舞弥さんが出て行ってから数夜。
私は今未遠川の堤防の上にいます。
隣にはキャスターのマスター。
それ以外の人もちらほらいます。
キャスターのマスターは興奮を隠せないようで、キラキラと子どもみたいな目をしています。
祭りでもないのに何故こんな騒ぎになっているかというとその答えは河に現れた巨大なタコ?のせいです。
キャスターの宝具らしいのですが凄く気持ち悪いです。
それをみて興奮するキャスターのマスターも正気を疑いますが・・・。
私はこんな場所に来たくはなかったのですが、おじさんが姉さんを助けようとしてキャスターの魔術の餌になりそうな所を
特別に助けて頂いたようですので仕方なく今回だけ協力することになりました。
姉さんは本当に迷惑です。
私達がキャスターから頼まれた事は2つ。
キャスターを今回に限り攻撃しない事と来るであろうアーチャーのサーヴァントを足止めすることだそうです。
その代わりにあちらのサーヴァントの真名とおおまかな過去を教えてもらいました。
何度も何度もジャンヌと言っていたので怖かったです。
また、キャスターはアーカードの正体も知っていました。
なんでも『黒魔術に触れたものなら誰でも思いあたる』との事です。
恭しく礼をしていました。
それにしてもアーカードがお祖父様を眠らせているのですがこんなに離れても大丈夫なのでしょうか。
アーカードの代わりに婦警さんが私の警護についてくれていますから外敵には対処出来るでしょうけど。
でも婦警さん。
間の抜けた声で「はぁ、すごいっすねぇ。でもあの沢山の目を見てるとマスターを想像しちゃいますね」と言いました。
気が抜けてしまいますので・・・今は集中して貰えますか?
たぶん狙われていますから。
「・・・冷たい」
キャスターの宝具の触手が水面を叩く度に水飛沫が飛んできます。
キャスター一人にあちらはサーヴァント2人がかりですね。
ずるいと思います。
セイバーが触手を斬っても直ぐ再生していますので数はあまり関係はないようですが。
ランサーの姿が見当たりませんので参加していないのでしょう。
片腕で戦うというのも厳しいですからね。
ライダーは・・・役に立っているのでしょうか。
あそこにウェイバーさんがいるとしたらさぞや可愛い声をあげているのでしょう。
考察している私の隣でキャスターのマスターは叫び始めました。
「くふふふふ・・・もう退屈なんてさよならだ。手間暇かけて人殺しなんてすることもねぇ。ほおっておいてもガンガン死ぬ。潰されて、千切られて、砕かれて、喰われて。死んで死んで死にまくる。まだ見たこともない腸も次から次へと見られるんだ。毎日、毎日、世界中、そこいら中で!!引っ切り無しの終わりなし!!」
苦手ですこの人。
静かにしてもらいたいです。
その願いが叶ったのでしょうか。
「あっ・・・」
後ろに吹っ飛んだキャスターのマスター。
誰もが彼を見て後ずさりました。
「なに?・・・ねぇなに?」
本人は気づいていません。
目のいる女性は恐怖が顔に出ています。
キャスターのマスターが自分のお腹にあてた手を見ると、発狂するわけでもなく逆に見つからなかったものが見つかったとばかりに微笑みました。
「すっげぇきれぇ・・・。そっか・・・そりゃ気づかねぇよな。灯台下暗しとは良く言ったもんだぜ。誰でもねぇ。俺の腸の中に探し求めてたもんが隠れていやがったんだ。ふぅ・・・やっと見つけたよ。ずっと探してたんだぜ?なんだよ・・・俺の中にあるならあるって言ってくれりゃあいいのにさ」
そう言ってもう一度衝撃を受けると、無垢な子どものような微笑みを浮かべて死んでいきました。
額には穴が開いています。
「うわぁぁ!!・・・狙撃みたいですね。場所わかりますけどどうしますか?」
「いえ、放っておきましょう。婦警さんがいれば撃たれても・・・大丈夫ですよね?」
「や、ヤー!」
いま、うわぁぁ!!って言っていましたが本当に大丈夫ですよね?
心配になって来ました。
「・・・あ、戦闘機が来てますね」
婦警さんが指さした方角に2つの小さな光が見えました。
まっすぐこちらに向かっています。
上空に霧がかかっているせいか1機がキャスターに接近しました。
確認しに行ったのでしょう。
しかしたくさんの触手が追いかけ、あっけなく捕まってしまいました。
そして口?の中へ・・・。
もう1機も突進していきます。
死ぬ気でしょうか。
「あ、マスターですよ。あの戦闘機の上にいます」
「・・・えっ?」
私では見えませんがきっとそうなんでしょう。
飛行機の発している微かに黒く光っているようですし。
「ミサイル撃っちゃいましたね。あの金ピカの飛行機大丈夫でしょうか?」
「よく見えますね?」
「だって吸血鬼になっちゃいましたから」
後悔しているのでしょうか。
表情からは読み取れません。
「私に見えるのは碧い軌跡と紅い軌跡だけです」
「あはは・・・人間ならそれが普通ですよ」
・・・あれ?
戦闘機がこちらに向かってきています。
このままだとキャスターに当ってしまいます。
「あ、消えた」
運の良いことにキャスターは突如消えました。
同時にライダーも消えました。
また逃げたのでしょうか。
黒い戦闘機を追いかけていた黄金の戦闘機?もばら撒かれた黒い塊によってバランスを崩したようです。
河の水面に片翼をもがれ着水しました。
アーカードが操作している戦闘機は橋の下をくぐりました。
アーカードはそのまま飛行を続け攻撃目標をセイバーに変更しました。
戦闘機から溢れる黒い塊がセイバーを襲います。
セイバーは剣を黄金に輝かせて反撃のチャンスを狙っているようです。
逃げまわっていたセイバーが突然振り向いて剣を構えました。
剣が更に輝きを増しているので宝具を使用するようですね。
アーカードは戦闘機から飛び出て懐から銃を取り出しました。
「危ないマスター!!」
アーカードの後ろから飛来する武器。
婦警さんの声も虚しくそれはアーカードの両腕を落とし、身体を貫きました。
アーカードは自由落下して河に落ちていきました。
武器を放ったのは橋に付いている照明器具で反射している黄金の鎧のサーヴァント、アーチャー。
腕を組んで悠然と見下ろしています。
「アーカードは大丈夫ですよ。それよりもあれは?」
「信号弾みたいですね」
信号弾の位置にキャスターが再び現れました。
水上に立つセイバーが黄金の剣を天に向けて振り上げます。
収束していく光と風。
そして放たれるーー黄金の剣。
「エクス・カリバーぁぁぁぁぁぁあ!!!」
河を裂き、キャスターを飲み込んでいきました。
舞い上がる黄金の風。
あれが、宝具。
手に届くことのない理想を見ているような。
幻想的な輝き。
この場にいる全員がその有り様に心を奪われています。
・・・私には眩しすぎます。
婦警さんも同様みたいです。
婦警さんは堪らないと光が収まる前に私の手を握って歩き始めました。
置き去りにしたキャスターのマスターは誰かが処理してくれるでしょう。
「どこへ行くんですか?」
「マスターのところです。あそこにずっといても怪しまれますからね」
だいぶ歩いたところの川辺にアーカードとキャスターがいました。
私達は少し離れたところで足を止めました。
近寄ってはいけないと感じてしまったからです。
キャスターは下半身を失っていてもう長くはないでしょう。
「ふふ・・・何故貴方が憐れむですドラキュラ(あくま)よ。」
「お前は・・・お前は俺だ!!呆れ返る祈りの果てに神は降りてくる、祈りと祈りの果てに哀れな私達の元に神は降りてくると信じて裏切られ狂った、化物だ!!」
「・・・そうかも、しれませんねぇ。ですが私と貴方は違います。あなたには護るべき国も領地も国民も愛する人さえいな
いのですから。あの光のなかで私は確かに答えを見つけました。私は逝きます。ですが貴方はいつまで生き続けなければな
らないのですか?私以上に哀れで心の弱い貴方はいつまで戦い続けなければならないのですか?」
「膨大な私の過去を膨大な私の未来が粉砕するまでだ」
「ふふそうですか。・・・おお、声が、声が聞こえます。・・・彼女の声が、あの光が見えます。逝かなければ・・・彼女がーージャンヌが待っています。ーー次はジャンヌと共にゆっくり語らいましょう・・・エイメン」
「・・・エイメン」
キャスターの身体は光となって消滅しました。
最後の言葉は誰に向けたものだったのでしょうか。
闇の空を仰いだアーカードはふっと笑うと振り向きました。
お互いに悪魔の所業を続け一方は人間として、一方は吸血鬼(ばけもの)として理解し合う事ができたのでしょうか。
紅い瞳には先程までの迷いが見られません。
それが答えなのでしょう。
「帰るぞ桜、婦警」
私を通り過ぎるアーカードの背中を見ながら私は間桐邸への帰路につきます。
その背中はどこか寂しそうでしたーー。
name ジル・ド・レ
クラス キャスター
筋力:D 耐久:E 敏捷:D 魔力:C 幸運:E 宝具:A+
宝具
螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)ランクA+ 水魔を容易に召喚して戦わせる。魔導書がある限り水魔は倒し
ても復活する。また本自体も修復機能をもつ。キャスターのクラスとして呼び出された所以はこの本にある。
説明
百年戦争のオルレアン包囲戦でジャンヌ・ダルクに協力し、戦争の終結に貢献し「救国の英雄」とも呼ばれた。しかしジャ
ンヌが異端として火炙りになった後錬金術(おそらくハガレンっぽい理由)、黒魔術にのめり込む(財産を狙う政敵達によ
り誇張された一面もある)。その後絞首刑、死体が火刑になった。
zeroの世界ではCOOL教に鞍替えした。セイバーをジャンヌと間違えるほど狂っており、最後の瞬間もジャンヌを思い浮かべ
た。
声優さんの握手会では大人気だったらしく、他の声優さんが『やめておけ』とからかったりしたらしいです。
name 雨生龍之介
マスター
数代前に断絶した魔術の家系出身。好奇心が人を殺すを実現した人。彼の最初の犠牲者は姉。cool大好き。
軽いようで哲学的な面もあったりなかったり。
COOL以外特に印象に残っていません。
COOOOOOOOOL!!!