うちのポケモンがなんかおかしいんだが   作:右肘に違和感

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7話 旅日記

 

俺がドレディアさんと向き合ったその翌日。

 

俺とドレディアさんは、マサラタウンから旅立つ準備を入念に済ませ

そして今まさに、家から旅立とうとしている。

玄関には、昨日「僕もそろそろ旅に出るかな」と呟いていたシン兄ちゃん。

 

 

 

 

え、母さんはどうしたって? なんか帰ってこなかった。

思考がぶっ飛んでるのは前々からだったが、1日帰ってこない事は非常に珍しい。

おかげで飯は子供と生活能力が薄い兄と一緒に作った。

家庭料理のプロでもないので内容はちょっと貧相なものでした。チクショウ

 

 

ちなみにいきなり翌日に時が飛んでいるが

昨日あれから何も無かったというわけではない。

 

ただ、今までの日常をぶっ壊してくれるドレディアさんは

バトルで負った怪我を癒す為に俺の部屋でずっと寝ていたので

他に記述するような事がオーキド博士のとこ行って

ドレディアさんのボールを回収する事位しかなかったのだ。

あとは適当にテレビ見て、ドレディアさんにも飯持ってった位である。

 

まあ、持ってった時も寝てたから俺が食ったけど。

そのちょっと後に起きて、食器に気づかれて、説明したら殴られましたけど。

でも寝ていたせいか腹はそこまで減ってなかったらしく

そこそこの説教で勘弁して頂けました。

 

そして今日の朝食は一部掠め取られた、俺の食事に何をするだァー!

ちくせう、覚えてろドレディアさん、飯の恨みは3倍返しだ。

 

 

「それじゃぁ、俺らはそろそろ行くよ」

「ドレ~ディァ」

「うん、行ってらっしゃい。

 俺の居る間に母さんが帰ってきたら、旅に出たって伝えておくよ」

 

まぁシン兄ちゃんもいつ空の下に戻るかわからないし、書置きは用意しておいたけどね。

シン兄ちゃんも旅に出る場合、それをテーブルに置いてくれるよう頼んでいる。

 

ところで何故旅に出るか、だが。

実は今日の飯の後に決まった。まさかのハレのちグゥ展開。

 

俺は適当にそこら辺で野良ポケモンとバトって

のんびりと成長していくドレディアさんを見れるだけでも十分だったのだが

飯が終わった後に話し合った、というより意思を汲んだ結果、

 

直訳

「いつかお前の兄貴しばき倒したいから

 もっと別のヤツと戦って臨機応変出来るようにすんぞ!

 おめー相棒っつってたんだから付き合うよな?な?」

 

といった感じで、下手をすれば鉄拳制裁を喰らいそうな勢いで詰め寄られた為

簡易レジャーセットを用意し、旅に出る準備をスパパパパッとしたわけである。

 

ちなみにこの簡易レジャーセット、合計5kg。

この世界、旅に出ている人がムダに多いせいなのか

携帯性とか、そこら辺の技術がかなり突出してます。

自転車で海を走れるようになるとか、間違った進化でもしそうである。

 

 

 

 

 

 

「ところでタツヤ、最初の目標はどうするんだい?」

「ん?別にないよ」

「えっ」

「えっ」

「レッ」

 

最後のはドレディアさんである。

 

「いや、目標もないのに旅に出るのかい?

 それはちょっともうフリーダム過ぎるというか、なんと言うか……」

「うん、まあ俺個人の目標なんてのは別にないんだけどねー。

 ポケモンマスターとか、なりたい人がなればいいと思ってるし。

 俺は正直ドレディアさんのトレーナーとして彼女の旅に付き添うだけだよ」

「ディーァー!」

 

ドレディアさんはシン兄ちゃんにシャドーボクシングをしている。

つってもまあ、子供が腕を前後にシュッシュッとやるのと何も変わらんが。

 

「あはは、目を見れば大体何伝えたいのかはわかるよ」

「うん、多分【絶対そのうちぶっ飛ばすから覚えておけ】って言ってると思う。

 今朝も似たような事俺に向けて伝えてたし」

「うわぁ、怖い。

 でもまぁ、ポケモンバトルなら負けないからね?

 ───……簡単に勝てると思うなよ、いつでも掛かって来なさい」

 

わぁ★

シン兄ちゃんとドレディアさんの間で目に見える火花が。

俺のストレスがマッハでやばい。誰か胃薬ください。

ポケモン用の傷薬なんていらねーから。

 

「あーもうあんたら2人、隙間で挟まれる俺の事も考えろコノヤロウ。

 とっとと行くよドレディアさん」

 

ガシッ

 

「レッ!? レディァ!? アーッ!!」

 

俺はじたばたするドレディアさんをずるずると引きずっていく。

昨日の出会いから鑑みて、おそらくやっと俺のターン!!

 

シン兄ちゃんも玄関で柔らかい笑みを浮かべて、俺らに手を振ってくれている。

有難い見送りだ。必ず成長して帰ってくるから、見ててくれ!

 

 

 

 

 

 

さて、そんなこんなでマサラタウンを出発し、はや4日。

いきなり日時をすっ飛ばすので、旅に出てから付け始めた日記を開いて

過去を遡ってみようと思う。

 

 

 

『1日目 晴れ

 

 今日から(ドレディアさんに巻き込まれる形で)旅に出る事にした。

 ゲームだとたったの1分も掛からない距離なのに

 現実だと4,5日掛かる距離と知っていきなり絶望した。

 

 トキワシティに向かう途中、土手を見つける。

 道行く人から「土手を使うとマサラタウンに帰るのが楽だよ!!」と言われる。

 こんなちっぽけな土手を超える事が出来ないなんて納得が行かないので

 試しにドレディアさんに自分を投げてもらってみたら普通に登れた。

 そして投げたドレディアさんは一回ボールの光線で回収し、再び出す。

 これ登山か何かに使えねぇかな。』

 

『2日目 曇り

 昨日は旅の初日だったのもあって浮かれていた様である。

 気づいたら昨日1日、ゲームのくだらない常識をドレディアさんと共に

 ぶち壊す事に白熱していて、旅の歩みが全然進んでなかった。

 

 道を歩いていると突然ポケモン図鑑が鳴り出した。

 モンスターでも出たのかと思ったら、画面を見ると「オ・ト・ク★情報★」。

 一体何事だと思い仔細を見るため画面を進めると

 「近くにアイテムが落ちてるヨ!!」と出ていた。

 なにこれダウジングマシンじゃん。マックスアップが近くに落ちていた。

 

 使おうとも思ったのだがドレディアさんの努力値が振り切れている気がしたので

 持ち主を探したところ案外近場で困っている大人を発見。

 聞いてみると持ち主だった。渡したらえらく感謝された。

 まああれ高いしね、お礼にモンスターボールを1個もらった。

 捕獲可能なボールを1個も持ってなかった事に気づいたので、助かった。

 ドレディアさんからの【さすが私の相棒だ】という視線がうれしかったので

 今回の件は、お値段プライスレス。俺うまい事言った。』

 

『3日目 槍

 今気付いたら昨日のマックスアップは努力値を上げるものではなかった。

 今更ながら使っておけばよかったかもしれない、と若干後悔。

 

 とりあえず昨日はだいぶ距離を稼げたと思う。3日目で既に旅の自炊に慣れてきた。

 

 そこら辺の草むらで今日の朝飯の山菜を取得するため

 ごそごそ探していると、初めて野良ポケモンのポッポと遭遇。

 ちょっと感動していたら、ドレディアさんが前に歩み出て

 首元をいきなり鷲掴み。そのままぶん投げた。

 感動までぶん投げられた気がした。

 なお、そのポッポは鳥だったのが幸いし、途中で体勢を立て直して慌てて逃げた。

 

 今日も適当にゲームの常識をぶち壊そうとドレディアさんと画策。

 ちなみにドレディアさんには「ゲームの常識」ではなく

 「面白そうだからやってみよう」と誘っている。

 今度はぶん投げてうまく木の枝に着地出来るかどうかを試す事にした。

 結論から言えば成功。ただバランスが絶妙に安定しきらないと危ない事も判明。

 2回ほど落ちたのだが、ドレディアさんが襟首を片手で掴んで助けてくれた。

 でも重力の慣性で首がとても絞まった。ウボァ』

 

 

 

こんなところである。意外に野生ポケモンに出会わない。

あいつら森にもちゃんといたと思うんだがなぁ。

 

まあ、大事件らしい事件もなく、のんびりと歩を進めている。

昨日は3人ほどすれ違ったのだが、その中の一人の女の子が

自転車でスィーと走っていたのでうらやましく思ったもんだが

自転車乗ってたらドレディアさんと歩けないし、まあ無くてもいいか?

 

……あれ?そういやあの女の子カスミじゃなかったか?

まあもう確認も出来ないし、いいか。

 

「~♪  ~♪

 ディ~♪ア~♪」

 

ドレディアさんは旅に出てから結構ご機嫌である。

今も歌いながらノリノリで横を歩いております。

 

見た目からして明らかに森のお嬢様なドレディアさんなのだが

博士も言っていた「もらいうけた」=「卵から育てられた」という感じらしく

今まで旅やら森やらに行った事が無かったらしい。

故に見る物全部が新鮮で、ワクワクが止まらないらしい。

ノリでポケモン図鑑でドレディアさんをチェックしてみたら

ステータス異常:wktk になってた。明らかに無駄なステータスだなオイ。

 

そういえば……

 

「ドレディアさんさぁ、トレーナーとバトルせんの?

 出発した日から絡んでくる奴ら、全部睨み利かせて追い払ってっけど」

「ディ~? ァー、ァ~ァ~、

 ドレ~、ドレディァー。ディー」

 

ふむふむ、まあ確かにそうですね。

というよりドレディアさんの初戦の相手が悪すぎただけだわ。

シン兄ちゃんはチャンピオン倒す位の実力者。

むしろそこらのガキンチョに同じレベルでいろ、って方が無理な事である。

もし戦って勝っても、所詮70円とか90円だったはずだしなぁ。

俺としても旨みそんなに無いし、確かにどうでもいいっちゃどうでもいい。

 

あ、しまった……直訳しとくわ。

【あいつら弱い。あんなの倒し続けてもアイツに勝てん】だそうです。

 

「でもそうなると、ドレディアさんを満足させる相手なんてほぼ居ないんじゃない?」

「ディ~…ディアー!! ディアー!!」

 

なるほど。

【あいつら軟弱すぎる……もっと鍛えれ馬鹿共!!】ですか。

 

「ジムリーダーの手持ちぐらいなら、ドレディアさんの満足の行く相手も

 居るには居るだろうけどなぁ……俺ジム戦興味ないんだよね。

 下手に勝ったら目立ちそうだし……」

「…………#」

 

オウフ、ドレディアさんがお怒りモード。

しかたねーじゃんかー、嫌なものは嫌なんだい。

バタフリー10匹ぶつけんぞドレディアさん。

 

「ディィイィィイィ…………アァッ!!」

 

ドキャァッ!!と、鈍い音が響く。

周りの木に八つ当たりしだした。タチわりぃー

そしてミシミシと斜めになっていく木、最終的には斜めの自重に耐えられず

殴られた場所から完全に木が折れた。

 

まあドレディアさんの怪力は今更なので特に突っ込まない。

木もまあ……ご冥福をお祈りしておけば良いだろう。

 

…………ん? 倒れた木の先の風景に建物が見えるぞ?

 

「おお、街だ。ドレディアさん、ほらあれ。人口建設物だ。

 やっとトキワシティだぁー」

「ディ~? ……っ! ディ~ア~っ!!」

 

折れた木の先の方を見れば、丁度その木が影になる角度だったのか

ちょっとしたビルっぽい建物が見えた。

 

「よーし、あとちょっとで街だー。

 具体的にはふかふかのベッドだー。気合入れていくぞー」

「ディーー!!」

 

ドレディアさんはドレディアさんで【うまいメシー!!】と気合を入れている。

さぁ、次の街までもうすぐだ!

 

 

「おっドレディアさん、高い土手だ!

 あれやるぞ、あれ!」

「ドレディアー!!」

 

合図に従い、ドレディアさんは腕をぶんぶか振り回して入念な準備に入る。

 

そして俺投げ→ボール回収で最短ルートを突っ走る俺たち。

道行く人からは驚かれたが気にしない。俺らの欲望を止められる者は居ないのだ!

 

さぁ、レッツダイブ! ベッドよ首を洗って待っていろ!!

あ、ベッドに首ねえな。シーツ洗って待っていろ!


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