うちのポケモンがなんかおかしいんだが   作:右肘に違和感

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10/08 処方箋追記


9話 虫天国

「えーっと、このまま道なりでトキワの森、と……」

「ディァ。」

 

こんにちわ。

最近名前が呼ばれていないため自分で名前を忘れかけている存在、タツヤです。多分。

 

トキワシティでの小休止も(小休止の割には長く居ついた気がするが)ひとまず終え

現在、また気楽な旅路へ戻っている。

 

ポケモンセンターのふかふかなベッドは名残惜しいが、そこで生活を続けるわけでもない。

体が贅沢を覚えぬうちに旅立たないと……

 

ちなみにあの後数日はトキワシティに居た。

露店のお兄さんの所にも顔を出したし、俺も俺で今度は露店で弾き語りをした。

露店の場所の方が前回の場所より人通りもまばらであり、結構のんびり演奏出来ていたのがよかった。

まあ、お兄さんにも「その歌は自作なのかい?」と突っ込まれ、ちょっとバツが悪い思いはしたけどね。

 

前回の場所よりは収入も1500円と全然少なかったが、こちとら既に1万を稼いでいる。

その日は別段収入が少なくても問題がなかったので、楽しくお兄さんとお話しながらやってました。

 

しかしドレディアさんも歌を(というか曲だな、多分)気に入ってたのは驚いた。

そういう方向性皆無だと思ってたんだけど……。

あれかな、草木に歌聴かせると成長が早くなるとかそっち系で気に入ったのか?

 

街を出る際にはお兄さんに見送ってもらえた。

ドレディアさんと2人で普通に行くつもりだったから、若干感動してしまった。

やはり人とのふれあいってぇのは良いもんだー。お兄さん愛してる。

 

ドレディアさんもドレディアさんでお兄さんから売り物をもらい

しばらくこれが食えないとわかると結構名残惜しそうにしてた。

本当にお世話になりました。またいつか来ます。

 

 

 

そんなわけで、現在えーと……何番道路よここ。

まあどこでもいいや、トキワと森を繋ぐ道です、うん。

 

「一応は地図の通りに道なりに進んで行くつもりだから、次の目的地はニビシティだね」

「ド~レディ~ア~」

 

腕をぶんぶか振り上げながら道を進むドレディアさん。

本当にうちの子は元気でいらっしゃいます。

 

 

 

─────っと、しばらく歩いていたら小屋が見えてきた。

あそこがゲームとかでも小屋が建てられてた地点、兼・入り口かな?

 

「よーし、とりあえず森に到着だな。一応は注意しながら進むぞー」

「レーディァ!」

 

任せろ!といった感じで同意してくれるドレディアさん。

いやはや、ホントしょっぱなからLv15だとたくましいっすね。

 

 

 

 

──────で。

 

「何してんのドレディアさん……」

「ディ……ディァ~……」

 

現在の状況を3行で説明しよう。

 

・森で草むらに入った。当然野良ポケが出てくる

・キャタピー参上、出てきた途端にドレディアさんが俺の後ろに回って及び腰

 

うん、しっかり3行で埋まったな。

ぽちっと図鑑を開いて相手の簡易情報を見てみると

 

・キャタピー Lv4程度

 

普通にチンケな感じである。一体どうしたんだドレディアさん。

 

(……まさか元々虫が苦手だったのか? でもそうなるとシン兄ちゃんとの一戦が矛盾するな……)

 

ふむ、ちょっと謎が多いし色々試してみようか……

 

「とうっ」

「ディッ!?」

 

とりあえず素早くドレディアさんの後ろに回りこんでみた。

反応を見る限りは、驚いているなぁ。

 

「さぁさぁ、頑張って。ほれ、ほれ、ほれ

 倒さんと先に進めんよ、ほれ、ほれ、ほれ」

「ド、レ……!」

 

うーん、顔はやはり引きつっている感じである。少なくとも今の時点で虫は苦手、と。

……前がそうじゃなかったってんならシン兄ちゃんとの一戦でトラウマ化したか……?

 

と、考えていたところへ。

 

「ピキィ」

 

と鳴きながらキャタピーが迫ってきた。

 

「……………レ」

「ん……? レ、だと……?」

「ディアァァァァァァーーーー!!!!」

 

ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド………

 

 

 

 

 

「…………」

「…………」

 

えーと……。

 

「行っちゃったねぇ……」

「ピキィ……」

 

叫んだと思ったら、一目散にドレディアさんが逃げ出した。

その場に取り残される俺とキャタピー君。

 

「どうしよう……?」

「……ッピ!? ピキィ!!」

「って、ぬわス!! 何をしやがるキャタピー!!」

 

こいつ、いきなり体当たりしてきやがった。なんとか交わしきったが。

あれか、俺が問いかけたから当初の予定だった戦いを思い出したってか。

相手いねえだろうが、逃げてったろうが。俺とやるってかコノヤロウ。

 

「てめぇ……上等だぁ……」

「ッピ!?」

 

俺がゆらりと殺気立つと、キャタピーがあまりの変貌振りに警戒を露にする。

 

「ポケモンがいねえと人間様が何も出来ないと思ってやがんのかぁ……!?」

「…………ッ!」

 

どうやら俺の動きにあわせて体当たりをしようとしているらしい。

虫独特の動きで攻撃の構えを取り始めた。良いだろう、やってやんよ……。

 

「後悔すんなよ……!

 唸れぇッ!!   俺のッ!!

 超 ・ 必 ・ 殺  !!」

「──ッッ!!」

 

俺の動きに反応を示し、ぶち当てる構えを取るキャタピー。

 

 

─────ッ!今だッッ!!!

 

 

俺はタイミングを合わせて一気に加速するッ!!!

 

 

「───逃げるんだよォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!」

 

 

ダダダダダダダダダダダダダダダダダダ……─────

 

 

フハハハハ、見たか諸君!! これこそが人類最強の必殺技!!

『戦・略・的・撤・退★ミ』である!! ありがとうJOJO!!

今の俺は風ッ!! 真空ッ!! 誰よりも早くッ!! 誰よりも尊いッ!!

 

 

 

今思うと、一人取り残されたキャタピーがちょっと可哀想だなぁ。

 

 

 

 

 

 

さて、入り口の小屋まで息を切らせて辿り付いた訳だが……

虫の宝庫である森に、逃げながら居続けるとも思えないし

確実にここらにドレディアさんが居ると思うんだが……

 

─────殺気ッ!!

 

「そこだァァァーーーッッ!!」

 

俺はそろりと拾った小粒の石を素早く投擲ッ!!

 

コツンっ

 

「ディーッ!?」

 

                CRITICAL HIT!!

                First Attack Bonus!!

                        + 5 0 0 0

 

「よしっ!! ……って、ドレディアさんじゃん」

「ァー……!」

 

顔を手で覆っているドレディアさん。

どうやら当たり所が素晴らしかったようである。ナイス俺。

 

「ったく……いきなり逃げ出さんでくれよ。

 置いてかれてキャタピーにもろに襲われたよ」

「…………#」

 

……久しぶりに、顔に青筋立てたな。やはりクレイジーはクレイジー。

最近やたらと可愛らしかったから性格でも変わったかと思ったが……

何々、【石を当てた事に対しての謝罪は無しかテメェ……】だと?

 

ッハン! 何を言うか!!

 

「元はと言えば何も言わずに逃げ出したドレディアさんが悪い!!

 これについては絶対に退かんぞっ!! 媚びぬぞっ!! かえりry」

「─────」

 

俺の言葉を聞き入れたドレディアさんが、ゆらぁりとこちらへ歩み寄ってくる。

……ッフ、たかがキャタピーに逃げ出した貴様が俺に立ち向かうか。

 

「ククク……その意気や良し。

 貴様の間違った常識、今こそ訂正してくれようッ!!

 トアァァーーーーーーーーーーーーーッッ!!」

「ディアァアアァァアアアアアッッ!!!」

 

そして俺とドレディアさんは交錯するッッ!!

 

 

 

 

 

2秒で負けました。

 

 

 

 

 

「石投げてすんませんっした……。 マジ反省してます……勘弁してください……」

「……ァ゛ア゛?」

 

土下座で対応するも受け入れてもらえん。

目の前にはヤンキー座りで青筋+しかめっ面のドレディアさん。

 

ん? 男のプライド? そんなんで腹膨れねえべさ。

 

 

「まあそれはさておき、何でいきなり逃げ出したの。

 大体予想ついてるけど、さすがに仮の主(笑)の俺をほっぽって逃げちゃあかんっしょ」

「ディ#」

 

土下座をやめ、とりあえず小屋の椅子に座り一息ついた。

【まだ許してねーぞゴラァ】という視線が来てるが気にしない俺。

過去は悔い改め続けるためにあるものではない。

 

「……兄ちゃんのバタフリーに負けたのがそんなにキツかった?」

「ッ!」

 

先から思っていた事を伝えてみると、図星のようである。

 

俺からしたらやりすぎな結果なんだけどなぁ……

苦手なタイプで、なおかつレベルも上で、ダメージも通りづらい相手を

たったの1ターンで追い詰めてんだぜ? 明らかに無双スペックっしょこれ。

 

でもまあ……こういうのって一期一夜で直るってんなら

誰も世の中で苦労してないんだよな……。さすがに森を通るまでに直してもらうのは無理だろう。

 

……しょうがない、か。

 

「森は諦めて、別のルート探そうかー……」

「ディッ!? ディ~ア!?」

 

【良いの?行かなくても大丈夫なの?】と言った感じだろうか。

若干顔からうれしそうな感じが出ている。

 

「まあ、今日はこれ以上動き回るのはやめておこっか。

 野宿よりはマシな小屋があるわけだし、ここに泊まっちゃおう」

「ディア~♪」

 

そんなに虫に遭いたくないのか。ここまでの毛嫌いになるとさすがにちょっと不安も出てくる。

どこかでこのトラウマ取り除かないとなぁ……

 

 

この世界のチャンピオンが虫大好き系の人だったら即座にこのチートが戦力外と化す。

ん~む、どうやってこのトラウマ取り除けばいいかなぁ……


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