テンプレ神様転生TSチート能力持ち   作:いんやだ

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 どうも、なにやらお気に入りが125件もあることに内心超ビビりまくっている自分です。
 かなり遅くなりましたが、かなり設定を決められましたので、投稿させていただきます。
 そしてそれと共にエンディングもある程度決められました。
 今の所、バッドエンド以外に、3つエンドがあります。
 といっても、2つしかエンドは決められてないんですけどね。
 最後の姉妹(ベアトリス)エンドがどうするか、まったく閃かない不思議。
 そしてジークルーネの創造が、考えている内にヤバいことににににに…
 これってまんま○○○○じゃないですか、やだーな状況。
 そして自分に格好いい詠唱を考える才能が全くない事に気が付いてしまった。
 誰か文才をくれぃ。

 そしてベア子さんの口調って、こんなんでいいんですかね。
 かなり忘れている。
 しかも同年代に対する口調なんてあったけか。


ジークルーネ5歳から飛んで12歳、改めてこの世界で生きると決めました。

 やることが決まったのなら、後は一直線なのだけど、人間、それのみと言う訳にもいかない。

 例えば人間関係。

 

 5歳児であったジークルーネにも、知り合いは勿論、友達もいる。

 その人達との交流をどうするのかとか、実際に会った際にどう接すればいいのかとか。

 ジークルーネとしての記憶はあるものの、前世の記憶が戻った影響で、今迄の接し方が解らなくなってしまった。

 大人に子供の振りをしろと言っても無理なように、大人の価値観がある今の私には、どう一緒に遊んでいたのか、解らない。

 少し違うが、子供の頃に何を考えていたのか、を覚えていないようなものだ。

 もちろん、私なりの接し方でいいなら出来るが、それは大人が子供相手に遊んであげている(・・・・・)だけであり、一緒に遊ぶことは不可能だ。

 子供は敏感だ。

 年の近い相手の子供が、まるで遥か年上のように上から目線で接してきたとしたら、どう思うだろうか。

 少なくとも、いい気はしないだろう。

 というか結構嫌な子供になってしまうと思う。

 

 とまれ、その辺りは心配だが、実は私が心配してもあまり意味は無い、というのは違うが、心配をするとそこから多くの心配事が発生してしまう。

 だから、何も考えずに動いた方が良い方に動く。

 こういったモノは、なるようにしかならないのが経験則だ。

 ただ、それが出来れば楽なんだが、性分なのか、こうして心配事を上げているのが現状である。

 それに知り合いに会ったとして、家族のように受け入れてくれるかどうかが少し怖い。

 人間は未知のモノを排除しようとする。

 それは避けられない事だ。

 私を、排除しようとしてくる人間も居るだろう。

 私は私として、前世あるジークルーネ・ヴァルトルート・フォン・キルヒアイゼンとして生きていくと決めたから、それをそのまま受けるわけにはいかない訳で、だからこそ、魔法という未知の防衛法があるのは助かった。

 そして並行して、隣の家が剣術道場だから、剣術を習おうと思っている。

 隣の家は表の世界のものだが、フォーゲルヴァイデ家と言えば、ドイツの剣術界では結構有名である。

 護身用と言っては物騒だが、私の魂に刻まれた剣術を再現したいと言う野望もあるため、実はけっこう乗り気だったりする。

 

 そして、隣の家の子供のアルフレート君とは数度しか会っていないので、あまり面識がないため、もしかしたら普通に友達になれるかもしれない。

 世間体的にも、友達はいた方が良いのは確かだ。

 両親はそんなことは気にしなくていいと言ってくれたが、彼等に報いるためにも、そう言う訳にもいかない。

 …それに、友達が一人もいないと言うのは、人として泣ける状況だと思う。

 

 とまあ、いろいろ心配な事はあるのだ。

 それを豪快に笑えるほど、私は肝が太くない。

 自分でもどうかと思うくらい、私は極普通の人間なのだ。

 

 後、7歳になったらドイツの魔法学校に入学することが決まった。

 両親の説得は大変だったが、それでも最後は嬉しそうだったため、魔法を習う事を決めて良かった。

 魔法の世界に関わることは心配事はあるが、彼、カール・クラフト=メルクリウスが言っていたように、いつかは否応なく私は巻き込まれるのだろう。

 ならばその時の為に、精一杯の努力を怠ることはしてはならない。

 何時かのように、大切な何かを失いたくなければ。

 

 そして最後に、一日の最後にお祈りをするようになった。

 別に信仰に目覚めた、と言う訳ではない。

 いや、マリィちゃんの宗教があったら面白いので入ってみたいが。

 ただ、彼女達への毎日の感謝の気持ちと、彼女達が無事なように祈っているだけ。

 今の私が心穏やかに毎日を過ごせるのは彼女達のお蔭なのだし、彼女達がもうあんな目に合わないように祈るのは当然と言えよう。

 もちろん、、彼女の知世も何時かは終わるだろう。

 永遠なんてものは存在しないし、私はそんなもの信用しない。

 不変のものがあるのは浪漫があるし、焦がれるものもある。

 だが、事実として不変であると思われた彼女の知世は、最低最悪の悪神によって一旦破綻を迎えている。

 これは、彼女が誰であれ抱きしめるという事を無くさなければ、いずれまた訪れるかもしれない結末だろう。

 だが、決して彼女は抱きしめることを止めはしない。

 そして私はそんなマリィちゃんだからこそ、愛おしいと思うし、だからこそ、私は毎日に感謝を捧げているのだ。

 そしてだから、次があるからと、神様に助けてご都合主義を願うような、マリィちゃんへの甘えを口にしてはならない。

 マリィちゃんが信じてくれているように、私達は自分達の力で幸せを掴み、守り生きていく。

 彼女が抱きしめて良かったと思えるよう、彼女が誇れるよう生きていくのが、抱きしめてもらえた私達の生きていく中での責務だと思う。

 

 永遠は存在しない、だけど、ずっと頑張ってきた彼女の終わりが、あんな理不尽なモノであっていいはずがない。

 彼女たち自身が納得するような終わりが来るよう、毎日を頑張って生きていく。

 いつか終わるのを恐れるのではなく、毎日を、明日を信じて今日を、今を大事に生きていく。

 そしてそれこそが、刹那を生きると言う事ではないだろうかと、と私は考えている。

 だから私は、懸命にこの刹那(この瞬間)を生きていくと決めたのだ。

 

 

 

 

 

                 ◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 なんて決意を新たにして7年の月日が過ぎた。

 いきなり時間が飛んだが、そこは勘弁してほしい。

 自分自身、情けないと思っているのだから。

 魔法学校では友人は姉さんが居なかったら一人も出来なかっただろうし、流石に気にはしていないが男子には意地悪をされ、この年頃の女子の会話には付いていけない。

 そんな人間がぼっちになるのは当然で、姉さんが間に入らなかったらぼっち一直線だったろう。

 

 魔法学校自体の成績は優秀で、姉さんの次に学校で優秀と言われている。

 因みに、筆記自体は姉さんに勝っているものの、実習ではかなりの差がついてしまった。

 別に私が下手と言う訳ではなくて、姉さんの感性が異常と言われているだけだ。

 光と風、そしてそこから派生する雷魔法に凄く適正があり、魔法学校でも他の追随を寄せ付けないほどに、圧倒的だった。

 本人は火で豪快に行きたかったみたいだけど。

 

 因みに、私の適性は基本は姉さんと一緒だが、姉さんよりも光の属性が強いらしい。

 私が光、そして姉さんが雷の魔法でバグじみた適性がある。

 が、それでも姉さんに実習で負けるのは、彼女が天才なのだからだろう。

 このままいけば、主席卒業は確実だ。

 私も、次席卒業は確実と言われている。

 

 そんな私達だが、実は教師立会いの下、仮契約(パクティオー)をしている。

 姉さんが主で、私が従者だ。

 アーティファクトもあり、驚きのアーティファクトが手に入った。

 そして、アーティファクトの性能とは関係ない、本来はあり得ない機能もある。

 双子ゆえかと思ったが、先生曰く、双子でもありえないらしい。

 だとすれば、カール・クラフトが言っていた、私と姉さんの魂の形が一緒なのが原因だろうか。

 

 因みに、なんでも仮契約は血を使った儀式方法やキスをするだけで出来る簡易方法もあるらしい。

 私達は儀式魔法を使ってしたが、そんなものがあるのならそっちの方が良かったかもしれない。

 姉妹で同性だから、姉さんもノーカンにするだろうし、私も子供相手にそんな事を気にするような性格ではない。

 と思ったが、血はともかく、キスは妖精族特有のものらしい。

 倫理的にもキスは問題がある(基本的に、仮契約は男女で行う事が多いらしい)し、妖精族が都合よく居るわけないので、まあ、そんな方法があるとだけ覚えておこう。

 さすがに私達に関係があるとは思えないし。

 

 そして当初、友人になれるのではと考えていたアルフレート君はというと――

 

 

 

 

 

                 ◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 カン、コンと、木と木がぶつかり合う音が広い道場に鳴り響く。

 道場の真ん中で、私、ジークルーネ・ヴァルトルート・フォン・キルヒアイゼンと、彼、アルフレート・デア・フォーゲルヴァイデが、道場の真ん中で木刀を手に打ち合っていた。

 

 高速でアルフレート君の側面へと踏み込むと、鋭い上からの斬撃を叩き込む。

 だが、ゆるりとした動きで私へと向き直ったアルフレート君が木刀の側面を叩き、軌道がずれた斬撃を最小限の動作で避け、返礼とばかりに横薙ぎの一撃が私を強襲する。

 それを姿勢を低くして避けざまに前進しながら胴への一撃を――

 

「ぐっ!?」

 

 一撃を放つ前に、体当たりを受け、体格と力で劣る私は軽く吹き飛ばされる。

 アルフレート君は吹き飛ばされた私を冷静に追撃する。

 着地と追撃の一撃が振るわれたのは同時。

 体勢が整っていない状態で、しかも体当たりの影響で呼吸も乱れた。

 無理に躱せば次の追撃で負けると判断、故に躱せないと即断して、彼の一撃を防御と同時に後ろへと飛ぶ。

 彼の力と私のとぶ力が合わさり、約5メートルほどの距離を稼げた。

 追撃には2足は必要だろう。

 空中を飛んでいる間に呼吸を整え、追撃に気を付けたが、予想外にもアルフレート君はその場に止まって私を睨みつける。

 

 その目が何を語っているかを察して、私は微かに苦笑する。

 悪いが、彼の欲しいものは見せてあげられない。

 特に今日は。

 

 ちらりと、道場の端で元気な声で、物騒なことを言いながら私を応援している姉さんを盗み見る。

 そしてそれだけで言いたいことは伝わったのか、彼の視線が険悪なものに変わる。

 

 戦況は五分、と言いたい所だけど、見ての通り私が不利だ。

 私は自身に有利なスピードで撹乱しつつ、一撃離脱で相手を削りに行くが、悉くが防がれ、逆に攻撃の瞬間を狙われ、何度か危ない場面があった。

 このままでは敗北は必至。

 

 だが、才覚に関して言うならば、姉さんとアルフレート君に敵わないのは、元より承知。

 しかも自身に合う、魂に刻まれた彼女(ベアトリス)の剣技を封じ手の一戦だ。

 元より、自分に合ったものを封じて勝利を掴めるほど、私自身経験があるわけじゃない。

 前世では鍛えていただけの人間にすぎないのだから。

 それに、元々この一戦どころか、5歳から始めたこの剣術は、今迄行ってきた全ての戦いが私にとっては敗北前提の試合なのだ。

 たまたま勝利を得ることは何度かあったが、それも偶然か、或いは我慢できなかった自分が居たかである。

 その後、子供相手にと猛省したが。

 そして勿論、アルフレート君が見たいのは封じている剣技そのものに他ならない。

 

 何故、剣技を封じているのか。

 理由はその剣技の種類にある。

 精神性に重きを置く剣道と違い、剣術はどうやって相手に勝利するかにある。

 もちろんそれだけではないが、比重としては精神性に重きを置くのは剣道が上だ。

 そして私が使う剣術は、さらに通常の剣術とはまた違う。

 いかに敵を素早く、そして的確に殺害するかという戦場剣術。

 使えるものは何でも使い、狙うは基本的に急所のみという危険な剣術だ。

 それを人に、しかも子供に向かって振るうと言うのは出来ない。

 いやうん、敗戦続きでムキになって、姉さんが見ていない時にアルフレート君に使ってしまった人間が言うべき言葉じゃないんだけどね。

 

 一人で道場で練習していた時、アルフレート君が来て、流れから練習試合をすることになったのだけれど、連敗続きでフラストレーションが溜まっていた私は、さらに私に勝って満足気に一人頷いている彼に向かって再戦を申し込み、誰も見ていない事を確認して、自身の意識を改変し、スイッチを切り替えるように己が本当の剣技を開封した。

 木刀を構え直し、少々独特の構えをする。

 本気で使ったからか、彼との練習試合は瞬時に終わった。

 開始直後、彼の繰りだした木刀を払いのけ、その次に手首を打って木刀を落とさせ、無防備になったところを首に木刀を添えて、それで試合終了。

 相手の武器を受け流して、手首を切り、首を斬る。

 あまりに鮮やかに行われたものだから、アルフレート君は唖然とした顔をしていた。

 以来、嫌われたわけである。

 手に入れたのは虚しい勝利だけだったが、ちょっとすっきりしたのは墓場まで持っていこうと決めた私だけの秘密だ。

 

 必至に彼に黙っているよう言い、彼もそれを了承したのでバレることはないが、度々本気を出すよう睨まれるようになってしまった。

 まさに自業自得、嫌われて当然であった。

 こんなことをしてしまったのは、子供として生きるようになって、肉体年齢に精神が引っ張られた所為だろうか。

 それとも混ざり合ったジークルーネの影響だろうか。

 …考えたくはないが、元々子供っぽい所があった、なんてことはないよね?

 

 そしてこれが一番の理由なのだが、姉さんにこの剣を見せるわけにはいかない。

 姉さんが見れば、私の剣技を模倣するだろう。

 そして、この剣技は誰よりも姉さんに馴染むだろう。

 人を殺す、戦場剣術がだ。

 それは駄目だ。

 もう彼女に戦場はいらない。

 彼女は皆を導く閃光であるべきだ。

 そして私は先陣に立ち、彼女の邪魔をする敵を薙ぎ払う剣となる。

 私が剣を取る理由はそれでいい。

 

 今度こそ、私の手で、剣で、多くの人を救う。

 その為に、愚かにも、その行為は矛盾だと、誰かを傷つけると分かっていながら、この手に剣を取ったのだから。

 いつか、その報いが訪れる時が来るだろうことを自覚しながら。

 

 もちろん、そうそう剣を取らなくて済むよう手は尽くすのは当然だ。

 だが、そうせざる負えない事態があることも、また事実だ。

 私が経験した、どうしようもない事実なんだ。

 

 結局、あの後も最後まで攻めきれず敗北した。

 荒くなった呼吸を整え、体内の気を静めながら互いに礼をするが、やはり先程の一戦で不満があるのか、アルフレート君に睨まれてしまった。

 まあ、その後怒られてたが。

 

「お疲れ。惜しかったね」

 

 そう言って姉さんがタオルとスポーツドリンクを渡してくれる。

 それに礼を言って受け取り、体を休める。

 

「惜しいなんてことないよ。やっぱりアルフレート君は強いね。全然敵わない」

 

 ある種の尊敬の念を持って答える。

 事実、才能だけではあそこまでの練度へ、しかもあの齢で行き着くことは不可能だろう。

 相当な努力があった筈だ。

 

「――ホントに?」

 

 ジッと目を見られながらそう言われ、少し焦ったがそこは経験値が違う。

 

「ホントだよ。アルフレート君もそうだけど、姉さんも凄いって思ってるよ。私は、あそこまで一心不乱に打ち込めることは凄いことだと思う。私にはきっと無いものだから」

 

 本心を語りながらも話を逸らし、姉さんの気を逸らす。

 これくらいの腹芸が出来るくらいには、前世の私は経験を積んでいた。

 生きていく上で、時には嘘も必要なのだと。

 

 ふーんと言って、追及を諦めた姉さんに安堵の息を吐く。

 姉さんは勘が鋭いのか、私が何かを隠していると、露骨に疑ってくることがある。

 それを隠すにも一苦労だ。

 一人でベアトリスの剣術の練習をしている時にも、急に現れたりと、ひやりとする場面もしばしば。

 本当は私が剣技を隠しているのを、知っているのではと勘ぐってしまう。

 いや、流石にそれは無いな。

 何かを隠していると言う事だけは知っている、そんな所だろう。

 

 にしても、はぁと憂鬱のため息を吐く。

 何かをやろうやろうと思ってみても、何かにつけて変にケチがつくのは一体どういう事か。

 友達作りは姉さんが居なければ一人もおらず、剣術に関しても殺人剣術しか思う様に振れず、仲良くできると思っていたアルフレート君には嫌われてしまう。

 良い事無し、とは言わないが、私自身が良い所無しではあった。

 ただ、初めての魔法の勉強というのは楽しかったし、改めての勉強も楽しかった。

 前世の学生時代で苦痛としか思わなかった勉強も、社会に出れば、あの時しっかりと勉強をしておけば、もう一度勉学の機会を得たいと思う事もある。

 それをもう一度体験しているようなものであり、それに前世の私が生きていた時から数十年の月日が過ぎ去っている事を考えれば、物事の考えも、授業の教え方もかなり違うようになる。

 しかも外国の教え方であるから、基本的な考え方が違うと言うのも面白いものである。

 だから結果として、一人で勉学や剣術に傾倒していったのも、致し方ないのではと思う訳でして。

 

「私が連れ出さなかったら、ルーネってば他に何もしなかったかもしれなかったよね」

 

 そうそう、って。

 

「…声に、出してた?」

 

「あはは、そんなこと考えてる顔してた」

 

「む」

 

 そんなに顔に出ていただろうか。

 私自身、あまり顔に出ない性質な筈だが。

 

「むふふ、何と言ってもお姉ちゃんですから。他の人達ならいざ知らず、家族である私に隠そうなんて甘過ぎなのだよ」

 

 したり顔で語る姉さん。

 だけどそれに、少しだけ嬉しいと感じた。

 私は私で完結することなく、姉さんに、家族に解ってもらえていると言う実感が嬉しかった。

 だけど気恥ずかしかったので、無表情で隠し通すことにした。

 

「あ、ルーネってば恥ずかしがってるな。くふふふ、もうっ、可愛いんだからぁ」

 

 その言葉で余計に頬が赤くなって行くのが解り、それと同時に周りからじろじろ見られている視線を感じる。

 ああもう、姉さんの所為で恥ずかしい思いをしてしまっている。

 

「ほらほら、私が悪かったから、むくれないの」

 

「むくれてないです」

 

 ああ、子供みたいにむくれてしまっているな、なんて自覚しながら止められなかった。

 どうにもジークルーネの影響か、それとも前世含め、私がこの人に弱いだけなのか。

 少しだけ溜息をして、憂鬱を吐き出して気持ちを改める。

 

 そろそろ私も、自嘲はいい加減にしておこう。

 自重は良いが、自虐は百害あって一利ない。

 過ぎれば周りにも悪影響を及ぼす。

 

「うんまあ、結構な空回りをこの7年間してきたからね。ちょっと心機一転しようかなって思ってるんだ」

 

「――うーん、ルーネはさ、結構自己評価が低いよね」

 

「?」

 

 意味が解らず、小首を傾げる。

 

「ふふっ、自分を客観視できてないって意味だよ。高嶺の花は、いつだって遠巻きに眺められるんだから」

 

 そこまで言って、姉さんは呼ばれて道場の中央へと歩いていく。

 相手は中学3年の男子だが、姉さんならば問題ない相手だろう。

 しかし、姉さんの言っている意味が解らない。

 私を高嶺の花?

 それは姉さんにこそ相応しいだろう。

 

 魔法使いとしての歴史こそ祖父の代からと浅いものの、貴族の名家に生まれ、文武両道、可憐で皆に隔てなく優して、一緒に居て楽しい。

 こういった人が、鮮やかな人というのだろうと、見ただけで解る。

 きっと、姉さんならどこまでも駆け抜けていけるだろう。

 そんな確信がある。

 

 対して、私は貴族としてのそれなりに身なりや立ち居振る舞いに気を付け、容姿こそ姉さんと同じなものの、前世と変わらず無愛想で、文武には長けているものの、それこそそれなりの努力の結果でしかない。

 前世の知識があるにも関わらずこの結果なのだから、才能というものは恐ろしいものである。

 コミュニケーション能力も、変わらず苦労をしていると言う。

 前世での経験はどうしたって?

 それが難しいから現地で苦労したんだ。

 ただ、仲良くなったのなら、話は別だが。

 苦労して仲良くなったお陰か、私自身の友人とは死ぬまで交友は続いた。

 いや、前世の話だけどね。

 今世でも、友人は大切にしたいと思っている。

 …大切にしたいと思っているから、友達募集中です。

 

 あ、けど、おじい様の勧めで、中学校から日本へ留学することになったから、長期間文通が出来る方を募集します。

 

 そんな事を考えていたら、何やら姉さんがしたり顔で一人頷き、試合に集中せんかとおじ様に怒られていた。

 基本ポテンシャルは高いのにムラがある、姉さんらしい一幕だった。

 

 

 

 

 

                 ◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 未だに小首を傾げている可愛い妹に、忍び笑いをしながら歩く。

 まったく、自己評価が低いにもほどがある。

 普通、貴族であり、それらしい立ち居振る舞いを気を付けていて、凛とした佇まいは彼女に凛々しい印象を与え、それだけで大抵の人は気が引けるだろう。

 さらに本人は文武に優れた努力家であり、それに驕らない謙虚な一面も見せている。

 他の人がやりたがらない嫌な仕事もやれやれと片付ける様は、まるで年上のようにも見えるし、

 魔法に対しても意欲的でありながら、他の生徒たちと違って魔法に傾倒することなく、それを道具と割り切る冷静さもある。

 魔法という常ならざるものに触れてもそれなのだ、あの娘の自我の強さは尋常ではないだろう。

 或いはその程度で曲がらないほど、あの娘が歪んでいる可能性もある。

 要は他の者等と違って異質なのだ。

 それが他者を遠ざけてしまっている。

 

 そして何よりも私と双子だけあって物凄い美少女だ。

 本人は無愛想と言うけれど、付き合えば解る通り、内面はとても豊かであり、困った人間には手を貸す優しさもあり、友人となった者相手には柔らかい微笑みを見せる事もある。

 それに男女問わず、やられた人は後を絶たない。

 特に時折見せる妙な男らしさが、女の子相手にときめかせているのは、我が妹ながら困ったものである。

 なのにどうして彼女に私の共通の友人しかできないかというと、先ほども言ったように私達が厳選しているのもあるが、一番の理由は多分違うだろう。

 本来、私達のような、見習いとはいえ魔法使いが口にするような事ではないけれど、それが一番の理由だと思っている。

 

―――何故なら彼女は幻想に近い存在だから。

 

 一部の者しか知らない、私も少ししか知らない彼女の秘密。

 本来あり得ない筈の彼女は、ただ在るだけで儚く、そして幻想的に見える。

 それを知らない人間から見たら、見ているだけで、傍に居るだけで心を揺さぶられているように感じる。

 幻想に近い存在であるのに、誰よりも現実に生きようとしている。

 その矛盾がきっと、尊く見えるのだと思う。

 

 木刀を構えながら、思考する。

 頑張れと応援してくるルーネに、軽く笑いかけ、そしてルーネの方をがん見しているアルフレート君に挑発するように笑い掛ける。

 私からあの娘を取ろうなんて、百年早いと言う感じに。

 本当は舌でも出したい気持ちだったけど、それをすると本気で怒られるので、しょうがないから止めておく。

 確かに彼の気持ちは分からないでもない。

 好きな娘にコテンパンにされて、正気でいろと言う方が無理な話だろう。

 きっと、彼は何度も試合で勝って、ルーネを守るのは自分だと錯覚していたんだ。

 なのに自分よりも圧倒的に強いっていう現実を見せられてしまった。

 けど、気付く余地は十分にあった。

 あの娘は偶に一人で練習している事があったから、その練習風景を見ていれば気付けたろうし、何より試合の度に本気で剣を振りたいって顔を毎回されれば、誰だって解るよ。

 隠したいみたいだから、気付いていない振りをしているけど。

 私の他にも、お父様やお母様はもちろん、おじ様、アルフレート君のお父さんも気付いている。

 だから気付けたはずなのだ、ちゃんとルーネの事を見ていれば。

 だから同情はするけど、自業自得だよ。

 好きになったのなら、ちゃんとルーネだけを見てればよかったのに、私にも目移りしてるんだから。

 これは確信を持って言えることだけど、私とルーネは好みの人が似ている。

 だから、ちゃんと自分だけを見てくれる人じゃなきゃ嫌だし、認めてあげない。

 女の子は欲張りなんだから。

 

 思考をあっちこっちに飛ばし過ぎていた所為か、負けはしなかったけど怒られた。

 ルーネには姉さんらしいと笑われ、アルフレート君には鼻で笑われた。

 むぐぐ、許すまじアルフレート君。

 ルーネは許す、可愛い妹だから。

 




「わしじゃよわしわし近衛門じゃよ、久しぶりー」
「ちょー久しぶりじゃん、どしたの」
「ちょっと英雄の息子の修行先を麻帆良にすることに決めたからさぁ、偏見なさそうな魔法使いとか知らない?留学とかでうちに来てくれたら儂、超嬉しいんじゃけど」
「えぇー、も・し・か・し・てぇ、あのナギ・スプリングフィールドのぉ?」
「もう、お主には隠しごととか出来ないなぁ。じ・つ・は、その通りなんじゃよねぇ。じゃからぁ」
「それなら儂の所の孫娘達を貸してあげちゃうぅ。将来有望なんじゃよぉ」
「え~、マジラッキー」

 何て言う会話がある所で交わされたとかなんとか。

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