ウルトラマンゼロの使い魔   作:焼き鮭

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第百二十四話「近海の怒り」

ウルトラマンゼロの使い魔

第百二十四話「近海の怒り」

大ダコ スダール

オイル怪獣タッコング

スクラップ幽霊船バラックシップ 登場

 

 

 

 トリステイン魔法学院の学院長室。ここに呼び出された才人は、オスマンに「あるもの」を見せられていた。

「これは……!」

 文机の上に置かれた宝箱の中身をひと目見て、才人は思わず息を呑んだ。オスマンはその中身について説明を始める。

「さる貴族の館から見つかったものなんじゃが……君の世界のものじゃないかね?」

 オスマンの問いに肯定する才人。

「確かに……! でも……一度にこんなたくさん見たの、初めてです。すげぇ……!」

「やはり……! して、その使い方なんじゃが……形から推測すると……」

 オスマンは椅子から腰を浮かして、才人の耳元に口を寄せてヒソヒソと囁きかけた。

 オスマンの推測というものを耳にした才人は、ブンブン首を振って否定。

「いやいや! 確かに、それと似てますけれど……これは……」

 ゴニョゴニョと正しい用途を教えると、オスマンは目をいっぱいに開いて驚愕した。

「水に入る!? これで!?」

 ショックを受けて立ち尽くすオスマン。だが何かを思いついたかのように、ぼそりとつぶやく。

「……その様を、是非とも見てみたい……!」

「実を言うと、俺も……!」

 才人も固唾を呑んで、オスマンの言葉に同意した。

 それからオスマンは、クルリと窓の方を振り向いて外の景色に目をやった。

「……ちょうど、季節外れの暑さが続いておる。またとない機会じゃ。……早速、やってみようではないか……!」

 窓の外では、日差しによって空気が熱せられて陽炎が揺らめいていた。

 

 学院の門の外に一本生えている木の幹に背中を預けているルイズたちが、口を開いた。

「あっつ~……!」

「まだウルの月だってのに、最近真夏のような暑さが続くわね……」

 木陰に入っても軽減されない暑さに、ルイズとキュルケがへばった声を発した。玉のような汗が肌に浮かび、スカートを軽くパタパタさせたり開いた胸元を手であおいだりして涼を取ろうとしている。同じように木陰にいるティファニア、タバサ、モンモランシーも額に汗がジトッと浮かんでいた。

 ウルの月は徐々に気温が上がり、汗ばむ日も増えてくる時期ではあるが、数日前から真夏を先取りしたような暑さが続いてルイズたちは参っているのだった。

「全く、どうしてこう暑いのかしら。またソドムでも出てきたのかしらね?」

「ソドムって何?」

「怪獣。以前学院付近に現れた」

 唯一当時のことを知らないティファニアの質問に、タバサが簡単に答えた。

 そうしていると、キュルケがふとこんなことを言う。

「そういえば聞いた? 連日うだるような暑さが続くからって、急遽明日から一泊二日で、海に慰安に行くことが決まったって。オールド・オスマン自ら企画したみたいよ」

 それを聞いた途端に、ティファニアが嬉しそうな声を上げた。

「海ですか!? 一度見てみたかったの!」

「テファ、海を見たことないんだ」

「ええ。ずっと森にいたから」

 モンモランシーがティファニアの興味を駆り立てるように告げる。

「海はいいわよー。特に、夜の渚なんて神秘的でロマンチック……!」

「モンモランシー。波打ち際を散歩しながら、ぼくと一緒に星をながめないかい?」

 どこからともなくギーシュがひょっこりと現れ、誘いを掛けたが、モンモランシーはそっぽを向いた。

「ふんッ! 破廉恥隊とはお断りよ!」

「ぐはッ!?」

 にべもなく拒絶されたギーシュは肩を落とし、とぼとぼと帰っていった。

 オンディーヌは女風呂の覗きで株を落とし、女子から破廉恥隊と呼ばれて忌避されるようになってしまった。特にモンモランシーがギーシュに対しておかんむりの日々が続いているのであった。

 キュルケがやれやれと肩をすくめた。

「いい加減許してあげれば?」

「今許したらつけ上がるだけよ!」

 モンモランシーの怒りはまだまだ収まりそうになさそうだった。

 ここでルイズがふとつぶやく。

「それにしても、オールド・オスマンがそんなことをねぇ。いくら季節外れの暑さが続くからって、いきなり慰安旅行だなんて、何を考えてるのかしら」

「まぁ、オールド・オスマンは変わり種ですもの。生徒のためになるんだったら、どんな常識外なこともやってのけるんじゃない?」

 特に気にした風もなく答えるキュルケ。ルイズは先ほどのモンモランシーとギーシュの発言を思い返して、うっとりとした。

(夜の渚で散歩かぁ……。たまにはサイトとそんなロマンチックなことをするのも、悪くないわね)

 ……だが、彼女たちはこの時知らなかった。オスマンと才人の目論見を。そして、自分たちを待ち受けている大波乱を……。

 

 翌日。それからどうなったかと言うと、

「ルイズ~……許してくれ~……。もう二度としないからさ~……」

 波打ち際に突き出た岩礁に縛りつけられた才人が、情けない声を上げた。その近くではオスマンやオンディーヌ隊員たちが、同様に縛りつけられていた。

 どうして海に来てこんなことになっているかと言うと、才人たちの自業自得であった。海への慰安旅行の真の目的は、宝箱いっぱいに入れられていたハルケギニア文明のそれとは違い、肌の露出が多い地球の女性用の水着を学院の女子に着させて自分たちの眼福にしようという何とも低俗なものだったのだ。

 オスマンは「水の精霊に祈りを捧げる巫女の衣装」と適当な理由をでっち上げて女子に水着を着させ、更に理由をこじつけて少しずつ布面積の少ないものに着替えさせていったのだが、オンディーヌを交えた一番過激なものを着させる作戦会議をルイズに盗み聞きされたことがきっかけとなって目論見がバレ、逆に罠に掛けられて一網打尽にされてしまった次第であった。

「まッ、相棒たちが女ってもんを甘く見たのがわりいのさ。っていうか、風呂の時も痛い目見たってのに、全く懲りないもんだねえ」

 才人の横に立てかけられたデルフリンガーが呆れ返っていた。

「そんなこと言ってないでデルフ、助けてくれよぉ!」

「無茶言うなよ。俺が自力じゃ動けねえってこと忘れたのか?」

「そんなことより、みんな足元を見てよ……!」

 レイナールが切羽詰まった声を出す。

 座った姿勢で拘束されている彼らの下半身が、水の中に没していた。

「これって潮が満ち始めてるんじゃないか……!?」

「えぇ~!?」

 悲鳴を上げるオンディーヌたちだが、騙された怒りに沸く女子たちは誰も助けてはくれないのだった。

 

 女子は才人たちのことなど眼中になく、自由気ままに戯れ合っていた。

「そうそうその調子! だんだん上手くなってきたじゃない、テファ!」

「ほんとう!?」

 ルイズは泳いだことのないティファニアの手を取って泳ぎを教えている。

 だがその最中にいきなり、ルイズの身体が変に跳ね上がった。

「ひゃッ!?」

「どうしました、ミス・ヴァリエール?」

 見守っていたシエスタが何事か尋ねかける。

「何かにぶつかったみたい……」

 後ろを振り向いたルイズのまたぐらを、何かがこすった。

「ちょッ!? くすぐったい……! 何するのよシエスタぁ!」

 傍目からすると変な踊りを踊っているかのように身悶えするルイズに、シエスタは呆気にとられた。

「わたしじゃありませんけど……」

「え?」

 言われてみれば、シエスタの立ち位置はティファニアを挟んだ反対側。どう考えてもシエスタの腕は自分に届かない。

 ルイズはティファニアを見下ろしたが、彼女も違うと首を振った。

「じゃあ一体誰が……」

 ルイズがつぶやいた瞬間、太く長い何かの影が水の中から海面を叩き、バシャーンッ! と激しい水しぶきを上げた!

「きゃああああああッ!?」

 女子たちの叫び声が合唱となる。そして海中から飛び出してきたのは……全長百メイルはあろうかという大きすぎるタコだった!

「な、何よあれ!?」

 モンモランシーの悲鳴に答えるように、オスマンが叫んだ。

「おお! あれこそまさに、三十年に一度人前に姿を現すという水の精霊、伝説の大ダコじゃ! 乙女たちが、真の巫女装束を着用せんから、怒りに我を忘れておるッ!」

 オスマンをきつくにらむモンモランシー。

「あッ、冗談、冗談……」

 オスマンの解説は完全にでたらめで、大ダコの正体はかつてミクロネシアの孤島、コンパス島の海域に棲息して次々に船を沈め、島民から祟り神と畏れられた怪獣スダールの同種であった。

 スダールは触腕を海中から伸ばし、逃げ惑う女子の中からモンモランシーとティファニアを捕まえる。

「きゃああッ!?」

「テファ! モンモランシー!」

 二人に気づいたルイズが、単身スダールに向かっていく。それを見た才人が叫ぶ。

「あッ、馬鹿! 無理するなルイズ!」

 才人は両手首を縛る縄を岩礁にこすりつけ、どうにか断ち切ろうとする。

「このッ! テファたちを離しなさいよぉ!」

 ルイズとシエスタでティファニアを掴む触腕を振りほどこうと必死に引っ張るが、女子のか細い腕では曲りなりにも怪獣の力に敵うべくもなかった。あっさりと振りほどかれ、二人も捕まってしまった。

 スダールの触腕が獲物の質感を確かめるかのように、ルイズたちの身体をまさぐる。

「きゃああーッ! そこは駄目ぇー!」

 ヌルヌルとした触腕が肌にこすれ、ルイズたちは艶めかしい悲鳴を発した。

「あぁッ! な、何て羨ま……ひどいことをッ!」

 ギーシュたちが鼻血を垂らして絶叫した。

 猛威を振るうスダールに対抗できるのは、この場にはタバサしかいなかった。他は杖を宿に置いてきているのだ。

「杖を持ってきてるのがタバサだけだったなんて!」

 焦るキュルケ。タバサは竜巻を作り出してスダールにぶつけるが、スダールの巨体は小揺るぎしかしなかった。

「もっと力を出せないの!?」

「駄目……これ以上はルイズたちが……」

 ルイズたちが捕まっている以上、タバサも強力な攻撃は使えないのだった。

 一方でスダールはタバサとその近くのキュルケに目をつけ、残りの触腕を伸ばす。海ではスダールの方が圧倒的に速い!

「きゃああああッ!」

 タバサたちも捕まってしまった。万事休す!

 しかしここで才人が手首の縄を断ち切ることに成功し、拘束をほどいて立ち上がった。

「解けた! 待ってろよ、ルイズ!」

「あッ、サイト! 僕のも……!」

 デルフリンガーを背負って駆け出していく才人に呼びかけるマリコルヌだったが、時間が惜しい。才人は止まらなかった。

 スダールに向かって突き進む才人だが、腰まで水に浸かっていては水の抵抗でスピードが出ない。そこでデルフリンガーが助言した。

「相棒、落ち着いて海の中を見ろ!」

 才人が目を落とすと、スダールの触腕の一本が海面に垂れ下がっていた。

「奴の足伝いに行けるだろ?」

「そうか! よぉしッ!」

 才人はデルフリンガーを抜いて、ガンダールヴの力でパワーアップ。スダールの足に飛び乗ってルイズたちの元まで猛然と走っていった。

「安心しろ! 今助けてやる! おおおおーッ!」

 触腕を蹴って高く跳び上がり、ティファニアたちを掴む触腕を半ばから切り落として解放していった。

「今の内に早くッ!」

「う、うん!」

 ティファニアたちを逃がす才人に、スダールが怒りの眼差しを向けた。そして触腕を振り下ろすが、才人はそれを逆に足場にしてスダールの胴体へ跳んでいく。

「はぁぁぁぁ――――――ッ!」

 才人の唐竹割りがスダールの眉間を捉え、深々と切り込んだ! スダールはショックで最後のルイズを手放した。

「きゃあ―――――ッ!」

 自由落下するルイズを才人が受け止めた。

「怪我はないか?」

「さ、サイト……」

 お姫さま抱っこする才人に、ルイズは感極まってガバッと抱きついた。

「よかった、無事で……」

「もっと早くに助けに来なさいよね……」

 才人がルイズを下ろす後ろで、致命傷を食らったスダールが大洋の方向へ逃げていく。しかし途中でぐったりと力尽き、海中に没して絶命した。

「さぁ、早いとこ陸に上がろう」

「ええ……」

 才人はルイズを連れて砂浜の方向へ引き返していこうとしたが……その背後からまた何か巨大なものが海面を割ってせり上がってきた! 表面にタコの吸盤が列を成して並んでいる。

「何!? まだ他にもいたのかッ!」

 ルイズをかばいデルフリンガーを構え直した才人だが……。

「あれ? 何だか丸くね?」

 今度現れたものは、触腕ではなく球体の表面に吸盤が並んだような姿であった。

 その球体が更に海面からせり上がってきて――短い手足と尻尾、爬虫類のような首を生やした真の姿を晒した!

「カ―――ギ―――――!」

「うわああああッ!? た、タコじゃねぇぇぇッ! タッコングだぁッ!!」

 絶叫する才人。その通り、現れたのはスダールとは全く別の怪獣。オイル怪獣タッコングだ!

「カ―――ギ―――――!」

 タッコングは丸く巨大な肉体を才人に接近させていく。才人たちは距離が近すぎるために逃げる暇もない!

「ルイズ、陸に向かってまっすぐ走れ! うりゃああああッ!」

「サイト!? きゃあぁぁッ!」

 才人はせめてルイズだけでも、と彼女の小柄な体を再び抱え上げ、タッコングの反対方向へ力いっぱいに投げ飛ばした。投げ出されたルイズは海面に叩きつけられる。

 その直後に才人がタッコングの下敷きとなる!

「サイトぉぉぉぉぉ――――――――!?」

 絶叫するルイズ。だが、

『――せぇぇぇぇぇぇあぁぁッ!』

「カ―――ギ―――――!?」

 下からウルトラマンゼロがタッコングを持ち上げ、遠くへ放り投げた。危ないところで才人が変身したのであった。

『ルイズ、早く逃げなッ!』

 ゼロも軽く振り向いて、ルイズに告げた。安堵したルイズはうなずき返す。

「カ―――ギ―――――!」

『だぁッ!』

 再び突進してくるタッコング。ゼロはルイズたちに被害が及ばないように、真正面から受け止めてタッコングと組み合った。

 ゼロが抑えつけている間に陸へ向かって避難していくルイズ。その側に一緒に捕まっていたティファニアたちが駆け寄ってくる。

「大丈夫だった、ルイズ?」

「ええ。みんなも早く逃げましょう!」

 皆を連れて走っていこうとするルイズだったが……急に前のめりに倒れた。

「わぷッ!?」

「ちょっと、どうしたのよ!? 大丈夫?」

 キュルケに助け起こされるルイズ。海面なので怪我はなかったが、ルイズは怪訝な表情で後ろに振り返った。

「何かが足に絡まってる感触が……」

 片足を持ち上げてよく見て……ルイズの顔が驚愕に染まった。

「な、何これ!? 細い紐みたいなのが……足に巻きついてる!?」

 ルイズの足首には、細長いものがしっかりと巻きついていた。しかもただの紐ではなく、ハルケギニアにはない素材でコーティングされている。絶縁ゴム……つまりケーブルであった。

「きゃああッ!?」

 ルイズだけではなく、ティファニアたち全員も海中から飛び出してきたコードに襲われ、がんじがらめにされてしまった。しかもそれに引っ張られ、六人が海の方角へ引きずられていく。

「ど、どうなってるのこれぇ!?」

 それと時同じくして、水平線上にまたもや巨大な物体が浮上してきた。それを目の当たりにしたモンモランシーが絶叫。

「何よあれぇ! 鉄の船のお化け!?」

 巨大な物体は、無数の船舶が乱雑に積み上げられて一個の形を作っているというあまりにも異様な容貌であった。しかもハルケギニアの木製ではなく、地球の金属製の船で出来上がっている。

 それは1965年に氷山に激突して沈没したコンピューター制御の無人船が、十五年後に暴走して複数の船舶を取り込んだことで誕生した科学の幽霊船、バラックシップであった!

「きゃあああああ――――――!?」

 ルイズたちはなす術なくバラックシップの方向へ引き寄せられていく。

『ルイズ!?』

 慌てて振り返ったゼロだが、タッコングがぶつかってくるため彼女たちへ手が回らない。

「カ―――ギ―――――!」

『うわッ! くっそぉッ!』

 早くタッコングをどうにかしようと焦るゼロだが、タッコングの力は強く、なかなか思うようにはいかない。

 噛みついてこようとするタッコングの顎を掴んで受け止めたが、タッコングの口からオイルが噴出されて目つぶしを食らってしまった。

『おわぁッ!』

「カ―――ギ―――――!」

 ひるんだゼロに突進攻撃を決めるタッコング。ゼロは海面に倒れ込んで激しい水しぶきを上げる。

『くっそ……もう容赦しねぇぜッ!』

 しかしゼロはタッコングから離れた隙にストロングコロナゼロに変身した。そして突っ込んできたタッコングをがっしりと受け止め、思い切り放り投げる。

『うらあぁぁぁッ!』

「カ―――ギ―――――!」

 先ほどとは反対に、自分が海面に叩きつけられたタッコングに、ゼロはとどめの一撃を繰り出す。

『こいつでたこ焼きにしてやるぜぇぇぇッ!』

 灼熱のガルネイトバスターがタッコングに炸裂!

「カ―――ギ―――――!!」

 タッコングの体内のオイルが過熱されて発火。タッコングはたちまち爆散して消し飛んだ。

 しかしその時には、ルイズたちはバラックシップに引き込まれてしまっていた。ゼロの中の才人はすぐさま彼女たちを助けに行こうとする。

『ルイズッ!』

『待て才人!』

 それをゼロが止めた。カラータイマーが激しく点滅している。

 三分間の制限時間が近づいているのだった。更にバラックシップから突き出ている大量の砲門がこちらに向いている。

『奴と戦ってる途中で変身が解けちまったら、一瞬でミンチにされちまうぜ……! 一旦変身を解除するぞ!』

 ゼロは光に包まれて変身解除して、元に戻った才人は砂浜の波打ち際に立つ。

「ルイズ、みんな……! 待っててくれ、すぐに助けに行くからな……!」

 才人は水平線上のバラックシップを見やりながら、唇を噛み締めてそう誓った。

 

 その頃、バラックシップの船内に引きずり込まれたルイズたちは、ケーブルに引っ張られるままに心臓部のコンピューター室まで連れてこられた。そのまま柱に縛りつけられる。

「もう、立て続けにどうなってるのよ……!」

 災難の連続に毒づくキュルケ。ルイズは天井を見上げて叫び立てる。

「誰か、このでっかい鉄の船を操ってる奴はいるの!? いるんならコソコソしてないで、姿を見せなさい! ガリアの手の者!?」

 と命令すると、それに応じるように人型の影がこの場にテレポートしてきた。

『ハッハー! そいつはミーさ! ミーを覚えてるかな~!?』

「あッ! あんたは!?」

 ルイズ、シエスタ、ティファニアが目を見開いて驚愕した。

 出現したのは、見覚えのある宇宙人……アルビオンでの冷凍怪獣軍団との対決後に、卑怯にも才人に奇襲を掛けてきたバルキー星人だったのだ!

 

 

 

≪解説コーナー≫

 

※「近海の怒り」

 

 元ネタは『ウルトラQ』第二十三話「南海の怒り」。南海で日本の漁船がSOS発信後に消息を絶った事件が発生し、万城目たちは現場に近いコンパス島へと調査に向かった。しかし島民にそのことを告げると力ずくで追い出されそうになる。その時に島に神と崇められている大ダコが子供を襲い、それに難破した漁船の船員の雄三が挑む。大ダコは雄三の父の仇なのだった……という話。「ペギラが来た!」に引き続いて日本国外が物語上の舞台となっている。映像には一部『キングコング対ゴジラ』の流用がある。

 

 

※大ダコ スダール

 

 「南海の怒り」に登場。そのまま巨大なタコであり、コンパス島周辺の「死の海」と呼ばれる海域を縄張りにして、この海域に入った船を沈めていた。コンパス島では守り神と崇められているが、普通に人間を襲うので同時に祟り神としても恐れられていた。搭乗シーンの一部は上述の通り、『キングコング対ゴジラ』の大ダコのシーンを流用している。良作とも円谷英二監督が手掛けたから出来たことである。

 

 

※眉間に剣を食らって絶命するスダール

 

 コンパス島を襲ったスダールは、雄三の呼びかけに応じる形で決起した島民たちの抵抗の末に、雄三の投げた槍が致命傷となって息絶えたのだった。

 

 

※オイル怪獣タッコング

 

 『帰ってきたウルトラマン』第一話「怪獣総進撃」、及び第二話「タッコング大逆襲」に登場。異常気象や地殻変動の影響で目覚めた怪獣の一番手で、東京湾で同時に出現したザザーンと戦い、これを倒した後に大暴れして郷秀樹の命を奪う。ここでは地球に来たばかりのウルトラマンに退けられたが、次に海底のパイプラインや石油コンビナートを襲撃して被害を出した。タコの怪獣であるが触手は持っておらず、真ん丸とした身体に吸盤が並ぶという斬新なデザインをしており、タコの怪物の常識を打ち破ったと言える。

 

 

※スクラップ幽霊船バラックシップ

 

 『ウルトラマン80』第三十二話「暗黒の海のモンスターシップ」に登場。元々は完全無人のコンピューター制御貨物船クイーンズ号であったが、十五年前に氷山の激突の事故で沈没した。しかし十五年掛けて自己修復し、廃船をかき集めて自身の船体に加えることで二度と沈まない船となり、当初のプラグラム通りに東京湾を目指し出した。積荷の強力な磁力を持つ合金を使って船舶やスカイハイヤーを捕まえて自身を更に拡大し、船内に入り込んだ人間はワイヤーで捕縛するなど、目的のためには完全に手段を選ばなくなっていた。




 恐るべきバルキー星人の復讐! 獰猛なる海の怪獣軍団に、待ち受ける罠! だが才人よ、恐れてはならない。バルキー星人のたくらみを突破し、ルイズたちを救出するのだ! 行け、ウルティメイトフォースゼロよ! 次回「バルキー大逆襲」みんなで見よう!

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