うちのポケモンがなんかおかしいんだが   作:右肘に違和感

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~ ぶっちゃけトーク ~


「はぁい、こんにちわぁ」
「どうも、こんにちわ」
「ムウマージで~す」
「ポケモン図鑑Ver2.0です」

「あまりにも出番が無いという事でぇ、こんな場をもらいましたぁ」
「このテのノリ、きっぱり言ってしまうと作者の意見を小説の登場人物に言わせるのが
 恥ずかしい一人芝居にしか見えないくてキモいって人もかなり居るとは思うのですが
 よろしければこの脇役劇場にお付き合いください、というか切実に、うん」
「うん、こんなところぐらいでしかお話も出来ませんのでぇ……
 まぁ私達、本当出番無いですよねぇ図鑑ちゃん」
「仕方が無い部分があるというのが、作者さんの意見らしいのですけどもね~」
「……どういうこと?」
「まず第一にぃ~、この小説はプロットという物がなかったらしいのですよ~。
 小説というより~、物語を書く上ではとても大切な物ですね~」
「行き当たりばったり、という事ですね?」
「ですね~、元々連載していたものをちょくちょく手直ししてここでも連載としてる訳ですが~
 一応あれでも誤字の確認とか手直しはしているようです~、経験『地』は仕様だそうですけどもね~」
「というより、ムウマージちゃんってカラカラちゃん達の代打での登場なのに
 なんでカラカラちゃん達より出番少なくなってるんですかね?」
「キャラ設定のミスとしか言えないそうです~」
「キャラ設定って……」
「プロットが無いというのは先程話した通りですが~……
 ドレディアちゃんは一応のヒロイン枠ですし~、ダグさん達は小説の基盤ですから~……
 行き当たりばったりでも、キャラと役目がしっかり出来ちゃった訳ですね~。
 ミロカロスさんに関しては、年上・弱体化・綺麗・華麗と
 いくらでもネタが作れる要素てんこもりですからねぇ、ただの偶然らしいですけども~」

「そこから考えると私達のキャラは、えーと?」
「私はただの無駄火力、謎の存在というぐらいですね~。
 戦場だと何もさせられないし、逆に扱いに困るという事らしいです~。
 カラカラちゃんとかだと、まだ調整された戦力でしたからね~ネタに走った結果がこれだよっ!」
「まぁ、ムウマージちゃんの場合はその可愛さもあるから『俺の嫁』な人も居るだけマシですね?
 私なんて、ポケモン図鑑ですよポケモン図鑑。芸人で例えるなら一発屋ですよ」
「流行語大賞を取っちゃうと、8割の人が居なくなっちゃうあれですか~」
「そう、そのあれです。私なんてそもそも戦闘要員ですらないし
 一応今のパートでは店舗における『喋る電卓』要員になる予定はあったんだそうですけど……
 作者の個人都合で、自分自身が暗算に苦労しない=電卓いらなくね? でこれも降板になりました」

「そうなると~、もう活躍とか全く期待出来ませんねぇ?」
「悲しいまでにその通りです……、ムウマージちゃんは、まだその可愛さがあるから
 情景としてちょくちょく名前と一言が出ているのに……
 私なんて基本的にずっとリュックサックですからね!」
「これもプロットを考えてキャラ設定をしなかったが故の悲劇なのですかねぇ~……」
「多分そのはずではないか、と作者も言っています。
 周りに小説を書いている趣味の人が居なくて、検証のしようがないらしいですけど」
「だから正当な小説が好きな人達には嫌われちゃってるんですねぇ」

「でも、小説の中身で描写されてなくても周りには私達もちゃんと居ます~」
「私はリュックの中ですけどね。ゲームで言うシステムメッセージ的なものは
 一応私の画面で確認している感じのイメージで成り立っているそうです」
「ので、出番が無くても私達が傍に居る光景を思い浮かべてもらえると、嬉しいです☆★」
「私はリュックの中から出してもらえると嬉しいです」

『これからも、完結に向けて頑張りますッ』


「って、言っとけって言われました~」
「私もです、解せぬ」


~ ぶっちゃけトーク 終 ~




94話 集合。

 

 

「ん、む、ぅぅうぅぅぅ……ん」

 

朝が来た。

 

とはいっても洞窟内部の住居なので日の光が差すとかそういった事もないのだが、とにかく朝だ。

 

「どれ、よっこいせ……」

「ァァー……」

 

いつもながらいつの間にか布団に忍び込んでいるドレディアさんを横に退け

自分が掛けていた肌掛け布団をドレディアさんに掛け直し、布団から起きる。

 

『─────。』

「おう、ダグ達……おはよう」

「ホー」

「ミロカロスもおはよう……さ、今日も適当に過ごすか……」

 

他の面子にも挨拶を済ます、ムウマージは……

……天井に張り付いて寝てやがる、いくらゴーストタイプで元から浮いているとはいえ、どういう事だ。

 

「ふぅ……」

 

今日も1日の最後に35人分の飯を作る事から1日が始まるお……。

 

 

 

 

チャド(チャンピオンロード)でモノを売り始めてから1ヶ月近く経った。

結構長い事洞窟に居るが、体調不良などは今のところ一切出ていない。なんなんだろうこの謎のタフさ。

 

そして、(出番がなかった)タクトさんがダークライを引き連れて、リーグに先行出発をしていった。

とある懸念があり、バトルの専攻も重要だが後々の手間で本番で実力を出せないのも嫌だ、との事だ。

 

まあ元々実力派の人達は考える事がよくわからん。

ダークライも強すぎる領域だし問題あるまいさ、ご利用ありがとうございました。

 

 

そして商売の方も超小振りながら順調であり、ここを店として考えるなら赤字は1日も出ていない。

まあ、保存が利く薬がメインだしな……時間掛ければそりゃ売れます。

 

とりあえずバトルジャンキーの宿泊客が、薬を何度も買って行くので

幾度か薬自体も、数量を調整して仕入れ直したりもした。

 

それぞれの属性薬が50個程度、全体回復に至っては100個以上売れている。

現在の純利益が30万円以上になっている上に初回の仕入れが無料だったため

薬部門だけで『550,000円』とか、わりとすっ飛んだ内容になっている。暴利過ぎワロタ。

 

まぁ……従業員が俺一人しか居ないために人件費削減どころの話ではないのに加えて

本来の前世であれば、搬入に交通費やらガス代やら掛かるはずなのだが、ここはポケモンの世界だ。

ダグ共がチョー頑張っておられます。キャーダグサーン。

 

 

「さて、とりあえず朝飯作るか……」

『bbb』

「ホァー」

【む、タツヤか……貴様もなかなか早く起きるモノだな】

「ミュウツーか、ミュウはどうしたんよ」

【あやつは未だ起きぬ……精神も子供染みているし、仕方ないという所だな】

 

のっそりと俺らのところへ現れたミュウツーへと声をかける。

どうやらミュウツーも、そこそこ朝は早いらしい。

そういやこいつ、忘れてたけど元々洞窟暮らしだからなぁ……ラストダンジョンの。

 

【これから作るのか。当然、私のも用意するのだろうな?】

「いちおーお前とミュウは俺の一行って事になってっしなー。

 飯を抜くなんて事は、お仕置き以外の差別ではしないさ」

【ふ、良い心掛けだ……】

 

朝飯に関しては希望する人のみ作ることとなっている、まぁそれでも15人分以上だが……

元々こんな場所があるなんぞ欠片も思ってない人達なので

突破するための保存食料を持参している人が多く、勿体無い様子。

 

保存食料とはいえ、さすがに消費期限が持つのはここの突破期間程度だろうしなー。

リーグが終わってまた別のところを旅する際に、痛んでいないとは思えん。

 

そんな理由から、浪費癖が激しいと思われるぷち層の人々が

朝飯の方まで依頼を出している感じになっている。

 

「ァー……」

「ん、おはようドレディアさん」

 

俺等が住居を出た後すぐに起きたのか、ドレディアさんが調理場の方まで来る。

まだまだ眠いのか、半目に加えて右手で瞳をぐしぐしと擦って

左手には枕をぶらさげ、ぶらーんとさせている。

 

【……なかなか見れん痴態だな……緑の姫君でもこんな一面があるのか】

「お前の言う通りあまり見れないけどな。ドレディアさんなんか食いたいもん、あるかい」

「アー……、ディァー……、Zzz……」

 

調理場に置かれている簡易テーブルと椅子に座り

テーブルの上に枕を置いた後、再びすぴょすぴょ眠り始めた。

寝る子は育つというし、まぁ、育ちきってる感はあるが……放置しておこう。

 

……。

 

「……ミロカロス、ドレディアさんの鼻ちょうちん割っていいよ」

「……♪」

 

おちゃめないたずらごころ(優先度+1)が働き

ミロカロスもちょっと楽しそうにドレディアさんの傍に近寄って行く。

そして、そーっとドレディアさんの出している鼻ちょうちんをパチンと割る。

 

だがしかし。

 

「……Zzz、Zzz、(ぷく、ぷわー、しゅるるる)、Zzz、アー……」

「……♡」

 

うちらの無敵草姫ドレディアンが、鼻ちょうちんを割られる如きの事で起きる筈も無かった。

そしてその癒し系の光景に、可愛い物LOVEな横の白紫が大いに反応する。

 

【う、お、ぉぉ……いかん、鼻血がッ……!】

「ハハハ、あんまり見れんシーンだけど……やはり黙っていると可愛らしいお嬢様だなー」

 

ドレディアさんもディグダも暇があればトレーナーバトルに乱入しているため

最近では珍しい日常のひとコマである……いつも一緒に居るとはいえ、これは俺でも癒されるなぁ。

 

ミロカロスもいつも一緒のこの子の可愛い一面を見れて悶えている。

ダグの3人は精神的に大人すぎるのか、傍らで3人揃って笑顔で場を見つめていた。

 

今日も良い一日になりそうである。

 

 

 

 

「あー! お前、タツヤじゃねえかッッ!!」

「そんな風に思っていた時期が、俺にもありました」

 

俺は先ほど良い一日になりそうだと言ったな。

すまん、ありゃ嘘だ。そんなことはなかったぜ。

 

「うぜぇの来たこれ……、どうしようかなぁ」

「お前いくらなんでも本人の目の前でウザいとか言うなよっ! 酷すぎるだろっ!!」

「ホ、ホァ~;」

「だったら鏡見て自分と喋ってみてくださいよ……グリーンさん」

「はぁ? 何言ってんだよお前、鏡見て喋った所で俺が喋ってるだけじゃん」

「もうやだなんなのこの人」

 

そんなわけで、テキトーに店の中でゴロゴロと暇潰しをしていたところ

原作順所とでも言うのか、レッドさんより先にグリーンがチャドに登場した。

相変わらずのテンションで、こちらとしては扱いにくい上に非常にうざったい。

 

ああ、そうだ。良い事考えた。

 

「いらっしゃいませ! 何かご入用で?」

「え? あ、えーと……? じ、じゃあこのきんのたま、売ってもいいか……?」

「はい! きんのたまですね! 5,000円になります!」

 

どうせ外に出た時にフレンドリーショップに持ち込めば5,000円ジャストになる。

薬じゃないので増額こそしないが、まあ問題ないだろう。

 

「これ、本当に効くのか……? やけど治療と同時に体力も少し回復か……、便利そうだな」

「はい、ではまたお越しくださいませ!」

「えっ?! ちょ、売ってくれよ! なんで追い出そうとしてんだよッ!」

「うるせーとっとと帰れくださいませ!」

「お前ふざけんなーー! なんだよその扱いはー!!」

 

やばい! やっぱりいつも通りしつこい!

まるで1日放置した油汚れの如く! こいつ本当に後のトキワジムリーダーなのか!?

 

「ああもうわかりましたよ。わかりまーしーたー。

 ここの抜け方も教えますし、やけどプラスも1個持ってっていいっすから……」

「お、マジでか?! サンキュー! お礼に、今度どっかで逢ったら飯奢ってやるよ!」

「ぁーぃ、期待しねーで待ってます」

 

とりあえずなんとか供物を2つほど捧げ、グリーンを流せそうである。

ここはさっさと紙にここの抜け方の地図を描いて───

 

「あれ、お客さんですか?」

「ん?」

「あれ、ミカンさん。どうしたんですか?」

「ええ、全員回復するアイテムが欲しくて……手持ちの子が殆どボロボロなんです」

「まだ午後になってないよっ!? どんだけハードスケジュールっすか!

 しかもミカンさんジョウトのジムリーダーでしょうに! リーグ出られないじゃんよ!」

「なにっ?! この人、別の地方のジムリーダーなのかっ!?」

「あ、やべ」

 

一応はこいつも強くなりたい願望は凄まじいんだっけか。

そうじゃなきゃ原作でも我先にとチャンピオンなんて目指さないよな。

 

「もしよければ相手をしてもらえませんかっ!」

「あ、えーと……回復したあとで、なら?」

「よしっ、俺はなんて運が良いんだッ! ポケモンリーグ参戦前にこんなに良い相手に恵まれるなんて!」

「ぶっちゃけていいですかね」

「ん、なんだタツヤ?」

「  帰  れ  ♡  」

 

売るものを売って、とっととここから離れて欲しかったのに

他のトレーナーと同じくココに居座る気満々くさい、宿の設備を知らず早く歩を進めて欲しい。

 

「お、ぉぉお、ぉぉぉ、し、シンプル過ぎるのが逆に心を抉ってくる……!」

「た、タツヤ君、そんな風に言わなくても……」

「……じゃあ、この人の世話全部ミカンさんに任せちゃいますよ?」

「え、えっと、大丈夫ですっ!!」

「ですってよ、グリーンさん……いつもみたいなハイテンションで迷惑かけんでくださいよ。

 環境破壊とかしたら俺が直々にぶち殺した上で罪を擦り付けて警察に通報しますから」

「お、お前だったらマジでやりかねないな……(今までも酷かったし

 わかった、ここで戦ってる間は大人しくしておく」

 

なんか珍しくグリーンに関連した内容で丸く収まった。

基本的に無自覚のうざったさがあったんだが……現状、目上の立場であるミカンさんのおかげかな?

 

 

 

 

ミカンさんがグリーンをバトルフィールドに連れて行って20分程度。

俺は店に残り、バトルフィールドを遠目から見ていたのだが

どうやらドレディアさんがぶっとばしたゴルバットがグリーンにクリーンヒットしたらしく

手持ちであるカメックスと共に空中を錐揉み回転しているのを確認した辺りで

個人的にはとてつもなく意外なお客様が参上した。

 

「ん、あれ……? 君……タツヤ君かい?」

「え?」

 

俺が見ている位置は店ではない、適当な外の岩に座って眺めている。

そしてそこに後ろから声を掛けられ、振り向いてみると

トキワシティで食いモン売ってる露店のお兄さんが居た。

 

「あ、れ? 露店のお兄さん……お兄さんもリーグの出場を?」

「いや、ちょっと違うかな? まあそれでもポケモンリーグに行くのは間違いないんだけど」

「リーグ観戦目的ですか……それでも珍しいですね?

 観戦目的の人はこんな苦難のルートからは来ないと思いますけど……」

「ああ、まあ近場だしねぇ。勝手知ったるなんとやらだよ。ところで……君は何をしているんだい?」

「あー、懇意にしている会社が開発した薬のPRです。

 まだ市場に出回ってない先行販売なんですが、少量だけこちらで売ってるんです」

「新薬、か……ちょっと興味あるなぁ、どんなの売ってるんだい?」

「あ、よかったら中にどうぞ、あそこです」

 

そんな感じにお兄さんを店先へと案内する。

 

「な、なぞのみせ……しかもLv98なのか……ww」

「ええ、いつの間にか宿屋になってたって意味も踏まえてちょうどいいかと。

 レベルはまあ、ぶっちゃけ適当です」

「安易に100にしないあたりがセンス良いなぁ。もうちょっと全力出せよって感じがそそるねぇ」

「よくお分かりで。流石で御座る」

 

一緒に店の中に入り、商品の説明をしていたところでふとお兄さんが視線を変える。

 

「そういえば、今年に限ってここに野生のポケモンもトレーナーも極端に少ないけど……

 もしかしてその理由って、さっきのあれかい?」

「ええ、なんか全員居付いちゃいましてねー…… 開催間近までここで皆と鍛えあうーとかで」

「……そうなのか。これは……今年は期待出来る、かな?」

「ん」

 

なんぞや期待って。あー試合内容のレベル的なもんかな。

白熱した試合!(笑)みたいな。

 

「しかし君も良い商売してるねー……ダンジョンだから3割増での販売、かぁ」

「いや、本当にセレブばっかなんですね、強豪層って。

 ここで一番売れてるのがこの6500円の全体回復薬ですから……。

 もう手持ちが60万円近くになってますよ」

「       」

 

アレ、止まった。

ここは芝生付きで笑い飛ばして欲しいんだが。

 

「60万って……僕の5か月分の稼ぎ……orz」

「あ、いや、えーと、えと」

 

そうだった、しまった……! 初めて逢った時にも

 

・遊んでいるほど暇ではない、仕事に戻らないと

・従業員を雇う余裕は無い

 

とか言ってたっけ……。人材派遣の件でも雇う余裕無いって言ってたし。

 

「ま、まぁ……たまたまですよ、たまたま。

 どうせ人間お金だけじゃないんですし、元気出して行きましょうよー」

「う、うん……そうだよ、ね……お金だけじゃないよね、きっと……;;」

 

うわーい完全に地雷踏み抜いたぁーー!!

やばいもうこれどうしたらいいかわからない!!

カズさんみたいに3Fから1Fに落としてなかった事にしようかな!

 

「───ま、いいか。

 タツヤ君、僕もこの全体回復薬を1個買わせてもらおうかな。

 話を聞く限りじゃ本当に便利そうだ、他の人が緊急事態に陥っている時に持って来いだね」

「え、あ、はい、そうっすね? とりあえず3割増はなしでOKです、5,000円になります」

「わかった、ありがとう。それじゃ、これでお願いね」

「ええ、確かに。それじゃ、これを……」

 

なんやら、やたら復活が早いな……まあ面倒が無い分、ありがたいけど……

 

「それじゃ、僕はこの辺で失礼させてもらうよ」

「了解です。

 まあ、大会参加者でもないのにここに留まる理由も少ないでしょうしね。

 よかったらリーグで一緒に観戦しましょうよ」

「そうだね、あっちで逢ったら是非ご一緒させてもらおうかな」

「ドレディアさんも喜ぶと思います」

「あれ、そういえば……ドレディアちゃんはどこに?」

「ああ、えっと、こっちへどうぞ」

「?」

 

説明するより見せた方がインパクトあるだろうし。

 

「えーと、そろそろかな?」

「……どうしたんだい? ドレディアちゃんは一体───」

 

 

ッドォォォン!!

 

 

お、出た出た。

 

「あ、ほら、あそこでカメックスとトレーナー、一緒にぶっ飛んでるでしょう。

 あれをぶっ飛ばしたのが多分ドレディアさんです。

 あそこまでの高度は何人居てもドレディアさんしか出来る子いませんでしたから」

「…………!」

 

ハッハッハ、やはり唖然としているか、あんな光景普通起こらないもんなー。

ポケモンだけならいざしらず、ここに来てから彼女は何故かトレーナーまで軌道直線に乗せ

そのまままとめてポケモンと一緒にぶっ飛ばしている。

 

「これは、本当に、楽しみだな」

「は?」

 

あれ? なんか気のせいかもだが思ったより唖然としてないぞ? なんか変につぶやいてるし。

 

「うん、ありがとう、タツヤ君! おかげでとても良い物が見れた

 今年のポケモンリーグの試合内容が、もう今からすっごく楽しみだよ」

「えー、あー、はい。なんか思ったより驚いてくれてませんねぇ、つまんねえ」

「アハハ、まあ彼女の身体能力は知ってるから、さ?」

「むー。」

 

まあ、いいか。良い物見れたって事は楽しんでもらえたんだべ、きっと。

 

「それじゃ、また会場で会おうね!」

「はい、あっちで逢うのを楽しみにしてます」

 

去って行くお兄さんに手を振り、俺は見送る。

 

あ、今更考え付いたけどもしかしてお兄さんって見学目的もあるけど

あっちで屋台開いて食いモン売りたいんじゃなかろうか? そっち方面のほうがしっくりと来る───

 

【おい、タツヤ】

「んぁ? なんだミュウツー。珍しいな……お前から話しかけてくるなんて」

【あいつは、一体、何者だ】

「? 以前俺が世話になったお兄さんだよ。

 ドレディアさんに社会常識身につけるのに一肌脱いでくれた頼りになる人さ」

【……いや、あの男は、   ……まあ、良いか。お前は知らないらしいな、あの男の事を】

「おめーよりは知ってるっつーの。何日も顔合わせてんだからよー」

【……まぁ、良い。───世の中は、広いのだな】

「さて、夜飯の仕込みでもしとくか」

【おい無視するな貴様ッ!! 何気に格好良いシーンだぞ今のはッ!!】

「どーでもいいっつの。どうせだから仕込みちょっと手伝ってくれや。

 鍋を沸かす火ぐらいなら、さすがにお前でも出せるだろ?」

【ふん……感謝の心を忘れるなよ】

「へいへーい、ありがとうございませんでしたー」

 

 

なんやら妙にミュウツーが過敏になっている気がするが

基本的にこいつなんぞ気にしたところで人外の領域だし、とっとと俺の仕事を納めて夜飯の準備に入ろう。

 

 

あ、しまった。どうせならお兄さんに調理場貸してあの食いモン作ってもらうのも手だったなぁ。

 

 

【……本当に、広いモノだな】

 

 

 


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