前回のあの出会いがあり
今俺は、クチバジムリーダーのマチスさんとお昼をご一緒していません。
するとでも思ったかっ!!
何が悲しくてパスポートっぽいのを踏んづけているのを指摘しただけで
身長2倍近くのイナヅマアメリケンと一緒に飯食わねばあかんのじゃ。
俺、別にジムに用事とか一切ねーし。
とりあえずあの後、試しにディグダとその場で佇んでいたら
マチスさんとドレディアさんがズンズンと進んで行ったので
さらに佇んでみたら、視界から消えたのでそのままディグダと引き返した。
ん、俺の行動に何か問題があるかね?
俺は問題があるとしたらドレディアさんのほうだと思うのだがどうだろう。
知らない人についていくんじゃありません。
ディグダもディグダで【あ、主……あれ放っておいてよろしいのか?】と
言っていたがそんな面倒くさいもん投げっぱなしジャーマンじゃボケェ。
そんなんだからヒロイン枠からどんどん遠ざかっていくんだっつーの。
全くもう、俺の好みはもっとこう、おしとやかな……だな。
おお、ディグダ、お前もわかってくれるか。そうだよな、あれはちょっと、駄目だよな。
……ま、あれはあくまで相棒です。異性としては見れません。
てかポケモンと人間とか誰得だ。流石に駄目だろう。
ともあれ、さり気なくあの場からフェードアウトする事に成功し、次は次で暇つぶしの時間である。
初日から弾き語りってのもねー……あまり歩いてこそ居ないけど(頭に乗ってたから
それとこれとは話が別ですね、そうですね。
まあ、この街もゲームと違ってとても広い。暇つぶしには事欠かないだろう。
「ディグダー、せっかくの港町だし海見に行かねー?」
「─────。」
【我も一度は目にしたい、付き従おう】ですってさ。
まあ海っていうか入り江って表現が正しいんだろうけど
マサラタウンにも一応あるにはあるんだけどね。あれはなんか、うん。
海って言っちゃ駄目だろう。
そんなわけで波止場まで行ってみる。うん、大勢の人が釣りを楽しんでいるのが見えるな。
って、これやばくね? 釣り人ってポケモンバトル挑んでこなかったっけ。
っとー、大丈夫だ、セフセフ。どう考えても街中でバトルは無いだろう。
これは間違いない、ゲームで考えても、どの作品も街のど真ん中でバトルはなかったはず。
今の俺はネテロじいさんも真っ青の、1日1万回感謝のにらみつけるしか持たない
ディグダしか手持ちに居ないからな。おのれディゲイ───……ドレディア。
そして周りに目を向ければ、まー入れ食い入れ食いってなぁ。
見渡す限りぴちぴちしてるわ、コイキングが。
こいつらがギャラドスなんて狂キャラになるなんて本当信じらんねー。
今、全員ギャラドスに進化したら港は大惨事だなぁ。
おーい金銀のロケット団ー。暇だからあの怪電波ここで使えー。
「……ん? 君は……釣りに興味でもあるのかい?
釣竿を持っているわけでもないのに釣りをしている人を見ているようだが」
「あーそうですねぇ、釣りは結構好きです。今回の旅じゃ竿持って来てないですけどもね」
前世もガキの頃はじーちゃんち行った時に船出してもらって
沖まで釣りに行ってたなぁ……俺んちのじーちゃん漁師だったんよ。
鮭うまかった。ただしウニ、テメーは駄目だ。なんでお前あんなにグロいんだ。
※俺のために出してくれたわけではなく、集まった親戚連中に紛れ込んだ形。
「ほほう……そうなのか。釣り、良いよねぇ」
「食いつく一瞬を見逃したら負けですよね」
「うむうむ、君はよくわかってる! わかっているな!!」
まあ実はそんなに負けでもないんだが。
たまに餌食われたかも知れないと思って糸引き上げたら
魚が食いついていることがある。まあ大体は小魚だけどね。
「よし、私のお下がりでよければ君に釣竿を上げよう!」
「おぉ、本当ですか。ありがとうございます」
まさかの釣竿贈呈。やっべこれはテンション上がる。
って、あれ?ちょっと待てよ……クチバって確か……ボロの───
「年季が入ってて少し見た目はボロっちぃが、性能は折り紙付きだ!
出来る事なら大事にしておくれ」
「わーい、ありがとうございます」
やっぱボロの釣竿だった(笑 ちくしょー家の中でもらえるもんだと思って油断してた!!
おっさんなんでこんなところにいるんだチクショウ!!
「よかったら今からやるかい? 餌も分けてあげるよ。
まだまだたくさんあるし、たまには誰かと共釣りもいいもんだ」
「そう……ですね。どうせ暇だったしせっかくの機会だ。お付き合いさせてもらいますかねー。
ん? ディグダ……お前もやりたいのか」
横を見ると目をキラキラさせているディグダが居た。
しかしその可愛らしい顔の下はマッスルボディ、色々どころか全部台無しである。
「……な、そ、その後ろの人はディグダ、なのかい? その、えーと、見た事無い体をしているねぇ」
「あ、うん、大丈夫です。皆によく言われます。どう考えてもキモいですよねこれ」
ガーンッ
ディグダの後ろにイナヅマが走る。
人間のビジュアルで見るとどうしてもアウトなんですよ、君。
「ま、まあ良いか。そのディグダも釣りをしてみたいなら
私の釣竿を貸してあげよう。ほら、おいで」
シュタッと立ち直り、腰から45度の角度でしっかりと礼をした。
お前本当どこで学んだのよ、その紳士的態度。
「おぉ……見た目こそ難があるけど、実にしっかりとした礼だね。
もしかして彼、凄く礼儀が成っているんじゃないかい?」
「お見事です。俺と出会った時から既に紳士でした」
やっぱわかる人はすぐわかるんだなー。
実際ここまでの礼儀を持った人なんて、人間でも早々居ない。
「さ、餌はつけたぞー。ほら、これを使うんだ。
ディグダ、釣りってのは時間との戦いだからな……あせるんじゃないぞ!」
「ッ─────!」
釣り人さんに激励され、気合を入れて横に体育座りをして、釣り糸を垂らすディグダ。
シュールすぎるwwwwwwwwwwww
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・
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「ッヒョォォウッッ!! ビッグヒットだぁーッ!!
ほほう、178cmのコイキングだなッ!! こいつぁ記念になるッ!!」
「ッッ─────!!」
「おお、ディグダ!! 君も4匹目か、やるな!!
ぬ、175cm!! やるじゃないかっ……!!」
釣り人さんとディグダは楽しく釣りバトルをしている。
さっきから20分程度しか経ってないが、2人とも入れ食い状態だ。
ポケモンと人間の枠を超えて友情を……イイハナシダナー
ん、俺? なんもこねえよ。
ふん、所詮釣れたってコイキングだろうしな……悔しくなんかないやい。
祝福って事で後でディグダの飯にハバネロエキスを混ぜておいてあげよう。
きっと喜ぶぞー。チクショウ。
クン、クン。
「ん?」
今確かに手応えが。
「お、ついに君にも当たりが来たか!!
ふふん、私達には適うまいがなっ!!」
「─────(ニヤリ」
「ディグダ、お前後でハバネロ飯な」
「ッッッ!?!?」
そんなバカなっ!? とでも言いたげな表情のディグダ。
うるせーテメー持ち主様差し置いて入れ食いしてるテメーが悪いんだ。
しかも手応えちっちゃいですからねこれ。
はーぁ、釣り上げたところで後ろの2人がドヤ顔すんのが目に見えてる。
めんどっくせぇー。もう2人とも海に突き落として帰るかな。
とりあえずリールをキュルキュルと巻いて行く。すると海面に黒い影が出てきた。
……しかし、なんだこれ? 手応えが本当に少ない。だが長靴ってオチはないはず。
若干動いてはいるのだ。んー……? とりあえず引き上げてみようっと。
ザパァ。
「…………。(俺」
「…………。(魚」
「…………。(デ」
「…………、コイキングじゃない、ね……?(釣」
うん、コイキングじゃないな。
ていうかゲーム的にはコイツ激レアなヤツなはずなんだけど。
んー……別の角度から見てみても明らかにコイツは……。
ヒンバスだ。
ちょっと待て。何でお前がこんなところで釣れる。
確かにポケモン図鑑的な説明だと『どこにでも居る』って書かれてるけど!
この世界ゲーム順所だしお前が釣れるのはどう考えてもおかしいだろ!!
と、一人突っ込んでいたんだが……コイツ様子がおかしい。
元気が全然無いのだ。どうしたんだ?
「お、おい……ヒンバス、お前死んでないよな……?」
「グ。」
「あ、大丈夫っすか、了解です」
「これはヒンバスっていうのかい?」
「はい、そうです。俺の記憶が正しければ、コイキング=ギャラドスの対になるような存在です。
ヒンバスには失礼かもだけどコイツあんまり綺麗じゃないでしょう?」
「あれ? そう、かね……? かなり身奇麗で色ツヤが出ている気がするんだが」
「え?」
釣り上げられて、その場で黙っているヒンバスに目を向けてみる。
「…………。」
……あれぇ?! 本当だ!
なんだコイツ色合いは確かにヒンバスだけど美しさ的なモンが既に高いように見えるぞ!?
「……えーとまあ、とりあえず身奇麗じゃなければ印象があまり綺麗じゃないポケモンでしてね。
でも進化をしたら一際美しい、ミロカロスって存在になれるはずなんです」
「おーミロカロスか!! それは私も知っているぞ!!
美術館とかで結構モチーフにされてる事が多い、美しい蛇みたいな存在だね?」
「あ、そうそう。それっす」
ふーん。この世界じゃ釣り人にすら進化前の存在知らされてないのか。
まさに醜いアヒルの子だな……。しかしなんだろうこの違和感。
なんか既に美しさ的なものが振り切れているっぽくて
その上で元気が無い……一体どういう事だろう。
でもまあ、既に美しさがMAXならレベル上がれば即ミロカロスって事だよな。
そう考えるとお得だし、捕まえるか。
しかしこの元気の無さだしな……捕まえるっていうより説得かな。
「なぁ、ヒンバス。お前俺についてこないか?」
「……グ。」
「……は?」
今、ちょっとコイツが言ってた内容を理解出来なかった。
どういう事だ、【私を捕まえてもきっと幻滅しますよ……】だと?
「聞き間違いじゃなければ頷いてくれ。
お前、今……【私を捕まえても幻滅する】って言った?」
「ッ!? ……グ。」
俺がヒンバスの言葉を聞き取れた事にヒンバス自身が驚いているようだ。
そして後ろの釣り人も俺が会話を理解している事に驚いているらしい。
「き、君……ポケモンと話せるのか?」
「ああ、話せるっていうかあくまで目が語りかけてくるってレベルですけど。
意思の疎通は基本可能ですね。俺が今言った内容も間違ってないんだろ?」
「グ。」
と、同意してくれるヒンバス。
「……改めて聴く。ヒンバス、お前は俺が幻滅すると思っているけど
俺がお前を捕まえる事については否定しないんだな?」
「…………。」
「そうか……。ディグダ、俺のリュックの中からモンスターボール持ってきてくれ」
「ッ─────!」
グッと親指を立て、少し後ろに置いていた俺のリュックから
モンスターボールを持ってきてくれた。
「……ヒンバスよ、何の事情抱えてんのか知らんけど、
お前も、俺のパーティーに来た事、後悔すんなよ?」
「…………。」
「まずあれだ、ディグダが既にこれだし」
「グ。」
【それについては激しく同意します】ですってさ。
なんだよ結構話せるんじゃねーか、ヒンバス。
そしてディグダもディグダで地面に手付いてうなだれてんなよ、いい加減認めろ。
「それじゃ───よろしく頼むな。」
「グ。」
カチッ
パシュゥゥゥン。
コトン。
ボールも抵抗らしい抵抗を一切見せず、すぐにヒンバスが捕まる。
そして俺はボールからヒンバスを出してみる。
「よう、改めてよろしく頼むぞ。ヒンバス」
「…………。」
「で、お前なんの事情抱えてるんだ?
別に解決出来る気もしないけど話してみるだけ話してみろよ。」
「───グ。」
「はっ?!」
え。
えー。
「マジっすか。」
「グ。」
「え、え、ちょっと君、どういう会話なんだいこれ」
「えーと……ちょっと待ってください。ディグダぁ!! リュック持ってきてくれ!!」
「─────。」
「おお、ついでだから持ってきたってか。褒めて使わす」
そして俺はガサゴソとあるものを取り出した。それは、ご存知ポケモン図鑑。
俺は目の前に居るヒンバスに照準を合わせ、データを読み込む。
pipipipipipipipipip
ピーン。
「ほら、これです、ここ。ヒンバスが言ってたのはこれです」
「え、えーとどれどれ…………えぇーーー!?嘘ォッ!?」
その内容は。
√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√
No.349
ヒンバス Lv100確定
タイプ1:みず
せいかく:おだやか
とくせい:すいすい (天候が雨の時、素早さが上がる)
親:タツヤ
こうげき:━━━━━━━━━━━━━━━━
ぼうぎょ:━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
とくこう:━━━━━━━━━━━━━━━
とくぼう:━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
すばやさ:━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━《長すぎるので省略》
現努力値
こうげき:+++++
ぼうぎょ:++++++
とくこう:++
とくぼう:++++++++
すばやさ:++++
わざ1:はねる
わざ2:たいあたり
わざ3:じたばた
わざ4:すてみタックル
√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√√
「ひゃ……100ッ!? レベル、100ッ!?」
「……なるほどな、そういう事か。今の時点で既にLv100って事は……
俺が期待せざるを得なかったミロカロスになる事は永遠に無い……
だから幻滅するって言ってたのか」
「ッ!? そ、そうか!
ポケモンはレベルが上がるか、特殊条件を満たさない限り進化しない……
ヒンバスがミロカロスになるのもレベルが何かしらに関わっているのか」
「…………。」
【これでわかったでしょう?
私には未来がありません……さぁ、この役立たずを逃がしなさい。
私をパーティーに加えても、将来貴方は必ず後悔する……。】
…………。
これが、理不尽、ってやつか。
「───お前、人に育てられてたな?」
「ッ!?」
何故それを、って顔だが……図鑑から推察すればモロわかりだ。
「ただの予想でしかないけど多分合ってるはずだ。
お前の前の持ち主は、何かの経緯でミロカロスがお前から進化するのを知った。
だが肝心の進化の方法を全く知らなかった。戦わせてLv100になったけど進化しない。
そして後になってうつくしさを磨き上げれば進化すると知った。
しかしその時には既にお前はLv100。どうやっても進化は出来ない」
そう、こいつはきっと───人が生み出した罪の原型だ。
自分の都合で、自分で勝手に解釈し、自分が必要としなくなれば、自分で絶望を与える。
その罪に巻き込まれてしまったのが、こいつなのだ。
「───そして、進化出来ないお前は、捨てられた」
「ッッ───」
「合っているらしいな。まあ、気持ちはわからんでもないよ。
お前の気持ちも、持ち主だったヤツの気持ちも。」
そう伝えた所、ヒンバスの顔が若干厳しくなる。
何故ここに来て無残にも進化の花道を断ち切った、前の持ち主の気持ちを理解出来るとのたまうか?
「人間ってなぁ、身勝手だからなぁ。人にも寄るんだが、自分の役に立たないとわかったら……
それがどんなものでも容赦なく切り捨てるんだ。例え血の繋がった血縁でもな。
なんせ自分が成り上がるために同族を貶める事すら躊躇わないんだぜ?
狂ってるだろ。笑いたければ笑っていいぞ、ヒンバス」
ヒンバスはヒンバスでぽかんとしている。
持ち主だったヤツの気持ちがわかると言った時は
俺に対してとても残念な感じの視線を送っていたが───
「───選んでくれ」
「グ……?」
「次は、お前が選べ。人をもう一度信じてみるか。
この場で人との関わりを全て捨てて野生に戻るか」
「……。」
人だってポケモンだって、信用しあえなきゃ……必ずどっかで関係が破綻するもんだからね。
「俺はお前の気持ちもわかると言った。さぞ絶望してんだろうな。
だからこそ一旦捕まえはしたが……無理には誘わないよ。けど、な───」
難しい事では在るさ、一度信頼出来なくなった物をもう一度信頼してみる、なんてな。
でも……。
「ヒンバス、お前が俺を必要とするなら───」
二度と、信頼出来ないわけじゃぁ無い。そうだろう?
だから、さ───
「───俺も、お前を必要としよう」
───たまには、こんな奇麗な戯言があったっていいだろ?
現BW世代において、ヒンバスの進化法が変わっており
アイテムを持たせて通信を行うだけで進化出来るようになっております。
しかしこの小説は世界観が初代に限りなく近いためそれは採用されません。