやつを求めてさすらった、てところかな……」

「お、いいセリフだね。あたしは好きだなーそういう熱血展開」

 さやかものってくれた。とりあえず皆納得してくれたようだ。

「今日も行くことにするぜ。そして今度こそ勝って、それを恭介に報告しにいく」

「負けちゃったんだ……」

 うかつにもらした言葉をまどかは見逃さなかったようだ。確かにそうだが、俺は完全に負けを認めたわけではない。あの時はただ好きなものを馬鹿にされた怒りだけで闘ったが、今は純粋にあいつと闘って勝ちたいと思っている。なにより俺はあいつともう一度闘う約束をしたのだ。

「実力は五分だったんだ。次こそ勝ってみせるさ」

「うん、そっか。頑張ってね」

 まどかも応援してくれている。これで勇気百倍だ。

 

 

 

 

 

 通学中でもまどか達の様子はどこか変だった。しきりに互いをちらちら見てるし、言葉もほとんど話さない。

「お二人とも、さっきからどうしたんです? しきりに目配せしてますけど…」

 仁美も気になっていたようだ。直接二人に聞いてきた。

「え!? いや、これは、あの、その……」

 まどかもしどろもどろだ。それだと何かありましたよ、って言ってるようなものですよ、まどかさん。

 すると突然ドサッという音が聞こえた。仁美がかばんを落としたようだ。

「まさか、二人とも……すでに目と目で分かりあう間柄ですの? まあ! たった一日でそこまで急接近だなんて、昨日はあの後、一体何が!?」

「な、なにぃ!? おい、お前ら。一体なにがあったんだ!? 今日という今日は全部吐いてもらうぞ、こらぁ!!」

 俺も二人に詰め寄る。二人に事情を聞く時がきたのだ。

「いや、それはねーわ、さすがに……」

「洲道君も落ち着いて。確かに色々あったんだけどさ……」

 白熱しかけた俺を中沢が押さえる。しかし、仁美は止まらなかった。

「でも、いけませんわ、お二方! 女の子同士で! それは禁断の……恋の形ですのよーーー!!!」

 そう言って仁美は走り去る。かばんを置いて行って。

「はあ、今日の仁美ちゃん、なんだかさやかちゃんみたいだよ……」

 まどかがため息をついている。結構ひどいこと言いいますね、あなたも。

「どういう意味だよ、それは!」

 そのままの意味です。

「まあ、なにがあったかは知らないけどさ。困ったら、いつでも相談してくれよ? 微力ながら、助太刀しますぜ?」

「俺もなにができるか分からないけど、話せるときになったら話してくれよ」

 俺も中沢もそう二人に言っておいた。

「うん、ありがとう。二人とも」

「今は言えないけどさ、話せるときになったら、ちゃんと話すよ」

 二人も了承してくれた。これなら大丈夫かな、と少し安心した。

 

 

 

 

 

 教室に入ったときにすでに仁美は座っていた。まだすねているようだ。まどか達がなだめようとしているが、あまり効果がない。

 仕方ない、助け舟を出しますかね。

「仁美、許してやれよ。まどか達も隠したくて隠してるわけじゃないんだしさ。話せるときになったら話してくれるみたいだし、あまり追い詰めるとかわいそうだろ? 今は待っていることが俺達にできることだって」

 それでも仁美は少し憮然としていたが、やがてため息をついて、

「もう、しょうがないですわね。お二人が話してくれるまで待つことにしますわ」

そう言って笑顔を見せるのだった。

 

 

 

 

 しばらくすると暁美が登校してきた。いつ見ても綺麗だな、と思う。席に座るとおもむろにまどかの方を振り返った。昨日もやはりまどかを見ていたようだ。

 まどかの方は少しにらみ返すように暁美を見つめていた。さやかもにらんでいる。昨日と態度が違っていることに気付いた。

(暁美と何かあったのか……?)

 考えられるとしたら、まどかの言っていた色々なことだ。その中に暁美も含まれているのかもしれない。しかし、これ以上推理する材料はないため、ここで思考を打ち切ることにした。

 

 

 

 

 昼休みになった。今日はまどかとさやかは二人で飯を食べに行った。仁美は他の女子グループと一緒に食事をしている。俺と中沢は購買でさっさとすませてしまった。

 少ししてから俺はおもむろに席を立った。

「ちょっとトイレに行ってくる」

「おう」

 そうして俺はトイレではなく、あまり人気のない場所へ移動した。目の前には大きなガラス窓がある。鏡のように自分の姿を写している。

 そう、俺はここでダンスのステップの練習をしようとしていたのだ。杏子との対決を前にして少し練習をしておきたかったのだ。ここなら、ステップの音で響いても、あまり迷惑にはならないだろうし、先生に見つかっても逃げ切れる自信があった。

 そして第一のステップを踏もうとしたところで、それを断念せざるを得なかった。

 暁美ほむらが目の前にいたからだ。

「あなたは、何者なの?」

 いきなりそんなことを聞いてきた。人のことを聞くのはいいが、もう少し聞き方というものがあるのではないだろうか? 彼女の不躾な態度に少しムッとしたが、ここは俺が大人になるべきだろう。

「昨日は自己紹介してなかったよな。俺は洲道裕一。よろしくな、暁美さん」

 とりあえず名前を名乗っておいた。

「昨日だけどさ、まどかのこと見てたよな。もしかして幼なじみとか?」

 さらにまどかとの関係についても聞いてみた。昨日の彼女の行動から少なくとも向こうはまどかのことを知っているのは間違いないはずだ。

「…………」

 何も返してくれなかった。しかし俺はめげずに話を続けることにした。三度のハートブレイクにめげなかったこの俺をなめるなよ?

「放課後のときさ、もしかしてまどかとさやかに会わなかったか?」

 俺の考えが正しければ、昨日暁美はまどか達と会っていたはずだ。でなければ、一日でまどか達の対応が変化することに説明がつかない。

「ケンカでもしたのか? よければ俺が仲を取り持つ手伝いを……」

「あなたが何故ここにいるかは知らないけど」

 いきなり暁美が口を開いた。さっきから会話のキャッチボールがうまくいってない。暁美さん、会話のキャッチも下手だし、暴投しすぎです。

「あなたも私の邪魔をするなら容赦はしない」

 そう言って暁美はこの場を離れて行った。

 正直言ってこの時の暁美への評価はかなりマイナスになっていた。

 会話もまともにしてくれないし、言いたいことだけ言って去ってしまう。どこにも好きになる要素はない。その美貌も今ではなおさら腹が立つ要素にしかならなかった。

 とりあえず俺も戻ることにした。こんな気分で練習をする気にはならなかったのだ。

 はあ、こんなんで杏子に勝てるかな……




というわけで裕一、ほむらと会話する、でした(会話とはいえないw)ほむらのコミュ障を表現できたかは微妙です。

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