うちのポケモンがなんかおかしいんだが   作:右肘に違和感

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28話 えー。

 

 

さて、とりあえずレッドさんからは逃げ仰せたので

そこら辺の船員さんをとッ捕まえ、演奏者の待機室を聞き出した。

 

2階の船長室の近くだそうだ。

……船長室、か。やっぱ吐いてんだろうな、あの人。まあ俺の目の前で吐かなかった事は、僥倖に値する。

準備したモノを貰いに行ったついでに、お釣りで買っておいた酔い覚まし1ケースでもあとで届けておこう。

 

っと、あったあった。演奏者控え室って表札が壁に引っかかって───

 

「あーっ!! お前タツヤじゃねえかっ!!」

 

 

…………ッチ、失念していた。今度は本当にグリーンかよ。

船長室の近くに行けば、原作でも確かにアイツが現れてたよな。

 

「どうもこんにちわ。それじゃ失礼します」

「ちょ、ちょ、おまっ、ちょっと待てよッ!

 何でお前、昔っから俺に対してだけすっげー冷てぇんだよっ!!」

「んー具体的にヒントを申し上げるのであればですが……

 レッドさんと話している時に、自分の正面に鏡を置く事をお勧めします」

「……はぁ??」

「『他人=鏡』の振り見て我が身直せって事だよ、言わせんな恥ずかしい///」

「意味わかんねーよ……」

 

まあ本人にゃわからんか。てかここまで言われてわからないあなたって日本人?

 

まあそういうわけで……。

目の前に居るこの人は、原作にて主人公のライバルであるグリーンだ。

ちなみにこのグリーンはアニメのようなクールな性格ではない。

初代原作にとても似ている、ライバルのレッドさんを完全に見下しながら接しているタイプの性格である。

 

そう、いつも見下しながら話しているようにしか見えないため、見ててウザい。

別に俺に対してウザいわけではないのだが、俺はレッドさんが嫌いではない。

そしてそれに対する対応が酷すぎるこの人を俺が好きになれるわけも無い。

そんなんだから将来ポケモンリーグ制覇してから10分で破られるなんて

伝説的なギネス記録の短さになっちまうんだよwwww

 

「ったく……まー別にいいけどよー」

 

いいんだっ?!

 

「で、お前はなんでこの船に乗ってんだー?」

「弾き語りしてたら船長さんに誘われました。パーティーで是非演奏してくれって」

「あー……お前昔っから楽器の弾き方すげかったもんなー」

 

とりあえずの軽い雑談が始まる。俺は一応、この人が好きではないが……完全に嫌いでもない。

でもまともな対応してると大体うっさくなるので、基本突き放して接している。

 

「そういうグリーンさんは?」

「あー俺はこの船の船長がすっげー技持ってるって聴いたからよー。

 逢いに行ってみたらこれがただの船酔いジジイ! 学ぶもんもねーからとっとと降りようと思ってなー」

「あーそういえばそんなイベントあったっけ」

「イベント?」

「ええ、イベントです」

 

俺は堂々と原作イベントを『イベント』と表現する。

この人、どうせまだまだガキくせぇし少しぐらいぶっちゃけても何にも気付かないままスルーするべ、多分。

 

「ま、そんなんもう終わった事だからどーでもいいけどさ」

 

ほらね。所詮10分のチャンピオンである。

 

「とりあえず、だ。ここであったが100年目! タツヤ、バトルするぞっ!!」

「いやですよバカ。何言ってんの? ねえ何言ってんの?www」

「え、いや……トレーナーは目ぇ合わせたらバトルするのが常識だろ!?」

「そんな常識フエン火山に行って常識ごと灰になってきてください」

「お前ひどすぎるだろそれ!!」

 

知らんわ。

 

「俺は覚えてんだからなー!! 最後にマサラでバトルした時にお前がやった事!!」

「……へ? 最後……グリーンさんとの最後……あぁ、あれか」

 

あーそういえば途中で相手すんの面倒になって……そっと後ろから近づいて

三年殺しでポケモンじゃなくグリーンさんK.Oしたんだっけ。そんな事良く覚えてんな、あんた。

 

「別にそんなのどうでもいいじゃないっすか。子供のお遊びですよ、お遊び。

 俺その時8歳っすよ? グリーンさんが痔になったわけでもなし、ケツが臭かったわけでもなし。

 特に問題ないじゃないですか、むしろ感謝されるべき?」

「どう考えても問題ありすぎだー!!」

 

だから知らんっての、あぁ面倒になってきたもうどうしようwwww

 

「とりあえずバトルだー! 行けー、カメックスー!!」

 

パシュゥゥゥゥン!!

 

「ガメェーーー!!」

 

うそっ?! お前ここで既にカメックスなの!?

なんでそれでディグダのあなで負けてトルネコ化してたんだよ!!

 

「はー、凄いですねー。はいはい、カメックスカメックス」

「おまっ……また俺の事バカにしてー!!」

「ん、あれ? レッドさん、どうもっす」

「えっ?!」

 

さっきと同じ手を使い、とりあえず集中を逸らす。

しかしここからは一味違う。お前は俺に勝負を仕掛けた。

 

 

───その報い、思い知るが良いっ!!

 

 

「んだよ、別にレッドなんか───」

「ッしゃんなろぉおおおおおおおおおお!!」

 

俺は気合を一声入れて、全力で足を振りかぶった。

 

ずっドむ。

 

「よ゜るんっ?!」

 

一瞬で白目を向いて、『股間』を押さえながら崩れ落ちるグリーンさん。

 

「ガッ、ガメッ!?」

 

突然の事態にグリーンさんのカメックスがグリーンさんに駆け寄る。

危害を加えた俺に関しては完全放置である。

もしかしてこのカメさん、あの痛みがわからないってことは♀か?

 

 

「んじゃ、そーいうことでー。

 俺今から会場に行って視察しなきゃならないんで、またマサラに里帰りした時にでも逢いましょ~♪」

「る゜、おづッ……」

 

え、なになに……バトルで決着つけろってか。

 

 

こまけぇこたぁいいんだよっ!!(AA略

 

 

こうして当面の危機は去った。

なんかボールに戻したドレディアさんのボールから尊敬の意思が若干汲み取れるのは気のせいだと思う。

 

 

 

 

そんなこんなで会場入り~っと。なんかやたらゲーム本筋のイベントに巻き込まれた。

ったく……無駄な時間である。そんなもん勝手にあんたらでやっててくれ。

 

今は俺の手持ちの3匹も普通に外に出しており、一緒に会場入りしていた。

ディグダの注目度がヤバイ。さすが突然変異だな。

 

俺がその上で胡坐掻いてるのは多分問題ではないはず。

あくまでもディグダだからだろう。あれ、そうだよね?

目立ちすぎるのも嫌なのでディグダからとりあえず降りておく。

そしてじっくりと会場の設備を見ていた所……

 

 

「……あれー? 君おととい街で楽器弾いてた子ちゃうん?」

「えっ」

 

俺は声に釣られて左を見てみた。誰もいない。

なんだ、気のせいだったか。

 

「なんでそっちやねんな。こっちやこっち。」

「えっ」

 

俺は声に釣られて後ろを見てみた。誰もいない。

なんだ、幻聴だったか。

 

 

無理やり頭を捕まれて右を向かされた。

 

「うん、やっぱおとといの子やー。まあ君じゃなくてもあのディグダ見れば1発でわかるもんやけど」

「あ、どうも……えーと、一万円の人」

 

俺が彼女の事を知っているのはあくまでもゲームでの事。

ここで俺がアカネさんの名前を答えるのはちょっとまずいだろう。

俺的に、あくまで一般的に考えてだぞ? 一番印象が深かった事態を込め、この名前で呼んでみた。

 

「い、一万円の人て……ゆきっちゃん(一万円の中の人)ちゃうねんでw」

「いやー……俺、貴方の名前を伺った事があるわけでもないですし」

「あ、そういえばそーやなぁ。

 うちはジョウトのほうでなー? コガネシティでジムリーダーしてるモンやねん」

「へぇ~そうですかぁ。よろしくです」

 

なんだっけ、コガネジムでのジムリーダーの通称。

とりあえずおっぱいに目線を移してみる。トラウマのミルタンクが思い出された。

ついでに渾名も思い出した。ダイナマイトプリティギャルだ。まあ、おっぱいに毅然は無いがな。

 

おっぱいについて、大きさでうんだのかんだの言ってんのは二流である。

ちっさいかおっきいかどっちかに特化してねえと駄目だろ!!

故にもっさん、テメーは駄目だっ。

 

「アカネちゃん……この子、お知り合い?」

 

おっと、アカネさんの後ろから同じジョウト地方のジムリーダー、ミカンさんが突撃してきました。

俺もうとっとと別の箇所調べたいんですけど。女の色香に釣られる時期はとっくの間に過ぎ去っとるけんね。

 

「ああ、ミカンちゃん。この子なー、ちょい前に街に暇つぶしで出かけてたら

 すっごい音楽演奏してたんよ。うちメッチャ感動してん」

「それで、その時におひねりで一万円くれた人ですね。

 あと2人、一万円をくれた人がいるのでその人達もアカネって名前なんですよね」

「んなわけあるかーいっ!」

 

ズビー(突っ込み

 

さすがの関西人である。

こっちの世界じゃなんか方言の単語違った気もするけど……どうでもいいですよね、すいません。

 

「で、君はなんでこのパーティーにおるん? こっちの地方のジムリーダーなんかー?」

「いや、簡単に三行で述べると

 

・弾き語りしてたら船長さんに「ここで演奏してくれ」と頼まれた。

 

 って感じです」

「ほぉほぉ、まああの質なら当然やな、うちもそれよくわかるー」

「あ、あの……アカネちゃん……全然三行じゃない点に突っ込もうよ……」

 

ぬぅ、鋭いな、コタツミカンさん。

 

「まあ、そーいうわけでこの子は……。あれ?君、名前は?

 うちだけ名乗ってんのに君の聴いてへんやん」

「えーと、おおおにぐまがわらのまるごんざぶろうざえもんです。よろしくです」

「えぇっ!? 何そのすっごい長い名前!?」

「お、おおおにぐま、ぐま・・・ざぶとんざえもんさん?」

 

だーれがドレディアさんの尻に敷かれる間男じゃ。

大鬼熊瓦之丸・権三郎左衛門だ。リピートアフターミー。

 

「失礼しました。覚えにくそうですね。

 大鬼熊瓦之丸・権三郎左衛門です。略してタツヤと呼んでください」

「どこにその3文字が混ざってんねんな!? 明らかにそっちが本名やん?!」

「むぅ、ばれただとっ……!? 貴様ッ、見えているなッ?!」

「もうわけがわかんないよーぅ!!」

 

失礼、もう作品の構成上どっかでボケないと尺が短くてどうしようもないんです。

 

「というわけで船長に頼まれて演奏しにきたために、こちらに居させてもらってます」

「あ、はい、よろしくです!」

「うん、よろしゅーな! 冗談抜きで期待してんで!!」

「あーごめんなさい、それ無理です」

『えっ?!』

 

これは流石に事情を説明せねばなるまい。

あ、あくまでも多分出来ないって理由じゃなくてな。こっちの理由さ。

 

「アカネさんは知ってるはずですけど、ピンクで浮いてた子いたでしょ?

 あの子、もう帰っちゃったんです。なので一番難しい音を出せない状態です」

「あーなるほど、確かにあの子が出してた音こそ一番斬新やったもんなー」

「ピアノのメロディーラインのほうも忘れないでくださいよ?(ニヤ」

「うんうん、大丈夫。あれもホンマびっくりしたしな!

 でも確かにあの最後の曲のは、あの子がおらんとな……」

「そんなに凄い曲だったの?」

「うちはあれで人生観がひっくり返った」

「うわぁ、聴きたかったぁ~……」

 

この世界、IIDXの曲はかなりウケが良いらしい。

まあ、殆どの曲はミュウがおらんと出来んがな、きっと。

せいぜい出来るの、三味線持って1st samurai位じゃね?

 

「ま、それでも(弾く機会があれば)他にもレパートリーは沢山あります。

 若輩で申し訳ないですが、楽しみにしててくださいね」

「うん、楽しみにさせてもらいますね!」

「なんでこんな年下に敬語なんですかww」

「え、あぅ、そのぅ……」

 

はがね使いなのに。ん、待てよ……?

はがね使い=硬い=態度が硬い=おどおどしい……!?

 

こ   れ   だ   !!

 

俺は今、真理を見た!!

 

 

 

まあそんなもんはトイレに置いといて。

 

「じゃあ俺はもうちょっと会場を見て───」

「オーゥ! リトルボーイ!? ヘィヘィー! 元気ですカー!?」

「ぬぉう!?」

 

いきなり首にがしっと腕をかけられ、びっくりする俺。

もうこんな現れ方をする人は一人しかいない。そらーもう一人しかいない。

 

 

 

 

 

露店のお兄さんだっ!!!!!!

 

 

「それダレネー?」

 

あ、全然違うし。アメリケンやった。

 

「あ、マチっさん! こんにちわー!!」

「こんにちわ、マチスさん」

 

いきなり現れたマチスさんに気楽に挨拶する2人。

まあ、そーか。2人ともジムリーダーだしね。威厳の欠片もねえけど。

それに加えてマチスさんも、俺と会う時いつも仕事してる感じがしないから忘れがちだけど

一応は、ジムリーダーだからな。ここにいてもおかしくは無い。

 

「で、リトルボーイ、一体どうしたネー?

 なんでこのPARTYに居るネー? スタディティーチャーで呼ばれたネ?」

「あーいや、違います。楽団として呼ばれた感じっす」

「ホワィ? オーケストラぁ? キャンユープレイミュージック?」

「イエス、ジェネラル! 一応金に困ったら音楽で食いつないでる身なんでねー」

 

そういやマチスさんには音楽関連の事一切見せた事なかったもんなぁ。

出会って間もないから仕方ないけど。実際もっさんも知りはしたが見てないわけだし。

 

「へぇ~マチッさん、この子の音楽の腕知らんねやなー。マジ、すっごいで? 惚れてまうで?」

「リアリィ? それはベリー楽しみネー!!」

「あれ? アカネさん俺に惚れてくれたんですか? そのおっぱいは非常に好みなので結婚してください」

「胸だけしか見てないやつと結婚なんか出来るかーい!!」

 

ズビー(突っ込み

 

貴様ッ、見えているなッ……!!

 

「あはは、すっかり馴染んじゃったんだね。もう昔からの知り合いにしか見えないよー」

「あれ、そーか?相性ええんかね?」

「そうかもしれませんねぇ、もうこの際だから俺ら幼馴染ってことにしましょうか」

「それもらいッ!」

「もらうのっ!?」

「アハーハー! 本当にリトルボーイが居ると、周りも皆グッドフェイスネー!!」

 

そらぁ恐縮です。ん、あれ……そういえば。

 

「そういやマチスさん、俺のドレディアさん見ませんでした?

 かなりの時間、目ぇ離してたから彼女が何してるかわかんねえや」

「ンー? フラワーレディ? あっちでディグダ(?)とペアで

 静かだけど豪快に沢山イーティングしてたーヨ?」

 

まーた食ってんのか。

ドレディアさんらしいといえば非常にドレディアさんらしいが。

 

「やれやれ、ちょっと拾ってきますかね。

 一応お二人にもドレディアさん紹介しておきたいし」

「そのドレディアって子さぁ。もしかしてあそこで光ってる子? 後ろにあの細マッチョおるし」

「えっ」

 

そう言われ、指差された方向を見てみる。光ってるってなんだ?

 

 

 

あれ、マジで光ってる。なして?

 

 

 

そしてリュックから音が出ていることに気付く。ポケモン図鑑の音だな。

 

「ちょっとすみませんね」

「うんー」

「はい」

 

マチスさんは返事を返さず、肩越しに俺とポケズ(ポケモン図鑑)を見やる。

 

なんだこりゃ、緊急アラート? カチっと更新してみたところ、驚きの情報が目に入る。

 

 

 

 

 

 

 

[> おや……!?

   ドレディアの ようすが ……!?

 

 

えっ、おいちょっと待て。

 

 

『何でっ!?』

 

俺とマチスさんが一緒に驚く。マチスさんもこれが進化の前兆なのを知っているのだろう。

 

ポケモン図鑑からあの音楽が流れてくる。

 

 

でん♪でん♪

でん♪でん♪

でん♪でん♪

でん♪でーっ♪

 

 

え、ドレディアさんマジで進化すんの!?

君最終形態ちゃうのそれ?! 俺も聞いた事ないよ!?

 

 

でん♪でん♪

でん♪でん♪

でん♪でん♪

でん♪でーっ♪

 

 

 

 

そして、俺等の驚愕すら置き去りにして音楽が終わる───!!

 

 

 

 


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