「……なぁ。」
「ディ……」
『…………orz』
「△▲☆★~……」
「ホ、ホァァ~!!」
俺達は今ミロカロスを除いて全員へこんでいる。
まあ、おそらく俺等をご覧の方々は察しがついていると思うが
現在野良トレーナー戦で敗北連チャン真っ最中です。
「俺等って、こんなに弱かったんだっけ……?」
◇
シオンからヤマブキに向かうルートで
結構トレーナーが多かったのは皆さん覚えていらっしゃるだろうか。もしくはご存知だろうか。
俺の記憶が正しければーなんだが……
あそこはギャンブラーとかミニスカートとか、その辺のがせいぜいだと思ったんだがなー。
それが一体どんな改変が来てこうなってんのか知らんけど、この世界だと、さ?
エリートトレーナー顔負けの戦略ばっかしてくる人達しかいねえんだけど。
なんなんだよもう、Lv1ドーブルとか出てきた時はもうドン引きだったわ。
しかもそいつはそいつで、「意外だろう? ニヤリ」とかきめぇ顔してっし。
一応俺もその手の戦略は前世でtubeとか使ったりして動画で見てんだわ。
おそらく独自に打ち立てた論として使えるようにしたんだけどさー、やられるほうは気分よくねーやな。
ドレディアさんで挑んでしまい、ドーブルがLv1で出てきた時点でさ……誰だって警戒するだろ?
うちの緑の子は変化技とか一切無いストレートな子だからね……そしたらこうなったよ。
いばる→こんらんしても普通に技を繰り出す
仕方無しに叩く→当然タスキ→バッチリタイミング良くがむしゃら
HP一気にこっちも1だよ、ひどいわ。
んでパンチとかそんなのしかないし、がんめんパンチ普通に指示飛ばしたら
エアームドとか出てくるしさー。ひこうタイプのせいで一致もしねえよバカ。
さらにいばるをやったら、HP1のまんまドーブル出てきてさ?
ねこだましでパチンってやられてこっちのHP1削られて終わり。
つまーーーーーーーーーんねーーーーーーーー。
本気でニヤニヤうざってぇから、懐から2円取り出して
目に投げつけてとっとと次に進んだ。刺さってたけど知らん。
ウザいヤツは死んで来い。
まあ……あまり戦いたくないし、物珍しいはずのムウマージ前に出して歩いてたら……
まあなんていえばいいのかなぁ。
だいばくはつ喰らった。以上。それ以上は聞くな。
やられる前にやれをやられたよ。
そして最後の砦のダグトリオ、これが一番酷かった。
可愛いもの大好き系な手持ちのはずのミニスカートに喧嘩を売られたんだ。
出してきたのはフシギダネだった。
まず開幕早々からくさタイプの攻撃で大ダメージ食らうかも、と思って警戒してたんだが
やってきたのはやどりぎのたねだった。
俺チェンジ出来るポケモン居ないから解除不可能。
ゲームと違い現実世界的な動きが可能なこの世界で、さらにイカれた内容をやられる。
なんとダグの超攻撃をこらえるで持ちこたえられた。お前それ使えたっけ?
しかもそこからさらにバトンタッチ。
出てきたのはなんとLv1のノズパスだぁーッッ!
あんたデザインセンスおかしいだろッッ! どう考えても可愛くねぇよそいつ!
んで……Lv1のノズパスっつったらもう、わかるべ?
ダグがこうげき→がんじょう+ゴツゴツメット→いたみわけでダグの体力ごっそり持ってかれる
やどりぎで回復→ノズパスHPMAX、がんじょう再使用可能
ないわー。
いらついたからダグが倒れた後、ノズパスに走りよってゴツゴツメット蹴り飛ばした後に
メリケンサックで顔面ぶん殴ってとっとと逃げ出しました。
トレーナーが何もしないと思うなよ。明日の月夜の晩を拝めると思うな……!
……まぁ、こんな結果になりましたとさ。
この世界怖い。もう怖い。おうちかえりたい。
うちの連中も強い強いと思ってたんだが、まさかこんな結果になるとは。
ミロカロスが戦わない上に生き残ってる判定だから
こっちの手持ちの200,000円近くが半分になる事もはないが
それでもあんだけ強いのに負けさせてしまう俺に悲しみを禁じ得ない。
「ホ~ァ! ホァ~ホッ、アッ! ホァー!!」
「うん、ありがとうミロカロス。お前、ホント癒しだわ」
【たまたまですよ! たまたま! ご主人様! 皆! 元気出して!】
と慰めてくるミロカロスに思わずほろりと涙が出る。俺って一体なんなんだろうか。
「やれやれ……こんなんでポケセンに辿り付け───」
「そこの君っ!!勝負だっ!!」
……あー? なんか知らんけどワカメっぽいヤツが俺にさらなる追撃をかけてくる。
「……見てわからんっすかね。こっちゃもう満身創痍なんすけど」
「う……まあ、わかるけど……!
でもボクは師匠の教えに習い、どんな時でも油断もしないし……情けも捨てなければならないんだっ!」
知ったこっちゃねえよバカ。もう去ねこのド阿呆。
「あーはいはい、OKっすよ、OK。
なんかすっげーイライラしてきたんで受けますわ」
「ふ、そうか……ならばこちらからポケモンを出させてもらおうッ!
……頼むぞ、ダークライッッ!!」
「─────!!」
ふーん、ダークライね。
「さぁ、そちらはどのポケモンを出すのかな?」
「俺だよ」
そして俺はもう試合開始の合図すら面倒になり
とっととダークライに走り寄った。メリケンサックも装着済みだ。
「え」
「─」
相手の動揺すら気にせず、ジャンプしながら突撃してダークライの顔面を鷲掴みにする。
そして自分の体重+重力の法則を用いて、浮いている状態から地面に引き摺り下ろした。
そのままマウントポジションまで持ってってパウンドをし続けた。
あとはもう言うまでもない……相手に手を出される前に、完全に私情を捨てて
地面に落ちて戸惑っているダークライを一方的にボコった。
あぁもうウザってぇ。
あんな状態で俺にポケモンけしかけてくるあのワカメもウザってぇ。
殴り続けてもなかなか倒れないこのダークライもウザってぇ。
あんなポケモン持ってんのにLv1ドーブルを何とかする判断すら下せない俺がうぜぇ。
全部が全部、ウザってぇ。
くたばれよもう。
最後に全力でダークライの喉を踏み抜いた。
声にならない絶叫が足元から聞こえたが俺の知ったことではない。
「はぁ~、やってらんね……おい行こうや皆、とっととタマムシ行かねぇと……」
全員を呼び寄せ早々にその場を引き上げる。賞金? いらねーよ、手持ちに20万もあるし……
なんか皆が皆、俺を怖がり始めてしまったが
そんなもんはヤマブキかタマムシについてから聞けばいい。
とにかく野宿でも良いから、不貞寝したくなった瞬間だった。
◇
なんだろう。
今、何が起きたんだ。
目の前には、地面に沈んだボクのダークライ。倒したのは小さな子供。
ミロカロスが元気なのを確認していたので、てっきりミロカロスを出してくると思ったら
何故かトレーナーがボクのダークライに攻撃し始め、ものの30秒でダークライが地に伏した。
改めて思い返してみても何かがおかしいな。
なんだろう、なんか、何かおかしいんだけど……あれ?
って、それどころじゃないっ!!
「ダ、ダークライっ!! 大丈夫か!?
しっかりするんだ! ほらっ、げんきのかけらだ!!」
「─────;;」
◇
っぷはぁー。
ようやく、ようやく地下通路に着いたか……長かった、ここに至るまで約8時間。
全てがどうでも良くなって俺が参戦した戦いから6時間、といったところだ。
地下通路ならトレーナーも居ないし、居たとしてもお互いが通り道のすれ違いだ。
「はー……みんなご苦労さん。
流石にその体じゃ疲れたべ、ここら辺でキャンプ張るかー」
「ァァー……」
『─────。』
「△▲☆★~……;;」
「ホ~ァ~」
ドレディアさんは既に仰向けに伸び、ムウマージもそれに習う。
ダグ達はキリッと整列していると見せかけて実はふらふらしてる、ある意味根性座ってんなぁこいつら。
ミロカロスは皆を励まそうと精一杯だ。
これはもう動けるのは俺しかおらんな。テントは俺一人で張るか……頑張らねば。
あとはまあ、普通の夜に至る道である。
俺がテントを張り終え、夜飯の調理を開始する。
ドレディアさんが飯の匂いを即座に嗅ぎ付け、ムウマージと一緒に
【まだか? まだか? なぁ、まだなのか?】
【なのかー】
と体を揺すってきたりしたが、いつも通りの日常茶飯事である。
身に付くかどうかはわからんが、一応女の子だしドレディアさんにも飯の作り方を教えながら調理。
出来上がった後はみんなでレッツイーティングだ。まあまあおいしかった。
他の皆は相変わらず大騒ぎしてたが、まあ自分の作ったモン食ってもな……
誰かのおいしい手料理食べたいディス。
あとは、寝るまでにちょいと時間が余ったので
観客の居ない音楽会をみんなでやって、全員で音に聞き惚れていた。
あれ? なんか二つほど重要な部分が抜け落ちてるような……
そういやもっさんたちはどこ行ったんだ? サンドパン撫でたくなったんだけど。
ついでに言えばさっき俺がぶっ倒したダークライって
通常だと手に入らないポケモンだったような……?
……ま、いいか。
主人公無双。