ウルトラマンゼロの使い魔
第百二十八話「一冊目『甦れ!ウルトラマン』(その1)」
宇宙恐竜ゼットン
ウラン怪獣ガボラ
エリ巻き恐竜ジラース 登場
王立図書館の幽霊騒動の解決を頼まれたルイズと才人。しかし、ルイズが突如として意識不明の状態に陥ってしまう。
それから一夜明けたにも関わらず、ルイズは一向に目覚めなかった。才人は図書館の控え室にて、焦燥した様子でウロウロと歩き回る。
「くそッ、ルイズは一体どうしちまったんだ……。いきなり倒れて、目を覚まさないなんて」
「お姉さま、原因分からないの?」
「パムー……」
シルフィードとハネジローがベッドに寝かされたルイズを見下ろし、タバサに不安げに目を向けた。しかしタバサは力なく首を振る。
「分からない」
知識が豊富なタバサでも、ルイズの昏睡の原因は不明であった。思いつく限りの処置を取ったが、ルイズには全く効果がなかった。
ゼロが意見する。
『怪獣とか宇宙人とか、そういう類の気配はなかった。……だが、リシュの件もある。何か未知の力がルイズに働いたのかもしれねぇ』
やがて、控え室の扉がノックされて一人の女性が入室してきた。
「失礼します」
「リーヴル!」
王立図書館の司書のリーヴルだ。朝になって出勤してきたようだ。
彼女はテーブルの上のガラQを置くと、才人たちに振り返って告げた。
「タバサさんの連絡で、おおまかな事情は伺ってます。その件で一つ、お話しが」
「ルイズのこと、何か知ってるのか!?」
才人の問い返しにうなずいたリーヴルは、自身の目でルイズの容態を確かめてから才人たちに向き直った。
「間違いありません……。これは、『古き本』の仕業です」
「古き本?」
「お姉さま、知ってる?」
シルフィードにタバサは否定で答えた。リーヴルが説明を行う。
「この図書館には、数千年前の本が所蔵されています。内容は愚か、文字も読めません。それら本を総称して『古き本』と呼んでいます」
「でも、その本とルイズに何の関係があるんだ?」
「『古き本』には、絶筆のものもあります。諸事情で、本が未完のままで終わってしまうことです。そして絶筆された『古き本』には、最後まで完結したいという強い想いから、魔力を持つ例があります。ルイズさんはそれら本に魔力を吸い取られ、本の中に心を奪われた。そう考えて問題はないでしょう」
タバサが驚きで目を見開く。
「本が魔力を持つなんて話、聞いたことがない」
「世間では全くといっていいほど知られていない話です。現に、同じ事例は記録にある上では、千年前に一件のみです」
再度ルイズに目を向けるリーヴル。
「どうやらルイズさんは、かなり強大な魔力を持っているみたいですね。それを狙われて……」
「強大な魔力? そうか、“虚無”の力か……」
「キョム?」
つい口から出た才人が、ガラQに聞き返されて我に返った。
「ああ、いや、何でもない! それで、ルイズは治るのか!?」
リーヴルは真剣な面持ちになって返答した。
「手はあります。ですが、それを決断するのは私ではありません」
「ど、どういうことだ?」
「本が未完で終わっていることに未練を抱いているのなら、完結させればいいのです」
ですが、とつけ加えるリーヴル。
「『古き本』は作者以外のペンを受けつけません」
「何も書けないんじゃ、完結させられないだろ。どうすればいいんだよ!」
突っ込む才人に、リーヴルは冷静に返す。
「本の中に入るんです。代々王立図書館の司書を勤めている私の家系には、『古き本』の魔力を利用してその本の世界に入り込む独自に開発した魔法があります。そうして本の登場人物となって話を進行させ、完結させるのです」
「本の中に入るってサラッと言うけど、危なくないのね?」
シルフィードの疑問に首肯するリーヴル。
「危険です。本の中に入った者は、一時的に本の世界が現実となるので、その中で傷つけば現実の傷として残ります。本の中で死ねば当然、命を落とします。故に滅多なことでは使うことの許されていない、禁断の魔法なのです」
「……本を完結させるか死か、その二択って訳か……」
つぶやいた才人が決心を固めた表情で、リーヴルの顔を見つめた。
「一度に本の中に入れられるのは何人だ?」
「……私の力では、一人が限度です」
「一人か。それじゃあ決まりだな。俺がルイズを助け出す!」
タバサは心配の視線を才人に向けた。それに気づいた才人は一旦リーヴルから離れて、タバサに説いた。
「大丈夫だ。俺はゼロと魂が一つになってるから、ゼロも一緒に本の中に入れるはずだ。ゼロの力があれば、よほどのことがない限り命の危険なんてないよ。心配いらないさ!」
「……ん」
タバサは力になれないのがもどかしそうであったが、こんな場合に才人を止められないことは知っているし、彼を信頼してもいる。素直にルイズのことを才人に託した。
「パムー」
話していたら、ハネジローがパタパタとテーブルの上に六冊の本を一冊ずつ運んできた。タバサがリーヴルに伝える。
「これらが倒れてたルイズの側に落ちてた」
「この六冊が、ルイズさんの魔力を吸い取った『古き本』のようですね」
六冊を確かめたリーヴルが眉間に皺を寄せる。
「……厄介ですね。これらは『古き本』の中でも一番力の強いもの。砂漠で発見されてトリステインに流通したもので、どこで書かれたものかも不明です」
「曰くつきって奴か。どういう内容なんだ? って、読めないのか……」
何気なく本の一冊を開いた才人が、唖然と固まった。
「いや、俺これ読めるぞ! 日本語……俺の国の文字で書かれてる!」
「そうなのね!?」
シルフィードたちの驚きの視線が才人に集まった。才人は他の五冊にもざっと目を通す。
「全部そうだ! しかも……全部ウルトラマンの本じゃねぇか!」
仰天する才人。六冊全部が、ウルトラ戦士の戦いを題材にした作品なのだ。これら六冊も、自分のように日本からハルケギニアに迷い込んできたものなのだろう。それと日本人の自分が出会うとは、何という巡り合わせか。
同時に才人は、若干険しい顔となる。
(となると、ゼロでも簡単にはいかないってことになるな。何せ、本の世界で待ってるのは怪獣や宇宙人との戦いだ……)
ウルトラ戦士の戦いが題材ということは当然、本の中で繰り広げられている世界でも怪獣、宇宙人と戦うことは避けられない。ゼロの力ならばよほどのことは、と思っていたが、まさかこんなことになろうとは。
しかしそれならばなおさら自分たちが本の世界に行かなければならない。他の者では、この六冊の物語を完結させるのはほぼ不可能であろう。改めて決心した才人は、最初に中に入る本を選択する。
「……よし、これにしよう。最初には、『始まりのウルトラマン』の本が相応しいと思う」
「決まりましたか」
「早速やってくれ。準備はもう出来てる」
才人から本を受け取ったリーヴルが、本の世界に旅立つ前に忠告した。
「生死以外にもう一点、重要なことを。あまりに物語を改変してしまうと話が破綻し、その本の世界は閉じてしまい完結できなくなります。要するに、最低でも本来の主役を立て、その人物に物語を終わらせてもらう必要があります」
「俺が何もかも物語の中の問題を解決しちゃいけないってことだな。分かった」
ただ怪獣たちを倒すだけでなく、本の中のウルトラマンと共闘する必要があるようだ。その条件を解決しなければならないとは負担が増加したように思えるが、きっと何とかなるだろう。同じ正義の心を持つウルトラ戦士なのだ。
もう一つ、タバサがリーヴルに問いかけた。
「最後に、これだけ聞かせて」
「何でしょうか?」
「……何故千年以上前の貴重な本が、一般の書架に置いてあったの?」
リーヴルは一瞬言いよどんだ。
「……私にも分かりません。ですが元は幽霊が騒動の発端。もしかしたら、『古き本』自体が魔力を用いて人の目に留まるように動いたのかもしれません」
「……」
タバサは若干納得していなさそうだったが、それ以上の追及はしなかった。
そしてこれから本の中に入る才人に、仲間たちが応援の言葉を寄せる。
「俺も「一人」に数えられてるみてえだから、相棒と一緒に本の中にゃ入れねえ。けど俺がいなくてもしっかりやれよ! 娘っ子を頼んだぜ!」
「気をつけてなのね! 死んじゃ絶対に駄目なのね!」
「……頑張って」
「パムー!」
才人は彼らに笑顔で応える。
「ああ! 行ってくるぜ!」
リーヴルの前に立つと、彼女が才人に魔法を掛ける。才人の視界がぐるぐると回り、目の前の光景が大きく変化していく……。
‐甦れ!ウルトラマン‐
「ピポポポポポ……」
荒野でにらみ合うウルトラマンとゼットン。ウルトラマンは八つ裂き光輪を投げつけて攻撃する。
「ヘアァッ!」
しかしゼットンは己の周囲にバリヤーを張り、八つ裂き光輪は粉々に砕け散ってしまう。
「ヘアァァッ!」
それを見たウルトラマンは肉弾戦に切り替えるが、ゼットンの水平チョップで返り討ちにされた。
「ウアァッ!」
地面を転がりながらも立ち上がったウルトラマンは、必殺のスペシウム光線を発射!
「シェアッ!」
だが直撃したスペシウム光線は、ゼットンに吸収されてしまう。
「ウアァッ!?」
ゼットンは更に吸収したエネルギーによって、腕から光波を発射。ウルトラマンの急所であるカラータイマーに命中してしまう! ウルトラマンのカラータイマーが赤く点滅し出した。
「どうしたウルトラマン!?」
叫ぶムラマツ。ゼットンは容赦なく光波を撃ち続けてウルトラマンを追撃。
「やめろ! ゼットン!」
「危ないわッ!」
絶叫するイデと『フジ』。だが致命傷をもらったウルトラマンの身体がよろめき、前のめりに倒れてしまった。
仰向けに横たわるウルトラマンを見下ろすゼットン。このままではウルトラマンの命が危ない!
「よし、ウルトラマンの仇討ちだ!」
ムラマツたち科特隊がゼットンに攻撃開始。しかしスーパーガンの光線はゼットンに全く通用していない。
「よぉし! イデ隊員の、すごい兵器をお見舞いしてやる!」
するとイデがスーパーガンの銃口に新兵器スパーク8を接続。強化された光弾がうなりを立てて飛び、ゼットンに直撃。
ゼットンは爆炎の中に呑まれ、粉々に吹っ飛んだのだった。
「やったぁッ!」
――ゼットンは、イデ隊員の活躍で撃退された。しかし、常に勝利を誇ってきたウルトラマンは、この戦いで遂に敗北を味わったのである。
衝撃の事件から一ヶ月が過ぎていた。強敵ゼットンに対する勝利で勢いづいた科学特捜隊は向かうところ敵なしであったが、一方でウルトラマンはスランプに陥り、怪獣に黒星を重ねていた。
そんな中、日本各地で怪奇現象が続出。ハヤタは怪獣総攻撃の予兆を感じ取っていたが、それはウルトラマンと一体である彼にしか感じられないもの。誰かに話すことは、自分がウルトラマンであることを告白すること。ハヤタは悩んだ……。
しかし彼の決心を待たずして、怪獣軍団の尖兵が出現したのだ!
「ゲエエオオオオオオ!」
「ピギャ――――――!」
緑に覆われた山脈の間を、二体の怪獣が行進している。一体は這いつくばった姿勢、もう一体は直立した姿勢だが、どちらも首の周りがエリで覆われているという共通点がある。四足歩行の方はエリが閉じていて首がその中に隠れていた。
ウラン怪獣ガボラとエリ巻き恐竜ジラースだ! その進行先には人間の町がある。怪獣たちが町に到達したら大惨事だ!
「くっそー、怪獣どもめ! ここから先には行かせないぜ!」
「みんな、何としても食い止めるんだ!」
それに立ち向かうのは科特隊。アラシがスパイダーで射撃し、他の面々もムラマツの激励の下にスーパーガンで応戦する。
「ゲエエオオオオオオ!」
「ピギャ――――――!」
しかし彼らの射撃は、ガボラとジラースにほとんど効果を上げていなかった。アラシが大きく舌打ちする。
「くそぅ、一匹だけなら何とかなるが、二匹同時ってのは苦しいぜ……!」
「イデ隊員、スパーク8は使えないの!?」
『フジ』がイデに尋ねたが、イデは首を横に振った。
「スパーク8は一発限りしかないんだよ!」
「もうッ! 肝心な時に使えないわね!」
『フジ』の荒々しい言動に、イデはやや首をすくめた。
「フジ君、何だか気が強くなったんじゃないか? それに心なしか、背も縮んだような……」
「そんなこと言ってる場合じゃないぞ、イデ! 戦いに集中しろ!」
アラシが叱りつけている一方で、ハヤタは懐の変身アイテム、ベーターカプセルに目を落としたが……。
「……駄目だ。今の俺では、ウルトラマンに変身しても怪獣に勝てない……」
「ハヤタ! 危ないぞッ!」
ハヤタが力なく首を振っていると、ムラマツが警告を飛ばした。
我に返って顔を上げたハヤタに、ジラースが光線を吐こうとしていた!
「ピギャ――――――!」
「うわぁぁぁッ!」
「ハヤターッ!!」
絶叫するアラシ。ハヤタのピンチ!
その時、『フジ』が空の一画を指差して叫んだ。
「見て! あれ何かしら!」
空の彼方から、何かが流星のように降ってきている。思わずそれに目を奪われる科特隊。
「セェェェェェアッ!」
それは巨人だった! 空の彼方から脚を突き出して猛然と地上に迫り、ジラースに飛び蹴りをぶちかました。
「ピギャ――――――!」
ジラースは巨人に蹴り飛ばされて、ハヤタは救われる。ガボラが驚いたように巨人に振り返った。
「な、何だあの巨人は……」
科特隊の面々も唖然として巨人を見上げた。青と赤のカラーリングの肉体で、頭部には二つのトサカが生えている。目つきはかなり鋭いが、勇気と優しさが眼差しから見て取れた。
「ハァッ!」
ガボラに対して空手を思わせる構えを取った巨人の胸元には、丸い発光体が青々と輝いていた。それを指差すイデ。
「胸にカラータイマーがついてるぞ!」
「じゃああの巨人は、ウルトラマンということか……!?」
ぽかんと口を開くムラマツ。しかし一番驚いているのはハヤタであった。
「俺以外の、ウルトラマン……!?」
ウルトラマン以外の『ウルトラマン』は、突っ込んできたガボラにこちらから向かっていく。素早い蹴り上げがガボラの首に決まり、ガボラは押し返された。
「ゲエエオオオオオオ!」
ガボラは頭部を覆い隠すヒレを開いて、口から熱線を吐き出した。だがウルトラマンは側転して回避。
「ピギャ――――――!」
「セアッ!」
そこに起き上がったジラースが背後から襲い掛かるが、ウルトラマンは機敏に反応して裏拳を顔面に打ち込んで、振り返りざまの横拳でジラースを返り討ちにした。
怪獣二体を相手にしてむしろ優勢なウルトラマンの様子に、科特隊の目は思わず釘づけになっていた。
「強い……!」
「ええ、すごい強さですね、キャップ……!」
ムラマツとアラシは感心しているが、ハヤタは複雑な表情で自分以外のウルトラマンの戦いぶりを見上げていた。
「テェェェイッ!」
ウルトラマンはガボラを飛び越えて背後に回り込み、その身体を鷲掴みにして真上に放り投げた。
「ゲエエオオオオオオ!」
「ハァァァァァッ!」
ウルトラマンはジャンプして空中でガボラをキャッチし、真っ逆さまに地面に叩きつけるパイルドライバーを決めた。ガボラはこの一撃によって絶命し、地面の上に横たわる。
「ピギャ――――――!」
ガボラを倒したウルトラマンにジラースが突進していくが、ウルトラマンはそれをいなした上で、エリマキに手を掛けて引き千切った。
「ピギャ――――――!?」
首に手を当てて、エリマキがなくなったことに慌てふためくジラース。ウルトラマンは千切ったエリマキを投げ捨てると、トサカに手を伸ばして……何と取り外した!
「あれ取れるのか!?」
えぇッ! と驚くアラシとイデ。ウルトラマンは取り外したトサカを逆手に持ち、ジラースに向かってまっすぐ走っていき……。
「セェアッ!」
喉元にトサカを走らせて切り裂いた。トサカは刃だったのだ。
ジラースは口の端からツゥッと血を垂らし、前のめりにばったりと倒れ込んだ。
「シェアッ!」
圧倒的な実力で立て続けに怪獣二体を撃破したウルトラマンは、両腕を天高く伸ばして空に飛び上がり、どこかへと飛び去っていく。
科特隊は突然現れ、風のように去っていくもう一人のウルトラマンの後ろ姿を、呆然と見送っていた。
……ウルトラマンゼロから元の姿に戻った才人は、山の中腹からそんな科特隊の様子を見下ろしていた。
『とりあえずは危機回避だな。こんなところでウルトラマンに死なれてたら、いきなりアウトだったぜ』
「ああ。それにしても、本の中とはいえ、あの最初の地球防衛隊、科学特捜隊の人たちとこうして出会うことになるなんてな……。夢みたいだよ」
そう、ここか本の世界。才人は『古き本』の一冊目、『甦れ!ウルトラマン』の中に入ったのだ。そして本文が途切れていた箇所、科特隊の窮地を救ったのであった。
史実ではウルトラマンはゼットンに敗れた後、やってきたゾフィーとともに光の国に帰ったのだが、この作品は「もしもウルトラマンが帰らず、地球に残っていたら」のifを書いたもののようである。
感慨深げに科特隊のムラマツ、アラシ、イデを順番にながめた才人だが、『フジ』に目を留めて微妙な笑みをこぼした。
「……けど、その中にルイズが混じってるのが、意識が現実に引き戻されるような感覚がするな」
『正直、あの制服ルイズに似合ってねぇよな』
そう、科特隊の紅一点、フジ隊員の姿は、ルイズのものに置き換わっているのだった。それが、ここが現実の世界ではない何よりの証拠である。そして見た限り、ルイズはすっかり『フジ』の役回りになり切っているようで、周りも別人になっていることに
気づいていないようであった。
『まぁそれは置いといて、こっからこの本を完結させるために頑張らねぇとな。まずは、本来のウルトラマンに奮起してもらわねぇと』
「ああ。俺たちが怪獣を全部やっつけるってのは駄目だって話だったしな」
ゼロと相談している才人がふと気配を感じ、顔を上げた。
「……そのご本人が、向こうからいらしたな」
才人の元に、ウルトラマンことハヤタが歩いてきたのだった。
≪解説コーナー≫
※「甦れ!ウルトラマン」
1996年に『ウルトラマンゼアス』の同時上映として公開された短編映画。一部を除いて『ウルトラマン』の映像をつなぎ合わせたいわゆる再編集作品であるが、ストーリーはオリジナルのものであり、音声が完全新規のアフレコになっている。最終回の「さらばウルトラマン」でウルトラマンが光の国に帰らなかったifストーリーとなっており、テレビ版で描かれたウルトラマンの存在によって防衛チームの意義の喪失とは真逆の、防衛チームの活躍によってウルトラマンが失った存在意義を再び見出すという内容となっている。
※ウルトラマン
最早説明するまでもない、長い歴史を誇る『ウルトラマンシリーズ』の最初の作品である特撮の金字塔『ウルトラマン』の主役である、史上最初のウルトラ戦士。元々は宇宙墓場への護送中に逃走した怪獣ベムラーを追って地球に来たのだが、そこでハヤタと衝突してしまい、彼を蘇生させるために一体化。そのまま地球に留まり、次々出現する怪獣や侵略宇宙人と戦って地球を守り続けた。
『ウルトラマン』は前作『ウルトラQ』において、怪獣と戦うヒーローが必要だという意見によって誕生した経緯を持つ。特撮の神様と呼ばれた円谷英二監督を始めとした職人たちの妥協しない姿勢によって非常に完成度の高い作品となり、平均視聴率36.8%という驚異の数字を叩き出した。一方であまりに妥協しない姿勢のために制作が間に合わなくなるという非常に珍しい理由での三クールの打ち切りとなったが、ここで打ち立てた人気は間違いなく後世で数え切れないほどの派生シリーズが制作される原動力となった。
※宇宙恐竜ゼットン
「さらばウルトラマン」に初出の、シリーズの元祖最強怪獣。ゼットン星人最後の切り札であり、それまで数多の怪獣を打ち倒してきたウルトラマンを完全敗北させ、ヒーローが敗れたまま番組が終わりを迎えるという伝説を作り上げた。当時の子供たちはこの展開に強い衝撃を受け、ゼットンは怪獣のインフレが進んだ今になってもなお最強の呼び声が高い。ちなみに一兆度の火球を放つことで有名だが、これは元々雑誌でつけられた設定。そのため公式とは言い難かったのだが、字面のあまりのインパクトにより後に正式に逆輸入された経緯がある。
『帰ってきたウルトラマン』では最終回「ウルトラ5つの誓い」に登場。バット星人が対ウルトラマン用として連れてきた怪獣であり、郷も強く警戒していたのだが、スーツが次作『A』制作の兼ね合いによりかなり出来が悪く、かなりクタクタでお世辞にも強そうに見えないのが難点。しかしそこが逆にいいと一部で人気がある模様。
『ウルトラマンパワード』では最終回「さらばウルトラマン(原題:The Final Showdown ?)」にリデザインされたパワードゼットンが登場。サイコバルタン星人の調整によって作り出されたパワードを倒すための最強の怪獣であり、実際圧倒的な強さでパワードを極限まで追いつめた。羽があるが、作中では飛行することはなかった。
『ウルトラマンマックス』では第十三話「ゼットンの娘」に登場。この話ではゼットン星人も登場しているので、区別として「ゼットン怪獣」と呼ばれている。相変わらず高い実力に加えて、マクシウムカノンも防ぎ切るバリアでマックスを追い詰めた。トミオカ長官がハヤタを演じていた黒部進氏なので、ゼットンを異様に警戒するという小ネタもあった。
『ウルトラマンメビウス』では第二十七話「激闘の覇者」に、本物ではないデータ上のプロトマケットゼットンが登場。本来ならGUYSの味方の立ち位置なのだが、プログラムの破損によって暴走し基地のメインコンピューターを攻撃し始め、メビウスとの戦闘になる。この時ゼットンを抑えるため投入されたプロトマケットメビウスが倒される場面は、初代ウルトラマンがゼットンに敗れるシーンのオマージュ。またOV「ゴーストリバース」では強化形態のEXゼットンが登場している。このEXゼットンは他のEX怪獣とは異なり、ゲームの『大怪獣バトル』で作られたオリジナルである。
『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』では第十一話「ウルトラマン」から第十三話「惑星脱出」に登場。ケイトが使役する怪獣であり、ゴモラ、リトラ、エレキングの三体掛かりでも倒せない圧倒的な実力を誇る。体型が人間に近いこともあって、かなり派手なアクションを見せている。
『大怪獣バトルNEO』では第三話「大暴走!レイオニックバースト」に登場。ナックル星人(RB)によって召喚され、レイのゴモラと戦う……のだが、それはガルベロスの作り出した幻影であり、レイとゴモラを疲弊させる罠であった。
映画『ウルトラ銀河伝説』ではベリアルの怪獣軍団の一体として登場。軍団では長く生き残るが、ウルトラマンゼロのゼロスラッガーアタックによって倒された。
『ウルトラゾーン』ではコントコーナー「不良怪獣ゼットン」の主役を務める。地球防衛高校の不良の下っ端であったが、その正体はウルトラマンを倒したとして恐れられている最強の不良怪獣。しかしその称号が重荷となって、自分のことを知らない地球防衛高校に来たのであった。
映画『ウルトラマンサーガ』では強化形態のハイパーゼットンが登場した。『てれびくん』付録のDVDではその前日譚として、ハイパーゼットンに改造されることになるゼットンが登場している。
『ウルトラマンギンガ』では番外編「残された仲間」に登場。マグマ星人(SD)が隠し持っていたスパークドールズで、一人地球に取り残され逆上したマグマ星人によって降星町の攻撃を命じられ、ウルトラマンとティガにライブした千草と健太と戦った。また劇場スペシャル『ウルトラ怪獣☆ヒーロー大乱戦!』ではSDIとして登場し、友也がライブしていた。
『ウルトラマンX』では第八話「狙われたX」に登場。マックスへの復讐を狙うスラン星人クワイラによって使役され、エックスにゼットンアーマーを装着させて操るための罠として利用される。その後のゼットンアーマーは悪性プログラムが除去されてエックスの武器となる。
『ウルトラマンオーブ』では派生の光ノ魔王獣マガゼットンが登場。発光体の色はデジタル合成で表現されている。またハイパーゼットンからの派生のハイパーゼットンデスサイスも登場している。
『ウルトラマンジード』では第十一話「ジードアイデンティティー」と第十二話「僕の名前」、第二十一話「ペガ、家出する」、第二十三話「ストルムの光」に、キングジョーのカプセルとを使用したベリアル融合獣ペダニウムゼットンが登場した。
※八つ裂き光輪
初代ウルトラマンの切断技であり、初代の代表的な必殺技の一つ。別名ウルトラスラッシュであり、他のウルトラ戦士の何人かも使用している共通技の一つだが、「八つ裂き光輪」の名称を使っているのは初代のみ。
※スペシウム光線
初代ウルトラマンの最も代表的な必殺技であり、ウルトラマンと言えばこれと言っても過言ではないくらいに有名。十字に腕を組んだポーズは以降のウルトラ戦士たちもそれぞれの必殺光線のポーズとして構えている。
※ムラマツ
科学特捜隊のキャプテンであり、隊員たちからはキャップと呼ばれて慕われている。下の名前はトシオだが、これは『甦れ』で設定されたもの。フジとホシノ少年以外は皆そうである。
※イデ
科特隊の開発担当であり、科特隊の兵器のほとんどは彼の手掛けたもの。本名イデ・ミツヒロ。普段はおとぼけているがその頭脳は非常に優秀であり、発明品のほとんどが実際に怪獣を撃破している天才である。
※フジ
科特隊の紅一点で、主に通信手を担当しているが前線での実力も決して他の隊員に劣ってはいない。本名フジ・アキコ。他の隊員とは違い、本放送時でフルネームが設定されていた。
※スーパーガン
科特隊の主力兵器。拳銃型の光線銃で、ほとんどの場合は稲妻状の光線が発射される。銃口にはアタッチメントを装着することで、色んなものを発射することも可能。
※スパーク8
第三十七話「小さな英雄」で登場したイデの発明品。スーパーガンに取りつけて放つ弾丸の威力は凄まじく、再生ドラコを跡形もなく粉砕した上、ジェロニモンにもとどめを刺している。
※科学特捜隊
元祖地球防衛チーム。怪獣との戦闘よりも怪事件の捜査に重点を置いているので、後の防衛チームと比べたら怪獣との戦闘への積極性に欠けるように見えるが、実際は怪獣の撃破数が歴代一位であり、この記録は今になっても破られていない。
※ウラン怪獣ガボラ
『マン』第九話「電光石火作戦」に登場。ウランを常食とする怪獣であり、ウランを求めて地上を我が物顔で進行して科特隊をてこずらせた。普段は首を取り巻くように生えているヒレで顔を隠しているが、戦闘時や光線を吐く時には開いて顔を晒す。元々は『Q』
のパゴスが再登場する予定であり、そのため特徴が似通っている。
『パワード』では第五話「電撃防衛作戦(原題:Monstrous Meltdown)にリデザインされたパワードガボラが登場。オリジナルとは異なり二足歩行であり、身体中がウラン鉱石であるため下手な攻撃は核爆発を招く恐れがあり、パワードも迂闊には攻撃できなかった。
※エリ巻き恐竜ジラース
『マン』第十話「謎の恐竜基地」に登場。元々はネス湖に生息していた恐竜の生き残りだったが、モンスター博士と呼ばれる中村博士によって日本に運び込まれ、極秘に飼育された中で怪獣化したもの。見た目はまんまゴジラにエリマキをつけただけであり、ここまで露骨な着ぐるみの再利用も珍しかった。
※アラシ
科特隊の切り込み隊長的存在。本名アラシ・ダイスケ。怪力の持ち主であると同時に射撃の名手で、スパイダーはほぼ彼の専用である。
※『フジ』を訝しむイデ
イデは、特に初期は勘が鋭く、ハヤタがウルトラマンに変身しているのではないかと勘繰るシーンもあった。それは実際正解であった。
※ベーターカプセル
元祖ウルトラマンへの変身アイテム。80のブライトスティックやティガのスパークレンス等、これをモチーフとした変身アイテムも数多い。
※投げ技で倒されるガボラ
ガボラはウランを身体の中に溜め込んでいるからか、ウルトラマンもスペシウム光線は使用せずに打撃と首投げで撃破した。
※ゼロスラッガーで斬られて倒されるジラース
ジラースはウルトラ霞切りで斬り伏せられた。これは東宝との契約で、スーツを爆発で痛めないで返却するための措置と言われている。
本の中のウルトラマンと対面する才人とゼロ。本を完結させるためには、彼に立ち直ってもらわないといけない。しかしそれを待たずして、恐ろしい怪獣軍団が行動を開始する! ゼロはこの危機を乗り越えることが出来るのか! 次回「一冊目『甦れ!ウルトラマン』(その2)」みんなで見よう!