うちのポケモンがなんかおかしいんだが   作:右肘に違和感

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30話 逆襲1

 

全員が全員相棒の入ったモンスターボールを回収され、ただ悲痛に沈黙の顔をしている。

 

ま……その中で唯一その手の表情を見せてない人が2人程居るがね?

 

サカキと俺だ。

 

まあ、サカキは当たり前だろうな……。

自作自演みたいなもんだ。こういうのマッチポンプって言うんだっけ。

 

 

シジマさんにも先程会った時「もしかしたらこういう事になる」とは伝えてはいたものの

真剣に答えてくれては居たが……現実味が全然無いからなのか、半分は笑い話と取られたようだ。

無警戒のまま入り込まれてあっさりボールを回収されている。

 

 

「これ、なんなん……うちら、どうなってしまうん……」

「うぅ……アカネちゃん、私、怖い……」

「んーまあ、もーちっと狭い部屋にみんな集められて人質、でしょうね」

『……え?』

 

ここで初めてアカネさんとミカンさんは、俺が慌てていない事に気付いたのか俺の方に視線を移す。

 

「タ、タツヤん……(こわ)ないんか……? 何されるかわかったもんやないんやで……?」

「気にするだけ無駄ですよ、そんな起こりえない未来なんて」

「お、起こりえないって……?」

 

ミカンさんは不思議そうに声に出す。

 

「どういう事やの、タツヤん。外の人たちが気付いてくれとるんか?」

「いやー? 十中八九気付いてないでしょう。騒動始まってまだ5分しか経ってないっすよ」

「じゃ、じゃあ、なんでっ……?! なんでそこまで言い切れるんやっ……!?」

 

周りにはまだロケット団がいるので、アカネさんは小声で俺に答えをせかす。

 

「そんなもん決まってるじゃないですか」

「え……?」

「どういう事……?」

 

 

 

 

 

 

「─────俺が、覆すんですよ」

 

 

 

 

 

 

 

そうして、人質全員を見渡しの良い環境にするため

パーティーホールより少し狭い部屋に全員移動させられる。

 

その間にこちらは状況を整理しておこう。

 

まず、船員さんは船長含め、全員拘束されているのは間違いない。

これだけ大規模なパーティーの従業員と船員なのだから……

確実にパーティーが始まる前に全てロケット団に摩り替わっているはず。

殺されてはいないはずだろう、この世界その手の倫理にすっげーゆるいし。

 

 

 

そして、ジムリーダー達は基本ポケモンと一緒に戦わないと役に立たない(・・・・・・)

今、そのポケモンが居ない彼らに協力を仰ぐだけ無駄な労力であると結論付けた。

下手にポケモンと同じ部屋において、何かあったら即座に謀反が始まるから、ね?

 

 

 

俺はこの状況になるのをかなり前から予測していたため

『基本』から外れた存在、つまり単体で戦えるシジマさんに声を掛けて説明したのだ。

ただの一度だけ、俺の言った通りに動いてくれればOKだ。

 

しかし格闘家という『正々堂々』とした風潮がある世界の住人都合で

奇襲戦では下手したら殺されてしまうだろう。

シジマさんは、予定している一度だけ協力してくれればいい。

 

 

さて、ロケット団の見張り含めて全員部屋に入ったか。

俺の予測が正しければ、ここで出てくる見張り用ポケモンはビリリダマか───

 

「とりあえずお前らはこれから人質になってもらう。下手な事したらこいつでドカンだからなっ!!」

 

パシュゥゥゥン

 

「ガゴガーグゴォォォォン!!」

 

───その進化系のマルマイン、だ。

 

んー、もうちょっと情報仕入れておくか……基本ロケット団って間抜けばっかだし釣られるべ。

話しかける前にシジマさんに目を合わせ「今はまだその機会じゃない」と伝えるために首を振っておく。

 

「あ……あのっ、人質って、どういう事なんですかっ……!?」

「あぁ~?」

 

凄く面倒そうに対応しやがるロケット団。

大体の予測は付いているのだが……予測ではない、ちゃんとした情報も聞きたい。

 

「簡単な話よ、ポケモンリーグにてめーらと身代金の交換……ってところだ」

「そ、そんな……」

 

一応しおらしく対応しておく。油断大敵は後々からだ。

 

「ったく、本当にバカばっかだねぇ~。

 こんなところに一同に集まるとか何か起こったら大問題なのわかるだろうによww」

『ぅ、ぐっ……!!』

 

ジムリーダーと、研究者達の大部分がこの低俗な発言に反応してしまう。

いやいや、貴方達は別に何も悪くないんすよ? 悪いのはこのカス共でしょう。

 

さて……この黒い物体に付き合うのも飽きた。俺はのんびりと離れ、シジマさんの横にまで行く。

 

「坊主……お前の言った通りになっちまったな……

 だけどこの状況になるまで待てっつーのはどういう事だぁ……?」

 

小声で話しかけてくるシジマさん。

 

「そりゃー今ここにいるみんなは人質でもありますが

 俺らが動いて守らなきゃならない人達でもありますんで。

 完全に集まってもらって危機感抱いてくれた方が俺としては楽ですから」

「……どこまで、予想してた?」

「ほぼ全部です」

 

俺の言葉に驚愕の色を浮かべるシジマさん。黒いヤツはそのシジマさんにも気付かず

他のジムリーダーが悔しがっているのを見て、優越感に浸っている。

 

 

───さて、と。始めますか。

 

 

「シジマさん……今から始めます。予定通りお願いしますね。

 これが成功しないと───全て、詰みます」

「……ッ! わかった、任せておけっ……!」

 

そうして俺はシジマさんのところも離れ、ロケット団の前を普通に通り過ぎる。

「なんだこいつ?」程度には思われるだろうが……なんせ俺の体は10歳ボディだ。

これで警戒しろという方がおかしい。

 

 

状況は整った。

 

 

俺   ←黒   シ   の位置づけだ。

 

 

 

─────んじゃ、やりますかねっ!!

 

まずは、俺はおもむろに。

街で適当に拾った小石をポケットから出し。

ロケット団も俺の動きに疑問を感じ、その動きを確認する。

 

そして俺は、石を投げた。

 

 

 

もちろんロケット団に投げるなんてバカな真似はしない。

適当な位置にころんころんと転がって止まる。

 

ロケット団もジムリーダー達や研究者さん達も、俺の動きに謎を感じた。

───頼みましたよ、シジマさんっ!!

 

 

そして俺は『黒いヤツもばっちり俺の動きを見ている』状況で、黒いヤツへと殴りかかった。

 

 

「……なッ!? てめぇ、ナメんなぁクソガ───」

 

 

 

 

 

「───ッ!! ゼァァァァァアアアア!!!」

 

 

 

 

 

こちらに極端に視線が集まった瞬間、後ろからシジマさんが飛び出すッッ!!!

 

 

ドッグォッ!!

 

 

「ぃえぎゅぁッ……?!」

 

 

そして黒いヤツは崩れ落ちた。

 

場に残された敵勢力はマルマインのみ。こちらは別に放置でいい。

 

ん、何故かって? 簡単な話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先にトレーナーの口を封じてしまえば……心配なり驚愕なりで、咄嗟に動けないのがポケモンなんだよ。

 

 

「んっふっふっふ……」

「フフフ、ハハハハ!!!」

 

そして俺とシジマさんは2人で歩み寄り

 

「予定通りです。ありがとうございます」

「なんのっ! 坊主のアシストも本気で凄かったぞっ!」

 

俺の身長が若干足りないが、俺は手を挙げシジマさんはそれにあわせ

片手ハイタッチの形で手をパシーンと鳴らし合った。

 

 

 

 

さてここからは解説となる。あくまでも俺の持論が予定通りだっただけだが。

 

 

 

まず、ロケット団は見張りとして完全に警戒してはいた。しかしその警戒対象は『全体』でしかない。

個々の戦力を確認するとまではしていなかったのだ。

さすがにシジマさん辺りの肉体が凄い人は注視していただろうが……

逆に言ってしまえば警戒するに値しない俺やツクシ君(だよね?あれ)は

完全に警戒の外に置かれたわけである。

 

故に、その予想外(●●●)を利用し、俺がロケット団の注意をひきつけることによって

全体の感覚の殆どを俺に向けるように仕向けたのが、さっきの謎の小石投擲と殴りかかった行動である。

 

そしてここで最大の障壁となると思われるマルマインであるが

『今回の場合に限り』戦力外なのである。理由は2つほどある。

 

・俺自身が子供であり、黒いヤツが『自分だけで対処出来るレベルと判断』し

 指示を送らない事が目に見えている。

 

・ここでマルマインに指示を送り、それこそだいばくはつなんて指示した日には

 確かに集団という意味では日本人的な意味でも正しいが、自分も一緒に吹っ飛ばされるわけであり

 自殺志願者でもない限りは、我が身可愛さはあるはずだ。

 

という状況に成るのを予測した。

 

あとはここまでの状況を作り出してしまえば

口裏を合わせていた通り、シジマさんが飛び出してぶっ飛ばすだけだ。

 

 

これが今回の俺の予測であり、策もしっかりと成功を果たした。

 

 

───ついでに『武器も1個仕入れる事が出来た』。

 

 

 

 

そこで一緒に驚愕で見ているサカキさんよ。

どうだ? 予想外の事態ってなぁ───『楽しい』だろ?


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