「あれから結構経ちましたねぇ」
「そーだネー」
「チュゥー」
ある日の薬販売用店舗で、ボルティを迎えに来たマチスさんと話す。
「マチスさん達にあってから……3、4週間ですかね?」
「まーさカ居ると思ってなかったヨー」
「俺だって来ると思ってませんでしたよ、強すぎてジムをクビになるとかどんなレジェンドですか」
「あー……まあステイしてた場所が悪かったネ、グレンランドならまだ良かったかも知れなかったネー」
「バッヂの取得ランク的な感じで、ですかね」
「そーだネー」
「チュー」
まあ実際んトコ、3番目に取得するのが一般的なバッヂだもんなぁ。
マチスさんやらここに来ているエリートトレーナーに話を聞く限りだが
ここ最近でマチスジムを突破出来たのは、カズさんだけらしいのだ。
加えて、マチスさんが名誉の退職をした後に取得したところで
距離的にリーグ参戦は、よほどの高速でそらをとぶポケモンが居なければ
確実に到着出来ないというオマケつきだったのだ。
ある意味でリーグ新規参戦者は、非常に限定されていると言える。
「お前だってご主人様のために頑張っただけなのになー、人間ってひどいよなー」
「チュー♡♡♡」
「滅べばいいのになー」
「チュッ?!」
膝に抱きかかえるボルティのアゴの辺りをこちょこちょしてやりながら
ボルティに対して労いの言葉を掛ける、最後だけなんかビビられたけど。
「そいやリーグの開催日って後どのぐらいっすか?」
「ンー? あと6日ってトコだネー」
「……あれ? 開催が6日後って……受付締め切りってそれよりもっと日浅いっすよね」
「そだネー」
「……やばくねえ?」
「ハッハー! アイドントゥノーゥ!」
駄目だアメリケン役に立たねぇ、今までジムに引き篭もってたが故に時間にルーズになってる。
これは今日の夜飯の時にでも話さねばならないだろうか?
◇
「て、わけで。みなさんそろそろやばいんではないかな、と」
「あー、そういえばそうだな……」
「忘れてたんすか、カズさん……」
「まーうちとミカンちゃんは元々参戦でけへんしなー」
「やっぱり忘れがちになっちゃいますよね」
「二人は参戦者ってよりむしろ開催側ですしねぇ……」
やっぱり全員脳筋化していました。
そんなに強くなりたいならもうずっと滝にでも打たれてればいいじゃない。
「けどまぁ、そろそろ動く時期って事だなッ!」
「グリーンさんも結局ここに留まってますけど……俺遅れても知らんぞ?
俺別にリーグなんて出ねえし知らん」
「何ッ!? あんだけ戦えるドレディアやダグトリオ抱えてるのにかッ!?」
「だって俺バッヂ1個も持ってないっすもん」
『えええーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?』
俺の発言に他の宿泊客達が驚いた。確かに
「じゃ、じゃあなんで子供店長はここに……!?」
「んー、最近弾頭って会社について聞いた事はないですか?」
「いや……聞いた事ない、かな?」
「あれ、もしかしてその会社ってあれじゃないの?
『主婦の心強い味方!!』 みたいな家事用品出してる、あの……」
「あーそれです。で、そこの社長さんに付いて知ってる人ー」
『…………。』
どうやら誰も知らぬようである。
ま、会社名知ってたって社長の名前まで知ってる人はなかなかおらんよな。
「その弾頭の会社取締役は、トキワジムリーダーのサカキさんなんですよ」
「え゛っ?!」
「……本当に?」
「大マジですよー」
そんな感じにタネ明かしをしていく。
んで、最終的に特別出場枠的なモノを貰い、ここに入場出来た事を伝える。
「え、あれ?! それじゃあ子供店長もリーグに出れるのか!?」
「うっわ……あんだけおかしいドレディアちゃんとかダグちゃん達相手にしなきゃならないの……?」
「大丈夫、そこについては抜かりは無いッッ!!」
俺はわざと大げさに手を振り、そして声高らかに堂々と宣言した。
そう、みなまで言う必要すらない、俺がここに居る理由、それは……ただのおくすりPRのためだから!!
「見る方に専念したいので大会はサボります。」
全員ずげぇーっとずっこける。
その中でも食べている飯はしっかりと軌道上から回避しているのは
全員エリートトレーナーの貫禄持ちというところであろうか?
「タツヤんはホンマに相変わらず過ぎやなぁ……」
「リーグに出場出来るだけでも凄く名誉なことなのにねぇ」
「ミーはフラワーレディと
「ちぇ……ゴウキでリベンジしたかったのに……」
「俺も普段からカンチョーされたり海に突き落とされたりしてんの
リベンジしてやりたかったのに……」
「おいグリーンさん、アンタしばくためだけに出場してやろうかコノヤロウ」
「うぉっ!? 聞き取ってんじゃねーよっ!!」
やかましいわボケ、んだったらもっと離れたところで小声で言いやがれ。
「ま、そーいうわけで俺は観戦目的です。戦う事はまずないからご安心くださいー」
『ふーーー……』
そんな全員で一斉に溜息付く事ないじゃないか。俺は疫病神か何かだってのか?
「ディーア」
『─────。』
「△▲☆★~♪」
……まあ、こんな見た目ごっつくもないやつらがあんだけ無茶苦茶な破壊活動してたら
そりゃ戦いたくもなくなるか、SUMOUで言うYOKODUNAと戦うようなもんだし……。
「ホァー#」
「おぅ、オオゥ、大丈夫、大丈夫ですミロカロスさん。ちゃんとお前の事も忘れてないから」
「♪」
うちにだって、ちゃんと見た目通りの子もいるんです。
◇
そんなわけで、リーグ開催までの残り日数も少ないと言う事で
新商品PRの本来の目的は果たしたため、店も閉める事と相成った。
実際んとこ、これでまたトキワに帰って、またのんびりと旅に出る形でも良いと言えば良いのだが
旅の最終目的が(一応は)シン兄ちゃん撃破となっているので
リーグなんぞという大規模な戦いが繰り広げられる場所ならドレディアさんも学ぶ事が多かろうし
祭り気分も相まって、リーグの観戦は外せない案件となったのだった。
よし、それじゃ荷物も纏め終わったし……さて、行くか!
「それじゃ、みんな! ポケモンリーグに向けて出発だー!」
『 オ 』
『 オ 』
『 オ 』
『 オ 』
『 オ 』
『 ー!』
あれ? なんか人数多くねえ?
ドレディアさん達の後ろに、俺の知り合い全員含めたトレーナーさん達が40人は居るんですけど。
「え、だって。子供店長さんが居なくなるんならここに居る意味もうないじゃん」
「そうよねぇ。1日の最後に気楽に休めるって言うからみんな居たわけだし」
「そうなりゃ必然、こんなところでバトルしてる暇も留まる価値も無いよな」
「うんうん、日数自体もやばいですからねー」
「ま、そういうわけで……」
『『『全員一緒にレッツゴーってお話になったのさっ!』』』
なるほど、やはりそういうことか。ドウシテドンドコド。
まあそういうことならそれでいいんじゃないかな? だが……
「皆さんはそれで良いんですか?
確かここの醍醐味ってトレーナーの潰し合いも含まれていたと思いますけど」
「いやーもう今更って感じになっちまってるよ、皆。」
「そーよねぇ……ずーーーーっと顔付き合わせてたわけだしねぇ」
「んだったらもう本選で堂々と遣り合おうぜって事でな」
ふーむ、長らく顔も合わせてりゃ、そうなってくるのも必然なのかね。
やかましくしない上で、必要以上にいじられないなら別にいいか。
されたら手持ち全員開放して俺も纏めて暴れればいいだけだ。
「ま、こんなところで止まってたってしゃーないやん」
「そうだぞタツヤッ! とっとと行こうぜ!」
「ハリアーッ! レッツ、ハリアーッ! 全軍突撃せヨー!!」
「どこに行こうとしてんじゃッ!!
一応ここ洞窟なんですから、他の人達に迷惑掛からんように行きますよー。
あと野生ポケモンの迷惑も考えてくださいねー」
『はーい、子供店長ー』
「あいおー、そいじゃ……んぉ?」
こちらに向かって歩いてくるポケモンがいらっしゃる。
いつも番人の人材を提供してくれていたゴーリキーの群れの長のようだ。
「おっす、今まで騒がしくして悪かったな」
「グガ?」
「お前はずっとここに住んでんだっけか。
ほら、このぐらいの時期に洞窟の向こう側で人間達が大騒ぎしてないか?
そろそろそれが始まるから、俺等も行くのさ」
「グガーォーン」
【なるほど】とコクコクうなずいてくるゴーリキー。
お前もたまにここで戦ってたけどやっぱレベル上がってんのかねぇ?
「グガーォーン」
「ん」
ほほう……【ついてきてください。出口までご案内しましょう】と言っているようだな。
野生ポケモンと付き合ってるとこんな利点もあるのか、まさに街中ご当地情報と言った所である。
「みなさんー、このゴーリキーが出口まで案内してくれるそうです。
余り迷惑掛けないようにして付いていきましょうー」
『『はーーーーーーーい』』
そんなわけで、チャドの住民によるチャド最短攻略法により
俺達合計41人だか42人は、無事最難関の鬼門を抜け出る事が確定した。
こうなってくると、むしろ洞窟内の全員が宿泊していたあそこの方が
チャドの一番の鬼門になってしまうのではないだろうか。
途中でなんか「ピカチュゥー!」やら「ギエピー!」やらと聞こえていた。
ピカチュウっぽい鳴き声は多分、レッドさんが丁度チャドに到着したと思われるから良いとして
ギエピーって、まさか……この世界、アイツが居るのか?
◇
そんなこんなで歩く事6時間程度。
下手なギミックだのなんだのが一切無いルートを紹介され、俺等は案内の通りにひたすら歩き続けた。
さすがにマサルさんのネタのように遭難したってオチは無い、何故なら───
「───うおっ、まぶしっ。」
「グーギャ」
無事、チャドの最終地点へ到達したからである。
なお、ここまで一人も脱落が無い事を明記しておこう。
まあ、元々全員が全員、野良バトルにやりなれている程のアウトドアの猛者共だ。
ミカンさんとかジムリーダー連中はどうなんだ、と思ったんだが
マチスさんは元軍人、森だのなんだので基本的なサバイバル術は当然持っている。
ミカンさんもミカンさんで、意外な事に凄まじいタフネスを持っていた。
おそらくあの街の灯台に居るアカリちゃんに逢いに行くために
しょっちゅう階段を上り下りしていたからなんだろうねー。
アカネさんが一番疲れていたが、声を掛けたところ
「こんなもん気合でカバーやッ!! いざとなったらカズやんにおぶさってもらうから!」
「おいちょっと待てよそれ!!」
といった具合です。あんたら仲良いよね。
まだまだリーグまでは距離がありそうだが、これで漸くチャドの突破完了!!
原作で何時までも迷いに迷ったあの苦悩はなんだったのだろうか!
まぁ、それもこれも───
「ゴーリキー、ありがとうな。おかげで手早く出口に付けたよ」
こいつとの関係がチャドで生まれたからである。本当に、世話になったなぁ。
「グガォーン」
【姐御共々、またいつでもお越しください】
「うん、そのうち暇を見つけたらまた行かせて貰うよ。それじゃ、またな!」
互いに手を振り、一緒に居るトレーナー達もゴーリキーに向けて手を振り
俺等は無事チャドを攻略したのだった。
◇
さってと、こっからはただのお祭り気分でGO出来る、ひっさしぶりの休日の始まりだな!!
「あっち行ったらみんなで遊ぼうか、しばらくはのんびり出来るからな!」
「ディァー!!」
『bbb』
「ホァ~♪」
「△▲☆★~!」
待ってろよポケモンリーグ!! 俺達の暇つぶしのために犠牲に成るが良いッ!!