うちのポケモンがなんかおかしいんだが   作:右肘に違和感

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14話 人気者

 

 

「───うーん……これは、なぁ。

 図説こそもらったけど、完全なオーダーメイドだよね。結構高くなっちゃうよ?」

「やっぱそうですかぁ」

「ミュ~」

 

突然謎の会話失礼。

現在俺はトキワシティに滞在したままです。

 

 

んで、どこにいるかっつーと。

 

 

 

 

 

楽器屋です。ついでにミュウも連れ歩いてる。

この後どうせ野生に戻るってのもあるし

少しの間だけだが人間の生活でものんびり見てもらおうかなって思ってね。

こいつは(図鑑によると)頭も良いらしいし、色々とタメに成る事もあるだろう。

 

ん? これ以上楽器増やすつもりか、って?

いやうん、増やすんだけど俺の使うもんじゃないよ。ここで提案してんのはね。

 

現在注文を頼もうとしているのは、持ち運びが可能なドラムセットである。

コンパクトに軽量化、というスタンスの図説を作り今店主さんに渡したところだ。

 

 

今回新しく謎ディグダがうちの面子に加わった。

ドレディアさんも楽器の才能こそまだ謎だが、踊れるアイドルなのは確定している。

 

だから謎ディグダにも楽器を使わせようと思い、こちらにお邪魔させてもらってます。

ただのディグダだとドラムとか無理だろうが、あのディグダはボディが人間に近い。

それならばドラムだってやろうと思えばやれちゃうんじゃねーの? と。

 

かといって俺らは旅人の身なので、普通のドラムなんぞ持って歩けば

途中で(ディグダごと)投げ捨ててしまいたくなる候補No.1になってしまうのは間違いない。

 

という理由から、総計3キロ位に収まるはずの

ドラム図説を提出して見せてみたのだ。

 

 

「やっぱ作るとしたらかなり額行きますかねぇ」

「んー……正直材料の入手は安く済ませられるし難しくないね」

「でも結構高くなってしまう理由がある、と」

「話が早いようでなによりだ。これを、この素材でまともな音と同時に

 満足出来る耐久度を出すには、片手間で作る程度じゃさすがに無理だ。

 これ一つだけに完全集中する必要がありそうだからね」

「技術料ですね」

「ミュ~ゥ」

「……君、年いくつ?良くそんなモノ知ってるね」

 

 

今年で30歳っす。でも魔法使いじゃないっす。

 

 

「ん、よし。14,000円でどうかな?」

「買います」

「……即答、か。そんなにお金持ってるのかい?

 バトル慣れしてるようには見えないけど……」

「はい、バトル慣れはしてません。でも持ってます。じゃあ、これで」

 

そうして15,000円を手渡す。

 

「わかった。そこまでして欲しいものなんだな。

 一度引き受けたモノは自分が納得行くまで仕上げるのが筋だ、

 絶対に君が納得行くモノにするからな、1日だけ時間をもらえるかい?」

「はい、大丈夫です。急ぐ旅でもないので」

 

小銭を返却してもらった。これで残り金額あとわずか。

 

 

さて、楽器屋での用事も終わった。

1日以上は滞在する計算になるなぁ。

お金減りすぎたかもしれないし、また演奏でもしてみようか?

 

「んー、どうしよっかねぇ……」

「ミュゥ~?」

 

……別に、お金は次の街ででも稼げるだろうしな。不安定収入ではあるだろうけど。

そんなのより旅は道連れ世は情けとも言うし、ミュウにとことん紹介して歩こうか。

 

よし、そうしよう。

どうせドレディアさんはまた出店の兄さんのとこで

食べ物3つでバイトしてそうだし問題ねえべ。

 

「なぁ、ミュウよ」

「ミュ?」

「もうすぐお別れにはなるんだろうけど

 よければ人間の町を簡単に案内するぞ、どうする?」

「ミュゥー!! ミューウ!」

 

喜んでいるようだ。俺の周りでふわふわしつつ体をオーバーリアクションに動かしている。

実に微笑ましい。あんたも見習え、俺の手持ちの草のヤツ。

そう、お前だお前 m9(゜д゜)

 

 

side ドレディア

 

 

「……ッディ!?」

もぐもぐ。

 

 

side out

 

 

「んじゃ、まぁ。

 高いもんはあまり食わせられねーけど、適当に屋台でも回ろうか」

「ミュゥー? ミュゥー」

 

屋台ってよくわからないから、任せるよ★だってさぁ。

やべえなこいつ、突然変異でもないだろうしマジで持ち帰りたい。

ドレディアさん、ヒロイン枠終了ありがとうございました。

 

 

side ドレディア

 

 

「……ァ゛ア゛ッ!?#」

 

……。

 

もぐもぐ。

 

「ドレディアちゃん、さっきからどしたの」

 

 

side out

 

 

そんな訳で、この前荒稼ぎした街路樹のほうまで来てみた。

大道芸の人達が元気に芸をやっている。んー偉いねぇ。

俺があっちの世界で19や終わる直前の20の時なんてずーっとネットゲームやってたからなぁ。

自主性があって素晴らしいと思います。尊敬出来る。

 

「ミュゥー!! ミュ~!!」

「お、気に入ったかい? それなら何よりだよ」

 

やはりこいつは頭が良い。よくわかっている。

大道芸の人たちの動きは極論で言ってしまえば

【ポケモンの方がもっと芸っぽく動ける】のだ。

 

だがしかし、ミュウよ君は偉い。

【空を飛ぶことも出来ず、重力制御下でしか動けない人間が

 ポケモン並の超人的な動き、バランスを出来ている事】に価値をしっかりと見出している。

 

これ、ミュウへの過剰評価じゃないよ?

もう大体目ぇ見たら何考えてるかわかるんだ。この子も結構わかりやすい。

 

ちなみに俺ら、結構な人込みに混ざって大道芸を見ているんだが

ミュウの希少価値に気付く人は皆無である。まあ元々伝説ではなく幻のポケモンだしね。

普通に知られてないんだわ、ミュウとかセレビィとか。わかる人にはわかるんだけど……

まあ大道芸見に来てる研究者なんぞ、変り種過ぎる。

多分居ないだろうから俺も秘匿せず堂々と一緒に見て───

 

 

「───ん、あれ? お前……

 ッ!! この前ここら辺で歌ってたボウズじゃねえか!」

「え、あっ本当だ!」

「おお、君は!」

「え、えぇ?」

 

おいちょっと待て。なんで幻のポケモンより俺のが扱い上なんだよ。

そしてギャラリーのおっさん、あんたもあんたで気付くな。

俺は今一般のMOBなんだよ。空気に溶け込む一般人なんだよ。幻のポケモン連れ歩いてるけどさ。

 

「何!?あの子が来てるのかっ?!」

「おい皆! 芸なんぞやってる場合じゃないぞ!!

 また彼の曲が聴けるぞっ!!」

 

 

ちょ待てwwwwwwwwww続けてwwwwwwww

俺らはあんたら見に来てんだっつーのwwwwwwww

ようし、ここは普段俺が利用こそすれ用いてない策略、「常識」を使って凌ぐ!!

 

「あ、でもごめんなさい……今日は楽器を持ってきて無───」

「はい、俺のエレキギター」

 

おいギャラリーその3wwwwwwwwwww

出すな出すなwwwwwwwwwwwwwwww

気楽にガキに魂の相棒差し出すなwwwwwwwww

 

「でもギターだけで出来るわけでは───」

「オカリナならうちの子供のがあるぞっ!!

 おいっ、兄ちゃんに貸してやるんだっ!!」

「うん、パパッ!!」

 

くぁwせdrftgyふじこlp;@:ぃlぴl

おい誰か俺の気持ちを汲み取れ!! 押し付けてんじゃねえっ!!

ドレディアさん助けて!!姐御助けてっ!! ミュウはわくわくしてて頼りにならないっ!!

 

 

side ドレディア

 

「……ディー?ディァ~♪」

 

~♪ ~♪

 

「なんか【やっぱ最後には私が頼りなのね】って顔してるねぇ。

 本当にありがたいよ、ドレディアちゃん。じゃ、これあっちのお客さんにお願いねー」

「ァ~ィ♪」

 

Three out change

 

 

「───ッハ!? 今、なんか野球で攻守が交代した気がしたぞっ!?」

「はぁ?何言ってんだボウズ?」

 

あ、うんまあ多分気のせいっす、おっさん。

 

 

 

んで、いつの間にやら楽器を2個も渡され。

オカリナはともかくギターのほうはギャラリーその3の兄ちゃんの魂が篭ってるのもあって

俺の持ち歩いてるギターより遥かに質が良い。フライングⅤとはわかってますね、貴方。

 

「やれやれ、今日はこいつと街見て歩くだけで済ますつもりだったんだけどなぁ」

「ミュィ。」

 

まあいいじゃん、あの時みたいに聴かせてよ★、ですって。

まあ演奏者冥利に尽きますねぇ。ありがたい話さ。

 

「したっけ、しゃあないっすね。

 何曲かやらせてもらいますよ~」

 

「おっしゃぁ!! やっちまえ!!」

「よーし! 噂に聞く天才のギターの捌きから来る音色……、参考にさせてもらうよ!!」

「ぼくお兄さんみたいに立派に音楽演奏出来るようになりたい!」

「さすが俺の子だ、これからも頑張るんだぞ!盗める技術はどんどん盗んじまうんだ!!」

 

 

あーもー……誰もわかんねーだろうけど、俺が歌ってるの全部パクリなんだっての。

ちくしょうこっちの気も知らないで……

ドレディアさん、助け……っと、さっきスリーアウトになってたっけ。

 

「まぁ……」

 

どかりと街路樹の段差に座る。

そして指を掻き、ギターの弦チェック。うむ素晴らしい音色だ。

 

 

ギターで結構弾ける曲にしようか……

ミスチル様の「名も無き詩」なんていいかな。

 

 

 

 

 

 

「ミュ~ゥミュ~ゥ」

「あいよ、ミュウもお疲れ様」

 

 

いきなり場面すっ飛ばしてすまない。もう今更だし飛ばしていいかな、って。

みんなでわいわい騒いで、おひねり飛んできたのをミュウがサイコキネシスで回収してくれたんさ。

明らかにサイコキネシスの無駄遣い。

 

今日は歌い続けていたわけでも無いのに8,684円になったぜ。

たったの5曲か6曲でとんでもない収入だ。

俺まだ10歳だし、税納める義務ないから税務署行かなくてもいいよね?

 

 

 

税でどうでもいいこと思い出したけど、ポケモンってゲームってさぁ。

政治家とか軍の幹部、とかそっち方面の人全然対戦相手として出てこないよね。

エセ軍人っぽいマチスだけじゃねえの、軍の幹部系列って。

もうムダヅモ無き改革的にやっちゃおうよ。政治家出すべや。

AIなのにバトルフロンティアの高難易度位の思考持たせてさ。

 

 

「そうは思わんかねワトソン君」

「【しらんがな(´・ω・`)】」

 

ひどい。

 

 

 

 

さーて。ムダに時間も食っちまったしただいまの時間だ。

宿泊先であるポケモンセンターに戻ってきた。

 

なんか帰ってくる途中、夕暮れの日の中動く影を見つけ

空を見上げてみたらフリーザーがヤマブキシティ方面へ飛んでいくのが見えて綺麗だった。

サトシ君がアニメ第1話で見惚れるのもわかる。

で、なんかそのフリーザーから

 

【タっくん、待っててねぇぇぇぇぇええええええッッ!!】

 

とか母に近い声が聴こえたのはきっと気のせいだと思う。耳鳴りって地味に嫌だよね。

 

 

とりあえず、まあ、うん。帰ってきたんだけどもさ。

 

「ディグダ何やってんの」

「ミュ。」

「─────。」

 

ディグダは土の中に埋まっていた。いや埋まってたって表記でいいのか?

なんかディグダらしく顔だけ出してたんだわ、入り口の横で。

 

んで、返答が

【やはり我はディグダの一人、土の中に体を収めるのが落ち着く】だそうです。

 

「真面目すぎるのもいいけど、もうちょい柔軟になった方がいいんじゃね?

 ドレディアさん、行動も身体能力もぶっ飛んでっから

 そんな堅苦しいと持たないよ、きっと」

 

「……─────。」

 

【主からのアドバイスだ、前向きに検討させて頂く】、か。

まあ無理には言いませんから好きにしてください。

 

 

「あ、ディグダ。明日ちょっと付き合ってもらうから。

 この街から出る前にちょっと寄る所がある」

 

「ッ─────。」

 

腕がニュッと地面から出てきた。ひょうがまじんですね、わかります。

 

 

まあひょうがまじんでも構わないけどドラムの才能持ってたらいいなぁ。

 

ま、今日はこんなところで寝るとしましょうかね。

 

「ミュウ、一緒に寝るかね」

「ミュゥ~♪」

 

はっはっは、かわういやつめ。持ち帰るぞコノヤロウ。

 

 

ん? ドレディアさん? 精勤賞ですね、わかります。お仕事頑張ってください。

 

 

 

 

 

side ドレディア

 

「……ディァッ!?ディアーーーーー!!!」

 

「……?【私の立ち位置が奪われたーーーー!!】?

 よくわからないけど、ドンマイ。

 ほら、売れ残りだけど1個追加してあげるから、ドンマイ」

 

「ディッ!? ディ~♪」

 

 

延長12回


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