タイトル通り、今回は甘さ控えめです。
それでは9話です!どうぞ!
「なあ、カエデ兄ちゃんもほかに武器持ってるだろ?」
「まあ、いくつかはあるぞ」
そう答えると、俺の周りにいた子供たちの顔がぱっと輝いた。見せて、見せてと口々に言ってくる。
「うーん・・・」
「大丈夫だよ。圏内だからダメージが入ることもないし、要求値の関係もあるから」
「そうだな・・・」
ユウキの考えに頷き、ウインドウを開くと、指を動かした。
ストレージの中は整理したばかりなのであまり残っていなかったが予備を含める5個ほどの武器をオブジェクト化すると机の上に置いた。
「すみません、ほんとに・・・」
「いや、問題ないですよ。この子たちもこういったものに興味を持つ年頃ですし」
将来は立派な剣士ですね と笑いながらサーシャに言う。子どもたちだって剣を使いたいからSAOにログインしたはず。剣を持ってみたいという欲求は当然湧いてくるはずだ。
「サーシャさん」
子どもたちが武器を見て歓声を上げている中、キリトがサーシャに声をかけて話し始める。
「はい?」
「・・・軍のことなんですが。俺が知ってる限りじゃ、あの連中は専横が過ぎることはあっても治安維持には熱心だった。でも昨日見た奴等はまるで犯罪者だった・・・。いつから、ああなんです?」
「方針が変更された感じがしだしたのは、半年くらい前ですね・・・。徴税と称して恐喝まがいの行為を始めた人と、それを逆に取り締まる人たちもいて。軍のメンバー同士で対立してる場面も何度も見ました。噂じゃ、上のほうで権利争いか何かあったみたいで・・・」
「まあ、規模が大きくなると統制が取れなくなるよな・・・」
「でも、あんなことが日常的に行われているのなら、放置はできないな」
なにか対策でも・・・と言いかけたその時、不意に、索敵スキルのサーチに反応が出た。
「一人か・・・」
教会の入口に目を向けて呟く。昨日の今日だからおそらく・・・
「え・・・またお客様かしら・・・」
サーシャの言葉と同時に、教会内にノックの音が響いた。
――――――――
腰に短剣を吊したサーシャと念のために同伴したキリトが連れてきたのは、軍のユニフォームに身を包んだ長身の女性プレイヤーだった。
「やっぱり軍か・・・」
一瞬、剣に手をかけるが、二人が連れてきたということはこちらに敵意がないのだろう。そう判断して俺は剣から手を離した。
突然の女性プレイヤーの登場でユウキや子どもたちが一斉に黙るが「みんな、この方は大丈夫よ」というサーシャの一声でまた騒がしくなった
「ええと、この人はユリエールさん。どうやら俺たちに話があるらしいよ」
ユリエールは俺とユウキ、アスナに視線を向けるとぺこりと頭を下げて挨拶をした
「はじめまして、ユリエールです。ギルドALFに所属してます」
「カエデ、ALFって?」
聞き覚えのない名前に隣にいたユウキが聞いてくる。
「アインクラッド解放軍の略だよ。まあ知らないのも無理ないか」
ユウキの頭をなでながらそう答える。正式名称なんかダサいもんな。略したくなる気持ちはわかる。
「はじめまして。カエデと言います。となりにいるのがパートナーのユウキ」
「よろしく、ユリエールさん!」
自己紹介をして一礼。ユリエールは俺たち二人の名前を聞いた途端、空色の眼を見張った。
「死神に絶剣・・・。なるほど、道理で連中が軽くあしらわれるわけだ」
「やだなぁ昔の話ですよ・・・んで昨日のことで抗議ですか?」
ふたたび警戒心を強めてユリエールに聞いてみる。
「いやいや、とんでもない。その逆です、よくやってくれたとお礼を言いたいくらい」
「・・・」
事情が読めないキリトとアスナ、ユウキは沈黙するが、おそらくユリエールは恐喝連中とは違う派閥に属しているのだろう。そして恐喝が日常的に行われるくらいに自分の所属していた派閥が弱くなってきた。ようするに
「今日は頼みがあってここに来たってことか」
「・・・ご明察の通りです。実はそのことであなた方にお願いがあって来たのです」
「お、お願い・・・?」
キリトたちが聞き返すとユリエールは頷きながら続けた。
――――――――
「・・・話をまとめると隠しダンジョンで身動きの取れないシンカーさんの救出。その手伝いをしてくれってことですか?」
ユリエールは俺の確認に頷き、深々と頭を下げ、言った。
「・・・その通りです。お会いしたばかりで厚顔きわまるとお思いでしょうが、どうか私と一緒にシンカーを救出に行ってくださいませんか」
長い話を終え、頭を下げたままのユリエールをキリトたちもユウキもじっと見つめていた。
協力したい・・・そう思っているのだろう。だがSAOでは他人の言うことをそう簡単に信じることができない。この手のお願いは<MPK>に酷似していた。俺も含めてユウキもキリトもアスナも感情的に動けばどれだけ痛い目に遭うのか身に染みて理解している。
残念だが・・・そう思い、重い口を開こうとしたその時
「大丈夫だよ、ママ。その人、うそついてないよ」
「ユ・・・ユイちゃん、そんなこと、判るの・・・?」
「うん。うまく・・・言えないけど、わかる・・・」
キリトはユイの頭を撫でながらニヤリと笑い、俺たちに言う
「疑って後悔するよりは信じて後悔しようぜ。行こう、きっと何とかなるさ」
アスナとユイの会話。キリトの前向きな発言で場の重苦しい空気が変わった気がする。隣にいるユウキもそわそわしているし・・・
「・・・分かったよ、今回は信じる。ユウキもいいか?」
「もちろん!絶対に救出しようね!」
満面の笑みで即答するユウキ。かわいい・・・守りたいこの笑顔。いや絶対に守る。
「かわいい・・・守りたいこの笑顔。いや絶対に守る」
「!?」
目の前にいたユウキの顔がボッと赤くなった。
・・・なんか既視感があるな、このシチュエーション・・・
「もしかして、声に出してた?」
「・・・うん、思いっきり」
身体をモジモジさせて恥ずかしそうに言うユウキ。
「・・・守らせてくれよ?」
かろうじて平静を装い、恥ずかしさを紛らわせるために頭をなでながらユウキにささやく。
「うん、任せたよ・・・あなた」
顔がさらに赤くなっているのは気のせいではないだろう。
「うわ~今のセリフ誰かに聞かせておもっくそ惚気てぇぇええ!!」
「しっかり聞いてるし、もうすでに惚気てるから・・・」
「・・・」
俺とユウキのやり取りを見ながらキリトとアスナが苦笑混じりにつぶやく。サーシャが無言でみんなのカップにコーヒーを追加したのはファインプレーと言わざるを得ない。
ちなみにこのあとキリトたちが飲んだコーヒーはなぜか砂糖水のようになっていたらしい。
なぜだ?・・・・・・だから惚気てないって。
最後まで閲覧ありがとうございます!
第9話、甘さ控えめでお送りしましたがいかがだったでしょうか?(甘くないとは言ってない)
読者様はご存じかと思いますが知らない方のために一応<MPK>について説明させていただきます。
MPKとはモンスター・プレイヤー・キルの略で対象プレーヤーをおびきだしてモンスターを使い、間接的に殺人をする方法のことです。某レッドギルドの人が考えたとか・・・情報求む←おいww
それと更新が遅れて申し訳ないです。
お詫びに明日もう1話投稿する予定なので許してください(汗
ご意見ご感想お待ちしています!それではまた次回お会いしましょう!