うちのポケモンがなんかおかしいんだが   作:右肘に違和感

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エピローグ

 

 

タツヤの葬儀は、慎ましやかに行われていった。

その規模は、彼がマサラタウンを出てから過ぎた三ヶ月と……似つかわしくないほどに、静かに。

 

あれだけ大騒ぎしながら旅をして、辿り着いたその先は……ひたすらの静寂。

ドレディアの目に映る、見知った顔も───全て、その表情は暗い。

 

 

「やぁ、ドレディアちゃん」

「───。」

 

人の声に反応する程度までは精神が回復したドレディアが向いた先に居たのは……

旅に出て初めて出来た知人、露店売りの青年だった。

 

「……今回の事は、言葉が無いよ」

 

本当にそう思っているのがわかるぐらいに、気落ちした声で青年は語りかける。

しかしそんな声を聴いても、ドレディアの表情には変化が現れない。

 

「……あ、ドレディア。こっちに居たんだね……って、え?」

「……へ? シン……君か?」

 

その二人の重い空間に現れたのは、金髪の女性を連ねた青年……タツヤの実の兄、シンだった。

 

「あ、あの……チャンピオン、さん……何故、弟の葬儀に……?」

「え、この人……この地方のチャンピオンなの……!?」

「はい、シロナさん……結構前に何度も対面してたので……」

「そういえばカントーでチャンピオンを倒して殿堂入りを果たしたって言ってたわね」

「久しぶりだね、シン君……まさか、こんな場所で再会することになるとは……

 そうか、タツヤ君はシン君の弟だったのか」

 

ドレディアの目の前で、嬉しいと思えない再会に少し会話する二人。

やはり場所と状況の都合上、何も歓迎出来る要素が無いようだ。

 

「タツヤ君とは、ちょっとだけ関わりがあったものでね。

 トキワシティに彼が来た時に、露店を彼女に手伝ってもらったり

 ポケモンリーグで不足してる人材を紹介してもらったり、何かと世話になってたから……」

「そうなんですか……あいつも、顔が広いなぁ」

「新聞で事件を知った時は……本気で驚いたよ……本当に、残念だ」

「……タツヤも、そう言ってもらえれば嬉しいと思います」

 

そうして語るシンの表情も、とてもつらい。

昔馴染みの弟が亡くなった……それは、胸にどれだけの空虚を生んでいるのか。

 

「それで、ドレディアちゃんを探してたんだっけか」

「あ、はい」

「わかった、僕も重要な話をしていたわけじゃないから連れて行ってあげてほしい。

 ……ドレディアちゃん、またあとでね」

 

露店売りの青年───カントーチャンピオンの青年は、静かにドレディアの傍を離れた。

そうして、顔見知りがいたのだろうか……人込みの中にまぎれていった。

 

「あ、それで……ドレディア、せめて君に逢いたいって人が何人か来てるから……

 付いてきてもらえるかな。その人達のところまで案内するよ」

「───」

「……大変だと思うけど、元気出してね」

 

連れ添っている金髪の女性から心配そうな声を掛けられつつ、ドレディアはシンに付いていった。

 

 

その3ヶ月の間に出会った様々な人間から、次々と声を掛けられていくドレディア。

工事現場の親方に、マサラ出身者の片割れ・レッドにピカチュウとセイリュウ。

嫌っているオーキドも話しかけてきたが、さすがに今回は前のように殴る気になれない。

 

他にも関わりが薄いところでは、シオンタウンのフジ老人に……

たまたま寄港していたサントアンヌ号の船長や、その事件の際に居合わせた様々なジムのリーダー。

 

タツヤが育て屋をしていた際に出会った、カズとコクランにも挨拶をされていた。

 

三人娘にも、あの霊安室でも今回の葬儀でも顔を合わせている。

そして、どちらも例外無く……ドレディアを含めて全員が泣いていた。

 

本来であれば、世を騒がせた殺人事件といえど……この世界の英雄、著名人達がここまで揃う事は無い。

 

今回の顔ぶれも、ひとえに……どれだけタツヤが濃い旅をしてきたのかを現している。

 

 

 

彼が亡くなったこの数日間で、色々な事が変わった。

株式会社弾頭は、丁度成長時期に入ったのか一気に黒字の数字が伸びた。

口コミで広がり続けたサカキの風評と仕事の内容が、ものの見事に的中した結果である。

 

しかし、そんな喜ばしい空気の中で……居なければならない一人が、もういない。

社員達にはタツヤが亡くなった事は周知の事実なため、今の業績を維持するだけでも一苦労している。

 

ミュウとミュウツーは、社員でこそ無かったが正式に辞令を出した。

あれだけの傑物が淘汰されてしまうこの人間社会に完全に嫌気が差した、と彼らは言っている。

 

ミュウが行っていたサカキの秘書に関しても、一番重要な時期は既に乗り切っているし

ミュウツーに関しては元々タツヤとの二人三脚であった点も大きい。

せめてもの義理ということで、サカキに一声かけてから居なくなっていた。

 

 

そして───ポケモン図鑑は……動かなくなった。

 

 

普通に、ポケモン図鑑として機能はする。

しかし、この世界において何故か喋るまでに進化していたポケモン図鑑は

タツヤが『消えてしまった』その翌日には───もう、喋る事はなくなっていた。

 

ポケモン図鑑が進化するという摩訶不思議な現象は

不思議の塊でしかなかったタツヤが消えてしまった事で、効力を消失したのだろう。

 

色々なものが変わった。

沢山の状況が変わった。

そして、ドレディアにとって一番変わった内容は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼が、もうこの世のどこにも居ないという事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

────────

 

 

タタン……タタン、トトン……

 

【…………え?】

 

謎の音が辺りに響き、ドレディアの意識はゆっくりと目覚め始める。

 

タツヤが居なくなり、葬儀も恙無(つつがな)く終了したその日。

全日程に置いて、一睡も出来ていなかったドレディアは

きっと今日も眠る事は無いだろうと思いながら寝床へと入り……五日振りに意識が落ちた。

 

しかしその後に目覚めるのであれば、そこは寝床のはずだった。

だが、今自分が寝ている場所は一体どこなのか。

 

【起きたか……姉御よ】

【ッ?!】

 

横から聞こえてきた『声』にドレディアは驚く。

その声は……その口調は、もちろんの事ダグ三兄弟の一人・ダグONE。

 

そしてドレディアはその違和に即座に気付く。

 

【え……何故……貴方の声が……?】

【……うむ、一体何が起こっているのか……】

 

彼が今までタツヤや自分に伝えてきた言葉は、全てが『意思』。

故に、目を見なければ彼らダグトリオの考えている事を組み込む事は難しい。

 

それが特徴であるダグトリオの声が、聞こえる。

 

【もちろん、私も居ますよドレディアちゃん】

【ミロカロスさんも……ですか】

 

ダグ達が座っていた左手から、真後ろの方を見やれば……

そこには、虹色の美姫が大きな体を長椅子に鎮座させていた。

この謎の空間に、ポケモン図鑑表示で親がタツヤと表示されている面子が完全に集合している。

 

【あの……ここは、一体……】

【わかりません……気付いたら私も、ダグトリオさん達も全員ここに居て……】

【どうやら、ここは何かの乗り物であるようだ】

【うむ、先程からどこを走っているのかはわからぬのだが……

 どうにもこれは自走しているらしいぞ、姉御】

 

ドレディアは彼らから状況を伝え聞き、さらに意味がわからなくなる。

自分が座っているその場所は、横に長く添え付けられた反発力のある椅子。

向かい側にはまるで進行方向に左右対称として作られたような、同じ長さと形の椅子がある。

 

彼ら、タツヤのパートナー達は……何故か地下鉄列車の中に居た。

 

一体ここがなんなのか調べようとドレディアは立ち上がろうとして、

 

 

 

 

 

 

 

 

「よぅ、五日振りだけど元気してたかお前ら」

 

 

 

 

 

 

 

 

彼らが、諦めて……望む事も出来なかった【言葉】が聞こえた。

 

「んーむ、ムウマージは居ないのか……まあ、あいつ母さんの一旦別れた手持ちっぽかったしな……」

【え、な……あ、主様ッ?!】

【あ、主殿なのかッ!? 一体どちらにいらっしゃるのだッ!?】

【……ご主人様?!】

 

聞こえた声に全員が面白いようにうろたえだして、キョロキョロと周りに目線を向ける。

その様子を見ているのか、声はとても楽しそうにくつくつと笑っている。

 

「ったく、お前らなにやってんだよ……ココだココ、正面だよ」

【え……?】

 

そして彼らが、左右対称に配置されている向こう側の長椅子を見ると……

 

 

一人の見覚えが無い『青年』がいつの間にか存在しており

肘を膝にあてながら顎を手に乗せて楽しそうにこちらを見ていた。

 

 

【あれ……え……?】

【す、すまぬが貴殿は……どちら様であろうか……?】

「ん……? あー。なるほどなぁ。

 魂的なモンだけは実年齢が反映されてんのか……てか精神年齢かな、これは」

 

彼らに問われて、青年は改めて自分の体を見比べ、その際に関して一人研究している。

 

「まぁ、ここまで色々変わっちまってりゃわかんないのも無理ないか。

 ほら、俺はお前らの……あれだよあれ、パートナー?」

【な……何を言っているのですかッッ!! 私達の……パートナーは……】

「だからタツヤだろ? 俺だって、俺。

 くやしいのう……くやしいのう……姿が変わっただけで信用されないなんてくやしいのう……」

 

真剣そのものであるドレディアの興奮も軽く受け流し、青年は飄々と答える。

 

「ってーかドレディアさんてそんな口調やったんやね。

 一瞬お前誰だよって思っちまったわ……声が聞こえると違うもんなんだなぁ」

【さっきから一体何を……】

【……あ……、ま……まさ、か…………?!】

 

そして、ミロカロスがその青年を見て何かに気付く。

ミロカロスが示した反応に、青年は『してやったり』といった顔を浮かべてニコニコし始めた。

 

【『あちらの世界』のご主人様の姿ッ?!】

「んむ、その通り! やっぱ一回話してるミロカロスはわかってくれたか!」

【……あっちの?】

【……世、界?】

【いやいや、まずは事実確認から行っていきたく思うぞ姉御に大女将】

【然り。青年……貴殿は……本当に、我等が主殿……なのか?】

「間違いないぞ、俺はタツヤだ」

 

あっけらかんという自称タツヤ。どうやらその裏事情はミロカロスだけ把握している様だが。

 

【どうして、そのお姿に……?】

「俺が知るわけないだろそんなもん。

 ……でもまぁ、あっちで俺が死んだってのはなんとなくわかるわ。

 居なくなったーってのが正確に五日とかわかってる辺りで矛盾してっしなぁ……

 案外ここに居る俺もお前らの夢かもわからんわな」

【あぁ……その、その訳のわからないところで投げやりな姿勢……!

 やっぱり、ご主人様……! ご主人様なのですね……ッ!】

「いや、うん……まあそうなんだけどさ。

 甘えたくて頭摺り寄せて来てる割にお前毒舌すぎだろミロカロス」

 

ある意味消える前の、ほぼいつも通りであるタツヤの様子そのままな青年を

ミロカロスは、完全に自分の主と認めたようだ。

そして、涙を流しながら青年タツヤの顔に頭を摺り寄せている。

 

「まぁ……とりあえずは、だ……色々なものの証明が難しいんだが……

 ここに居る『俺』は、間違いなく『俺』なわけで。

 でもってこの姿って事は……多分これで完全なお別れって事なんだろうな」

【え……】

【な……、ど、どうにかならぬのですか主殿ッ!】

【そんな……せっかく、せっかく再会出来たのに……】

「……まぁ、俺も悲しいんだけどさ……少しだけ考えてみろ、お前ら」

 

その言葉が意味するところを考えても、居合わせる五人は理解出来ない。

青年タツヤが少し暗い顔をしながら、『事実だけ』を述べていく。

 

「まず、お前達が居る世界で……俺はもう存在していないし、存在出来ないんだろう。

 人間として、完全に死亡判定だったからこそ、この状況なんだろうしな……」

【そ、そうですッ! 主様ッ……貴方は何故あのような体になってまで無茶をして戦ったのですかッ!!】

「あぁ……うん、まぁ、そこはすまん……ちょっと、アドレナリンが……

 ってそうじゃねぇわッ! こんなところで説教すんなッ!」

【うるさいですよ主様ッ! 貴方は普段からいつもいつも私達に対して心配ばかりかけさせて……】

 

「……ドレディアさん、一旦黙れ」

 

【嫌ですッ! 貴方にはこの際はっきりと私達の主という自覚を……】

 

「───最後、なんだからよ」

 

【……ッ】

 

一気に捲くし立てて説教を始めたドレディアを、ただの一言で押し留め

青年タツヤは目を瞑りながら、再びポツポツと客観的な事実を語り出していく。

 

「要するに、だ。俺はあっちに戻れる寄り代が既に存在してないわけだ。

 そんな状態でどうやってあっちに戻れるって話だな」

【ご主人様……】

「そして、挙句の果てにはこの姿だ。

 おそらくは───『俺』の、夢の終わりなんだろうよ」

【【【主殿……ッ!】】】

 

彼の辿り着いた結論を、彼の相棒達は認める事が出来ない。

こんな場で、姿形も声も違うけれども再会出来たのに……また、すぐさま別れる事になる。

 

「まぁ、俺も最後に逢えて嬉しかったさ。

 短い間だったのかも知れんけど、お前ら良い性格してたしなw

 ───ハリボテだらけの人間関係ばっかな元の世界よっか、よっぽど楽しかったよ」

【だったら……! だったら行かなければ良いではないですかッ!!

 貴方は以前ガラガラさんを、現世に留まらせたでしょうッ?!】

「それとこれとは事情が完全に違う。少し考えれば同じ原理が働かないのはすぐわかるだろ」

【けれど……!】

 

また押し問答になりそうになった会話だったが……

 

別の要因で、その会話は停止せざるを得なくなる。

 

 

 

 

列車が───『駅』に着いたのだ。

 

 

 

 

「さて、そろそろお別れか」

 

椅子から静かに立ち上がり、青年タツヤは乗車口へと歩き出す。

 

【嫌ですッ! 行かないでくださいッ!】

【主殿ッッ!】

【まだ……まだ、わからんでしょうッ!?】

【我等を───置いていくのですかッッ!】

【せっかく逢えたのに───また、居なくなるおつもりなのですか、ご主人様ッッ!】

 

一緒に旅で連れ添った仲間から引き止められながら、それを気にしないように青年タツヤは歩き出す。

その顔に浮かぶのは、本気で悔しかろう……歯を食いしばる様子。

 

しかし彼の歩みは止まらない。

全員が物理的に引き止めようと、タツヤの元へと走り寄ると……

 

先程のミロカロスは近寄れたのに、今は何故か誰もタツヤに近寄る事が出来ない。

見えない何かに阻まれて、列車の中から出る事が出来ない。

 

ドレディアは全力全開でのパンチを繰り出し。

 

ダグトリオ達は三人連携で同時に蹴りを繰り出し。

 

 

それでも、見えない壁は異変を起こさない。

 

 

まるで───運命の壁がそこにあるかのように。

 

 

ドレディアは必死に手を伸ばす。

 

ダグONE達は絶叫しながらもがく。

 

ミロカロスは涙ながらに突撃しようとする。

 

 

そのいずれも、彼には───もう、届かない。

 

 

そしてついに、彼は───相棒達に背を向けたまま列車から降りてしまう。

 

もう、どうしようもない位置。

このまま扉が閉まれば、タツヤを置いたまま列車は動き出すのだろう。

 

【どうしてッ……どうしてッ! どうしてッ! どうしてッ!】

【ある、じ、殿……】

【何故……何故に……!】

【どうしても、行かれるのですか……ッ!】

【ご主人、様…………】

 

彼はその声を背中に聴きつつ……ホームから去ろうとして───

 

 

 

 

 

列車から出られない、彼らに振り向いた。

 

 

「ドレディアァーッ! ダグトリオォーッ! ミロカロスーーッ!」

 

『ッッ!?!?』

 

 

その声は、今までより一際大きく。まるで咆哮の様に声を張り上げる。

 

 

「前を向けッ! 下を見るなッ!!」

 

「目の前の事を、楽しめッ!! 暗い気分で楽しさを無視するなッ!!」

 

「生きている事を楽しんで行けッ!! お前らの周りには……支えてくれる奴らが居るッッ!」

 

「それはお前等であって、弾頭の皆であってッ! 俺が支えられなくても、支えてくれる奴らが居るッ!」

 

「俺が居ない事を悲観するなッッ!! お前等がやりたい事をやっていくんだッッ!!」

 

「それでも納得出来ないなら……今回の様な悲しい事を二度と引き起こさせるなッッ!!」

 

 

ひとつひとつの声が、絶叫で───

 

同時に、自分がそれに付き合えない悔しさも滲み出ていて───

 

『相棒』達は、それを聞き入ってしまう。

 

 

 

 

列車の扉が閉まり始め……彼らからタツヤが見えなくなる寸前───

 

 

 

 

 

 

 

「お前らは……──」

 

 

彼は、最後に叫んだ。

 

 

「───俺の………誇りだァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!」

 

 

その叫びが終わると同時に、列車の扉は静かに閉まった。

 

これが、彼と……彼の相棒との───不思議な最後のひと時だった。

 

 

 

 

 

 

 

タタン、トトン……タタントトン……タタトトン……

 

扉が閉まった地下鉄の列車は、一体何処へ向かうのか。

その『駅』には、運命の壁により一人で残る事を余儀なくされた青年が一人。

 

何故、この様な事が起こったのか。

どうして、『俺』はここに存在出来たのか。

 

最後の最後ではあった、それは紛れも無く残念である……青年はそう痛感する。

そして最後に、彼らの本音をしっかりと聞けた。

意思を読み取るという事は、要は自分の頭の中で都合の良い翻訳機能が付いているのと同じ。

それも必要ないこの不思議な空間の中で、彼らと『会話』出来た事は、青年にとって至上の喜びだった。

 

 

トトタタン、タタタタン。

 

 

地下鉄の列車は加速していく。

僅かな空間しかないその場所は、列車が動く度に空気が風圧を生み……青年を撫でていく。

見る見るうちに加速して行き、肉眼で捉えるのも難しい程小さくなっていくその車両を

青年は万感の想いを抱きながら、見えなくなるまで見送った。

 

 

そして、車両が見えなくなった後……

 

 

 

「───あばよ…………『相棒』」

 

 

 

青年はぽつりと呟き、駅のホームから視線と体を背け『世界』から音も無く消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「ホォ~ァ~~♪ ォォォォォァァ~~♪」

「ディァ~~♪ ド~レディァ~♪」

 

とある公園の大道芸広場。

そこでは虹色の水棲類と、緑色の歌姫が肩を並べて歌っている。

 

「───! ───!」

 

その後ろでは、細くはあるがしっかりと肉の付いた体を動かし

小さいドラムを事細かに刻むような感じで叩き続けるディグダの様な存在。

 

『ッ! ッッ! ッッッ!』

 

そして、歌姫達の横では……同じような体を持った二匹のディグダが

ドラムのリズムと歌声に合わせて、軽やかにステップを踏んでいく。

その動き、雄ではあるが……まるで『舞姫』の様に。

 

 

彼らは、タツヤの葬儀が終わった後───全員が同時に同じ夢を見た。

彼らが顔をあわせて話し合って見れば、語る内容は全員が全員、全て同じ。

 

 

故に、きっとあの夢は……『夢』ではなかったのだ、と。

 

その事実が、死に掛けていたドレディアを。

 

立ち直れなかったダグトリオを。

 

美しさが欠如していったミロカロスを。

 

彼は、最後に救っていったのだ。

 

 

そして彼らは、その夢で言われた事を忘れず……

少しも悲しさを世に広めないために、自らが歌い、踊り、刻み、人々に笑顔を届けている。

 

 

この世界において、大半の娯楽がポケモンの育成やバトルを占める世界観の都合上

彼らの動きと歌声は見ているだけでも一緒に歌いたく、踊りたくなるレベルであり

それこそ金を払ってでもその場に居る事すら躊躇わないモノだった。

 

広場は、半場熱狂に包まれている。

周りで芸をやっていた者達も、彼らが現れたと同時に芸をやめて見学者に混ざっていた。

コンサートでも、事前告知でも無いのに……公園は、彼らが届ける笑顔の為だけに存在していた。

 

 

 

 

このポケモンのみで構成される楽団の名は

 

 

 

 

 

 

 

 

             ~ うちのポケモンがなんかおかしいんだが ~

 

 

               TRUE END ①  ブレーメンの音楽隊 + 1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                        fin

 

 

 

 

 






というわけで、こんなエピローグ。
いかがでしたでしょうか。とりあえず奇跡なんぞそんなに起きません。
納得出来ない人は、むしろ奇跡が起こってあっさり主人公が助かっている、勝っている物語を検証してみましょう。


さて、そんなわけでBAD改めTRUEの①、お送り致しました。
あくまで最終回なだけで、連載はIFの形でまだ続きます。
挿絵機能がこの小説に登場した場合に乗せる事が出来るにじファンの本筋も
この物語のIFになるので、まあそんな感じです。

ほら、アニメで最終回あっても劇場版とかあるやん。なんかそんなのよ。

実は既に1発ネタを考えているので、投稿した際には失笑と共に、ご閲覧の程を宜しくお願いします。

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