うちのポケモンがなんかおかしいんだが   作:右肘に違和感

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***話 387% 悪夢の終わり

 

 

「うぅ……うぅぅ~……! 違う、そこじゃないんだっ……あ、が、ぁぁぁああぁ……!」

 

 

全員が呆けている中、タツヤの方は真剣に苦しんでいた。

しかしこの場における者達が、これをどう判断すればいいかわからない。

 

【……医者よ、この状態をどう見る】

「……おそらくは何かしらの謎解きなのではないか、と思う……

 今動いてた棒の様な形のモノが入れるように、隙間が開いているだろう?

 あそこに入れる事で、隙間を埋めたかったのではないかな……」

「そう……ですね、確かにそんな感じですね」

「ディァ……」

「じゃあ、いじってみて───」

【無駄だ。】

 

そこへ、ミュウツーがストップを掛ける。

 

「……どうして、かな? 君もやはりこのままの方が良い影響があると思うかい」

【いや……それ以前の問題だ、我々が触れて改変すること事態が無理なのだ。

 触れると思うのなら、何かやってみても良いぞ……どうせ何も起こらん】

「ディ……アァー」

 

ミュウツーに促され、自分達が見ている風景に手を入れようとしてみたが

どういう原理が働いているのかはわからないが、目の前に見えるモノは遥か遠くにあり

手をブンブンと振り回しても、彼の見ている図は……やはり一切の変化が見られなかった。

 

【元々が、うなされているなり何なりの理由で

 横から声を掛けたりしてアドバイスが出来ればという事で、こうしたのだが……

 これは予想外すぎる、一体私達に何を求めているというのだコイツは】

 

ミュウツーが言うには、今自分達が見ている映像は虚像でしかなく

触れる事の出来ない媒体であるとの事らしい。

 

「そ、そうか……まあ、確かに予想外なのは否定しないでおこう」

「まさか彼……2ヶ月間もこれだけのためにうなされてたんですかね」

【いや……おそらくそれは無いだろう。私達もたまにこいつを見に来ていたが

 頭の中を覗く限り、夢を見ている片鱗すら見られなかった】

「ということは、やはり脳が目覚めたと言う事か」

【だろうな……さて、ミュウにドレディアよ。

 何かこれに関してこいつに声を掛けてやれる事はあるか?】

【んん~、僕はちょっと夢の中までは専門外だからなー……】

「ディーァ───」

 

 

…………ダダダダダダダダダダダダダダダッッ!!

───ちょっと! 病院内では走らないでくださいッ!!

────む! も、申し訳ないッ!

 

 

【───ん? なんだ?】

「廊下、かな? 誰かが走ってきているようだね」

【ってか、あの声……取締役さんじゃないの?】

「ディ、ディァ」

 

どうやらサカキがようやっとタマムシについて

この部屋を目指して疾走していたところで、看護士に捕まり注意されたようだ。

今日もカントーは平和です。

 

「タツヤ君ッ!!

 タツヤ君はまだ無事かッ!!」

 

 

ガラッ!!

 

 

バキィッ!!

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「あっ」

「あっ」

【あっ】

【あっ】

「アッ」

「えっ?」

 

 

───まず先に状況の整理だが。

 

ミュウツーや医者達がいる場所はあくまでも室内である。

そしてここでミュウツー達が不思議な技を使い、タツヤの夢を映像化する。

 

映像化されている場所ももちろん、タツヤの病室であるわけだ。

 

故に外側の病室入り口も、この映像のどこかに合体する形で存在している。

小学校や中学校で見られた、OHPという影絵のようなものを壁に写しているのと同じだ。

 

そして、全員を悩ませていた映像の原因は

サカキがドアを勢い良くスライドさせた際、触れられないという話なのに

何をどうしたらこうなったのか、当たり判定が発生してちょうど四角1個分横にズレて

そのまま下段が無くなった縦の棒は、勢い良く隙間にストンと落ちた。

 

 

ぺろろろぉーーん

 

 

不思議な音がした後、縦列の4個分きっちりと横列まで消え

すぐさま上に積みあがってしまう緊急事態は脱したようである。

 

「「…………。」」

【【…………。】】

「ディァー……?」

 

そしてドレディアとサカキ以外、全員異口同音にこう述べる。

 

『『どういうことなの……』』

「な、どうしたのだね……一体、なんなのだ?」

「ドレ~ディァ。」

「なるほど、わからん」

 

 

そうしてサカキが病室へ乱入した数分後。

驚いた事にタツヤの容態は非常に落ち着き始め、ついにはいつも通りの睡眠状態に戻ったのだった。

 

どうやらあれは、彼にとっては本物の悪夢だったようである。

しかしそのゲームが存在しないこちらの世界の人間、ポケモンには

何故にあれが悪夢なのかはサッパリ不明である。

 

 

【……しかし、また元の木阿弥、か】

「そうだ、ね……このまま目覚めてくれればこちらとしても有り難かったけど

 やっぱり、うまくは行かないものだね……」

「刺激のためにも放っておいた方が良かったのでしょうか……」

「いや、結果オーライだろう……。

 ドレディアちゃん、いくらご主人様に良い話かもしれなくても

 あの姿を見続けるのは、君にとってはとても辛かったよね?」

「……(コクッ)」

 

素直に頷くドレディアに、少し笑顔を見せる医者。

 

「患者を治すために新しい患者を増やすようじゃ本末転倒さ……

 何より、一応は脳に刺激があったのは確認出来たんだ。

 もしかしたら、彼は意識を取り戻すかもしれないね」

「ッ!!」

【それはマコトかッ!? 嘘だったら捻じ切るぞ貴様ッ!】

「いやいやいやいやいや! 確定じゃないからね!?

 もしかしたら、だからねッ!? 物騒な事は嫌だよッ!?」

「冗談はさておき……彼は、元に戻る可能性が出てきたのですか?」

「はい、本当に未知数ですが……脳が完全に活動をしたと言うのなら

 目を覚ます可能性は、あるのではないかと思います」

「そう、ですか……」

 

まだ安心出来ない状況かもしれないが、それでもサカキは一息付く。

目を覚ましたところで、脳にダメージがあったのは間違いない。

どこかしらの体の部位に影響があってもおかしい事など無いのだ。

そこは彼が目覚めないと認識出来ないが……。

 

それでも、隣にいるドレディアや社内の空気を感じるに

サカキからすれば、やはり彼には起き上がってもらいたいのが本音である。

 

そして最後に、報告を遅れて受けたミロカロス、ダグトリオ、ムウマージが到着し

タツヤの容態を伝えた上で、全員一安心する。

 

この場に居続けても仕方が無いのは間違いないのだが、サカキ以外は

【せっかく来たんだし、このままご主人様・主殿・△▲☆と一緒に居る】と伝えてきた。

 

自分達の主人が心配なのもあるかもしれないが

やはりドレディアの様子に関しても、心配だったのだろう。

 

【では、私たちは地下施設へ戻る。】

【君達もあまり病院に迷惑かけちゃだめだからね♪】

「ディァー」

『ッッッbbb』

「△▲☆★~」

 

ミュウの問いかけに、5匹? は元気に頷く。

医者もサカキと一緒に部屋を出て、残されるのはタツヤの一行。

 

「……ディ~ァ♪」

 

よかったね、といった感じに寝ているタツヤの手を握るドレディア。

後ろでミロカロスが若干嫉妬の目線で見ているが、その光景はとても微笑ましい。

 

そして、ドレディアが手を握った際……気のせいかもしれないが。

 

 

タツヤが、微笑んだような気がした。

 

 

今日の面会時間も終わり、タツヤの手持ちの全員はみんなで一緒に

ポケモンセンターへ帰って行くのだった。

 

 

 

 

───その日の23時頃。

 

 

 

 

─────。

 

「……んぁ?」

 

ん、あれ……ここどこだ。

あぁ、ベッドだねぇ。やーらかくて清潔だ。

 

……あれぇ? 俺ここで寝る前って何してたっけ……?

 

んー。えーと。

 

まぁいいや。寝よう。おやすみなさい。

 

 

 





ぬっぺふほふ

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