ソードアート・オンライン~死変剣の双舞~   作:珈琲飲料

11 / 40
お待たせしました!
今回も真面目な感じです。
読者様によっては・・・いや、なんでもない(笑)
それでは第11話です!どうぞ!


11話 心と願い

部屋の中央に設置された黒い石机に座るユイを、俺たち四人はじっと見つめていた。

ユリエールとシンカーには先に転移脱出してもらったので今、部屋には四人しかいない。

 

全部思い出した、とひとこと言ってからユイは沈黙を続けていたがアスナが訊ねるとゆっくりと重い口を開いた。

 

「全部・・・説明します―――キリトさん、アスナさん、カエデさん、ユウキさん」

 

その丁寧な言葉を聞き、俺は形容し難い何かを感じた。胸が締め付けられるような、何かがなくなってしまったような感じ。キリトもアスナもユウキも動揺しているようだった。

 

「<ソードアート・オンライン>という名のこの世界は、ひとつの巨大なシステムによって制御されています。システムの名前は<カーディナル>、それが、この世界のバランスを自らの判断に基づいて制御しているのです。カーディナルはもともと、人間のメンテナンスを必要としない存在として設計されました。二つのコアプログラムが相互にエラー訂正を行い、更に無数の下位プログラム群によって世界の全てを調整する・・・。モンスターやNPCのAI、アイテムや通貨の出現バランス、何もかもがカーディナル指揮下のプログラム群に操作されています。――しかし、ひとつだけ人間の手に委ねなければならないものがありました。プレイヤーの精神性に由来するトラブル、それだけは同じ人間でないと解決できない・・・そのために、数十人規模のスタッフが用意される、はずでした」

 

「GM・・・」

 

ぽつりと呟いたキリトがさらに続ける。

 

「ユイ、つまり君はゲームマスターなのか・・・?アーガスのスタッフ・・・?」

 

「いやキリト、その可能性は低い。そもそも子供をスタッフとしては配備しないだろう。・・・・・・プログラム。違うか?」

 

ユイはゆっくり頷くとまた口を開いた。

 

「カエデさんのお察しのとおりです。カーディナルの開発者たちは、プレイヤーのケアすらもシステムに委ねようと、あるプログラムを試作したのです。ナーヴギアの特性を利用してプレイヤーの感情を詳細にモニタリングし、問題を抱えたプレイヤーのもとを訪れて話を聞く・・・。<メンタルヘルス・カウンセリングプログラム>、MHCP試作一号、コードネーム<Yui>。それがわたしです」

 

「プログラム・・・?AIだっていうの・・・?」

 

アスナの問いかけに、ユイはあの悲しそうな笑顔を向けてこくりと頷いた。

 

「プレイヤーに違和感を与えないように、わたしには感情模倣機能が与えられています。・・・偽物なんです、全部・・・この涙も――――」

 

「それは違うぞ、ユイ」

 

ユイの言葉に割り込み、続ける。

 

「あのときユイは俺たち四人を助けた。ただのプログラムならそんなことしない。それは紛れもなくお前の意思だ。ちゃんと持ってるんだよ。<心>を。だから――」

 

ユイの頭の上に手を置き、柔らかい口調で話しかける。

 

「これからどうしたいんだ?お前の心を聞かせてくれ」

 

「わたし・・・わたしは・・・」

 

ユイは細い腕をいっぱいに伸ばして四人に向けた。

 

「ずっと、一緒にいたいです・・・パパ・・・ママ・・・にぃに・・・ねーね・・・!」

 

アスナもユウキも溢れる涙を拭わず、ユイに駆けるとギュッと抱きしめた。

 

「よく言った。それでこそ俺の妹だ。さてキリトよ」

 

ユイをなでる手をとめて、キリトに話しかける。

 

「おそらくユイはカーディナルの中でエラー認定された。これから行われるプログラム走査のあとに・・・消去されるだろう」

 

「!?・・・どうしたらいい?」

 

アスナもユウキも俺の言葉を聞いて驚愕していた。自然と俺のほうに視線が集まる。

 

「消去される前にユイのコアプログラムを取り出す。パソコンに詳しいだろ?」

 

「お、おう!」

 

それだけ言うとコンソールに駆け寄りキリトはシステムにアクセスした。操作している横で俺もコンソールを起動させてキリトのアシストをする。

 

「カーディナルにエラーをぶち込んでユイのプログラム走査を遅らせる。その間に取り出せ!時間がない!」

 

「分かってるって!」

 

キーボードをたたく音に満たされた部屋のなかで、よく通る澄んだ声が響いた。

 

「ありがとう・・・パパ・・・にぃに」

 

ユイは目に涙を浮かべて、笑った――

 

 

――――――――

 

第一層<はじまりの街>は、冬の肌寒さをまったく感じさせない暖かな陽気に包まれていた。はしゃぐ子供たちの声。まあ、はしゃいでいる理由はもっと別のところにあるのだが・・・

 

現在、教会前ではガーデンパーティーが開催されていた。ユウキとアスナがその料理スキルをいかんなく発揮し、料理をみんなに振る舞っている。

 

「できたよー!」

 

新しい料理が次々に運び出されるたび、子供たちが盛大な声を上げる。うん、そういうことだ。別にぽかぽか陽気に対して喜んでいるのではなく料理に対してテンションMAXなだけである。食べ盛りだしね。仕方ないね。

 

「こんな旨いものが・・・この世界にあったんですね・・・」

 

シンカーが運ばれてきた料理を食べながら感激の表情で言った。隣ではユリエールがその様子をにこにこしながら眺めている。おー 甘い甘い。

 

「あ、カエデ!ここにいたんだ!」

 

先ほどまでキッチンで料理をしていたユウキが俺の隣に座りながら話しかける。

 

「はい、カエデ。あ~ん」

 

「ん・・・」

 

「・・・どうかな?」

 

口の中の料理を咀嚼している俺を見ながら心配そうに聞いてくる。

 

「おいしいよ。さすがユウキ」

 

「えへへ、よかった」

 

頭をなでながら料理の感想をユウキに伝える。いつも食べてるし、毎日美味しいんだから聞かなくてもいいだろ・・・・・・まあ、かわいいからいいや。

 

「ほら、ユウキも。あ~ん」

 

「え!?いや・・・恥ずかしいよ・・・あむ」

俺が作ったわけじゃないが、まあ仕返しというやつだ。だから惚気―――以下略。

 

そういえばパーティー参加者全員(子供たちも)にブラックコーヒーと抹茶が出されていたらしい。

そのどれもが飲めなくなるレベルで甘くなっていたとか・・・解せぬ。

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

その広い部屋は塔の一フロアを丸ごと使っており、壁は全面透明のガラス張りだった。中央には半円形の巨大な机が置かれ、その向こうには五脚の椅子が並んでいる。

部屋の中には俺を含めて二人しかおらず、もうひとりは並んだ椅子の中央に座っている。

 

「っていうのが今回の事件のあらましです」

 

「なるほど・・・それでユイ君はこれからどうするのだね?」

 

椅子に座る人物――――ヒースクリフは眉をひそめたまま俺に問いかけてきた。削いだように尖った顔立ちからは何を考えているのか読み取ることができない。

 

「容量的にはぎりぎりですけど、キリトのナーヴギアにあるローカルメモリに保存されるようになっています。そこで今回のことは誰にも口外しないようにしていただけると助かるんですけど」

 

「ふむ、承知した。しかしなぜ私にそれを言う?君さえ言わなければ私は知らなかっただろうに・・・」

 

表情を変えないままさらにヒースクリフが問う。

 

「やだなぁ、団長さんのこと信用しているからですよ。それに―――」

 

「なぜプログラムが規定外の動きをするのか気になっていた・・・ですよね?」

 

そこまでいって俺は部屋から出た。俺の考えが正しいかどうかは近いうちに分かる。その時までゆっくり待つことにしよう。

 

 

「まさか、カエデ君・・・いや、それもRPGの醍醐味というやつか・・・」

 

部屋に残ったヒースクリフはぽつりと呟く。その口角がわずかにつり上がっていたのは誰にも見られることはない。

 

「・・・それにしてもこのアイテムはどう消費しようか」

 

机の上に置かれた大量の<スカベンジトードの肉>を見てなんとも言えない表情になったのも誰にも見られることはなかった。

 

 

――――――――

 

「はぁ~冬だね~」

 

転移門広場を目指して歩きながら呟く。空は夕焼けに染まり、街を吹き抜ける冷たい風が容赦なく体全身におよぶ。

 

身を縮ませ寒さを和らげながら歩いていると通知音が鳴り、メッセージが届いた。

差出人はもちろんユウキ。

 

「カエデ、もうすぐ晩御飯ができるからはやく帰ってきてね。今日は寒いからシチューだよ!」

 

最愛の人の声を聞いて思わず顔が綻ぶ。この幸せな生活がいつまでも続けばいいのに・・・心の底からそう思う。しかし、あと数日経てば俺たちは前線に戻らないといけない。七十五層のボスと戦う日も近いだろう。その時俺は――――

 

そこまで考えて、俺はふっと笑った。ごちゃごちゃ考えるのは、やめよう。

簡単なことだ。守るべきことは二つ。

 

この世界を終わらせる――――みんなの願いであり、ユイとの約束だ。

どんなことがあってもユウキを守る――――俺の決意だ。

 

約束と決意・・・胸に掲げた思いを果たすために今を精一杯生き続ける。そうすることで答えはきっと見つかるはずだ。

 

「達成するさ・・・両方な」

 

口から出た小さなつぶやきが頭の中に強く響き渡るのを感じながら俺は第五十五層をあとにした。

 




珈琲「朝露の少女、これにて終了です!第11話、いかがだったでしょうか?」

ユウキ「カエデ、あ~ん。」

カエデ「ん・・・やっぱりおいしいな。ユウキの料理は」

珈琲「・・・・・・」壁ドン

カエデ「ほらユウキも、あ~ん」

ユウキ「あむ・・・ありがと/////」

珈琲「あ、すいませーん!壁のおかわりお願いします。はい、鉄のやつを」

――――――数時間後

珈琲「長かった・・・もう壁も手も限界や・・・」

カエデ「なんでそんなにボロボロなんだ?俺たち普通に飯食ってただけなのに」

ユウキ「なんでだろうね?」

珈琲「(あれで普通だと・・・?)・・・もういいや。とりあえず75層のボス戦が近づいてきたわけだけど、どうなの?」

ユウキ「クォーターポイントのボスは強いからね!どんな敵なのか楽しみだよ!」

珈琲「おー元気やねー。カエデのほうは?」

カエデ「いつもどおり全力で戦うだけだな。もちろんユウキのことが最優先だけど」

ユウキ「カエデ・・・/////」

カエデ「ボス戦がんばろうな。ユウキ」

ユウキ「うん////」

珈琲「あー、はいはいワロスワロス」

カエデ「ご意見ご感想いつでもお待ちしています!」

ユウキ「また次回会おうね!」

「「「これからもよろしくお願いします!」」」

あとがきのほうはこのままでいいとお声をいただいたのでこれでいきたいと思います。
最後まで閲覧ありがとうございました!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。