魔法少女まどか☆マギカ~紡がれる戯曲~   作:saw

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こういう展開は僕は結構好きです。


望まぬ場での再会

 いつもの朝がやってきた。目覚めはOK。昨日の疲れものこしていないため、コンディションは完璧だった。

 あれから休日を修行にあてたため、俺とさやかの技術はそれなりに向上した。もっとも、俺はリボンの扱いがまだまだだし、さやかは今まで闘いを知らない女の子だったのだ。すぐに戦闘技術が身につくわけでもない。それでも簡単な受け身程度は教えることはできた。これを知っているだけでも生き残る確率は格段に上がるのだ。

 唯一の救いは休日の間は魔女が出てこなかったことだ。このまま平和であることが俺にとっては望ましいのだが、マミさんの顔色はあまり優れなかった。彼女曰く、マミさん達以外の魔法少女が狩っているのかもしれないとのこと。別の魔法少女とは今の所暁美以外にはいないが、それならそれでいいのではないかとマミさんに聞いたら、

「もし彼女がグリーフシードだけが目当てだとしたら、使い魔を見逃す可能性もあるわ。実際、そういう魔法少女も多いのよ……」

と返された。それが事実だとしたら、なおさら俺達が頑張らないといけない話になってしまう。しかし、実際は俺達の負担も減るじゃないかとも思っていた。俺はグリーフシードはいらないため、その辺りの事情が理解できないことも原因の一つなのかもしれないが。

 とにかく朝食を食べて支度を整えて学校へ向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 放課後になった。今日は皆で恭介の見舞いにでも行きたかったが、俺達の予定が合わなかったため、その場で解散となった。俺とさやかもマミさんと合流して魔女探しへと出かけようとしたら、

「洲道君、さやかちゃん、マミさん……」

 まどかが俺達の所にやってきた。その沈痛な面持ちに俺は首をかしげた。

「どうしたんだ、まどか? 俺達はこれから魔女探しに出かけるんだけど……」

「あれから休みの時も考えていたんだ……私、なにもできないし、足手まといにしかならないって分かってるんだけど、でも、邪魔にならない所まででいいの! 行ける所まで、一緒に連れてってもらえたらって……!」

「がんばりすぎじゃない?」

 必死にしゃべろうとするまどかにさやかが優しく手を取って話しかける。

「まどかの気持ち、すごく嬉しいよ?……分かるかな?あたし、今さっきから震えが止まらないの。この休日にも魔女探しをしてたんだけど、まだ魔女とは闘ってなくてね。マミさんや裕一もいるのにさ、それでもやっぱり怖いんだ」

「さやかちゃん……」

「あのさ、マミさん、裕一。まどかも連れていっちゃ駄目かな? まどかはあたしが守るからさ!」

「美樹さん……」

 マミさんはどうするべきか迷っているようだ。普通ならこの場は反対するべきだろう。まどかがそばにいたとしても戦力になるわけでもないし、さやかも守れるほど強くはないのだ。それは以前のマミさん達がやっていた、誰にとってもマイナスにしかならない提案だ。しかし……

「……マミさん。俺からもお願いします。この場は俺とマミさん、さやかとまどかで二組に分かれましょう」

「えぇ!? す、洲道君?」

 マミさんも俺の提案に驚いているようだ。しかし、以前の失敗を繰り返さないとめに俺からも言っておかなければならないことがある。

「ただし、まどか。結界の中には絶対に入るな。それから結界を見つけたら、テレパシーでも電話でもなんでもいいからマミさんに連絡を取れ。この二つは絶対に守れ。それが条件だ」

「う、うん。分かったよ。約束する」

 まどかも約束してくれたが、とりあえずこの場はそれを信じるしかない。やがてマミさんは根負けしたようにまどかの言葉に頷いた。

「……分かったわ。でも鹿目さん。さっき洲道君が言った条件は必ず守ってね?」

「はい、ありがとうございます、マミさん、さやかちゃん、洲道君!!」

 

 

 

 

 

 

 俺は今マミさんと一緒に魔女探しを行っている。ちなみについさっき合流したキュゥべえはまどか達の方についてもらっている。こうすればまどかにもテレパシーを使うことができるので、連絡がよりスムーズに行える。

「どうして鹿目さんの同行を許したの?」

 そんな時、マミさんがさっきのことについて聞いてきた。確かに危険ではあったのだが……

「あのままだとまどかは一人で思いつめて、何か行動を起こすんじゃないかって思ったんです。例えば、魔法少女になる、とかね。俺もこの力がなかったら、知っていて何もできない無力さを悔やんでいたかもしれないんです」

 

 しかしそれでも、まどかには自分が後悔しない道を決めてほしかった。だからこそ、俺はあの時まどかにああ言ったのだ。

「それにさやかがまどかを守ることで無茶なことをしないでもらいたいっていうのもあったんです。二人にさせたのは、そんな狙いもあったんです」

「そう、だったの……」

「はい、ですけど、同行を許したのは主に前者なんです。そういう気持ちは俺にも分かりますから……」

「それは、私だって同じよ……でも、洲道君。相手は魔女だけじゃないかもしれないわ」

「それってどういうことですか?」

「もし、見つけたのが使い魔の結界だとしたら、最悪……鹿目さん!?」

 

 突然マミさんがどこか別の方向へ視線を向けた。どうやらまどかがテレパシーを送っているようだ。

「大変よ、洲道君! 美樹さんが今他の魔法少女と闘っているそうなの!」

「ええ!?」

 いきなりのマミさんの言葉に俺は混乱してしまった。なぜ魔女や使い魔ではなく、魔法少女同士が闘うことになるのだ?

「それって暁美のことですか?」

「いいえ、違うわ。彼女達が見たことのない魔法少女だそうよ。おそらく、ここ最近の魔女を狩っていたのは彼女でしょうね」

 ますます混乱してきた。ここで新しい魔法少女だって?なぜそんなことになっているのだろうか?しかし、今はそんなことを考えている場合ではない。

「それなら早くまどか達の所へ向かいましょう。場所はどっちですか?」

「ええ、こっちよ……あなたは!?」

 俺達はまどか達のもとへ行こうとしたが、俺達の向かう先には彼女が立ちふさがっていた。暁美ほむらだ。それはまさしく、あの時の病院の結界と同じ状況だった。

「この先の魔法少女の闘いは私に任せてほしいの」

「何度も言うようで悪いけど、信用できると思ってるの?」

 

 あのときと同じやり取りを二人は交わしていた。俺はこの状況にため息をついていた。これから先、暁美は何度も俺達の前に立ちふさがって邪魔をするのだろうか?今の俺達はあの時と同じように急がないといけないんだ。

 そしてそれは暁美の方も同じようだった。彼女の表情は明らかに苛立ちで満ちていたのだから。

「……それなら、こうするしかないわね……くぅっ!?」

 そう言って暁美がなにかしようとしたが、マミさんの方が早かった。彼女の魔法が暁美をまた縛りあげたのだ。

「洲道君、この先の路地を真っすぐ行けば鹿目さん達の所へ合流できるはずよ」

「けど、マミさんは……」

「私はここで彼女を抑えているわ。あなたじゃ、まだリボンをここまで制御できないでしょ?」

「うぐっ……」

 反論できなかった。確かにまだ俺にはそこまでのコントロールはできないし、今俺の中にあるのはさやかの魔法だ。その中に暁美を拘束する手段がないのだ。かと言って、俺が暁美にずっと触れ続けるというのも現実的ではない。今はこの場をマミさんに任せるのが一番いいのだろう。だけど、俺一人でまどか達を助けることができるのだろうか?

 

 そんな思いが顔に出たのか、マミさんは俺に対して優しくほほ笑んでくれた。そのほほ笑みに少し気持ちが落ち着いた。

「大丈夫。この三日間あなたの実力を見せてもらったけど、美樹さんの魔法を持っているあなたなら、太刀打ちできるわ。私もすぐに追いつくから」

「マミさん……」

「鹿目さん達を……お願いね」

 マミさんは俺のことを信用してくれた。だったら、俺はそれに答えなければならないんだ。その言葉でようやく決意した俺は、マミさんが示した路地の方へ真っすぐ駆けて行った。

「ま、待ちなさい、洲道裕一! うぅっ!?」

「行かせないわ。あなたはしばらく私につき合ってもらうわ」

 

 

 

 

 

 

 路地を走って行くにつれて武器がぶつかり合う音が聞こえてきた。近くで闘いがおこなわれているのは間違いないようだ。俺はさらに速度を速め、路地を駆け抜けて行った。やがて誰かが闘っているところが見えてきた。しかし、たった今さやかの剣が弾き飛ばされ、さやかは地面に倒れてしまった。

「まどか、さやか!!」

 ようやくたどり着く。俺の声にまどかとさやかがこちらを向いた。どうやら、間に合ったようだ。さらにもう一人、さやかと闘っていた魔法少女もこちらを振り向いた。その姿に俺は絶句した。

「な……え? ど、どうしてお前がここに……?」

「…………」

 その少女は赤い髪をポニーテールにしていて、その勝気な瞳は今は細められて俺の方を睨んでいた。彼女と闘うことで俺はもっと強くなれることを実感した。できるなら、もう一度会いたいと思っていたが、それはこんな場ではなかった。大きな赤い槍を持つ彼女の姿は今はマミさんやさやか、それに暁美と同じ異質な雰囲気を漂わせていた。心臓の鼓動が彼女は何者なのかを教えてくれる。しかし、認めたくはない。それゆえ、俺は声を張り上げてしまう。

「どうして……ここにお前がいるんだよ、杏子!!」

 俺の友達であり、好敵手である佐倉杏子が魔法少女の姿で俺の目の前に立っていた……

 




ようやく杏子と合流です。

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