うちのポケモンがなんかおかしいんだが   作:右肘に違和感

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96話 祭騒ぎ

 

さて、あれからしばらく歩き続けて16:00頃にポケモンリーグに到着したわけだが。

 

 

ガヤガヤ。ガヤガヤ。

 

ガヤガヤ、ガヤガヤ、

 

ガヤガヤ。ドヤガヤ。

 

 

「お祭り騒ぎだなぁ」

「地方リーグっちゅーたら、年に2度しかない行事やしな~」

「まあ、大騒ぎも当然って事だな……俺もじーさんに連れられてよく来たけど」

 

俺のつぶやきにアカネさんとグリーンが反応を示す、そういやグリーンてオーキド博士の孫だったな。

 

ドレディアさんの前だと無力なおじーちゃんだったが、あんなんでもポケモン界の最高権威だしなー……。

真面目な話だが、チャンピオンなんぞとは比較にならん権力を持っているのがオーキド博士です。

 

やっぱ博士もここに来てんだろーなぁ、ダグ共見られたらちょっとやばいかな?

突然変異の事とか何も言って無いし……まあ見られたら見られたで良いか。

 

「俺は初めてだからすっげーわくわくするわ……! ゴウキ、わた菓子食いに行こーぜ!!」

「メッサツ!」

「あ、うちも食べたい!! カズやん奢って♡」

「お、おう……? おうっ!」

「あいあい、二人でデートいってらっしゃい。リア充しね」

「え、ちょ……! 俺はリア充なんかじゃ───」

「はいはい、みんな行きましょ行きましょ」

 

アツアツの2人をとっととその場に残し、俺やマチスさん達はそそくさとその場を後にする。

 

「ウーン! やっぱりリーグのフェスタは空気がいいネー!!」

「あぁ、マチスさんも元々リーグの関係者ですもんね……何回か来てたりするんですか?」

「毎回毎回ヨー! オールラウンドイヤッフー!

 やきそーヴぁ! わたガーシ! バッナーナ! ファンタスティック!」

「…………。」 よだれー

「こらドレディアさん、はしたないぞ。あとで食わせてやるからよだれを拭け」

「アッ?!」

 

今気付いたように、ぐしぐしとドレディアさんは口元を手で拭う。

少し和んでいる所に、グリーンが俺の前を通り過ぎてミカンさんのまん前に出る。

 

「ミカンさん、よかったら祭り一緒に回りませんかっ!」

「へ? えーと……まぁ、ポケモンセンターでお部屋を登録した後でなら」

「よしっ! もしよければ対トレーナー戦とかのコツもっと聞かせてもらえませんかっ!?

 これからリーグ出場もあるし、経験重ねてる人の意見を参考にしたいんですっ!」

「ふふ、いいですよー」

 

こっちも気合が入ってんなぁ。

まあこれぐらいの情熱がなければリーグの頂点になんぞ立てないって事なのだろう。

 

「んじゃ俺等もポケモンセンター行って部屋登録してくっかー」

「はーい」

「キュー」

「ギャゴーン」

「ヒヤウィゴーゥ!」

【騒がしすぎる……とっととそのポケモンセンターとやらに行くぞ】

【あ、僕このままお祭り見て来て良いー?】

「いいぞミュウ。あの時の金はまだ持ってんだろ?」

【うんっ! まだ色んなお金があるよ!】

 

色んなお金、とな……? ああ、多分万札崩した時に貰ったお釣りの1000円札と5000円札の事か。

ならまあ、まだまだ遊べる金があるってことだろう。

 

ともあれ、とっととポケセンに行かなくては。

 

 

 

 

「…………。」

「オーゥ。」

「…………これ、は。酷すぎるわね……」

「キュー……」

「…………まぁ、予想は出来なかった、かな?」

【……私は人が居なくなるまでハナダの洞窟へ戻っている。

 ミュウ、居なくなったら適当にテレパスをよこしてくれ】

【えーめんどーい】

 

 

現在俺等はポケモンセンターの入り口辺りで固まっている。

ついでにミュウは、俺達と別れた一瞬の間に人込みにもみくちゃにされ

半泣きで俺等のところへ戻ってきていた、情けないのう。

 

 

さて、なんで入り口で固まってるのかに関してだが……

人が溢れすぎてて中に入れないからである。そして原因は多分俺。

 

 

これだけの人数がびっちり溢れている件の、あくまでも予想でしかないのだが……。

 

 

元々カントーポケモンリーグが開かれる、として

色んなトレーナーが各地から集まり、ここで宿の登録をするわけである。

つまりはこの時点でポケモンセンターは大回転を起こしていると思われる。

それに加えて、俺はチャンピオンロードから脱出したわけで……。

 

つまり、は。

 

俺が留めていた40人が一気にこちらに雪崩れ込み、

受付が順当に処理している結果、こうなったのではないかと予想する。

事が事だけに、流れ作業で登録するわけにも行かない。

自分達【泊まる側】はトラブルがあったところで

自分が関わっていなければ大して関心も寄せず、『へー、ほー』で終わらせるが

運営側としてはその1件が致命的な事にも成りかねない場合がある。

故にここで、人数差に圧倒されて適当な作業をしようものなら

後々に、自分達の首を絞める事にも繋がったりするかもしれないのである。

 

だからこそ手抜きは一切許されない。1件1件丁寧に処理して行く……が。

そのスピードはお世辞にも速いとは言えず、待つ側はストレスが溜まって行く。

 

 

……あれ? もしかしてタクトさんが先行出発した意味ってこれを想定していたからなのだろうか?

待ってれば待っている分だけ休めないわけだし……これもう間違いねぇな。

ちくしょう、教えてくれてもよかったのに。

 

「こーりゃ時間掛かりそうだ」

「そうですね……どうしましょう?」

「ンー、ミーが並んで起きまショーカ?」

「ああ、一人だけ並んで集団登録かぁ」

 

ここまで受付がごった返しているのは、

そもそもトレーナー自体、ソロ活動の方が圧倒的に多いからである。

故にこういう件を同時に捌いてもらう協力者がゼロなため

一人一人が並ぶしかないという手段しか残されないわけだ。

 

「でもいいんですか? マチスさんもお祭り楽しみたいでしょうに」

「ダイジョーブダイジョーブ! 科学の進歩に犠牲は付き物デース!」

『科学の進歩?』

『(なんでそのフレーズ知ってんだマチスさん……)』

「開催日までまだ6日もあるんだヨー! タイムはまだまだたっぷりあるネ、オーライオーライ!」

「うむ、まあそう言えばそうなるかな……」

 

前世の現代日本だと、祭りは続いても3日程度と思ったが……あ、雪祭りは別かな?

ここじゃ残りの5日間までずっと祭り騒ぎなのか、恐ろしいなぁ。

母さんなんで今までここに連れてきてくれなかったし。

 

「それじゃぁ、お願いしちゃいましょうかね。

 せっかく利点があるんだし、使わない手も無い。マチスさんよろしく頼みます」

「あーいオッケーヨー、チルドレンは楽しんでらっしゃいナー。

 リトルボーイに、ミー、アカ、モッサン、アーンド、カズにミドーリでOKね?」

「じゃ、それでお願いしますね」

 

今頃リア充ってるあの2人も最終的にはここに来るだろう。

だったらついでに取っておいたところで問題も無い、後で殺せば良いだけだ。

 

 

 

 

「んで、どうするべ」

「ディーァ」

『─────。』

「ホーァ」

「ミュィ」

「△▲☆★~」

 

一応金はあるし、出店で遊んでくるのもアリだろうし

ドレディアさん関連で確実に食い歩くってのはわかりきっているのだが……

まぁ、急ぐ必要も無いしなぁ……

 

なお、他の面子は既に各々祭りを楽しみに出かけていっている。

俺達は翌日以降でいいやーと面倒くさがって、ポケセンの外の木陰で座っていた。

俺の手持ち&ミュウもそれに付き合う形で横に居る形だ、皆あの人ごみのせいで一気に疲れたのだろう。

 

【あ。】

「ん、どしたよミュウ」

【ねえねえ! 久しぶりに音楽でもやろうよ! 暇つぶしには持って来いだと思わない?】

「あーうん、でもなー……」

 

俺はミュウの提案を聞きながら、周りを見渡してみる。

良い提案だとは思うんだが、いかんせん人が多い。

この世界では意外性抜群すぎる曲ばかりなせいで

日頃から集客率が凄まじい上に、一度集まられるとただのパクリでしかない罪悪感で精神的にきつい。

 

「ホアァァ~! ホアァ!!」

「えぇー?」

「─────。」

「おいコラ、ダグONE!てめぇ静かに荷物ほどいてドラムセット出してんじゃねえ!」

「b」

「何サムズアップしてんだおいッ!?」

 

全員が全員、とんでもなく乗り気なせいでどんどん追い詰められていく俺。

こうなったら最後の味方はドレディアさんだけ───

 

ポン。

 

「ん?」

 

肩を叩かれる。振り向いてみるとドレディアさんが居るわけなのだが。

 

「ディァ。」

「…………。」

 

ドレディアさんが、あるモノを俺に差し出してくる。

 

持ち歩きピアノでした。凄く……やる気です……。

 

 

「味方なし……か。よし、逃げ───」

 

ガッシ!

 

「ぉおぉう!?」

「フォァー♪」

 

既に後ろに忍び寄っていたミロカロスに襟首を咥えられ、逃げる事すら出来なくなってしまった。

あぁんッ……。

 

「……俺の流す曲とか音楽、ほぼ全部パクリだから流したくないんだけど」

『『『…………。』』』

「流していると、曲を作った人達に凄く申し訳なくなるんだよね」

『『『…………。』』』

 

うぬ、ぅ……無言で見つめられると、心が痛い……!

これだから多数決制度の国民は……! って、こいつら一応野生動物の範囲だっけ。

 

「……あんまり長くまでやらないからな」

「ディァ!」

「ホォァー!」

「ミューゥ!」

『(カチャカチャ、ガチャ、ドスッ)』

「△▲☆★~♪」

 

何気に一番乗り気なのがダグ共なのが見て取れる。既にドラムがSTAND BY。

ちくしょう、普段自己主張しない分チャンスがあったらとことんまでやりやがる。

  

 

 

 

まあ、そんなわけで音楽時間と相成ったわけだが……元々予定もしていなかった音楽会である。

今から何かしら練習した上で流すと時間が掛かるので

既にやった事のある『Love is Eter●ity』と『MAXX』の演奏と相成った。

 

俺の手持ち達とミュウはとっても楽しそうに演奏や踊りを混ぜていくんだが

本当に俺としては、作曲者さん達に申し訳なくなる。精神がガリガリ削れていく……

 

そしてやっぱり1曲目が終わる頃には

ポケセンで並んでいた人まで出てきて俺等を包囲している始末である。

こうなりたくなかったから拒否してたのに……今迄で一番多いよ、もうやめて。

 

ああ、でも……ほぼミュウ頼りの機械音源といえど……改めて弾くと、本当に楽しいなぁ。

やっぱり音楽って文化は大事なもんだよね、人が居ないところでまた演奏しまくりたいなー。

トキワシティの森に居たあいつらは元気にしてんだろうか。

 

2曲目を終わらせる頃にはポケセンの中身が大分少なくなるほど施設内から人が出てきており

そのおかげで残っていたマチスさんがわりかしスムーズに、全員分の宿泊部屋を確保していた。

 

ていうか、長い間並んでいたのを放棄してまで聞きたいとか、どうやねん。

 

ま、とりあえずは手持ち全員目的は果たせて満足しているし

俺も俺でとっとと荷物を置いて寝たいが故に、マチスさんの登録高速化は利に適っていた。

とりあえず適当に愛想笑いをしてその場をそそくさと立ち去りマチスさんと合流。

部屋の番号を教えてもらい自分達の荷物を置く。

 

 

「さて、ドレディアさんは祭りの出店で食い歩きたいってのはわかるが

 他の皆は何かしたい事あるか? もう部屋も登録したし寝てたいやつは寝ていいぞ」

「ホァ」

『───。』

「ミューィ」

「△▲☆★~」

 

ふむふむ、全員特に眠いわけでもないらしい……みんな目の前にある祭りが新鮮なのかね?

 

「んじゃ、俺は寝てたいから寝てるわ。ちゃんと適度な時間になったら戻って───」

「#」

「#」

『;』

「……;」

 

 

 

まぁ、その後いつもの2人にボコられた後、ずるずると祭りまで拉致されたのは言うまでもなかろうな。

 

「ちくしょう、俺の睡眠が……!」

「ディ~ァ~♪」

「ホ~ァ~♪」

「△▲☆★~」

 

主犯格二人+αが非常に楽しそうに祭りを闊歩している。

別に俺おらんでもええやんけ……何故連れて来たし。

 

俺一人だけテンション低いのも皆に対してどうかと思い、気を持ち直す。

改めて祭りの方に目を向けてみれば、色々な出店や催し物があった。

 

定番の食べ物系のお店にジュース売り。ヨーヨーに輪投げ。

こちらの世界では『金魚すくい』は金魚自体が存在していないため、

それ自体は無いみたいだが代わりに『vsトサキント』という謎の出店が存在していた。

 

非常に興味深かったが、まあドレディアさんがそれを確認させてくれるはずもなく

わたがしのお店へ暴走機関車の如くGOされる。やれやれ……

 

全員分の綿菓子を買って、手渡してみんなで食べる。

うーむ懐かしい味だ……祭りなんぞせいぜい高校生で卒業しちまったからな。

甘くてふわふわでもっちりとしてそれでいてソツがなく……あえて言おう───綿菓子であると!

 

「アァァァアァァ~~~♡」

「ァァァァァァアア~~♡」

『ッッッ~~~♪』

「ミュゥゥゥゥゥ~~~~~~~~!!」

「△☆△☆▲★▲★~♪」

 

うむ、全員とても満足しているようである。さすがのわたがしパワー。

 

その後は祭りの会場で意外にエスコート出来ているグリーンを見たりもした。

オーキド博士の関係で、あいつ常連らしいしな……しかも客側の立場で。

 

開催側の立場で常連であるジムリーダーとはまた違った情報を持っていて

ミカンさんも楽しめているようである。案外相性良いんだろうな、あとで殺しておこう。

 

道端で見つけたカズさん&アカネさんは、2人で仲良く焼きそば食ってて

なんか俺だけボッチで、よくわからんうちに腹が立ったから

カズさんに膝カックンを仕掛け、驚かせて焼きそばを落としてやった。

ドレディアさんに【無粋な真似すんな#】って殴られたが、後悔なんてしない。

 

他にも、突発開催的なトレーナーバトルのぷち大会とかもあり

そちらでもっさんがなんと優勝をもぎ取っていたり。今回はゲンガー無双だった。

 

マチスさん=元軍人vs俺=元FPSプレイヤーで、射的を鬼の様に荒らしたり。

 

※出店の裏事情は大体知っているし、景品なんぞ要らんのであとでこっそり返しておいた。

 

ビンゴ大会で、ドレディアさんがまさかの玉4つで最速ビンゴが発生したり

 

のど自慢大会で試しにミロカロスを出したら審査員特別賞を貰ったり……

 

ムウマージの愛らしさで緊急ハロウィンが企画されたり……

 

たくましいポケモンコンテストでダグトリオが一切違和感なかったり……

 

地味に空をフーちゃんらしきフリーザーが滑空していたり……

 

なんだかんだでとても楽しく、開催日までを過ごせた。

 

 

そんなこんなで、ついにカントーポケモンリーグ当日である。

今日からいよいよ、アニメ順所っぽい大会が始まる。

熱い試合を期待したいものである。

 


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