うちのポケモンがなんかおかしいんだが   作:右肘に違和感

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65話 母さん

フジ老人とロケット団のクソ共ががなりあっている途中に

俺はドレディアさんに土手ショートカットの応用で屋根に放り投げてもらい着地して

屋根から飛び降りつつフジ老人にスワンダイブ式DDTをかました

 

 

 

なんてことは特になかった。

いや、感想欄でこうした方がいいんじゃないかとか言われたもんだからさ。

ちょっとそんな事を妄想しちゃったんですよねボク。

 

しかしまったくの無実であるフジ老人に地獄の断頭台をかませなんて

怖い人がいたもんですねまったく。

 

 

 

 

まぁとりあえずそれは置いといて、新しく情報は仕入れる事が出来た。

コイツの母さんは……間違いなく原作でも登場していた、あの捕まえられないLv30のガラガラだろう。

 

「……。」

「むなくそ悪い話ね……」

 

この手の黒い感情そのものには、二人も余り慣れていないのだろうな。

ロケット団の一方的過ぎる持論を聞いて、気分が悪くなっているようだ。

 

まあそんなものはどうでもいい。

あれらは、勝手にレッドさんが片付けてくれるはずである。

 

俺もあれはむなくそ悪い……だが真面目な話、我慢出来ない程でもない。

だったらこのカラカラの母ちゃんと思われるあいつと引き合わせてしまったほうが

こちらの用事もあっさり済むし、あんなやつらを気にしている暇など勿体無くて仕方が無い。

それならまだ面倒でこそあるがみんなに飯でも振舞っていた方が喜びがある分だけマシである。

 

「……さっき言いかけてた事だけど、ポケモンタワーに行こう。

 聞いた状況と、今言い争ってた状況からして……

 あのじいちゃんが言ってる幽霊がこいつの母ちゃんだと思う」

「……いいわ、行きましょう。ここに居ても気分悪くなるだけだし」

「はい……」

 

 

そうして、俺らは修復されたばかりのポケモンタワーに向かう事になった。

 

 

 

 

つーわけでポケモンタワー前。

どうやら監督さん達がやっていた修復作業は完全に終わっているらしく

資材やら休憩小屋やらも既に撤去されていた後だった。

つまりは気重ね無く入る事が出来る。

 

「……? キュキャ~……」

「ディ?」

 

ん……どうやらカラカラが目を覚ましたようだ。

ドレディアさんの腕の中で少しだけもぞもぞと動いている。

 

「ディ~ァ、ディ~ァ。」

「……キュ~……Zzz……」

 

そして案の定、子守まで上手いドレディアさんである。

まあ現実でもこういう人たまに居るよね……基本ガサツなのに子供とかの面倒見良い人。

 

……さて、三階への入り口に着いたが。

ここから先ってシルフスコープってのがないと、バトルにすらならないんだよな。

まあ逃げれば進む事は出来たはずだし、いいか。

 

「とりあえずミカンさんにもっさん。三階からはなんか幽霊っぽいもんが出るはずです。

 怖いかもしれないけど基本的に (幽霊状態なら)無害のはずなので気にしないで行きましょう」

「え、ちょっと……幽霊、出、出るのッ!?」

「は、初耳です……どこでそんな情報を知ったんですか……? ていうか、今の変な間は……?」

 

ッ! しまった……抜かったか。

確かに一緒に居た時間でそんな情報を聞いたシーンはなかったな……

壁の修理の時に聞いたって事にすると、後でアカネさんに確認されたら面倒な事になる。

とすると……あえて反応しないほうが吉か。

 

「俺が先頭で進むんで、二人は俺の後ろについてきてください」

「わ、わかったわ」

「わかりました……」

 

無視成功。目の前に計り知れない恐怖があるとごまかせるもんだね。

 

「ドレディアさん……カラカラこっちにちょうだい。こっから先は……ね?」

「ッ! ……ディーァ」

「……ダグ達も一応逃げる準備だけはしとけよ。下手したらお前等の技は全部無効化も有り得るから」

『……。(コクリ』

 

事前にポケモンセンターで説明していたため、俺が多く語らずともわかってもらえたようだ。

 

そして俺はカラカラを受け取り、三階まで上がってきた。するといきなり───

 

 

「───ケケケケケケケケケケケケケケ!!!!!」

「うおっ?!」

「ディァッ!?」

『ッキャァアアーーーーーッッ!!』

「ッキュキャ?!」

 

 

階段を上がって三階に到達した俺らに対し、なんか巫女服みたいな……ああ、そういえば居たな。

きとうしって人たちだこれ。漢字で表すと、祈祷師。

 

なんだっけ、確か設定上だとゴースとかゴーストに乗っ取られてんだっけ。

 

ってかさぁ……うっせーんだよな。ミカンさんともっさんも含めてだが。

カラカラ寝てたのに起きちゃったじゃんよ。

 

 

 

ん……? あ、そうだ。

ゲームだとトレーナー戦って事になってたけど……こっちは普通に体乗っ取られてんだよな、多分。

でもって操ってんのがゴース、ゴースト……だとすると、だ。

 

「ドレディアさん、耳貸して」

「ディ?」

「ごにょごにょごにょ……」

「(コクコク)」

「キュ~、キュ~……」

「ケケケケケケケケケケケケケケケケケケ!!」

『キャーーッ!! キャーーーッッ!!』

 

 

カラカラは不安げに俺を見上げてくる。

大丈夫だ、カラカラ。俺らに任せておけ!                あと外野うっせぇ。

 

……ではドレディア嬢、お願い致します!!

 

「───。」

「ッケ……!?」

 

 

ゴゴゴゴゴゴ

       ゴゴゴゴゴゴ

              ゴゴゴゴゴゴ

 

 

これは、ドレディアさんの特性のいかくである。

 

本来であれば攻撃力が一段階下がるのと同じものだが……色々とおかしいドレディアさんの事だ。

その攻撃性能ではなく、恐怖だけで相手の精神をぶち折る事も可能であると思う。

 

そのため、乗っ取っているゴース……またはゴーストを怖がらせ

祈祷師さんの体から逃げ出してもらうために

全力でハッタリを込めながら、いかくしてやってくれと頼んだのだ。

 

一歩一歩、とても重い足を踏み締めるように

ドレディアさんは乗っ取り祈祷師に歩み寄って行く。

その一歩一歩にプレッシャーがあり、何も知らなければ俺ですら気圧されそうだ。

 

そして俺の提案は功を奏し……

 

「ッコ、コッ、コエエエエエエエエエエッッ!!」

 

ボシュゥゥゥウ。

 

祈祷師さんの体からガス状の何かが抜けて逃げていった。今回はゴースだったか。

 

「あふ……」

 

ドサッ

 

操られていたところを逃げられ、体を支える力が何もなくなってしまい

祈祷師さんは床に崩れ落ちたのだった。

 

 

「な、なんなの、なんなのこれ……! すっごいなんか怖かったンだけど……!」

「う、うぅぅぅうう……」

 

その声がする後ろを見てみると

既に全てが終わっているのに、もっさんとミカンさんが後ろで互いを抱き合ってガタガタしていた。

 

「あーまあ……ゴースに乗っ取られてたんでしょうね。ゴースはわかりますよね? あの変なの」

「え、ええ……」

「あ、あれが、ですか?」

「まあ違ったところで俺にはさして関係ありません。とっとと行きましょう、いざ進めやキッチン。」

『なんで台所……?』

 

うるさい、キャベツを忘れたんだ。

 

っと、そうそう……

 

「ドレディアさん、ありがとう。今日はこの調子で頼むよ」

「ディ、ディ~ァ///」

「キュキャー!」

 

若干照れているらしい。

カラカラも保母さんがとっても強い事に感動しているようである。

 

 

 

 

そんなこんなでどんどんポケモンタワーを踏破していく俺ら。

やはりドレディアさんは色んな意味で規格外である。まさかむしよけスプレー化するとは。

 

もちろんのこと、あの「タチサレ……タチサレ……」とうるさいのが定番の

ふたばちゃんねる? の【ねないこ だれだ】 みたいなのも出てきた。

 

まあ、とりあえず俺とドレディアさんが「邪魔くせぇ、どっか行け」と

その都度追い払っているから問題ないのだが……

ていうかそんなんで言われた通りにどっか行くなよ幽霊共も。

もうちょっと張り合えよ。寂しいじゃないか。

 

祈祷師さん達も祈祷師さん達で、順調に浄化出来ている。

なんせ見かける祈祷師さん、ほぼ取り付かれてっからなー。

あんたら修行不足すぎじゃねえの?

 

なお、途中で不思議な事が二つほどあった。

 

一体何故なのかはわからないんだが

いつの間にか俺の頭の上にムウマージがくっついていた。

今も「△▲☆★~♪」と鳴いてご機嫌モード真っ最中である。

 

つかお前イッシュでしか出てこないんじゃなかったの?

初出はDPtだとしても、こいつは野生では出てこなかったからな。

人の手が加えられてない場合になるが、イッシュのヤグルマ? だかにしか居ないはずなんだが。

お前ももしかして墓参りに来たの?

 

 

そしてもうひとつは……なんとゲンガーが出てきたのだ。ゴーストの最終進化系。

初代から結構使えてる万能さんですね、ゲンガーっつったら。

 

もちろん突っ込みどころも二つほどある。

なんでシルフスコープ無いのに幽霊として出てきていないのか。

加えて野生じゃ出現しないはずのお前がなんでここに居るねんな、と。

 

そして俺自身の感想としては既にムウマージが頭の上でご機嫌にくっついていて驚きが無い上に

なおかつ何故かドレディアさんの威圧オーラが俺にまで滲み出てきてて怖いという謎な状態である。

 

まあ、多分俺らが幽霊に全く動じねえからつまらなすぎて出張ってきたんだろうな、こいつら。

ゲンガーの方は姿を現して戦うなりなんなりした方が楽しそうだ、とでも思ってんだろう。

 

ムウマージは知らん。

 

「ギャゴーンッ!!」

「うん、まあとりあえずうるせぇから黙れ」

 

と言って、俺がケンカキックぶちかましたら何故か普通に当たって

物理耐久が殆ど無い子だったのか、その一撃だけでゲンガーは気絶してしまった。

 

扱い的には格闘かノーマルという感じなはずなのだが、何故当たったんだろう。

もしかしてポケモンタワー来てから見るヤツ全部に動揺してないから

世界システム的に とくせい:きもったま とでも取られたんだろうか?

 

 

ててててーん♪

 

 

しかも俺のレベル上がったし。

 

「マスターは凄いですねぇ……

 なんで最終進化系を10歳の子供が一撃でK.O出来るんでしょうか……?」

「知らんよポケズ(ポケモン図鑑)……たまたま急所に当たったとかそんなんだべ

 実際俺よっかお前の方が異常だっつーの」

「そうでしょーかねぇ……あ、ちなみにLv20です。」

 

さいですか。

 

「まぁ、Lv20おめでとう。タツヤ君」

「うん、ていうかタツヤ君レベルの概念あったんですね」

 

そうっすね。

 

 

てわけで、色々と迷ったり、ゴースっぽい系が入ってこれない結界で休んだり

その結界が気持ちよすぎてダラけながらカラカラと遊んだり

何故かさっきぶっ倒したゲンガーまで結界に入ってきて、これも一緒にカラカラと遊んだり

もっさんとミカンさんが休憩してて絵になるような構図だったり

ゲンガーがもっさんに色目を使い出してサンドパンにボコられたり

俺がムウマージと色々と談笑してるとドレディアさんに腹パンされたり。と。

 

まぁ結構色々あった。途中から何かがおかしい気がするが。

 

「いつもの事よ」

「うん、いつもの事です」

「ギャゴーン」

「△▲☆★~♪」

 

そんな風に説き伏せられてしまった。

俺って思考おかしいのかな、何かがおかしい気がしたんだが。

 

ていうかなんでお前ついてきてんのゲンガー。

ああ、そうすか……もっさんが気に入ったと……一応サンドパンとも和解しているようである。

俺がダグONEに乗るが如く、サンドパンはゲンガーの頭の上に乗っている。

 

図としてはゲンガーのあの頭のツンツンが

サンドパンの背中の剣山になってスーパーグレードアップしているような図である。

 

垂れサンドパンktkr。

そういやRagnarok Onlineでも『+7たれ猫』とかいうわけのわからん防具もあったな。

 

 

ところでなにやら俺らが行かなかった道の方でなんか騒がしいようなのだが……

なんなんだろうか、あれか? フジ老人withロケット団のような形をした金魚のうんち?

 

そもそもフジ老人やらロケット団やらが見えたわけでもないが

ここでそんな騒がしいイベントになるっつったらあの人らしかおらんべ。

 

んで、もうちょっと進んだ後にまた疲れたので

全員を説得し、結界にあえて引き返して休んでいたら

 

 

「あ、タツヤ君。」

「あ、どうもレッd……犯罪者さん」

「えぇっ?!」

「……まぁ、一応犯罪者よね」

「うん……ここの二階、酷い状態にしてたし」

「いや、あれはね?! 僕が悪いんじゃなくてね?!」

「おめーのせいだってさ、セイリュウ。この人このままにしといていいのかお前」

 

◎<ギュガー……

 

なんとボールに入ったまま返答するという前代未聞の内容をやらかすセイリュウ。

お前あの図体なのに結構そういう細かい芸当出来んのな……

 

「んで、どうしたんすかレッドさんは」

「いきなり素に戻らないでよ……まあ僕は、なんかシオンの住民の人から

 フジ老人が危ないから連れ戻してもらえないだろうか、って言われて」

「ふーん」

「なんか興味なさそうだね……なんで聴いてきたんだ……」

 

ま、俺としちゃ大体レッドさんやグリーンさんが原作に沿って動いてんの知ってるしな……

今更新しい知識など彼らの関連では殆ど出てこない。

 

「俺らも用事あって上目指してますけど……どうします?

 共同戦線で行きます? それとも普段通り俺にバトルでも仕掛けます?」

「お、今日はやる気あるのかい? じゃあバt……」

「ドレディアさん、レッドさんの股間に───」

「共同戦線と行こうか! うん、それがいいッッ!!」

「……ッチ。レッドさんの股間に手を出さないようにな」

「ドレ~」

「貴方達も全然変わらないわねぇ」

「ふふふ、この状況だとむしろとっても頼もしいですけどね♪」

 

ま、そんな事がありまして。

レッドさんと合流したのだった。

 

 

 

 

そしてみんなでガンガン進むうち、ついに最上階に上がる階段が見えてきた。

 

……って、あれ? なんか今階段を黒い何かが上がっていったような……

 

「ッ! そうか、あれが住民さん達が言ってたロケット団か!

 という事は……最上階にフジって人が居るんだな!!」

 

レッドさんが横手で突然名推理を語りだす。うん、まぁ多分そうなんだろうけど。

よくそんなちっこい情報でそこまでこじつけましたね。

 

んでまぁ……俺らはその階段の下に張っているはずのこいつの母親に話しかけて

適当に成仏してもらえばOKだろうな。会えるだけ原作よっか遥かにマシだろう。

 

 

 

「……しかし、面倒だ。」

「ディァー……」

 

ここ何階だっけ、忘れたが……とりあえず、祈祷師とゆうれいがうっせーんだ本当。

ドレディアさんのいかくのおかげで、なんとか戦闘にもならず追い払えてはいるのだが……

 

「も、もうちょっとお願いね。頑張って、ドレディアちゃん!!」

「キュ、キュー!」

「△▲☆★~!」

「ギャゴーン!」

「が、頑張ってください!!」

「キュキャーォーン!」

「が、頑張ってくれ!!」

 

そうして全員から声援を貰うドレディアさん。つーかお前もかよ、レッドさん。

あんた逃げ出した後タマムシ方面とか飛んでさ。

ちゃっかりシルフスコープ手に入れちゃったりしてるんちゃうんかい。

そういうところだけ妙にゲーム構成から外れてんのかい。

 

レッドさん総評:使えねえ。★☆☆☆☆

 

 

っと、ようやく階段手前が見えてきたか。

 

「よし、ここまで来ればもう……うっ!?」

 

ん、レッドさんが威勢良く駆け出そうとしたところでいきなり怯んだ。

なんだろう、エテボースの命の玉込みのネコだましでも喰らったか?

 

「くそ、まだ出るのかっ……!」

「タチサレ……タチサレ……」

 

レッドさんが登ろうとした階段の前に、またゆうれいが立ちはだかる。

 

「タ、タツヤ君、ドレディア!! 頼む、こいつも追い払ってくれ!!」

「ディーァ!!」

 

威勢良くレッドさんに返事をしていると見せかけて

【わかった!! 街に帰ったらご飯奢れよ!!】とかちゃっかり意思に乗せているこの子は

本当にどうしたらいいんだろうか。まあ、なるようになるか。

 

 

ゴゴゴゴゴゴ……!

 

「ッ……! タ、タチ、サレ……! タチサレ……!」

「な、に……逃げない!?」

「……。」

 

やっぱり、か……。

 

こいつ、Lv30のあのガラガラで確定だ。

そしてまだこっちの内容は確定はしていないが……こいつの母ちゃんだよな、多分。

さて、シルフスコープもないしどうしたものか───

 

「あ、そうだっ!!」

「……ぬっ?!」

 

突然レッドさんが何かに気付いたように大声を上げる。

そして目の前にゆうれいが立ちはだかっているにも拘らず、カバンをごそごそしている。

 

 

「てぇーぃ!!」

 

 

ぽーい

 

 

カバンから何かを取り出したレッドさんは、ゆうれいに対してそれを投げつけた。

モンスターボールだろうか? ボールだとゆうれいは躱すはずだが……

 

そして幽霊の右辺りに、ぼてんぼてんと転がった後

投げたものは動きを止める。そして───

 

「タチサレ……タチサレ……」

 

何故かゆうれいはその投げたものに対してタチサレと言い始める。

そしてそれを確認した後レッドさんは……

 

 

 

 

 

レッドさんは外道にも俺らを完全に放置して

 

幽霊の注目が投げたものに向いているうちに、階段を駆け上がりやがった。

 

 

 

 

 

 

「     」

「ディーァ……」

「     」

「キュー」

「ギャゴーン」

「     」

「キュキャーオン」

「△▲☆★~……」

 

あまりの華麗な放置に俺ら人間三人はぽかーんとしてしまう。

一体ゆうれいが何故投げたものに注視し始めたのか気にもなったので

俺は目線をゆうれいの足元に向けてみると

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこにはピッピ人形があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

あの裏技かぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!?

 

 

 

 

 

「ひ、ひでえ……色んな意味で酷すぎる……」

 

俺は現実のゲームにて裏技的な要素として行われる事があった『あれ』を

この現象であると認識し、あまりの実的な重さに色々とどうしようもなくなる。

 

おい、これ見てるやつら……お前等はこんなことやってないよな……!?

ちゃんと、ちゃんとゲームでもこのガラガラ、成仏させてあげたよな……!?

 

くっそ、こんな、こんな腐れた内容だっつんなら……

まだ友達にコピーしてもらった伝説ポケモンでオーバーキルした方がマシだろこれ……!

 

 

っと、しまった。思わずアレすぎる内容に思考が止まりかけたが……

 

 

俺は。俺らは。

どちらにしろここでの最終目的は最上階ではなくこのゆうれいなのだ。

別段レッドさんが居なくなったところで何も問題は無い。

 

んー……とりあえず試せるところから試してみるか。

今までドレディアさんを見て逃げるヤツばっかだったから、どうなるかはわからんが……

 

「タチサレ……タチサレ……」

 

まだやっている。本当に報われねーなぁこれ。

とりあえずさっきゲンガーは蹴り飛ばせたので多分俺の攻撃は当たると思う。

 

「せいっ」

 

ボカッ。

 

あ、やっぱあたった。

 

「ゴッ!? ゴォーガゴォンッ!?」

「あ、本性出した。」

 

まさかの一発成功である。タグのご都合主義万歳。

そしてどういう原理なんだか知らんが、俺が殴り鳴き声を上げ……

その姿が幽霊じみたものから、しっかりと形を纏って行き……

 

 

「……えっ?!」

「う、うそっ……」

 

 

場に現れたのは───やはり思った通りに、ガラガラであった。

うんまあ二人が驚いてるところは多分あれだろう。

あんなお化けみたいな姿したヤツが、まさかガラガラだとは思わなかったんだろうな。

何気に追い払ったゆうれいの中にもカラカラは居たと思われるのだが。

 

「キュ……キュキャーォン……?」

「───ゴッ?!」

 

俺らと一緒に居たカラカラが鳴き声を上げ、その鳴き声にガラガラが反応する。

 

 

 

 

反応したって事は。

 

やっぱり、このガラガラが。

 

こいつの母親だったのだろう。

 

別に殺されたシーンを見たわけではない。

 

現状形を保っている関係上、吐き気を覚えたわけでもない。

 

 

 

だが……。だが、だ。

何故、日本を舞台としたこの世界で……

 

 

 

こんな事がまかり通っているのだろうか───

 

 

 

「……ッ、キュキャァー!!」

「───。」

 

鳴き声を上げながら、カラカラはお母さんに抱きついた。

ゲームでも普通にぶん殴れた関係上なのか、まだ受肉しているようであり

抱きついてもすり抜けてしまう事はないようである。

 

 

 

だが。

 

 

何故、世界とはこうも残酷なのだろうか。

 

 

もう、そのガラガラは既に。

 

 

───体が透けてきている。

 

 

「ッ!? キャォーン!! キュキャーォン!!」

「……───。」

 

カラカラもその事実に気付いたのか、必死に母さんを呼び止めている。

それを聴いた上で少しコワモテな見た目のあのガラガラが、とても、とても優しく微笑んでいた。

多分、私が居なくなっても元気でやるんだよ、とか言っているんだろうな。

カラカラはそれを聴いても、まだ鳴き叫んでいる。

 

 

「……う、うう……!」

「ギャゴーン……」

「キュ……」

「か、可哀想っ……!」

 

俺ら第三者達は各々それぞれ、その悲劇に悲しい思いをぶつけている。

 

 

 

 

 

……あまり、好ましい事ではないんだがな。

ゲームの内容で考えると、既に一歩進んだ状態まで足を突っ込んでいるわけだし

このまま終わらせるのは、あまりにも後味が悪い。

 

 

 

 

 

───概念改革、やってみるか。

 

 

 

 

 

「少し、いいか」

「ッ?!」

「……ゴーガゴォン?」

 

俺に声を掛けられ、カラカラは驚き……ガラガラは俺にちらりと目線をやり、俺を見る。

その体は既に、向こうの風景が見えてしまう位になっている。

 

「ガラガラ、お前はもう自分で死んでしまったのは理解してるよな」

「……?(コクリ」

「体ももう透けてきてるが……───お前、それでいいのか?」

 

「ッ……!?」

 

「言葉にする必要があるか? なら言おう……最後に子供に会えれば、それで満足なのか?」

 

「……。(コクリ」

 

「その子供の未来は一切気にならない、と」

 

「ッ?! ゴーガァゴンッ!!(ブンブン」

 

「だったらよぉ。もうこの際そのまんま現存し続ければいいじゃん」

 

「     」

 

 

どうやら俺が何を言いたいのかわからず頭がクラッシュしてしまったようだ。

しかし体の透け具合の侵食は一旦止まったようである。

 

「そんな、これ以上体を維持していられないとか

 この世に居るわけにはいかないとか……───そんなもん、どうだっていいじゃねぇか」

 

「…………。」

 

「お前は、コイツの母ちゃんなんだろ? 見守ってやりゃいいじゃんか。

 死んだからなんだっつーんだ? 普通死んだらそこでおしまいなんだよ。

 お前は奇跡かなんかでそういう状態になれたんだからさ、そのまま維持しちまえばいいじゃねえか」

 

「ご、ゴーガゴォ……」

 

 

そして、俺は一息ついて

 

 

「───維持出来ないってんなら、そんなもん気合でなんとかしちまえよ。

 

 出来るだろ? お前の子供がこんなに悲しがってんだぞ?

 

 ……出来んだろッッ!? やってみせろよッ!!

 

 こいつを独りぼっちにしたまま、お前は自分勝手に天国に行くのか?!

 

 そんな自分勝手を、自分自身で許せるのか!?

 

 無理だのやれないだのじゃねえッッ!! やってみせろッッ!!

 

 死んだから、自分がバケモノだからって諦めんな!!

 

 こいつにとってはッッ!! 今お前がここに存在している事が重要なんだよッ!!」

 

 

一気に捲くし立てた。

 

 

「……───。」

 

 

 

息継ぎをして改めて考えてみたが……我ながら暴論過ぎる内容でだった。

ミロカロスの時の論から、何も変わっていない自分が恨めしい。

こんな理論で現世に残れるのなら、墓場は絶賛幽霊祭りになってしまっているからな。

 

 

だが、それでも。

 

こんな暴論でも。

 

 

 

 

効果は…───あったらしい。

 

 

 

 

完全に、体の透け具合が……止まるどころか透明感がなくなっていた。

 

 

「───なぁ、ガラガラ」

「ゴーガゴォン……」

「───見守って、やれよ」

「……───。(コクッ」

 

 

そして。

 

 

 

ピカァァァアァァァッッ!!

 

 

カラカラとガラガラ、二匹が同時に急激に輝き出した。

ポケズからは進化するアラートも聴こえない。

 

俺はその光から目を逸らさず、成り行きを見守った。

 

 

光が収まった先には───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キュッキャ、ォオオーーーーン!!」

 

「ゴォーガゴォン!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カラカラの背後に

 

ガラガラがまるで守護神のように浮いて

 

自分の子供を、暖かく包むように

 

守っているのだった。

 

 

 

俺はその構図を確認した後、カラカラの傍に行く。

 

 

「おう、カラカラ」

「キュキャ?」

 

 

ガラガラを守護霊としたカラカラに声をかけ

 

 

「約束、ちゃんと守ったからな」

「───キュキャーォーンッッ!!」

 

 

 

そう言って、カラカラの頭をぐりぐりと撫でてやった。

 

 

 






原作では、ゆうれいからは逃げる事が出来ます。
そして、フジ老人フロアに上がる手前にはガラガラが固定敵として存在します。
このガラガラも今回の話のように最初は幽霊なのですが
シルフスコープを使うと正体を見破ったとして、ガラガラが姿を現します。
そして俺の聞いた限りだと、正体を現したガラガラは捕まえる事が出来ず
なおかつ逃げる事も出来ません。

しかし野生相手となるので、ピッピ人形を使う事が出来るのです。
そしてその人形を使うと、戦闘が終了→イベント終了のフラグが立ち
ガラガラは人形を見ただけで成仏してしまうという、とんでもない展開になってしまうのです。

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