うちのポケモンがなんかおかしいんだが   作:右肘に違和感

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64話 悲劇?

 

 

今さっき、カラカラをポケモンセンターの裏手で保護した俺達は

ポケセンの中にいる皆に説明をするために、一度建物の中へと戻る事に。

 

カラカラについてはあくまでも保護だ。モンスターボールは使っていない。

今も俺が抱え上げ、子供のこの体では若干体重が重いのだが

それでもこいつに、人間のぬくもりも知ってもらいたいため俺の腕の中に納まってもらっている。

今も静かにクークーと寝息を立てている。

 

 

んで、俺はテスト会場だったポケモンセンターのとある一室に足を運ぶ。

まだ皆居るといいんだが……下手したらミカンさん達はもうどっか行っちゃってるかな。

 

 

「ん、あれ? タツヤ君……そのカラカラどうしたの?」

「む?」

 

ちょうどT字路に当たる廊下を歩いている際に横手からもっさんが現れ、話しかけられる。

 

「それを今からみんなに説明しようと思ってましてね……

 まあ俺の手持ちの子達にだけ説明出来ればいいんで

 もっさん達は今日、用事でもあるならこのまま解散でもOKっすけど」

「んん、まあ私は特段決まった用事はないけど……あの二人はどうかしらね」

 

もっさんを混ぜた四人でテクテクと歩きながら話していると、すぐに件の会場が見えてくる。

俺は扉に手を掛け、普通に開ける。

いきなり中から人が出てきてごっちんこなんぞというアクシデントはない。

 

 

ガチャ

 

 

 

全員俺が開けた音を出した扉の方に少し顔を向け、俺ともっさんである事を知り、軽く声を上げる。

それと同時に、俺の腕の中のカラカラを見つけ「あれ?」という表情も付け加えてくる。

 

 

隅っこではアカネさんとドレディアさんが

『ディーフェンス、ディーフェンス……湘北ファイッ……』

とかやっていた。君ら何してんの?

 

 

「とまぁ、そういうわけで……俺はこれからコイツと母親探しに行く。

 俺の手持ちの戦力は、今回全員付いて来てもらうつもりだ。

 ミロカロスとミュウは、カズさんとコクランさんが今日現れるかもだから

 ポケセンで待機しといて、もしも尋ねてきたら伝言を伝えておいて欲しい」

「ホァ~」

「ミュィ」

「んで、トレーナー③姉妹はどうされますかい?」

「今更過ぎるけどもう突っ込まへんからな?

 まあ、うちはいつも通り着いてっても構わんねんけど……

 今回は遠慮しておこかな? 母親探すだけやったら戦いとかなさそうやし……」

「あら珍しいわね、最近タツヤ君とべったりだったのに」

「な、ちゃ、ちゃうわっ!! たまたまや! たまたまやねんっ!!」

「あらあら、うふふ♡ そのうちナッシーに進化しちゃうんですね♪」

「むー……! まあ、今もっさんが言った『べったり』って部分もあるな。

 ここんとこしょっちゅうタツヤんとおるわけやし……」

 

まあ否定はしないでおこうか。バイトですら一緒についてきたしな。

 

「それに加えて戦いらしい戦いもしてへんしなー。

 腕もなまっちょろくなっちゃ、うちとしてもジョウトに戻った時に困るし……

 今日はそこらのトレーナーに声かけてバトルするつもりや」

「ご冥福をお祈りします」

「ちょ待てや!? なんでいきなり喪に服しとんねんな!?」

「おや、わからないのか……俺がご冥福をお祈りしますと言ったのは、貴様ではないッ……!!

 

 シオンの西にいるトレーナー全てに対してだッ!!

 

 キルゼムオールが達成される事を、心よりお祈り申し上げておきます。」

 

ミルタンク参戦、この悪夢に対してシオン西の方々はどう乗り切るのか……。

多分無理だ。この人のミルタンクってポケモンバトル限定だと歩く災害と同じようなもんだし。

 

「え、ええー……? それどう受け止めればええねんな……

 うちが対象やなかった事を喜ぶべきか、何気に失礼な事を言っているのを怒るべきか」

「うふふ、いいじゃない。その通りなんだし」

「ミカンちゃんも旅に出始めてから、うちにえっらい失礼抜かしよるな?

 ジョウト戻った時覚えておきや? ルカリオ誰かに借りてそっちに挑むで?」

「え、ちょ、それはやめて! やめて!」

「やめたげてよぉ!(裏声」

「そこはそこでキモい声出してんなやタツヤんっ!!」

 

つーか何気にこの人達って色々戦略面考えてるよね。

はがねタイプは確かに格闘が弱点ってのもあるが、ルカリオ借りてくる辺りがミソだ。

ほら、はがねタイプって見た目の通り硬そうじゃん。

つまりあれ、弱点突かれたところで素の防御ステが突出してるから

そこまで大ダメージにならんのよね。んで大体共通してんのが特防の脆さだ。

まあ確かルカリオって防御ももろかったと思うが。

 

ルカリオは何故か物理攻撃力よっか特殊攻撃力のが高いからな……

伊達にリーダーやってねーなぁ、この人ら。

 

「ふーん……まあ、それなら今日は私がついていこうかしらね。

 サンドパンと同じ地面タイプっていうのもあるし……何より可哀想だしね……」

 

俺に近寄って、まだ寝ているカラカラの頭をやさしく撫でるもっさん。

俺もこの人に対して酷い扱いしてんのは自覚あるけど

素が美少女だと、こういう図も絵になるもんなんだなー。

 

「じゃあ、私もついていきますね。戦いは一昨日にたっぷりは楽しんできましたし……」

「了解しました、ミカンさん」

「それにタツヤんと一緒に居たいしー(ボソッ」

「ア、ァァァァアカネちゃんっ?! そんなっ、そんな事ないもんっ!!」

「にししし、さっきの仕返しやっ!」

 

 

「つーわけでダグ達、ハカイオウにゴウキ……まとめて破壊号。

 今日はこの子の母親探しをしてみる事にするから頼むわ」

『─────!!bbb』

『オッス(小声』

 

何気に寝ているカラカラを気遣って小声な辺り、二人の紳士っぷりが伺える。

 

「ていうかタツヤ君……今の二人の会話聞いておいてあげようよ……」

「ん、何がっすか。なんか喋ってたんかね?」

「いや、もういいわ。いつもの事だし」

 

横を見てみればアカネさんがチッと舌打ちしてたり

ミカンさんが明らかにホッとしている様子が伺える。

なんだ、そんなに俺に聞いて欲しくなかったのか。改めて聞いてやりたい。

 

っと……一応俺の手持ちには伝えておこうか。

シオンで、カラカラの……だしな。高確率で間違いないだろう。

三人でキャイキャイやり始めた外で、俺は全員をそっと集めて小声で話す。

 

 

「お前等には一応伝えておく……今回かなりの確率で戦闘になるはずだ」

『『『ッ!?』』』

「ロケット団が絡んでんだよ……多分な。俺はあいつらとの事故率もすげえし

 下手すりゃ情報漏れてて、俺が逆恨みされてっかもしんねえ」

『『『……。』』』

「もちろんの事、ただの確率論だ……

(レッドさん達も絡んできて、全部片付けてくれっかもしんねーし)

 だから一応、戦う心構えだけは持っておいてくれ」

 

【【【【【ラジャーッ】】】】】 内訳:ダグダグダグ破壊号

 

「ホァ~……」

「ん、ミロカロス……うん、まあ大丈夫だよ。

 こいつらがどんだけイカれたステしてっかは、お前も知ってるだろう」

 

ミロカロスが心配そうに鳴いて来たので安心させるために、頭をこちらに引き寄せて撫でてやる。

くすぐったそうにしているが、気持ち良さそうな表情をしてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

【ディーフェンス、ディーフェンス……、湘北ファイッ……】

 

 

ドレディアさんまだやってたの?

 

 

 

 

さて、街中に繰り出したのはいいんだが……

ゲームの世界での結末を知っているのは俺だけなわけだ。

こいつの母親がどこにいるのかはもはや確定的に明らかであるわけなのだが

じゃあそこに行こう、居るから。と言っても不自然さが際立ってしまう。

 

……それに、もしかしたらまだ殺されるまで行ってない可能性もあるからな。

下調べ自体は、やったところでデメリットもないだろう。

 

「Zzz……。ヵラ~~……」

「ディ~ァ」

 

未だに気持ちよさそうに寝るカラカラ。

ちなみに抱っこの役割はドレディアさんに任せてみた。

ドレディアさん、性格こそすっ飛んでいるが……俺は根が優しい部分があるのも理解している。

それ故に任せてみたら、やはり子供は手荒に扱う事は無いようである。

むしろ俺より熟達して、カラカラの睡眠が妨害されないように気をつけているのがわかる。

 

 

さて……どうするか?

ここから先は過ぎ去る時間とタイミングの戦いになるのだろうか?

 

ふむ……そこらの人を捕まえてみっか。

ちょうど良い具合にのんびり歩いている人も居る。

 

「あの、すいません。少しよろしいでしょうか」

「ん、なぁに? どうしたのボク」

 

俺が捕まえたのは、ゲーム中で『おとなのおねえさん』と表記されるボディコンのねーちゃんだった。

 

「今、このカラカラのお母さんを探してんですけど……

 ガラガラ関連で何か話を聞いたーとかって、覚えはありませんかね」

「あら残念、年下の男の子と遊べると思ったのにポケモン関連なのね。

 んんー……ガラガラ、ねぇ……? あ、そういえば」

「何か記憶に残ってますか?」

「うん、私の友達がねー……?

 なんかロケット団に追われてるっぽいガラガラが居たって前に話してたわ。

 もしかしてそれなんじゃないかな?」

「多分、そうですね……」

「だとしたら、可哀想ねぇ……この子のお母さん、まず生きてない……かな」

「……。」

 

やはり、世界構成としてこういうところはシビアなんだな。

一般人全員が、ガラガラのあの頭の骨が高く売れる事を知っているんだろう。

 

倫理観故に一般人がガラガラを襲う事こそないが……

倫理なんぞを気にしない、建前、中身共に悪の組織ってんなら……

確実に命を刈り取り、金に換えているはずである。

 

「友達も、出来れば助けてあげたかったって言ってたけど……」

「ま、知りもしないポケモン一匹のために

 これからの生活を危なくは出来ない、ってところなんでしょうね」

「……君、よく考えてるわねぇ」

「それほどでもありません」

 

ロケット団なんぞ平成日本、いや昭和日本で考えればヤクザと一緒である。

ニュースでも一部見たことがなかろうか。暴力団員が一般人を無残に殺したというニュースを……。

 

それまで全く、暴力団となんて関わりが無かった人達が

いきなり因縁をつけられて、未来を奪われている……つまり、だ。

 

一歩道を踏み外せば、俺らだってそうなりかねない。

故に自己保身として、『関わらなければ』自分に害が及ぶことも無い。

だからこそその友達も、ガラガラを見て見ぬ振りで通すしかなかったのだろうな。

 

「ともあれ、ありがとうございました」

「ん、いいのよ~大した情報あげれなくてごめんね?

 そのガラガラだってこの子の母親じゃないかもしれないのに……」

「いえ、何も情報が無いより遥かにマシです……では、俺達はこの辺で」

 

そうしてお姉さんから離れながら、俺達は軽く手を振る。

お姉さんも小さく手を振り返してくれた。

 

「さて、残酷な話だが(あのお姉さん)……こいつのお母さんは(おっぱい大きかったな)

 死んでいるとして話を進めたほうがいいな……。」

「……やっぱり、そうなっちゃいますよね」

「うん……悲しいけど、ね。

 ところでタツヤ君、気のせいかもしれないけど……なんかすっごい厭らしい事想像してない?」

「は?」

 

何だ突然。意味がわからない。

 

「まぁ、それはどうでもいいですけど……もしかしたらのもしかしたら、ですが

 カラカラはポケモンタワーにも出てくることがあると聞いてます。

 母親が生き残ってそちらを探している可能性も否定出来ません。まずはポケモンタワーに───」

 

 

 

「───だからよぉ!うぜぇっつってんだよこのクソジジイがッッ!!」

「何故ですか! どうしてポケモンをいじめたり殺したりする必要があるのです!」

「ぁあッ?! 金になるからに決まってんだろぉがよッッ!!」

 

 

 

……ぁん?一体なんの言い争いだ?

 

俺ら三人と手持ちの子達は目を見合わせ全員でうなずき、声がするほうへそっと顔を覗かせた。

 

 

「他にお金を稼ぐ方法なんていくらでもあるでしょう!?」

「俺らだって無期限で金をゆっくり稼ぐなんて都合の良い話も余裕もねぇんだよッ!!

 そうでもしなきゃ俺らだって飯を食っていけねえんだッッ!!」

「そのために他の生きている者を殺すのが貴方達の道理なのですかっ?!」

「所詮弱いやつが悪ぃんだよッッ!!

 金になるってんなら俺らに襲われても負けない実力が無いヤツが悪いんだ!!」

 

 

……なるほどな。

原作じゃどうなって、あの最上階の状態になったのかわからんが……

 

 

 

これがこの世界の。

 

ロケット団とフジ老人の馴れ初めか……!

 

「貴方達には見えないのですか……!

 我が子を探し、未だに成仏出来ないあのガラガラのお母さんの無念が……!」

 

ッ!!

 

やはり……もう手遅れだったか。

 

 

時系列はもう、ゲームの流れに酷似してるので確定したな……

 

 

 

あとはどう動いてやるべきだろうか。

 

 

 





この世界には家畜がいないという設定のため

>そのためにポケモンを殺すのかッ!!
>てめぇだって牛肉やら鶏肉やら食ってんだろうがッッ!

という定番のシーンが使えないジレンマ。

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