うちのポケモンがなんかおかしいんだが   作:右肘に違和感

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趣味全開です


26話 チート

 

 

前回述べていた通り、金はもうどん底スレスレである。

現在382円。まあ昨日の30円弱しかない状態よりはマシだろう。

そんなわけでお金を稼がなければ行けません。

 

ああ、それとついでに……おしおきしてた2人はさすがに帰ってきた後で、出しておいた。

もっさん掘り出すのはサンドも手伝ってくれたし、ドレディアさんもさすがに反省したようだ。

 

……でもその反省の意味合いが

 

【アイス2個で買収→飯抜きになる可能性が高い】

 

という方向性なのはどういうことだ。

マスターに危害を加えてはいけないって方向性で反省して欲しいんですけど?

 

おい。目ぇ逸らすなそこ。

こっち見ろ。おい。

 

ディグダがそっと、肩をぽんぽんと叩いてくれる。

この優しさが非常に、うん、非常にありがたくて、ね……

 

 

涙が出ちゃう。だって、男の子だもん。体だけ。ショタ好きは帰れ。

 

「てーわけで、お金稼ぎをしなければこれ以上は何も出来ませんー」

「ディァー」

「─────。」

「グ~」

「ミューィ」

 

ポケモンセンター待合室の椅子で会議中。

 

 

「まあ、普通にまた路上で弾き語りでもしてみようと思う。

 もしかしたらバトルしてたほうが割りがいいかもしれないんだが

 それでもま、やらんうちに結果を決めるのはよくない」

「ドレディー?」

「いや、今回はドレディアさんも弾き語りに付き合ってもらうよ」

「ディァ~。」

「今日は皆でお金稼ぎ、だな。頑張って美味い飯を食おうー」

『ミュディグーーー!!』

 

 

……【ダ】って鳴くやつ居れば ディグダ って完成するのにな。あいつ全く鳴かないから。

 

「そんなわけで午前中は主にディグダのドラムのリズム合わせと……

 今回はちょっとミュウにも力貸して欲しいんだわ」

「ミュ~?」

 

【わたしが?】と首を捻る幻の御方。

ミュウの特徴から考えて、前々から若干考えては居たのだがね。

 

「他にも、ドレディアさんはカスタネットやってもらうわ。

 ヒンバスはちょっとその体じゃ楽器も無理だろうからボイスパーカッションにチャレンジしてもらおう」

「ディ~?」

「グ~~?」

「ダ~~?」

 

 

ごめん、最後のダは俺だ。

 

それぞれに役割を説明し、気楽に音合わせを開始。その休憩時間に俺は残ったお金で袋菓子を買ってきて

合間に全員で食べておいた。デカねるねるねるねマジお勧め。

 

 

音あわせの結果なのだが、実はうまくいくと思っていなかった。

楽譜やらサンプル音源も無いに等しいからね……10年前という、俺の掠れた記憶だけが頼りだった。

 

の、だが。

 

こいつらの音感と才能ヤバい。どのぐらいやばいかってモンゴリアンウォーイ!ってぐらい。

俺が口で説明したら【こんな感じか?】といわんばかりに

俺の記憶そのままのリズムと音質を披露しやがる。

ちくしょう、俺がガキの頃に血の滲むような努力をしたのはなんだったんだ。

前世で楽器なんぞ全くやらなかったから独学で必死に玩具使って慣れたのに。

しかも周りの目を気にしまくってひっそりと頑張ってたのに。

 

……まあ、今回はこれに関してはプラスでしかない。

マイナスなんて俺の嫉妬だけだ。遠くでしっとマスクが呼んでいる気がする。

 

そんなわけで、今現在はクチバの大道芸広場に居る。

どうでもいいけどもしかしてクチバって千葉が元ネタ?

 

 

「ほォ~……こっちもトキワに負けず劣らずだなぁ。

 大道芸自体はこっちの方が盛り上がってんのかな」

 

ゲームやってた時にセキチクあたりで見かけた気がするジャグラーなる職業の人達も

場を盛り上げるためにスタイリッシュなアクションでスパポポポと超人芸を繰り広げております。

 

うわ、しかも出してる玉を額に全部乗せてトーテムポール化しやがった。

うちらがいつもやってる珍獣大百科とは訳が違う。

何故かスーパーマリオワールドのうねうねするサボテンを思い出した。

 

「ミュ~♪ ミュ~~~♪」

「いや、うんあれはすげえわ。

 俺なんかがあの程度で銭を貰い受けていいのかねぇ……?」

「ディァッ!! ディァッ!!」

 

【おめぇのも十分すげえって!!】と慰めてくれるドレディアさん。

いやまあ慰めはありがたいけど所詮パクりだからなぁ。

前世のアーティストさん達がこっちに転生してきちゃったら、俺間違いなく著作権侵害で訴えられるよ。

サトウの切り餅みたいに8億取られるよ。

 

 

「……ま、もしも全然人が集まらなかったら、マチスさんのとこで雑用のバイトでもしようか~」

「ディァ~」

「ッb」

「グ~!」

 

 

 

さて、適当に全員で間合いを取りやすい場所を探して……

 

おっ。お(あつら)え向きにいい感じの場所が開いてるな。ここゲッチュー。んん~♪サルゲッチュ~♪

 

 

でーは、っと。それぞれの機材を設置して行こう。

俺は楽器3種、ミニギター、ミニピアノ、オカリナ。

ディグダはミニドラム。(登場久々だな、このドラム)

ドレディアさんはダンス兼カスタネット。

ヒンバスはお立ち台程度のダンボール。しめってやわらかくならんよなこれ?

 

 

そしてミュウは……オーディオとかについているスピーカー丸々1個持ってきてもらった。

 

 

何をやらせるんだ、とな?

さっきも考えてた事だが、前々からあることを考えていたのだ。

 

ミュウはエスパータイプ→ポルターガイスト現象とかイケんじゃね?

                 +

技が全部使える→曲解して考えれば電気信号自由自在じゃね?

                 ↓

オーディオの配線から電気信号流せば現実の機械音源再現出来るんじゃね?

 

という理論もクソもない暴論である。

 

で、結果。出来てしまったから困る。汚いなさすが幻きたない。

 

 

ちなみに借りた場所はポケモンセンターの俺の部屋からです。

まあ小型だしいいべ。直径縦10cm、横4,5cm程度のものだ。

 

 

そして、この手の準備もやはりそこそこ時間は掛けねばならず、

その間にどうしても体の都合上、悪目立ちしてしまい……

 

「こんな子供が何を……」「彼の年齢ならポケモンバトルではないか」

 

という興味本位の視線に晒される。ちくしょー今に見てろぉ!

ちっくしょ、やっぱミニドラムはコンパクトにされている分、細かすぎてどうしても時間が……

ディグダ、もう人の視線が嫌だから体で俺を視線から庇ってくれ。

ああ、でもディグダが前面に出てると俺以上に目立つ事になる。誰かなんとかしる。

 

 

とかなんとか頭の中で漫才を繰り広げている間に準備は整った。

客付きも興味本位の人たちがそこそこいる、十分である。

 

「皆、準備は良いかッ!!」

 

「ドレディアーッ!!」

「ッ─────!!」

「グッグ~ッ!!」

「ミュミューィ!!」

 

 

今日の出だしと前半戦は、スピッ●さんの『ロビ●ソン』から『●ェリー』で

レミオロ●ンさんの『conayuki』を提出させて頂こう。

 

 

俺のパクり魂が熱く燃えているぅぅぅう!!

そのまま後ろめたさで燃え尽きてしまいそうだぁあああああ!!

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

※歌詞を書くと規約に触れるので描写は自主規制させて頂きます。

 お暇な方は八頭身ディグダとのデートでも想像してお楽しみください。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

───ジャンジャン、ジャンジャン、ジャンジャンジャジャージャ……

───ジャラ~ン~。

 

 

粉雪の最後のギター部分を終えると、周りからやかましいぐらいの拍手が飛んでくる。

いやんもうやめて。本当に後ろめたさで燃え尽きちゃう。

 

 

 

だーもうまったく、また満員御礼だよ。ありがてぇんだけどさぁ、本当に。

でもあれだよ、ジャグラーや大道芸の方々よ! あんたらは自分の技を磨け!! こっちくんな!!

アーティストの皆さんすみません。貴方達の音楽はこちらでも大人気です。

ここには書いていない曲も沢山弾き語らせて頂きました。

 

そして俺のポケモン+ゲストのミュウ達も大人気である。

一旦次の心構えのため少しのインターバルを取っているため

みんなには自由にしてくれと伝えた結果、こうなった。

 

 

・ドレディア→ザル持ってお捻り回収。姿形も相まってその状態ですら大人気。

 

・ディグダ→子供には余り人気が無いが、理解のある大人には細い筋肉が絶大な人気。

 

・ヒンバス→元々美しさがMAX気味なので美しく映るらしく、こちらもドレディアさんに並ぶ人気。

 

・ミュウ→浮ける上にあのような愛らしい姿なので子供に大人気。

     エスパー系の技でいろいろな現象を起こして楽しませている。

 

・俺→恥ずかしさのあまり心構えに全力を注ぐしかなくボッチ。

 

 

まて これは こうめいの わな だ

 

 

 

ふー……大丈夫。ボッチなんて寂しくない。今はみんないるもん。ぐすん

 

 

「よっし……みんな、そろそろ最後行くぞ」

「ディァディァー!!」

「ッb」

「ググ~!!」

「ミュ~ィ♪」

 

全員がこっちに来る。ドレディアさんだけは元々モノを持っていたために

それをこっちに持って帰ってくるわけだが

 

…………。

 

「おいちょっと待て、なんだこれは」

「ディァ?」

 

【どうした?】という感じでこちらを見てくるドレディアさん。

俺は上に掲げていたザルを見る。ギャラリーも、なんだなんだどうしたんだ、とザワザワしだした。

 

俺の目が腐ってなければ、だが……

 

 

 

 

 

 

なんかザルの小銭の山に

1万円が3枚ほど突っ込まれているみたいなのですが?

 

 

 

「えええええええええ!! おいちょっと待て!!

 誰だ一万円突っ込んだの!? しかもこれ複数人かっ?!」

「あぁ、それはワシだな」

「あ、うちもうちもー」

「俺らは2人で5,000円づつってことで1万入れたわ!」

 

そして俺が叫んでいると手を上げるギャラリーの一部。

何考えてんだあんたら!! こちとら中身こそ30だが体はまだ10歳だぞ!!

そんなのに1万くれてやるとか何考えてんすか!! 子供の金銭感覚狂っちゃうでしょうがッッ!

このDIOに対してッッ!!

 

「ちょ、ちょっとこれはやりすぎですっ。

 確かにおひねりは……欲しいですけどっ、うん、欲しいですけどっ」

「いや、本当にいいんだ。それはワシの正当な評価だ」

「うちもやねー。音楽って方向性でここまで良いのってやっぱしなかなか無いと思うで?」

 

そう返して来る紳士なおっさんと関西弁のねーちゃん。

ねーちゃんアンタ良く見たらコガネシティのジムリーダーのアカネさんじゃねえか!!

 

「2人が言うとおりだと思うよ。俺は正直感動した」

「あぁ、マジでなぁ。ポケモンに演奏させるって発想が凄いわ。

 どんな連携練習したらそんなの出来るんよ?」

 

それはこいつらの才能なだけです!! 俺は知らん!!

 

「いや、でも」

「いいんだよ! もらっとけ少年!!

 俺だって1万円か、金に余裕があればそんぐらい突っ込んでるって!」

 

何気に切実な感想やめてくんない!?

見栄っ張りとかが反応したらどうしてくれるのだクサムァ!

 

「そうそう、本当に良かったわよー!」

「にいちゃんすごかったよ!」

 

こちらはまた親子で評価してくれる。罪悪感で胸がキリキリするッ……!

開き直れない俺よ、なんとかしる!

 

 

「ぬ、ぐ……」

 

絶対貰いすぎだ。貰いすぎだが……! この人達退かない……どうしようもないっ。

 

「わかりました……観念します……」

 正直なところ、所持金2桁なんで皆様の好意に甘えさせて頂きます」

『2桁ッ!?!?!?』

 

あ、しまっ─────

 

「はいストップストップストップ!!! これ以上はいらん!! いらんからな!!」

「えー」

「えー」

「ええー」

 

えー。じゃねえよあんたら。

こんだけありゃ全然しばらく生活できるっての。さらに突っ込もうとするな!!

 

 

っふー……とりあえず、だ。

 

 

「では、皆さん。

 今日は俺の歌なんか(で穢された素晴らしい曲々)を聴いてくれて……本当にありがとうございます」

「ディァー!」

「─────。」

「ググ~♪」

「ミュー!? ミュミューィッ?!」

 

ドレディアさんは元気に手を挙げ

 

ディグダは礼儀正しく斜め45度の礼を

 

ヒンバスは嬉しそうに左右に揺れて

 

ミュウは最後の最後で子供に捕まってしまい、尻尾をつかまれ振り回されていた。

 

「では、本日の最後に。曲の開発(再現)に苦労した……

 正直完成すると思っていなかった曲を、披露して今回の演奏を締めようと思います」

 

パチパチパチパチパチ

パチパチパチパチパチ

 

みんなの拍手を得て、俺に再度気合が入る。

さぁ、ミュウ。ここが正念場だ。君にやってもらった機械音源の、最たるテッペンだッ!!

 

「それでは、行きます。『Love is Eternity』(by 【○ors k】さん)」

 

 

 

 

「─────ド・レーディァ(エ・ターニティ)

 

 

ドレディアさんが呟き、カスタネットでリズムが取られ

 

次にディグダのミニドラムが軽快に響き

 

ミュウの機械音源再生が全体に映えて行く。

 

さらにはヒンバスのボイスパーカッションで、真似出来る機械音源の再生。

 

 

 

そして─────。

 

「─────レー(ラーヴ))、ディァ ド、レーディァ(イズ、エ・ターニティ)。」

 

怒涛の勢いで、ピアノの音を繰り出して、繋げていく。

 

時に静かに流し、パートが流し終われば、またさらに

 

 

 

ピアノの音の暴流を繰り出していく。

 

指が吊る位の暴流を次々と繰り出して行き

 

最後にミュウに機械音源を出し続けてもらって

 

 

曲は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ、反応あんましないぞ。す、滑ったかな……?

なんかすっげー全員静まり返ってんですけど。

そらー、こんだけポケモンバトルが常識として成立してる世界だしなー。

音ゲーなんて概念存在も

 

 

『ォォオオオオオオオアアアアアアアアアアアァアアアアア!!!』

「っオォォオゥ!?」

 

な、なんぞやっ?! いきなりギャラリーの声が大爆裂したっ!!

耳がっ!! ミミガー!! あ、沖縄いきてぇ。

 

 

「すげぇーー!」

「なんだこれぇー!!」

「こんな旋律、聴いた事無いぞ!」

 

次々と場にギャラリーの声が溢れかえる。

まぁ、そりゃぁ……この世界にないもん引っ張り出してますんで……

 

「素晴らしかったよっ!! 実に胸に響くピアノ音だった!!」

「あんな表現もあるんやね……!」

 

いやまぁうん、曲作った人一般公募からIIDXの作曲者を勤め始めたぐらいの才能の塊だからな。

 

そっか、滑ったわけではなかったのか。

こんだけ感動してくれたなら、みんなが俺にくれたおひねり分位にはなってくれたかなぁ……

ありがとうk○rs kさん。

 

 

「では、ご清聴ありがとうございました」

 

そうして、ギャラリーが解散していく。皆が皆、笑顔で帰って行ってくれている。

中には期待はずれで終わってしまった人もいるのかもしれない。

でも、確かに笑顔で帰ってくれている人が居る。

 

それを見るだけで、罪悪感が少しだけ軽くなる。

遠い遠い異世界ではありますが……アーティストの皆さん。

あなた方の作り出した音楽は、やはり万国共通で感情が沸き立つようです。

 

 

 

「さって、みんなー片付けに入るぞー、ミュウは配線縛ってー。

 ディグダはドラムの小型化、ドレディアさんはヒンバスのダンボール畳んで~」

 

俺も出していた楽器をリュックに詰め込み

頂いたお捻りもあとで勘定するため、ひとまず持ってきておいた袋に全部突っ込んだ。

 

 

「失礼、ちょっとよろしいかな?」

「───……ん?」

 

後ろを見てみるとなんか船長っぽい感じの人が居る。

雰囲気的にはアドバンスの四天王のドラゴン使いじーさんだ。

さすがにさっきのアカネさんと違い当人ではないだろうが、雰囲気はそんなもん。

 

「えっと……なんでしょうか」

「さっきの演奏、聞かせてもらっていたよ。

 実に良い音楽と旋律だった───とても耳に残ったよ」

「はい、ありがとうございます」

 

……まぁ、ただの感想述べる為に俺の前に来たってわけはないよな。

ここで話が繋がらなかったら、逆に俺が即座に「なんでやねーん」と突っ込む。

 

「それで、なんだがね」

「はい……なんでしょうか?」

「まあわしは見た目の通り、ある船の船長をやっておってね?

 それで2日後に、わしの船でパーティーが開かれるんじゃよ」

(マジで船長だったんか、この人)

 

あくまでも、っぽいってだけだったんだがな。

 

「それでな? 良ければなんじゃが……

 そのパーティーで、君の曲を演奏して欲しいと思っていてね」

「先に聞いておきますけど前座ですよね? ね? ねぇ?

 前座じゃないと嫌ですよ? それ以上は恥ずかしくて死ねますよ?」

 

なんでそんな大舞台で大それた事やらなあかんねんな。

俺のチキンハートじゃ死んだ上でフライドチキンにされてドレディアさんに食われてまうわい。

 

「ァー……♡」

 

おいそこ、俺の心を読むな。

ヨダレたらすな。いいからダンボール畳め。

 

「いや、あれだけの内容ならメインでやって欲しいんじゃが」

「ウボァーッッ!!」

「そ、そんなに嫌なのかね? 無理にとは言わぬが……

 出来れば是非、そのパーティーの参加者にも君の演奏を聴かせたいのだが……」

「うぬぅー……」

 

船長さんそこまで評価してくれやがりますか。

断りたくても断れねえじゃねえかそんな言い方だと。

 

「いや、でも──    ───あれ?」

 

 

今一瞬、何か見逃せないものが船長さんの後ろを横切ったような。

……俺の見間違いかな?

 

 

 

「ど、どうしたのかな?」

「いえ、ちょっと待ってください……」

 

俺は、偶然目に付いてしまったとある方向をずっと凝視する。

 

───間違いない、やはり、あれは。

 

 

そして、パーティー。さらにはパーティーが開かれる位の船。

だとしたら──……だろう、な。

 

 

 

「わかりました、船長さん。そのお話、(うけたまわ)ります。」

「おお、そうか! ありがとう、よかったよかった!

 本当に他の参加者にも聴かせたいと思っててね、とても嬉しいよ!

 それで演奏に対する報酬なんじゃが、とりあえずは前金でごじゅ─────」

「いえ、それは結構です」

 

率直に、船長さんからの報酬うんたら話を途中で区切る。

 

そう、報酬なんてものを気にしている場合ではない。

 

「えっ? いやしかし」

「───その代わり、準備して頂きたいものがいくつかあります。

 それらを、そちら側の負担で作っては頂けないでしょうか」

「む、何か違う楽器が欲しいのかな?」

「いえ、楽器ではありません、ただ───」

 

 

 

 

俺の予想(・・)が正しければ、間違いなく使う事になりそうだ。

 

 

 

 

───2日後、だったか……1日使い切って、万全に準備しておこう。

 


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