甘さが足りない!!というお声をいただいたので今回は糖分補給回にしました。
といっても読者様から見るとそんなに甘くはないと思いますので、暇つぶし感覚でお楽しみになってください!
時系列はカエデとユウキがコンビを組む前の話です!
それでは番外編です!どうぞ!!
「夏祭り・・・?」
目の前にいる少女にそう宣言?されて俺は思わず聞き返した。
「う、うん!二十二層の主街区で、三日後にお祭りがあって。花火大会もやるから、もしよければ一緒に・・・」
なるほど、たしかに今の季節は現実でいう夏にあたる。なぜこんなイベントが生成されたのか不思議でならないがそれを考えるのは野暮というものだ。せっかくの遊びのお誘いですし・・・
「俺は別にいいけど・・・俺と一緒でいいの?アスナたちと一緒のほうが楽しめるんじゃない?」
ふと頭に浮かんだ疑問を口にする。ユウキが俺を祭りに誘うのはなぜだろうか。アスナやリズなど誘う人はいるはずだ。普通はそういった親友たちと一緒に楽しむものだろう。まさか夏祭りそのものが限定クエストというわけでもないだろうし・・・
「そんなことないよ!・・・・・・むしろカエデと一緒に行きたいっていうか・・・」
ユウキは声のトーンを一段上げて強く引き留めてくれる。最後のほうがよく聞き取れなかったが迷惑でないのならご一緒させてもらおう。
「OK、俺も祭りは好きだし。邪魔じゃないのなら是非行かせて欲しい」
「ほ、ほんとっ?・・・よかった」
断られなかったことにほっとしたようでユウキの表情にも明るさが戻る。
どこかで休みを取ろうと思っていたので俺としてもこの誘いは有り難い。
「じゃあ三日後、二十二層主街区でいいかな?」
「うん!楽しみにしてるねっ!」
小さくガッツポーズをして帰っていくユウキを見送りながら、俺もホームに戻るため転移門広場へ歩く。
「ユウキ・・・そんなに祭りが楽しみなんだな」
ガッツポーズの理由はもちろんほかにあるのだが、このときのカエデがその理由を知ることはない・・・
――――――――
三日というのは早いもので楽しみを糧にダンジョン攻略をしているうちにあっという間に過ぎてしまった。現在の場所は二十二層主街区。約束の時間より少しだけ早い。
主街区はいつもと違い、多くの人で賑わっていた。普段は聞くことのない祭囃子の音を聞きながら人ごみを分けて待ち合わせ場所へ向かう。すると遠くのほうに見慣れた少女を見つけた。
「カエデ、こっちだよっ!」
元気よく手を振ってくるユウキにこちらも手を振り返す。
「ごめん、待たせた?」
「ううん、ボクも今来たところだから」
この辺のやり取りはデートの形式である。・・・ん?これってもしかしてデートなのか?
いや、ユウキに限ってそんなことはないだろう。相手も俺だし・・・
「そういえばユウキ、その浴衣かわいいな。似合ってるよ」
変な思考に入りそうだったのでユウキの浴衣姿を見て感想を漏らす。桜色の浴衣はパールブラックの髪と調和がとれており、思わず釘づけになる。
「あ、ありがと・・・///」
頬を赤くさせてユウキがはにかむ。そのかわいらしさに、言葉に詰まってしまい頭をなでてしまう。
「え、えへへ・・・」
ふにゃんと頬を緩めるユウキ。これ以上続けると俺の中にある庇護欲が高まってしまうので名残惜しいがやめる。
「それじゃあ、行きますか」
「うん!」
そう言って俺たちは人ごみの中へ入っていった。
――――――――
広場にはたくさんの出店が並んでいた。祭りでは定番のかき氷、焼きそばみたいなものが売られている屋台。なかには金魚すくいなどの遊べるものまである。金魚すくいの水槽に入っていたのはピラニアのような水棲モンスターだったが・・・だれがやるんだよ・・・。
「カエデ、これやろうよ!」
あやしげな金魚すくいを見ていると不意にユウキから声をかけられた。手にはコルク銃が握られている。
「射的か・・・いいよ」
SAOには飛び道具――銃や弓なんかは存在しないはずなんだが、今日のイベントでは製作者が気を利かせたのだろう。ありがたく使わせてもらう。
「もしかしてこういうの得意だったりする?」
「ううん、初めてだよ。なんだか面白そうだったから」
そう言いながらコルク銃を構えるユウキ。銃口の向きからして、狙っているのは下段にある一対の指輪だろう。
パンッ!と発砲音を立てて飛び出した弾は見事命中。しかしわずかにぐらついただけで落ちるには至らなかった。
「・・・むぅ」
「惜しかったな。ああいうのはもう少し下を狙うんだよ。こうやって・・・あれ?どうかした?」
「~~~~~っ」
急に静かになったので顔を横に向けると、ユウキは頬を赤く染め、肩をすくめて縮こまっていた。
「ごめん、よく分からなかった?」
「い、いや。そんなことは・・・」
あまりの説明下手に残念がられたかと思い、気まずくなって視線を逸らす――
「――!?ご、ごめんっ!」
そして視線を動かすことによってようやく俺はその原因を知ることになる。
無意識のうちにユウキを後ろから抱くようにして身体を密着させていたのだ。
「だ、大丈夫だよっ!」
そう言っているものの居心地を悪くしてしまったのは明らかだ。
「ほんとにごめん、俺なんかが・・・」
「べ、別に嫌じゃないよ!・・・ボクとしてももう少しだけあのままのほうが・・・」
ぼそぼそと何か言っているが俺のことを励ましてくれているのだろう。なんていい子なんだろう・・・ユウキは。
「そっか、それなら良かった。・・・じゃあ二人で景品とろうか」
これ以上続けてもいたちごっこになりそうなのでここはユウキの優しさに甘えておく。
「うん!頑張ろう!」
そう言って身体を密着させたまま銃を指輪に向けて俺たちは引き金を引いた。
そして狙い通りの場所にコルク弾は当たり、景品である指輪を落とすことに成功した。
ユウキは屋台のNPCから景品を受け取るとひとつを俺に渡してきた。
「はいっ、カエデに一つあげる!」
「・・・いいのか?」
景品として並んでいたときにはよく見ていなかったが改めて見てみるとレアそうなアイテムだった。おそらく何らかの支援効果が付いているだろう。
「うん!カエデのおかげで手に入ったし、記念に受け取ってほしい」
どこまでいい子なんだろうかこの子は・・・そこまで言われたなら是非貰っておこう。
「ありがとな。大事にするよ」
そう言いつつ受け取った指輪をさっそく装備する。右手の中指にはめようとしたところをユウキに止められて左手の薬指にはめられたが何か意味があったのだろうか・・・?
「あっ、そろそろ花火が始まる・・・」
指輪について思い出そうとしていたらユウキがぽつりと呟いた。
時計を確認すると花火が上がる時間まであと少しだった。
「ユウキ、いい場所見つけたんだ。一緒にきて。」
「え?・・・うん、わかった」
逡巡のあと、ユウキはすぐに頷いてくれた。
「じゃあ出発!」
どこに行くのかまだ分かっていないユウキの手を握り、俺たちはまた人ごみのなかを歩き出した。
――――――――
数分間歩き続けるとだいぶ人が少なくなってきた。
不安そうに俺を見ているユウキの手を引いて、階段を上る。建物の屋上には丁度二人掛けできるベンチがあり、視界の先ではちょうど花火が上がり始めていた。
「きれい・・・」
隣にいるユウキから言葉が漏れる。その言葉を聞けただけで探した甲斐があったというものだ。
「それはよかった」
「もしかしてこの日のために?」
「ああ、せっかくユウキが誘ってくれたから綺麗な場所で見たいと思ってな」
気恥ずかしかったが本当のことをユウキに言う。
「今日は誘ってくれてありがとう。おかげでいい気分転換になった」
「ううん、ボクのほうこそありがと!・・・今日のこと、ボクは忘れないよ」
ユウキはまっすぐ俺の目を見て言った。その顔は花火の光のせいなのか少し赤く染まっている。
「俺も今日を忘れないよ・・・また一緒に来ようぜ?」
そのとき見せた花火よりも美しく儚い笑顔を俺は心に刻み込む。
「うんっ!」
夜空を彩る星花火の閃光が二人の繋がった手を優しく照らし出した――
死神と絶剣が互いの思いを知り、生涯を共にすると誓い合うのはまだ数か月先の話である。
珈琲「番外編 <Recollection>をお読みいただきありがとうございます!」
珈琲「<Recollection>には記憶、回想、思い出などの意味があります。カエデとユウキが過ごした夏の思い出、いかがだったでしょうか?」
カエデ「懐かしいな・・・」
ユウキ「楽しかったよね!」
珈琲「それにしてもユウキさんは随分と前からカエデ君にご執心だったようで」
ユウキ「だ、だって・・・好きだったんだもん////」
珈琲「いや~可愛らしいね~。それに引き替えカエデ君は・・・」
カエデ「な、なんだよ・・・」
珈琲「気が付かなかったの?」
カエデ「いや、なんだか俺のことを気に掛けてくれてるな、とは思っていたけど」
珈琲「この鈍感お寿司野郎が・・・!」
カエデ「うるせーよ!てかお寿司野郎ってなんだよ!」
カエデ「・・・気付いてやれなくてごめんな、ユウキ」
ユウキ「ボクは気にしてないよ。それにこれからはずっと一緒だし////」
カエデ「お前のこと今以上に好きになってみせるよ」
ユウキ「ボクももっとカエデのこと好きになるよ////」
珈琲「あ~。あとがきでも糖分補給できるって素晴らしいなあ(錯乱)」
珈琲「次回はお待ちかね!ALOに入ります!」
カエデ「誤字脱字なんかがあったら報告よろしく」
ユウキ「ALO編もよろしくね!」
珈琲・カエデ・ユウキ「閲覧ありがとうございました!!」
ご意見ご感想いつでもお待ちしております!
それでは次回またお会いしましょう!