うちのポケモンがなんかおかしいんだが   作:右肘に違和感

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72話 難しい

 

そらをとぶによる一旦の帰省も諦めざるを得ず、普通にポケセンに戻って一晩を越した。

 

途中、何も考えずにぐっすり寝てやがるカビゴンにイラっとし

油性マジックを用いて、腹にものっそいリアルな福笑いを書いておいた。

しかも目だけ、ややアニメ調にしてやった。ざまぁ。

 

 

 

 

 

 

「眠いんだが?」

「ディァ」

 

【しらねーよ】

 

最近のポケセンで過ごす朝としては毎度恒例になってきているのだが

寝ているのにも拘らずドレディアさんにずりずり引っ張られて台所へ向かう図である。

引きずられてる途中でケツが冷えて起きた。まあ、平穏が一番であるという事だろう。

 

 

 

 

ま、パジャマでも料理は普通に可能なので

その服装のままポケセンでいつもの如く借りている台所へタツヤたんinしたお^^

 

【おいすー^^】

「よーし、今日もどっか行くかー^^」

【行くな馬鹿】

 

頭をべちんとぶっ叩かれ、仕方無しに素材をテーブルに並べて行く。

台所には既に腹をすかせているのか全員が集まっている。

何気に6mはあるミロカロスが入っても狭苦しいと感じないこの台所に嫉妬が!

 

 

「あぁ、ミロカロス、そこのみりん取ってくれやー」

「ホァ~~」

 

でかい鍋でぐつぐつ。

 

「っと……そろそろか。ムウマージ、団子くれ」

「☆~」

 

んん~~~~いい匂いである。

何故これは俺が作ったものなのだろうか。

誰か食べさせてくれ。他人が作ってくれたものというスパイスが著しく欠けてるんだ。

 

「そろそろ出来ると思うからダグ達は皿とお椀並べておいてくれや」

『(゜д゜)>』

 

そう伝えると、ダグ達は無料貸し出しのステンレス食器を戸棚から出すべく

戸棚の方へ向かい、そこから人数分のお椀とかを持ってくる。

 

「よし……じゃ、最後に。ドレディアさん、そこの一味唐辛子頂戴」

「ディァ」

 

そして手渡されたものを間髪いれずドレディアさんの口に突っ込んだ。

 

「お前これハバネロエキスじゃねえか!! 俺らを殺す気かっ!!」

「ンモゴォァーーーー!? ンモゴァーーー!?」

「一味っつってんだろーがッ!!

 ちゃんと渡せこのっ! このっ!! 貴様が食えこんなものっ!!」

「ンモガァーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

 

 

ばたーん。

じたばたじたばた。

 

 

「ふー……。ミロカロス、一味唐辛子お願い……」

「ホ、ホァ」

 

伝えると、ミロカロスが一味唐辛子のビンを口でくわえて俺に差し出す。

最後にちょちょっと振りかけて、はい完成ー♪

 

 

ミロカロスは倒れて口を塞いでうめいているドレディアさんに

氷水で割った冷水を差し出していた。ええ子や。

 

 

 

 

「ってわけで、昨日の間に大体やる事はやり尽くしたから

 今日はロケット団の地下基地に乗り込みます」

「ディァー」

 

ガツガツ。

 

「ホァ~?」

「あ、今日はミロカロスもついてきてOKだよ。多分戦闘にはならんから。」

「ホ、ホァ?」

 

 

【ろ、ロケット団絡みなのに……ですか?】といった感じのミロカロス。

まああくまで多分でしかないんだけどもね。

 

 

「うん。」

「ホ~ァ……ホォ~ン」

「───。」

 

 

【では、戦いの準備は特には必要無し、と?】 byダグONE

 

 

「まぁ、あくまでも上手く事が運べばになるけどな。

 一応はしょっぱなから交渉が決裂したら暴れれるやつには暴れてもらう」

『ッ!bbb』

 

 

そんなわけで……

一応全員に柔らかい樹皮で出来た、丈夫な袋に入れたコインを持たせる。

無論これは投擲用の武器としてである。一部ドラマじゃ小銭ぎっしりの袋が凶器だったりするんだぜ。

 

俺が1円玉をトレーナーに投げつけるが如く

ちゃんとそれ自体も狙わなくても良いので、投げつければ立派な牽制武器に成り得るのだ。

加えてコインは、500円玉よりは重くないが、100円よりは十分に大きい。

投擲武器としてはかなり有効なものであろう。もったいなくないし。

 

よし、話は纏まった……。

使わないだろうが、俺もメリケンサックを持って出かける準備を完了させよう。

 

 

 

そろそろドレディアさんもハバネロによって出遅れた飯を食い終わる頃だろうし。

 

 

 

 

「よし、エアーマンっ!! ぼうふうだッッ!!」

「ケロロロ!!」

 

 

ヂュゴオオォォォォォォォォオオオオッッ!!

 

 

ポケセンの外に出てみると昨日さりげなく腹に扇風機を設置しておいたニョロボンが

青い鎧まで着込んで完全にエアーマン化していた。鳴き声だけはニョロボンのままである。

 

まるで竜巻のような技を繰り出して、鍛錬に励んでいた。

 

「いいぞっ!! 次はエアシューターだっ!!」

 

ドンッ! ドンッ! ドンッ!!

 

小型の竜巻が彼の訓練の的としている木にぶつかっていった。使いこなしてるねぇー。

 

 

まあそんなもんはどうでもいい。ゲームセンターにGOである。

 

 

 

 

 

 

そうして俺らはゲームセンターに辿り付いた。

まあ、障害なんぞあるわけもないしな。

 

強いて障害を述べるなら

手渡したコインでドレディアさんがスロットをやり始めようとした位だ。

亀甲縛りにして、ミロカロスにくわえておいて貰った。

 

「ディァー;;」

「フォ、フォァ~~……」

 

くわえているせいか、ミロカロスの鳴き声が口ごもっていて新鮮である。

 

 

っと、居た居た。無関心な店員を装ってるっぽいがあいつだろ。

服装にでっかくRなんて文字出てるし。お前等実は隠す気ないだろ?

 

 

「おい、そこの」

「んぁ?」

 

俺に話しかけられこちらを振り向く団員、店員っぽく振舞おうとする態度が欠片も無い。

 

「……ポスターの裏。」

「ッ?!」

 

俺の言葉を聞き取ると同時に素早く身構える団員、まあ当然といえば当然か。

ゲームではバレバレであったものの、未だにこのゲームセンターが運営されているってことは

今もなお、普通にここの地下基地が民衆にばれていない証拠である。

 

そのばれていない基地への入り口を知る俺を、警戒するのは当たり前の事。

 

「……ガキ、てめぇ何モンだ?!」

「───……サカキ」

「……ッ!?!?」

「サカキに、タツヤが来たって伝えろ。今すぐに、だ」

「てめ、なんっ……ボスの名前っ……!?」

 

自分達が秘匿する情報を次々と出され、団員はパニックになっている。

やれやれ……これは無理矢理にでも行くしか───

 

「……ッ、ちょっと待ってろ」

「お」」

 

力ずくでなんとかしてしまおうと思ったところで

ロケット団の見張りは、俺に待機しろと言ってきた。

 

「俺は見張り任される様な下っ端だ、テメェがなんなのか把握しきれねえ……

 一応下に連絡は繋いでやらぁ……もし俺らと無関係だったら、わかってんだろうな」

「好きにすればいいんじゃないか? ───俺を殺す覚悟があるなら、殺される覚悟もしとけよ」

「……そこに居ろよ」

 

そう言い残して、一旦団員は戸棚の奥に消えていこうとしたが……一旦俺が引き止める。

 

「あ、ちょっと待て。」

「……あぁ?」

「立ってんのめんどくせーから休憩所に居るわ」

「それだけのために引きとめんなっ?! シリアスくせぇ雰囲気が台無しじゃねぇか!!」

「るっせーなぁ。こっちとしちゃ家で寝ッ転がっててぇんだよ、無理言うなや」

「……はぁ、なんかやる気削がれたわ。適当に繋いでくっからゲームセンターの中にいりゃいいわ」

「あいあい、まあミロカロス目立つしすぐわかるべ。んじゃ行ってくるわ」

「おうー。じゃあ俺も行くわー」

 

 

というわけで、一旦見張りの団員と別れる事となった。

なんか後半一気に雰囲気が和んでいた気がしないでもない。

 

 

 

 

 

 

頭が痛い。

 

非常に痛い。

 

つい先日のサントアンヌでの件で

一気にグループの資金力を増すつもりが、返って赤字の状態で撤退せざるを得なくなってしまった。

資金繰りが非常に苦しい状況だったのに、サントアンヌの件を成功させる為に投資していた経費も

あの結末で一切合財が無駄に終わってしまったのだ。

 

さらには先日、いきなりこの基地に侵入した子供もおり

施設の隠匿対策を見直さねばならんという案件もある。

 

不動産に掛かる費用は基本的に全てが桁違いである。

どう足掻いたところでグループの資金力の低下は免れきれない。

 

どうにか不要な経費はなかろうかと、グループに関する全資料を首領室へ持ち込み

一から資料を見直しているのだが……無駄こそ見つかるものの

それ以上にさらに追加で金をかけねばならない部分が多数見出され

このままではジリ貧で……いや、正直詰み掛けている。

 

メイン収入であるゲームセンターに関しても、最近いまいち斬新さが無いためか

客離れも深刻化しており、景品を仕入れたところで金にならないのだ。

 

 

……これが、私が無謀にも若者達を囲って保護した結果か。

最早、打てる手など殆ど無いに等しい。

 

 

……まだ下準備が全然整っていないが、シルフカンパニーを───

 

 

 

◎<オィーッス!!オィーッス!!

 

 

 

……ん? 基地内部の内線、だと?

 

現在も睡眠時間を削りながら資料を洗い出している所だ。

無駄な件に関しては、一切を下の立場の者達の判断に任せるとつい先日伝えていたはずだが……

 

 

カチャッ

 

 

「私だ、一体どうした。お前達では判断しきれない事でも起こったか?」

『あ、ボス……はい、そうです。』

「内容を伝えてくれ」

『は、はい。今上の見張りのヤツが降りてきて……

 おかしなガキがボスに逢わせろって来てるらしいんです』

「……? おかしなガキ、だと?」

 

つい先日ここに侵入なんて事をやらかした、あの気持ち悪い顔をしたピッピを連れた少年であろうか?

だとしたら私に繋ぐまでもなく徹底排除を命じていたはずだが……。

 

まあ、彼も私のポケモンを全て打ち倒した上で、何も取らずに帰って行った珍妙な存在であったが。

 

あ、そういえば私の部屋に隠していた『いいきずぐすり』を持っていかれたか。

しかしその少年のせいで私はさらなる金策を迫られ───

 

「先日侵入した子供なら対処は既に伝えていたはずだが?」

『あ、いや……前のあのガキじゃないらしいっす。

 おい、ちょっとお前ボスにそのまま事情を伝えてくれ』

『う、うっす! 了解ッす!

 お電話代わりました! 今日、見張りを担当してたモンッす!』

「うむ、聴こえているよ。大丈夫だ……それで、何故私に逢わせろと?」

『はい、ここからは自分が伝え聞いた事全てなんですが……

 まずそのガキは、ボスの名前まで知っていました』

「───な、なんだとッ!?」

 

思わず声を荒げてしまう。

 

つまりその見張りにあった子供は

「ボスに逢わせろ」ではなく、「サカキに逢わせろ」と言った事になる。

私がロケット団を運営している事は、団全体にも徹底させている秘匿案件のひとつだ。

それを、子供が知っているだと?!

 

『お、驚かれるのはよくわかります。しかしそれだけではなかったんです』

「ほ、他になんだと言っていたのだ」

『……まず第一声が、1Fにある基地の入り口出現ボタンを示唆していました。

 ぼそっと「ポスターの裏」って言いやがったんです』

「─────あ、あ」

 

 

なんだ? どういうことだ?!

何故だ?! まさか、あのピッピを連れた少年が情報をリークしたのか?!

最早それしか考えられん……あの少年は確かに入り口も、私の存在も知っている。

 

確かに良く考えてみれば、警察視点で考えるに……

ここの情報、私がリーダーという情報は確実に欲しがる内容だ。

そう、金一封を(したた)めても問題ないレベルの情報だ。

 

 

……そう、か。

 

 

何故子供を遣わせたのかはわからないが……

 

 

どうやら私も、年貢の納め時が来たようだな……。

 

 

すまぬ、私を信じて付いて来てくれた団員達よ……。

 

 

「───その子供は、なんと言っていた」

『い、いえ……その……ボスに逢わせろ、としか……』

「───逢わせろ、とだけだと?」

 

 

おかしい。

 

もしも警察の関係者であれば、トキワのジムリーダーである私が

この犯罪組織を運営している事を確信してここに来ているはずである。

それこそ武力鎮圧すら視野に入れているはず。……なのに『逢わせろ』とだけ?

 

「他に何か言い忘れている内容はないか?」

『えーと、えーと……あっ! そう言えば名前を名乗っていましたッ!』

「名前、か。その名前は覚えているか?」

『はい、確か……タ、タク?』

「タク……? 覚えは無いが……」

『あ、違う! そうだ、タツヤ!! タツヤって名乗ってました!!』

 

 

 

 

 

 

 

「なんだとぉおおおおおおおおおおおおおお!?!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

「お、やった! 2回目のBIGだ!」

 

休憩所で待つと言っていたのだが、30秒で座っている事に飽きてしまい

1000円分だけ…と思い、持ってきたコインの中から50枚だけ出し

適当な台に座って打ったところ、5Gで777が揃ってくれた。

 

その後も50G位、小役を織り交ぜながら飲まれて行き

今、再び777に当選したのである。

 

「にっひっひ、やっぱりスロットは出ないと面白くねーやな」

 

よし……ならばもうちょっと攻めてもう一発位出して───

 

 

「も、申し訳ありません、タツヤさんでよろしかったでしょうか!!」

「んぁ?」

 

いきなり肩越しに話しかけられ、俺はそちらを振り向いてみた。

先程のロケット団員見張りが、敬語で話しかけてきている。

 

「っと……話はちゃんと通ったん?」

「は、はい。ボスが直接B1Fまで上がってくるとの事です。

 よ、よろしければそちらまでご案内致しますが……」

「んー、しゃあねえか……少し待っててくれ。

 いや、待っててください。今コインを出しますんで」

「い、いえ、そんな……俺に敬語なんて……

 むしろ先程は、ボスの知り合いにとんだ失礼を……」

「あぁ、そこは気にしないでください」

「へっ?」

「あなたは組織において、しっかりと役目であり、立場を守っていただけです。

 不審なヤツが現れて、あの態度になるのは役目の関係上仕方が無い事でしょう」

「え、えっと……そう言って頂ければ、はい。ありがとう、ございます」

「いえ、こちらこそ休憩所で待っていると伝えたのにゲームに興じてて申し訳ないです」

「い、いや、大丈夫っす! タツヤさんのミロカロス、でよかったっすかね?

 あいつがとても賢いのか、俺の言葉を理解した上でここを教えてくれたんで」

 

あぁ、やっぱおめーは俺の癒しだミロカロス。これからもよろしく頼むよ。

 

そう話している間にも、クレジットの中にあった41枚を払い出し終え

コインをじゃりじゃりと始末した。

 

「さってと……それじゃ、みんなと合流してB1Fにお邪魔させてもらいますかね」

「は、はい! では俺はポスターの前にいるので、準備が出来たらお越しください!」

「了解しました、ではまたすぐ後で」

 

そう言い伝え、俺らは一旦別れた。

 

 

どうやら最悪の展開は回避出来たようである。

この後どう動いて行くかは……サカキ次第といったところか。

 

 

 


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