ソードアート・オンライン~死変剣の双舞~   作:珈琲飲料

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クリスマスだから特別編だと思った?残念、本編でした!
……はい、すいません今家に帰ってきたばかりです
予約投稿とかしとけばよかった・・・
今回はイラストも掲載しましたのでよければご覧になってください

それでは22話です!どうぞ!


22話 平常運転

「へぇ……クラスメイトとVRMMOをやってるのか」

 

レコンとリーファはリアルのほうでも知り合いで、同じ中学に通う同級生らしい。

どこか羨ましそうな、しみじみとした口調で言うキリトに、リーファは少し顔をしかめて答える。

 

「うーん、いろいろと弊害もあるよー。宿題のこと思い出しちゃったりね」

 

「ははは、なるほどね」

 

会話を交わしながらリーファの案内のもと、裏通りを歩いていく。すれ違うプレイヤーたちは他種族である俺たちを見て一瞬驚いた表情になるが、すぐ近くを一緒に歩くリーファを見ると警戒しながらも何も言わずに去っていく。

 

「リーファって実はすごい人だったりする?」

 

一触即発の事態をリーファのおかげで回避していることに気付いたのかユウキが前を歩くリーファに訊ねる。

 

「あんまりアクティブに活動してるつもりはないんだけどね。スイルベーンで開かれる武闘大会に何度か参加してるんだ」

 

「へぇ……」

 

それが理由で顔が通っているのなら大会では上位にランクインしているのだろう。さっきの魔法詠唱といい、剣術といい、案外シルフの中ではトッププレイヤーなのかもしれない。

 

「今度お手合わせを願いたいな」

 

「あっ、ボクもリーファと戦ってみたい!」

 

口をそろえて試合を希望する俺とユウキにリーファは頷く。

 

「もちろん!わたしも三人とは戦ってみたいしね」

 

約束を取り付けたところで前方に小ぢんまりとした酒場が見えてくる。

道中の会話曰く、デザート系のメニューが豊富な酒場でリーファが贔屓にしている店らしい。名前は<すずらん亭>。

 

スイングドアを押し開けて店内を見渡すと、幸いプレイヤーの数は少なかった。

酒場というより喫茶店という雰囲気が強い店内を少し進み、奥まった席に腰を下ろす。

 

「さ、ここはあたしが持つから何でも自由に頼んでね」

 

「じゃあお言葉に甘えて……」

 

「あ、でも今あんまり食べるとログアウトしてから辛いわよ」

 

一言だけ注意するとリーファもメニューのほうに視線を落とす。味覚エンジンやらを搭載した仮想世界では不思議なことに食事を摂ると満腹感が発生する。それはログアウト後もしばらく残るのでこのシステムを利用してダイエットを試みたプレイヤーもいるとか。結果は栄養失調に陥ったり、あまり芳しくないのだが……

 

結局リーファはフルーツババロア、キリトは木の実のタルト、俺は干しブドウのクレープ、ユウキはシフォンケーキ、最後にユイがチーズクッキーをオーダーし、飲み物は香草ワインを一本取ることにした。注文を聞いたNPCウェイトレスが即座にスイーツをテーブルに並べる。

 

「それじゃあ、改めて、助けてくれてありがと」

 

あやしげな緑色の液体が注がれたグラスをかちんと合わせるとリーファは改めてお礼を言う。

 

「いや、まあ成り行きだったし……」

 

「そういうこと。ほんとにたまたまだったから」

 

小さくかぶりを振って大した問題でないことを告げると切り取ったクレープを口に運ぶ。

 

「おっ、美味いな。ユウキ、このクレープ美味しいぞ」

 

切り取ったクレープをフォークにのせてユウキの口元まで持っていくと一口食べるように促す。

 

「あむっ……ほんとだ、すっごく美味しい!」

 

もぐもぐと咀嚼しながらクレープの感想を述べるユウキ。ごくんと飲み込むと今度はケーキを乗せたフォークをこちらに向けてくる。

 

「こっちのケーキも美味しいよ!はい、あ~ん」

 

「どれどれ……」

 

口の中に入ると同時にふんわりと優しい甘さが口のなかに広がる。それは少しの間だけ口内を漂うと、すうっと消えていく。しつこ過ぎずというのを体現している味だった。

 

「……どう?」

 

「たしかに美味しいな。それにユウキが食べさせてくれたおかげで本来の味より数段上の満足感を得られた気がするよ」

 

ありがとうな、と言いつつ頭をなでるとユウキは少しだけ顔を赤くさせる。

 

「そんなことないよ……もう少しだけ食べる?」

 

「じゃあ俺のほうも」

 

そうしてお互いにお互いの皿に盛りつけられたデザートをたべさせあう。始めた直後、店内を包む空気にピキッと亀裂が入る音が聞こえた気がするが気のせいだろう。別に変なことはしていないし。

 

「えへへ、美味しいねっ」

 

「ああ、おいしいな」

 

美味い物は人を幸せにすると言うがまさにその通りだと今なら感じれる。

きっと店内は幸せムード全開だろう。

 

「……これもいつも通りなの?」

 

「……ああ、残念ながら平常運転だ。あっ、コーヒー頼んでいい?」

 

「キリト君も大変なのね。わたしも一杯貰おうかな」

 

直後に現れるウェイトレスに二杯のブラックをオーダーするキリトとリーファ。それをよそに食べさせあうカエデとユウキ。果たして幸せムード全開なのが自分たちだけだと気付く日はくるのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても、あのサラマンダ―たちはえらい好戦的な連中だったよな。ああいう集団PKってよくあるの?」

 

テーブルのものがあらかた片付き、ひとまず落ち着いたところでキリトが話題を振る。

ALOがPK推奨とは聞いてたが予想とはずいぶん異なったものだったと感じているのだろう。

 

「うーん、もともとサラマンダーとシルフは仲悪いのは確かなんだけどね。領地が隣り合ってるから中立域の狩場じゃよく出くわすし、勢力も長い間拮抗してたし。でもああいう組織的なPKが出るようになったのは最近だよ。きっと……近いうちに世界樹攻略を狙ってるんじゃないかな……」

 

「それだ、その世界樹について教えて欲しいんだ」

 

「そういや、そんなこと言ってたね、でも、なんで?」

 

「世界樹の上に用があってな」

 

そこまで言うとリーファは少々呆れながら俺たちのほうを見た。笑ったりしないのは表情に表れている真剣さが理由だろう。

 

「……それは、多分全プレイヤーがそう思ってるよきっと。っていうか、それがこのALOっていうゲームのグランド・クエストなのよ」

 

「と言うと?」

 

「滞空制限があるのは知ってるでしょ?どんな種族でも、連続して飛べるのはせいぜい十分が限界なの。でも、世界樹の上にある空中都市に最初に到達して、<妖精王オベイロン>に謁見した種族は全員、<アルフ>っていう高位種族に生まれ変われる。そうなれば、滞空制限はなくなって、いつまでも自由に空を飛ぶことができるようになる……」

 

「なるほど、俺たちみたいなのじゃなくても世界樹を目指す理由を全プレイヤーが持っているのか」

 

「ちなみに上に行くにはどうしたらいいの?」

 

「世界樹の内側、根元のところは大きなドームになってるの。その頂上に入り口があって、そこから内部を登るんだけど、そのドームを守ってるNPCのガーディアン軍団が凄い強さなのよ。今まで色んな種族が何度も挑んでるんだけどみんなあっけなく全滅。サラマンダーは今最大勢力だからね、なりふり構わずお金貯めて、装備とアイテム整えて、次こそはって思ってるんじゃないかな」

 

「……」

 

少々面倒な状況だ。全員がグランドクエスト攻略を目指しているのなら協力してくれる種族は皆無と言っていい。中には俺たち三人を積極的に妨害してくるプレイヤーも出てくるだろう。

 

「魅力的な話だからこそ、他種族と協力できないようにしている。結果、クエストの難易度を跳ね上げているわけだ」

 

人間というものをよく理解したゲーム設定だと改めて感心する。

 

「カエデ君、なかなか鋭いじゃない。確かに単一種族で攻略不可だとすれば……絶対に無理ね」

 

「無理?」

 

「当たり前だろ。アルフとやらになれる種族はオベイロンに謁見した一種族のみだ」

 

さまざまなリソースを奪い合って自分を強化していくMMOにおいて他種族のために協力しようとするお人好しなんているはずない。

 

「ガーディアン単体の強さはどのくらいなんだ?」

 

「三体までならなんとかなるらしいわ」

 

「三体ねぇ……」

 

軍団と呼ばれるほどなのだから少なく見積もっても千体はいると考えていいだろう。三体までならとかそういう次元の話じゃない。圧倒的な戦力不足だ。

 

「今では無理っていう意見が一般的ね。まあ、クエストは他にもいっぱいあるし、生産スキルを上げるとかの楽しみ方も色々あるけど……でも、諦めきれないよね、いったん飛ぶことの楽しさを知っちゃうとね……。たとえ何年かかっても、きっと……」

 

「それじゃ遅すぎるんだ!」

 

不意にキリトは押し殺した声で叫ぶ。血が出るのではないかというほど拳を強く握り、口元は震えるほど歯を食い縛っている。

 

「キリト、少し静かに――」

 

「どうしてカエデはそんなに落ち着いていられるんだ!」

 

「……お前の気持ちはよく判る。だがお前が冷静さを欠いてどうするんだ。喚いてどうにかなるなら俺だってとっくにそうしてる」

 

キリトの肩に手をおいて諭すようにゆっくりと言葉をかける。俺の言葉を聞いて少し落ち着いたのか体に入っていた力をふっと抜くキリト。

 

「……ごめん」

 

低い声色で謝るキリトにさらに続ける。

 

「お前は一人じゃないんだ。俺やユウキだっているしもっと周りを頼ってくれ」

 

「そうそう、もっとボクたちに頼っていいんだよ?」

 

キリトの背中をぽんぽんと軽く叩きながらユウキが笑いかける。完全に落ち着きを取り戻したらしくキリトは短くありがとう、と口にするとリーファに向き直った。

 

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 




今回は急ぎなのであとがきはなしです!

22話お読みくださってありがとうございます!いかがだったでしょうか?
ご意見ご感想いつでもお待ちしております!

それでは次回またお会いしましょう!


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評価ありがとうございました!

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