納得出来ない方はPCを投げ捨てろとは言わん。
まあ俺のためにコーラでも買ってこいや。10分な。
ててててーん♪
あの音が、した。
つまりは……レベルが上がったと言う事だ。ならばその先に待ち受けるのは──
俺は図鑑に目を降ろす。
[> ヒンバスは レベル0ていどに なった!
って、ちょwwwwwwww
ぜ、ゼロだと?! じぇろだとぉー!? まさかの101構想を通り越してオーバーフロー!?
スペランカーも127機以上になったら1回死んだだけでゲームオーバーになると聞いているが……
そっちと同じ状態になってしまった!?
あれ……? でも、待てよ。
ヒンバスの進化条件はうつくしさの一定範囲超えでのレベルアップ。
例えオーバーフローして0に戻ったとしても
『データ的』と言ったら失礼かもだが『レベルは上がった』という判定なはずだ。
そうでなければ図鑑からもあの音がしないはず───ってことはッ……!?
[> おや……!?
ヒンバスの ようすが ……!?
やっぱりだッ!!
「ヒンバスッ!!」
「─────ッ!!」
「やったぞッ! お前は、やったんだッ!!
お前の夢は、今……叶うんだッ!!」
「~~~~~~~ッ!!」
号泣に打ち震えるヒンバス。
自分の体の内部の事だ。きっとデータが見えずとも……ヒンバスもわかるのだろう。
諦めた夢が、目の前に現れた現実が。
己が、その醜いアヒルの子から……白鳥になっていく体感が。
人の手により最強にされ。
人の手により貶められた夢の愚物が。
常識をかなぐり捨てて
今、輝き出す───!!
[> あ、おんがく いれないほうがいいですかね、さすがに。
わかってんなら黙ってろ
キュピィィィィィィィン
光り輝いた夢の残滓が晴れた先には
何処から見てもひたすらに美しき存在が
進化する前からは想像も付かない、共通性すら存在しない
七色に輝く鱗を宿した、美の化身が
そこに、存在していた。
「ホアァァァアアアァーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!」
[> わたしより あなたが いったほうが あのこも よろこびそうですよ
ああ、そうだろうな。
そうさせて、もらうよ。
「おめでとう」
ミロカロス。
◇
「ァァァァーーーー!! ホアァァァ~~~~~~~~!!!」
「ちょ、痛いって。もうちょっとやさしくしてくれ。
嬉しいのはわかる。俺もうれしいけどさすがにちょっと痛いよ」
「ホアァァァ~~~~~~~♡」
本当に嬉しいのだろう。
俺達はまだ波止場から移動してないが
ミロカロスは進化が終わって心の底から叫んだ瞬間に
ずっと俺から巻き付いて離れてくれない。しかも結構きつめで、痛い。
だがしかし俺は以前シジマさんに気絶するほど抱きしめられた事がある。
そのため、その基準からすれば余裕で耐え切れる!
たまには役に立つな、おっさんッ!
まぁ、今日ぐらいはいいだろう。
ずっと俺の頬に顔をすりすりしているが、その顔はとても笑顔だ。
仲間の嬉しさを許容出来ない程俺の器は小さくないはずだ。うん、そのはずだ。
その割にはよくドレディアさん飯抜きにしてるけど。
しかし───
「ミロカロス。」
「───?」
首をこてん、と傾げる。
やばい可愛い。可愛い。ラブアンドピースってこのためにある言葉だきっと。
「───よかったな!」
「~~~~~~~~~ッッ!!」
すりすりすりすり。
あぁんもうなんだよこの可愛い生き物はー。
おい、前の持ち主よ。今だけはてめぇに感謝したるわ。
こいつは
俺の相棒の一人だ。
◇
「さて、とりあえずちょっと離れてもらえるかい」
「~~~。ホアァ~……」
物凄く残念そうに、俺から体を離すミロカロス。
もういいじゃん、40分近くずっとこうしてたんだぜー。俺もたっぷり堪能したけどさぁ。
「ちょっと気になってた事があってね。それを確かめたいんだわ」
「??」
そう、気になってるってのはあれだ。ミロカロスのステータスだ。
ポケズにゃ間違いなく、表記は0ってかかれてた。
100でもないし1000でもない、じぇろだ。
その場合ステータスはどうなるのだろうか。概念的には0の次は1だが……
そんなわけで……
pipipipipi
とな。
ぽーん
読み込みが終わる。ポケズをミロカロスと一緒に二人で確認してみた。
√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√
No.350★異状進化★
ミロカロス Lv0確定
タイプ1:みず
タイプ2:びじょ
せいかく:へいわしゅぎ (戦闘に参加出来ない。)
とくせい:かしょうりょく
(まさに神の領域の歌声。戦闘における『うたう』なら他の手持ちにまで効果を及ぼす勢い。)
親:タツヤ
こうげき:
ぼうぎょ:
とくこう:
とくぼう:
すばやさ:━
現努力値
うたごえ:+++++++++++++++++++++++++++++++
はっせい:+++++++
わざ1:ソプラノ
わざ2:アルト
わざ3:テノール
わざ4:バス
√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√
……………。
ぱたん。
ポケットに図鑑をしまった。
「えーと」
「?」
「雌だったの?」
「ホァー!」
タイプ2に:びじょってあったんだよ。
OK、理解しました。
「んでさ」
「??」
「何この タイプ:びじょ って。」
「~~~~~~」
「ああっ!? ごめんっ!
そんな困った顔しないでっ! ごめんッ!
お前にわかるわけないよなっ! そうだよなっ!!」
なんだよこの罪悪感、ちくしょう。
「ついでにさ。」
「???」
「なにあの へいわしゅぎ って。戦闘に参加出来ないとか書いてたんだけど。」
「…………;;」
「ごめーーーーーんッ! お願い泣かないでーーーーー!!」
すみませぇーん! マジで泣かないでぇー!! その垂れ目で泣かれると俺も心苦しい!!
あ、何気にこの子アドバンスverだ! DSからは釣り目だったはずだからな!!
「つまりはもう戦いたくない、と。
まあ、お前の通った道は知っているからな……それについては仕方ないと思うことにするよ」
「ホァァァ~~~~ン♡」
「わーっ、だぁっ、まだだっ! まだ巻き付いて来るんじゃない!!」
「ホァ~……」
残念そうに下がるミロカロス。お前ヒンバスの時と性格違いすぎねえ?
ヒンバスのときもっとしっかりした大人だったと思うんだけど。
まさかLv0になって精神年齢も0になったのではあるまいな。
「でもお前……これどうすんの?」
「───。」
「本当に、戦えなくていいのか?」
俺は素直に思ったことを質問してみた。
返ってきた返事はあまりにも悲しい、理解されていない内容だった。
【やはり、戦えなければ私は要らないですか……?
私はもう必要とは、されないのでしょうか……】
こんな返事が返ってくると俺もさすがに悲しくなる。
「ミロカロス、ちょっとここら辺まで頭出して。」
「……?」
「うん、そうそう、そこら辺。ちょっとそのままね」
「ホァ……?」
よーし……気合は十分。
Fight 1、Ready~~~……Go!!!!
「なんばかんがえとっつかぬしやぁあああああああ!!!!」
\ | /
─げんこつ─
/ | \
「ホッ、ホアッ!? ホアァァーーーー!?」
「うるせーーーッ! ネットのコピペみたいな叫び声してんじゃねえッ!!」
「~~~~~~~;;」
「泣いても駄目っ!!」
「ホアァ~♡♡♡♡」
「 可愛くしても駄目っ!!」
ごめん実はちょっと揺らいだ! でも俺頑張った!!
ミロカロスは何故拳骨されたのかよくわからず困り顔のままである。
「ミロカロス、なんで俺が怒ってるかわかるか。
いや、わからないからそんな態度してるんだよな」
「;;」
「理不尽と思うかもしれない、でも俺は叩かなきゃならなかった。
お前、俺の事わかってなさすぎだろそれ」
「?????」
「なぁ、ミロカロス。戦闘能力がなくなっただけでよ。
───俺が見捨てると本気で思ったのか?
思ったんなら俺はお前にどれだけ距離を置かれて接されてたんだろうな。
こっちは積極的に、なんとかお前のトラウマ消そうと頑張ってたのによ」
「ッ!」
ただ傷の舐めあいという関係にしたくないから。
教導役や、切り札という存在にまでなってもらったのにこれはない。
俺でも涙が出ちゃうクラスだ。
「お前自身もわかってたじゃねーかよ、最初にあった時。
誰が好き好んでLv100のヒンバスなんか使うんだってーの。
俺だって正直後半の戦力としちゃ期待してなかったさ」
「───。」
「いいかミロカロス。今だけ考える時間をくれてやる。
───なんで、それでも俺がお前をパーティーに入れ続けたか。
その意味を考えて、知れ。」
その言葉にミロカロスはしばらく停止し
本当の、心の底からと思われる涙を瞳から零し始めた。
「───ようやくわかったか、バカが」
「~~~~~~~~~ーーーーーーッッ!!!」
勢い良く俺に巻きついてくるミロカロス。
さすがにこれは許容してやろう。説教は終わりってな。
また頬にすりすりしてきたので俺も頭を撫でてやった。
若干強く叩きすぎたのか額にたんこぶが出来てた。
◇
あの後しばらくいちゃついた(?)俺らは、お互いに落ち着きを取り戻した後に
ポケモンセンター、略してポに戻る事にした。
一緒に
【本当に感謝しています。ありがとう、ご主人様】と言いながら(言いながらでいいのか?)
頬にチュッとやられたのは、ちょっと他の人に殺されても仕方が無いかなと思った。
俺はノーマルだからな。
ノーマルだ。かくとうに弱いからな。
でもこれを気にアブノーマルになっても良い気もした。
だがそこは鉄の意志で我慢。
帰り道もミロカロスに【乗れ、乗りなさい。乗らないと駄目】と駄目押しを喰らい
背中に乗せられて移動する事となってしまった。
楽だったんだけど、この辺りにミロカロスなんてまず見ないので
ディグダとは違う意味で非常に注目されて、なんか恥ずかしかった。
本当におめでとう。
ミロカロス。