失踪してません!かろうじて生きてます!
そして投稿が遅れてごめんなさい・・・
それでは第23話です!どうぞ!
すずらん亭での祝勝会は一時シリアスな展開を迎えたがその後は和やかに時間が過ぎていき、リアルでの時刻が日を跨ぐ頃にお開きとなった。
「――古参プレイヤーの協力を得られたのは嬉しい誤算だったな」
彼女なりにキリトの言葉に何か感じるものがあったのだろう。
先ほどまでリーファが座っていた椅子に目を向けながら独り言のように呟く。
「ああ、でもどうしたんだろう彼女」
いきなり世界樹までの案内を買って出たリーファの心中を考えるようにキリトも口から疑問を漏らす。キリトの肩の上に乗っているユイも首を傾げると
「さあ……。今の私にはメンタルモニターの機能はありませんから……」
分かりません、と締めくくり俺とユウキの言葉も代弁した。
「でもさ!明日からもリーファと一緒に冒険できるってことだよね!」
ユウキは楽しそうに笑うと、これから始まる新たな旅に思いを馳せているのか窓から広がる夜景を見つめた。
「……ユウキの言うとおりだな。余り深く考えないようにしよう」
「だな。今は新たな仲間の誕生を喜ぶとしますか」
グラスに残っているハーブワインを呷り、口の中に広がる甘みを楽しむ。
リーファとの出会い、明日から始まる旅、今日起こったすべての出来事が隠し味になったのか、傾けたグラスから零れる翡翠の水は先ほどよりも美味しく感じられた。
「リンク・スタート!」
翌日の昼過ぎ、楓からカエデへと意識を移すべくログインを開始。待ち合わせ時刻より少し早いが接続ステージを含めてぴったりになると考えてのログインだ。
接続を経て、闇妖精カエデに身体が切り替わる。瞼を開けると奥のテーブル席に3人のプレイヤーが腰を掛けていた。言うまでもなくユウキ、キリト、リーファである。
「おっす、早いな」
「俺は今来たとこだから問題ないぞ」
「……なんかそのセリフ、男に言われても嬉しくないな」
「いやそこは素直に受け取れよ!」
ログイン直後だという割にキレのいいツッコミを繰り出すキリト。さすが仮想空間に適応してるだけのことはある。
「まあまあ、みんなついさっき集まったのは本当だから」
キリトをどうどう、と落ち着かせて苦笑を浮かべながらリーファ。
「ほらキリト。こういうのはかわいい女の子が言うと効果があるんだぞ」
うんうんと頷きながらキリトに語っていると横から服の袖をくいっと引っ張られる。
「どうした?ユウキ?」
引っ張られた袖のほうを見るとなぜか少しふくれっ面のユウキ。明らかに怒っているように感じられるがこんな可愛い怒り顔をする子なんてそうそういないだろう。
「カエデ、……浮気はダメだよ?」
「へ?」
思わず素っ頓狂な声を上げる。どこをどう見て浮気だと捉えたのかじっくり話し合いたいところだが確実に誤解だ。そう誤解である。ならば解かないといけない。
「い、いやいや!しないから!それは誤解だぞユウキ」
おいカエデよ。なぜ慌てているんだ。まだ慌てるような時間じゃないだろう。
首をぶんぶん振って否定する俺をユウキは少し胡散臭そうに見ると
「もし浮気なんてしたら……あっそっか。このゲーム、ソードスキルないんだった」
「やめてください死んでしまいます!」
ソードスキルで何をするのか想像に難くない。この状況を打破するための援護を要請すべく頼もしい仲間二人に目を―――
「いやー旦那思いの嫁さん持つと大変だなーかえでー」
「か、かわいい……」
明らかに棒読みのキリトと頬を染めてなにかをぶつぶつ言ってるリーファ。
……これ詰んだわ。
「カエデ、少しOHANASHIしようか?」
「い、いや!だから誤解だk「しようか?」はいわかりました!」
妖精は時に鬼にもなる。そんなことを学んだ俺に待っていたのはお説教という名の高い授業料の支払いだった。……解せぬ。
「で、これからどうするんだ?買い出しとかしないといけないだろ」
「道具類は一通り買っておいたから大丈夫だよー。あ、でも……」
俺たちを見る視線を顔から体に落としながら言い淀むリーファ。
「あー、もしかして俺たちの装備のことか?」
頷くリーファを見てキリトもユウキも自分の装備に視線を向ける。
俺もそうだがキリトもユウキも依然初期装備のままである。初ログインから1日しか経っていないのだから当然と言えば当然なのだが、これから目指すのは世界樹。グランドクエスト発生ポイントでこのゲームのラストステージとも言える場所だ。そんな場所に生まれたままの姿で向かうのは自殺行為と言える。確実に道中でリスポーンだろう。
「確かにこの装備じゃ心もとないな……」
「ボクもできるなら装備変えたいかも……」
苦笑する二人を見てリーファに聞いてみる
「というわけでお勧めの武具店とかあったりするかな?」
「まあ、あるにはあるんだけど……お金、持ってる?」
無ければ貸すけど、というリーファの声を聞きながら左手を振ってメニューウインドウを呼び出す。表示された金額は……。
「……この<ユルド>って単位がこの世界の通貨なんだよな?」
少々引きつった顔でキリトが訊ねる。
「そうだよー。……ない?」
「い、いや、ある。結構ある」
「なら、早速武器屋行こっか」
「う、うん」
慌てた様子で立ち上がったキリトは胸ポケットで寝ているユイを起こすとリーファを連れて足早に酒場を出て行った。
「ねぇカエデ。これって……」
「ああ、たぶんSAOのデータが使われてるんだろうな」
ユイがこのゲームはSAOのコピーサーバーだって言ってたしな。共通する部分が同じになるのも納得がいく。
「そっか!そうだよね!よかった~」
「?なにが良かった……ああ、そういうことか」
ステータス画面に表示されているあるアイコン見つけると、俺はユウキの頭を撫でた。
「えへへっ」
「これからもよろしくな。ユウキ」
「うん!」
剣の世界で生まれた絆の証――結婚システム。
それをしっかりと目に焼き付けた俺たちは深い喜びを噛み締めながらキリトとリーファを追いかけた。
リーファ行きつけの武具店で装備一式を整えたころには、街はすっかり朝の光に包まれていた。
「お前、剣一本選ぶのにどれだけ時間かけるんだよ」
「仕方ないだろ。なかなか重い剣がないんだから」
身の丈に迫る大剣(一応片手剣)を背中に吊ったスプリガンを見ながら不満を漏らす。
「次は大剣から見ていったほうがいいかもねー」
ユウキに激しく同意。そんな得物、スプリガンじゃ普通振ろうとしないだろ。本当に名実ともに規格外である。
「そんな剣、振れるのぉー?」
心配そうにリーファが訊ねると、キリトは涼しそうな顔で頷いた。
「問題ない」
後から聞いた話だがALOでは、与ダメージ量を決定するのは<武器自体の攻撃力>と<それが振られるスピード>、<各部位に設定されたクリティカルポイント>の3つらしい。
しかしそれだけだと選んだ種族によって戦闘の優位が決まってしまう。そこで、筋肉タイプのプレイヤーは比較的攻撃力の高い巨大武器を扱いやすくして種族間における戦闘でのバランスを取っているみたいだ。
「大丈夫、キリトはそこらの脳筋プレイヤーよりパワフルだから」
「なんか素手でもボスMob倒しそうだもんね!」
「うーん、まあ君たちが言うなら大丈夫かー」
半信半疑みたいだがひとまず納得してくれたようだ。……でもユウキ、それはないと思うぞ。
「じゃあ行こうか」
号令をかけるキリト。しかし背中に吊った大剣が身長とのミスマッチを生み出してさらにそれが笑いを生む。まるで剣士の真似事をする子供のようだ。
「準備完了だね!キリト君、カエデ君、ユウキ、これからしばらく、ヨロシク!」
「こちらこそ」
「おう、よろしく」
「よろしくね!」
少し遅れてキリトのポケットから飛び出たユイが、四人の手をぺちぺち叩きながら言った。
「がんばりましょう!目指せ世界樹!」
第23話、お読みくださってありがとうございます!いかがだったでしょうか?
だいぶ時間が空いてしまったのでリハビリっぽい出来になっております。
……投稿が遅れて申し訳ありませんでした!
今年から大学生になりまして、そのための勉強やら準備やらで纏まった時間がとれなくて……。
次回はなんとかして早めに投稿できるようにします。
長らくお待たせしてすいませんでした。
それと少し補足をさせていただきます。今回の話に出てきたALOにおける与ダメージについてですが、原作での決定要素は<武器自体の攻撃力>、<それが振られるスピード>のふたつでした。しかしこの二次作では上記のふたつに加えて<各部位に設定されたクリティカルポイント>を設定することにします。
理由についてはカエデ君がSAOで培ってきた急所を狙う戦闘スタイルが活かせるからです。
ご都合主義が否めませんがご理解のほどよろしくお願いします。
前回評価をしてくださった素敵な読者様のご紹介
磯辺 様 氷咲 様
Aimkut 様 ヴァンクリーフ 様
Fault 様 夜明けの月 様
あるいは 様 大和誠士郎 様
(-_-)zzz 様 Trumical 様
佐竹 様 リーデ 様
TOKIBA 様 一輝 様
Nemeshis 様 よ〜すけ 様
空想劇 様 グレイブブレイド 様
人類種 様 Xerxes 様
評価ありがとうございました!