ソードアート・オンライン~死変剣の双舞~   作:珈琲飲料

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SAOの二期が2クールだったとする。そうするとマザーズロザリオまでやるかもしれない。
結果、ユウキが登場する。俺得。以上。

今回はいつもより文字が多いです。最初はユウキ視点から入ります。初の他人視点、加えて女の子なのでうまくいってないと思います。
ごめんなさい。

それでは6話です!どうぞ!


6話 約束と決意

ユウキside

 

 

「うそ・・だよね・・・カエデ・・・こんなの・・・」

 

カエデのアバタ―が鮮やかなポリゴンとなって散っていく。その光景を見て、ボクはただつぶやくことしかできなかった。

突如、時間が止まるような感覚に襲われる。

 

 

 

 

 

 

 

「パーティーを組みたい?」

 

いきなりどうしたんだ、という疑問の表情でカエデはボクに聞き返してくる。

 

「うん!今日だけじゃなくてこれからしばらく!」

 

少し恥ずかしかったけど、なんとか表情を変えることなく言えた。

 

「うーん・・・まあいいよ」

 

「ほら、最近モンスターの行動が読みにくくなってきてるし、ソロだと想定外のことに対応・・・・・え?いいの?」

 

まさか即答してくれると思っていなかった。思わず聞き返す。

 

「俺もソロプレイには限界を感じていたからな。それにユウキほどの実力なら安心して背中を任せられる」

 

「・・・ほんとにいいの?」

 

了承をいまだに信じられず、ボクは再び聞き返してしまった。

 

「変なやつだな。お前から提案してきたんだろ?」

 

笑いながらカエデはボクに声をかける。たしかに提案してきたほうが聞き返すなんて傍からみれば可笑しなものなのかもしれない。

 

「でも条件がある」

 

了承を得て、少し浮かれていたボクにカエデはさっきの笑っている状態から一変して真面目な顔になると、パーティーを組む条件を出してきた。

 

「パーティーを組む以上、俺は仲間を絶対に死なせない。命に代えてでもお前を守る。守らせてくれ。それが俺から出す条件だ」

 

「でも、それだとカエデが・・・」

 

「いいな?」

 

カエデの瞳が、まっすぐ、鋭くボクの目を射た。有無を言わせないその言葉に何も言い返せず、こくりと頷く。

 

カエデはにっと笑うとボクの頭の上にぽんと手を置き

 

「これからよろしくな、ユウキ」

 

と言った。

 

その手の暖かさと笑顔を感じてほんのり頬が熱を帯びていったのは記憶に新しい。

数か月前のことだった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやだ・・・いやだよ・・・」

 

泣きながら声を絞り出し、カエデを構成していた光の粒を必死にかき集めようとした。

しかしその行為をあざ笑うかのように欠片は指の間をすり抜け、消えていく。

 

カエデが死んじゃったらボクは・・・もう・・・

その先を考えるだけで体が暗く、深い絶望の底へ突き落される感覚に包まれる。

 

 

すべてを諦めかけたその時、ふいに誰かに声をかけられ、右手に何かを握らされた。

 

「これは・・・?」

 

「いいから早くそれを掲げてあいつの名前を呼べ!」

 

どうやらクラインみたいだ。

 

言われるままに右手を掲げる。視界に入ったそのアイテムは綺麗な石だった。

七色に光り輝いていて、闇へ落ちつつあるボクの心を照らしてくれるような・・・

 

「蘇生!カエデ!!」

 

そこまで思うとボクは数か月間、生死を共にしたパートナーの、最愛の人の名前を呼んでいた。

あたりがやさしい光に包まれる。

 

 

ユウキside out

 

 

 

 

 

 

 

「・・・デ!カエデ!!」

 

声が聞こえる。この声は・・・ユウキ?悲鳴にも似た叫びに、失われつつあった俺の意識は無理やり呼び戻された。全身に軋むような痛みを感じながら体を起こす。

 

「あれ・・・?なんで・・」

 

視界の先に広がるのはボス部屋。俺がHPを全損させて消滅した場所だった。

まだ空中に青い光のかけらが漂っている。俺がアバターを飛散させてからそんなに時間は経っていないらしい。

 

目の前にユウキの顔があった。涙で顔をグチャグチャにさせ、口元をきつく結んでいる。

 

「バカッ・・・!無茶しないでよ・・・!」

 

叫ぶと同時にすごい勢いで飛びついてくるので慌てて受け止める。そのときの感触で俺は死んでいないんだと改めて自覚する。

 

「ごめん・・・でもなんで・・・」

 

謝罪の言葉とともに俺は胸の中に残った疑問を口に出した。確かに俺は<死変剣>の副作用で死んだはずだ。本来ならそこでナーヴギアの出す高出力マイクロウエーブによって脳を焼かれている。

 

「預かりもんはキッチリ返したぜ、カエデ」

 

「・・・預かりもの?」

 

「聖晶石」

 

「あっ」

 

クラインとのやり取りで俺はすべてを理解することができた。<還魂の聖晶石>。

 

対象プレイヤーが死亡してからその効果光が完全に消滅するまでの間(およそ十秒間)ならば、対象プレイヤーを蘇生させることができるアイテムでSAOにおけるただ一つの蘇生手段だ。

 

「すまない、俺なんかのために・・・」

 

「寝ぼけたこと言ってんじゃねーよ。あれはお前のものだし、お前だから使ったんだ」

 

俺が謝るとクラインは野武士面でニカッと笑いながら優しく言ってくれた。

野武士面じゃなかったらほんとにかっこよかったのに・・・」

 

「失礼だな!オイ!」

 

どうやら途中から声に出ていたらしい。ボス戦の疲れをまったく感じさせないキレのあるツッコミだった。

 

「そりゃあそうと、キリト、カエデ。オメェら何だよさっきのは!?」

 

「「・・・・・・言わなきゃダメか?」」

 

話を変えてくるクラインに対して俺とキリトが同時に返す。

なんか最近ハモるの多くない?

 

「ったりめえだ!見たことねえぞあんなの!」

 

即答・・・当然か。

 

「・・・・・・エクストラスキルだよ。<二刀流>」

 

「俺も同じくエクストラスキル。<死変剣>」

 

ユウキを除いたほかのメンバーは俺たちの言葉を待っているようだったのでしぶしぶ答えた。おお・・・という声が部屋に広がる。

 

「なるほどな。でもカエデはなんでHPが0になったんだ?」

 

「それがこのスキルの効果の一つだからだ。スキルを使用中は使用者の体力が減っていく」

 

「まじかよ・・・」

副作用を聞いたクラインが驚愕する。

 

SAOにおいてHPはプレイヤーの存在を許す絶対の決まりだ。それが減っていくスキルなんてあるのか、俺も初めてこいつを見たときは驚いた。

 

普段はハイポーションなどの回復アイテムをスキル使用前に飲んでHPの減少を相殺していたのだがこの戦いではそんな余裕がなかったし本当にすべてを賭けていいと思っていた。いや、実際死んだからほんとにすべて賭けたなることになるな。生き返ったけど。

 

それからは取得条件やらなんやら質問攻めにあい、そのあとキリトとアスナを含めたクラインたちのパーティ-は75層のアクティベートに。生き残った軍の連中はホームに戻っていった。

 

去り際にアスナとキリトから「ユウキにしっかり謝っておけ」と一言もらった。

言われなくてもわかっているよ。

 

 

 

だだっ広いボス部屋に、俺とユウキだけが残された。もう部屋には先ほどまで繰り広げられた戦いの痕跡は残っておらず、部屋の外と同じ柔らかな光に包まれている。

 

まだ俺に抱き着いたままのユウキに声をかける

 

「ごめんな、ユウキ」

 

「・・・・・・いなくなっちゃうかと思った。」

 

顔を俺の胸に埋めたまま小さな声を出す。普段元気なユウキからは考えられない弱々しい声だった。

 

「・・・何言ってんだ、先に突っ込もうとしたのはそっちだろう」

 

どうにか冗談めかしていうとユウキは真剣に怒った顔をした。

 

「本気で心配したんだよ!?飛び散るカエデのアバタ―を見たら息が詰まりだして・・・いなくなっちゃうって考えたらボク・・・ボクは・・・!」

 

嗚咽の混じった声を上げてユウキは俺をまっすぐ見つめた。目からは宝石のよう美しく光る涙が溢れ、流れ落ちる。

 

「聞いてるの!?カエ――――!?」

 

開いたユウキの唇を俺は自分の唇で強引に塞いでいた。そしてそのまま力いっぱいユウキを抱きしめる。唇を離すと、今度はユウキと向き合い低く呟く。

 

「ユウキを、みんなを守るためにスキルを使ったはずなのに、怖かった。もうユウキの笑顔が見れない。そう考えると覚悟していたはずの死を受け入れるのが嫌になった」

 

「・・・カエデ・・・」

 

「いつまでもユウキと一緒にいたい。近くで笑顔を見たい・・・・・・ダメかな?」

 

そう言っていっそう強く抱きしめるとユウキは震える声で囁き返した。

 

「・・・ボクも。ずっとカエデといっしょにいたい。この世界が終わる最後の瞬間まで・・・」

 

それだけいうと俺たちは固く抱き合った。死を味わい、凍った心が少しずつ溶けていくのがわかる。ユウキから伝わる暖かな熱を感じて・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユウキが落ち着つくのを見計らって俺たちはホームに戻ることにした。

いつもは歩いて最寄りの主街区まで行き、そこで転移するのだが今日に限っては歩いて帰る元気がなかった。転移結晶を使い、ホームのある二十二層まで転移する。

主街区の<コラル>へ戻るとあたりは夕焼けに染まっていた。俺たちは手をつないで歩き出した。

 

「・・・なあ、ユウキ」

 

「どうしたの?」

 

「しばらく攻略を休まないか?」

 

俺は迷宮区の安全エリアで考えていたことを声に出す。

 

「え・・・?」

 

「なんか疲れちゃってさ。また良くないことに巻き込まれる気がするんだ。それに」

 

「それに・・・?」

 

「ユウキことをもっと知りたくなった。それこそすべてを」

 

あの戦いを経て、俺の中でユウキの存在は大きくなっていた。戦闘という方向以外からも彼女のことを見たい。無意識のうちに思っていたことを口にしていた。

 

俺の言葉に込められた意味を感じ取ったらしく、ユウキは俺を見つめると両頬を染めてこくんと頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

ホームに帰って食事をとる。食後はお茶を飲みながら雑談。それが寝るまでの主な時間の過ごし方だ。それは変わらなかったのだが今日のユウキはいつも以上に饒舌だった。主街区に新しい店ができたとか、どこそこの層が綺麗だから行ってみたいという話を矢継ぎ早に喋り続ける。

その話を聞いていると休息をとるように提案したのは正解だったなと思う。

 

しかしユウキが急に黙り込んだ。手に持ったコップの中に何かを見つけたように、じっと視線を落としたまま動かない。そのうえ表情がやけに真剣だ。

 

「ユウキ、どうしたん・・・」

 

心配になって声をかけたが俺の言葉が終わる前にユウキは右手のコップをテーブルに置くと、

 

「・・・・・・よし!」

 

謎の気合を入れながら立ち上がった。そのまま窓際まで歩いていき、壁に触れて操作メニューを出すと照明を全部消した。俺が状況を理解出来ないなか、ユウキは左手を振ってメニューウインドウを出現させると指を動かした。

 

どうやら装備フィギュアを操作しているらしい――――

 

と思った瞬間、ユウキの身を包んでいたTシャツやショートパンツが消滅した。

俺は目の前で起きた出来事に目を丸くし、思考停止に陥った。

 

ユウキは今や下着のみを身に着けている状態だった。それらが申し訳ない程度に身体を隠している。

 

「あ、あんまりこっち見ないでよ・・・」

 

蚊の鳴くような声で呟く。それでも視線を動かすことなどできない。

俺はかつてないほどの衝撃を味わいながら、その姿を見つめた。

 

綺麗などというものではない。

透き通ったようになめらかな白い肌、控えめな二つのふくらみ、腰まで伸びたパープルブラックの髪の毛は月に照らされ、キラキラと幻想的に輝く。

 

まるで妖精だ。そう思った。

 

俺はいつまでもその半裸身に見入っていた。もしユウキが恥ずかしさのあまりに身体を隠し、口を開かなければ数時間でもそのままだっただろう。

 

ユウキは薄暗い闇のなかでも分かるくらいに顔を赤く染めて、もじもじしたまま言った。

 

「カ、カエデもはやくしてよ・・・。ボクだけ、は、恥ずかしいよ」

 

その声で、俺はようやくユウキの行動の意味するところが分かった。

つまりユウキは――――俺の、すべてを知りたい、という言葉を、数段踏み込んで解釈したのだ。

 

どうやって誤解を解くべきか・・・混乱した頭で必死に考える。しかしこんな状況でいい言葉なんか思いつくはずもなく、俺はこれまでの人生で上位に食い込むほどのミスを犯してしまった。

 

「あ・・・いや、すべて知りたいってのはこれからユウキとたくさん思い出を作りたいっていう意思表示でして・・・その・・・」

 

「へ・・・・・・?」

 

捻りの欠片もないストレートな俺の発言に、今度はユウキがぽかんとした顔で停止した。が、やがて、メニューウインドウを操作していつも装備している片手剣を取り出すと羞恥と怒りを混ぜた表情で俺を睨みつけてきた。これ以上ないほどの殺気を剣に込めて。

 

「ま、待った!そんなので殴られたら――――――!」

 

「カエデのバカ―――――――ッ!!」

 

必死の説得も虚しく、敏捷パラメーター全開で突っ込んできたユウキのソードスキルをまともにくらい、俺は激しいノックバックを受けることになった。

 

犯罪防止コードがなかったらまた死んでいた気がする・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

テーブルの上に設置されたひとつの照明が、俺のすぐ隣でまどろむユウキの顔を薄く照らしていた。その頬に手を触れさせ、そっと撫でる。そうしているだけで心は愛おしい気持ちでいっぱいになる。

 

俺が頬を撫でたことに気付いたのか、ユウキは薄く目を開けてこちらを見ると二度、三度瞬きをしてにっこり笑った。

 

「悪い、起こしたな」

 

「ううん・・・大丈夫。どうしたの?」

 

笑顔のまま、聞いてくる。

 

「いや、俺の中でユウキの存在は大きいって改めて実感したんだ」

 

「それはボクも同じだよ。カエデのいない生活なんて考えられない」

 

「お互い様ってことだな・・・」

 

俺は笑っていた。

 

「なあユウキ・・・」

 

「?」

 

自分でも不思議に思うくらい自然と、俺は心の底にあったユウキに対する思いを口にしていた。

 

「約束する。もう君の前から急に消えたりしない。君の目にいつまでも映り続ける・・・・・・だからその目で、俺を映し続けてくれないか?」

 

「それって・・・・・・」

 

俺はメニューウインドウを操作し、一つの申請をユウキに送るとその続きを言った。

 

「結婚しよう。ユウキ」

 

そのときユウキが見せた輝くような笑顔を、俺はこの先ずっと忘れないだろう。

 

「・・・うん!」

 

そっと、それでいて力強く頷いた頬を、一粒の大きな涙が流れた。

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます!

食後の勘違い、ユウキverを見てみたい!という感想を以前頂いたのでリクエストに沿って物語を書いてみました。いかがだったでしょうか?

たぶんうまく書けてない気がする・・・(笑)

食後の勘違いはユウキとカエデが結ばれていることが大前提だったので、どうやってくっつけようか・・・とずいぶん頭を悩ませました。その結果がボス戦での死です。生き返るシステムは皆さんお気づきだったと思います。感想で指摘されて超焦った(汗)

アイテムで救済なんてベタですもんね・・・そりゃみんな考え付くわ(笑)

そういえばカエデとユウキはすでに同じホームで生活してたんですよね。なんと羨ましい←おい

と、まあ長くなったところで今回のあとがきとさせていただきます。
ご意見・ご感想お待ちしてます!
それでは次回またお会いしましょう!

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