fate/zero~ノーライフキング~   作:おかえり伯爵

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闇と黄金の邂逅

月の光と街灯によって写しだされる2つの影。

それは時に交じり合い時に離れ時に睨み合う。

振り下ろされる武器を長い槍で受け止め逸し反撃とばかりに突き出す。

私の眼前には神話でしか許されない戦いが繰り広げられています。

 

一人は金色の髪の騎士。

外見は美しく華奢な少女ですがブルーのドレスに銀の鎧を纏っています。

襲いかかる2本の槍を見えない何かで弾いています。

 

もう一人は泣きホクロが特徴の黒髪の男性。

2本の槍を駆使して何度も攻め立てます。

 

私の目には捉えられないほどの速度で進行していく戦いに呆けてしまいそうになります。

しかし、目をそらす事は出来ません。

 

現在私はコンテナの影に隠れてそれを見ています。

突然アーカードに連れられて来た時は驚きましたが、今のうちに慣れておけということでしょうか。

あれだけ動いても汗一つかかないのとはさすが英霊です。

私にこれを見ておけと言う割にアーカード本人は闇に溶け込んで消えてしまいました。

なので今私は一人です。

 

「じゃれあいはそこまでだランサー」

 

「ランサーのマスター!?」

 

「これ以上勝負を長引かせるな。そこのセイバーは難敵だ。速やかに始末しろ。宝具の開帳を許す」

 

どこからか声がします。

やけに偉そうな口ぶりですが様子からあの槍使いのマスターの声みたいです。

透明の武器を持ったサーヴァントのマスターらしき白髪の女性の身体がビクッと震えています。

宝具については多少話は聞きましたがよくわからなかったのでどんなものか見せていただきましょう。

 

「了解した我が主よ」

 

勿体つけたように言うと槍使いは持っていた短槍を地面に落とし長槍を両手で持ちます。

すると槍に巻きつけてあった布が解かれ、紅い槍が顔を出します。

禍々しい妖気を発しているあれが宝具のようです。

 

「そういうわけだ。ここから先は獲りに行かせてもらう。セイバーお前は束ねた風の魔力で剣を隠したままか?」

 

セイバーと呼ばれたサーヴァントは僅かに力が入ります。

 

「なるほど、剣を覆い隠しておきたい理由がお前にはあるということか。お前の真名、その剣にあるとみた」

 

「残念だなランサー。貴殿が我が宝剣の正体を知ることはない。その前に勝負を決めて見せる」

 

セイバーは剣を構えました。

 

それに合わせてランサーが歩き出しました。

 

「それはどうかな?見えない剣を暴かせて貰うぞ、セイバー」

 

身体の重心を落とすと一瞬で距離を詰めてセイバーに槍を突き出しました。

爆音を風と共に透明だった剣から黄金の光が溢れでています。

 

「晒したな、秘蔵の剣を・・・」

 

「インヴィジブル・エアが解れた・・・」

 

ランサーは足元に槍を突き刺し、次々と攻撃をつなげていきます。

それをセイバーは躱し、弾きます。

コンテナ側に追い詰められたセイバーはコンテナを駆け上がり反転します。

二人の立ち位置が丁度反対になりました。

 

「刃渡りも確かに見て取った。これで見えぬ間合いに惑わされることはない」

 

走りだすランサーに対してセイバーは動きません。

目を閉じてじっと何かを考えているみたいです。

そして目をあげると剣を頭の上で構えて走りだしました。

 

「ーーっ!!」

 

私の予想を大きく外れてセイバーは脇腹辺りを刺されました。

掠っただけですが血が滲みでています。

 

「セイバー!!」

 

「ありがとう、アイリスフィール。大丈夫治癒は効いています」

 

一瞬光ったのは治癒らしいです。

とても興味深いです。

 

「やはりやすやすと勝ちを獲らせてはくれんか」

 

心なしかセイバーの顔に焦りが見えます。

貫かれた鎧の位置に手を当てていますが、どうしたのでしょうか?

手を離した場所をじっと見てみると鎧に傷がついていません。

 

「そうか、その槍の秘密が見えてきたぞランサー」

 

「ほう」

 

「その紅い槍は魔力を断つのだな?」

 

「ふっ、その甲冑は魔力で生成されたもの。それを頼みにしていたのなら諦めるのだな、セイバー。俺の槍の前では丸裸も同然だ。」

 

「たかだか鎧を剥いだぐらいで得意になってもらっては困る」

 

そう言ってセイバーは鎧を脱ぎ捨てました。

なるほど。

確かに鎧があってもなくても変わらないのであれば少しでも軽くしたほうが戦い易いでしょう。

 

「防ぎ得ぬ槍ならば、防ぐより先に斬るまでの事。覚悟してもらおう、ランサー」

 

「思い切ったものだな。乾坤一擲(けんこんいってき)ときたか。鎧を奪われた不利を鎧を捨てることの利点で覆す。その勇敢さ、潔い決断。決して嫌いでは無いがな。この場に言わせてもらえばそれは失策だったぞ、セイバー」

 

「さて、どうだか。甘言は次の打ち込みを受けてからにしてもらおうか」

 

セイバーは剣によって生じた風を使って水平に跳躍しました。

襲い来るセイバーを嘲笑う様にランサーは足元にあった槍を足で蹴り上げ、空いていた手で握りしめました。

それを振り、セイバーの手首を斬り裂きました。

同時に短槍を持っていた手の手首を斬られ、槍を落としました。

 

「つくづくすんなりとは勝たせてくれんのか。良いがなその不屈ぶりは」

 

「何を悠長な事を言っている。馬鹿め。仕留め損ねおって」

 

斬られたランサーの手首の傷が消えました。

サーヴァントの回復はマスターなら出来るのかもしれませんね。

・・・私はやり方が分かりませんけど。

 

「痛み入る、我が主よ」

 

「アイリスフィール、私にも治癒を」

 

「・・・かけたわ。かけたのに・・・そんな!!治癒は間違いなく効いているはずよ。セイバー貴方は今の状態で完治しているはずなのっ」

 

「我がゲイ・ジャルグを前にして鎧が無意だと悟ったまでは良かったな・・・が、鎧を捨てたのは早計だった」

 

地面に落ちた黄色い短槍を蹴りあげて再び握り、ドヤ顔です。

 

「そうでなければゲイ・ボウは防げていたものを」

 

「なるほど、一度穿てばその傷を決してい癒やさぬという呪いの槍・・・もっと早くに気づくべきだった。魔を断つ赤槍。呪いの黄槍。加えて、乙女を惑わす右目の泣き黒子。フィオナ騎士団随一の戦士。輝く猊のディルムッド。まさか手合わせの栄に預かるとは思いませんでした」

 

「それがこの聖杯戦争の冥であろうな。だがな、誉高いのは俺の方だ。時空を超えて英霊の座に招かれたものならばその黄金の宝剣を見違えはせん。かの名高き騎士王と鍔迫り合って一矢報いるまで至ったとは・・・。ふふん、どうやらこの俺も捨てたものではないらしい」

 

騎士王?

誰のことでしょうか・・・。

女性の騎士で王・・・?

帰ったら調べてみようかな。

 

「さて、互いの名も知れた所で、ようやく騎士として尋常なる勝負に挑めるわけだが・・・それとも、片腕を奪われたままでは不満かなセイバー?」

 

挑発するランサーに答えるようにセイバーは鎧を纏いました。

剣を正面に構えてギッっとランサーを睨みます。

 

「戯言を・・・。この程度の手傷に気兼ねされたのではむしろ屈辱だ」

 

「覚悟しろセイバー。次こそは獲る!!」

 

「それは私に獲られなかった時の話だぞ、ランサー!!」

 

お互い一歩も引かない状態。

好敵手同士の譲れない戦いに私は汗ばんだ手を握りしめます。

しかし呼吸をするのも躊躇われる状態のこの場に突如として雷が落ちました。

私は驚いて腰を抜かしてしまいました。

 

「アーララララララライイイィィィィィ!!!!」

 

轟音と雷の中、二頭の牛に引かれた牛車?に乗った大男がセイバーとランサーの間に割り込みました。

赤いマントに赤い髪に赤い髭。

全身はとてつもない筋肉で覆われています。

その男が両手を広げました。

 

「双方剣を治めよ。王の前であるぞ」

 

チラッチラッっとセイバーとランサーを見て目を閉じました。

 

「我が名は征服王イスカンダル!!此度の聖杯戦争においてはライダーのクラスを得て現界した」

 

これはどう反応すれば良いのでしょうか・・・。

セイバーもランサーも呆れた顔です。

一緒に乗っているオカッパ頭の・・・ウェイバーさんは焦りと怒りで凄い顔をしています。

可愛い顔が台無しです。

 

「何を考えてやがりますか!!この馬鹿は!!」

 

ウェイバーさんは泣きながら大男の服に掴みかかりましたがデコピンで弾き飛ばされました。

 

「いてっ!!」

 

額を抑えて泣く姿は・・・ふふふ。

 

「うぬらとは聖杯を求めて相争う巡り合わせだが、まずは問うておくことがある。うぬら・・・一つ我が軍門に下り聖杯を

 

余に譲る気はないか!!さすれば余は貴様らを朋友として遇し、世界を征する快悦を共に分かちあう所存でおる」

 

ランサーは『こいつ馬鹿だ』と首を振った。

 

「その提案には承諾しかねる。俺が聖杯を捧げるのは今生にて誓いを交わした新たなる君主ただ一人だけ。断じて貴様ではないぞライダー!!」

 

セイバーも呆れた様にため息を付いています。

 

「そもそも、そんな戯言を並び立てるために貴様は私とランサーの勝負を邪魔立てしたと言うのか?騎士として許しがたい侮辱だ!!」

 

セイバーの怒りを受けてもライダーと呼ばれる大男は耳を指で掻いていました。

・・・この人は好きになれそうにありません。

自分勝手で周りに迷惑をかける事に戸惑いすら見られません。

こんな人がいるから私のような人が増えるんです。

私の中の暗く嫌な感情が沸々と湧き上がっていきます。

 

「待遇は応相談だが?」

 

指でお金の形を作っています。

・・・。

 

「「くどいっ!!」」

 

セイバーとランサーの声が重なりました。

残念だと己の作った指を見ています。

 

「重ねて言うなら私も一人の王としてブリテン国を預かる身だ。如何な大王といえど臣下に下るわけには行かぬ」

 

ぎゅっと剣を握りしめたセイバー。

 

「ほう、ブリテンの王とな?こりゃ驚いた。名にし騎士王がこんな小娘だったとは!!」

 

セイバーは唇を噛み締めています。

飛び出してライダーを怒鳴りつけたい衝動に駆られましたが、せっかくアーカードが結界?を張ってくれたのが無駄になってしまいます。

ここは我慢しないと。

 

「その小娘の一太刀を浴びてみるか、征服王!!」

 

「はぁ・・・こりゃ交渉決裂か。勿体無いなぁ。残念だなぁ」

 

「ーーライダー!!!!」

 

ウェイバーさんが叫びました。

 

「大体お前はーー」

 

「そうか。よりによって貴様か。一体何を血迷って私の聖遺物を盗み出したのかと思ってみればまさか君自らが聖杯戦争に参加する腹だったとはね。ウェイバー・ベルベット君」

 

ウェイバーさんは怯えてライダーにすがりついています。

この声の人物を知っているようですね。

 

「君については私が特別に課外授業を受け持ってあげようではないか。魔術師同士が殺しあうという本当の意味。その恐怖と苦痛を余すこと無く教えてあげよう。光栄に思い給え」

 

ウェイバーさんは耳を塞いで縮こまってしまいました。

ウェイバーさんを脅すなんて・・・許しません。

そんなウェイバーさんの肩を叩き、ライダーは叫びました。

 

「おう、魔術師よ!!察するに貴様はこの坊主に成り代わって余のマスターになる腹だったらしいな。だとしたら片腹痛いのぉ。余のマスターたるべき男は余とともに戦場を馳せる勇者でなければならぬ!!姿を晒す度胸さえ無い臆病者など役者不足も甚だしいぞ!!」

 

そう言って大笑いしました。

馬鹿だと思っていましたが良いこと言うじゃないですか。

少しだけ見直しました。

 

「おいこら!!他にもおるだろうが!!闇に紛れて覗き見しておる連中は!!」

 

「どういうことだライダー?」

 

私の心臓が跳ね上がりました。

バレてる!!

まずいです。まずいです。

アーカードもいないのにどうしよう!!

 

「セイバー、それにランサーよ。ウヌらの真っ向切っての競い合い。誠に見事であった!!あれほど清澄な剣戟を響かせては惹かれて出てきた英霊がよもや余一人ということはあるまいて」

 

腕を振り上げてぎゅっと握るとライダーは宣言しました。

 

「聖杯に招かれし英霊は今ここに集うがいい!!なおも顔見世を怖じるような臆病者は征服王イスカンダルの侮蔑を免れぬものと知れ!!」

 

響く轟音。

これは出て行くしか・・・ないんでしょうか。

足元を見てみると眼が私を見ていました。

行けと言うんですねアーカード。

分かりました。

私は絶対に勝ちます。

雁夜おじさんの為に。

踏み出す一歩。

身体が月の光を浴びて色を成します。

私と同時に街灯の上に黄金のサーヴァントが出現しました。

ゆっくりと顔を上げた黄金のサーヴァントは不機嫌な顔をしています。

 

「俺を差し置いて王を称する不埒者が一夜に2匹も湧くとはな」

 

「難癖着けられたところでなぁ・・・イスカンダルたる余は世に知れ渡る征服王にほかならぬのだが」

 

「戯け。真の王たる英雄は天上天下に我ただ一人。後は有象無象の雑種にすぎん」

 

「そこまで言うならまずは名乗りをあげたらどうだ?貴様も王たるものならばまさか己の偉名を憚りはすまい」

 

「問を投げるか、雑種風情が。王たるこの我に向けて。我が配列の栄に欲してなおこの面貌を見知らぬと申すならそんな蒙昧は活かしておく価値すら無い!!」

 

黄金のサーヴァントの背後が揺らぎ、波紋が広がると武器らしきものが幾つか出てきました。

黄金のサーヴァントが街灯を踏みつけると光は失われました。

 

「あ・・・」

 

思わず声をあげてしまいました。

小さな声だったはずですが全員が一斉に私の方へ顔を向けてきました。

足がすくみそうです。

特にあの黄金のサーヴァントは武器をしまう素振りすら向けず、見下ろしてきます。

怖い。

全員が私の登場に困惑しているようにも見えます。

 

「なっ!!子どもが何故こんな所に!!」

 

「くっ、不味いな・・・」

 

「不味いのぉ・・・」

 

「さ、桜・・・?」

 

「何だ坊主、知り合いか?」

 

「ああ・・・うん」

 

やはり私のような子どもがこの場にいるのが不思議でならないようです。

私自身場違いなのはわかっています。

でも私は逃げたくありません。

 

「ふん、誰かと思ってみれば薄汚れた雌狗ではないか。・・・貴様、誰の許しを得て俺を仰ぎ見る?分を弁えよ雑種!!」

 

矛先が私に向きました。

そして放たれる容赦の無い一撃。

私ではあれを躱すこのなんてできません。

ここで終わるの?

何も得ず、何も与えられず、何も出来ないまま終わっちゃうの?

・・・許しません。

こんな私にしたお父様も、お祖父様も・・・神様も。

私は絶対に許しません。

こんな下らないつまらない無駄な人生は・・・コワシテシマイマショウ。

 

 

 

「来なさい、アーカード」

 

 

 

私の呼びかけに応じるように影から現れる真紅の鬼。

人類を遥かに超越した不死者。

ノーライフキング。

私の絶対にして唯一の力。

 

放たれた剣から私を守るように間に立つアーカード。

その顔は絶望ではなく笑み。

凶悪な笑み。

見せてあげましょう。

私達の憎しみを。

 

剣がアーカードに突き刺さりました。

吹き出す血。

真紅のコートが更に紅く染まっていきます。

私以外の全員が唖然と見ています。

普通であれば致命的なダメージ。

そのまま消えることでしょう。

でも、彼はーーアーカードに普通は当てはまりません。

 

「ほう」

 

「バーサーカー!?」

 

黄金のサーヴァントの目が細められました。

面白いものを見つけたと言わんばかりに。

セイバーは何処からともなく現れたアーカードに驚いているようです。

 

「な・・・」

 

「どうなっておる・・・」

 

「なんで消えないんだ!?」

 

「フフフフハハハハハハハハハッ!!!」

 

鬼が嗤う。

心底嬉しそうに。

 

「・・・初めまして黄金の王。そしてさよならだ。貴様は私の主を雌狗と呼んだ。お前生きてここから帰れると思うなよ・・・ぶち殺すぞサーヴァント!!」

 

アーカードが懐から拳銃を抜きました。

白銀と黒銀の美しい拳銃。

それらは確かな殺意を持って黄金のサーヴァントを狙います。

 

「貴様、俺に向かってその戯言ーーそこまで死に急ぐか狗!!」

 

私達に向けられる恐ろしい数の武器。

一つとして同じものはありません。

ですが一つ一つが必殺の武器である事は間違いありません。

先に動いたのは黄金のサーヴァント。

何本もの武器が襲いかかります。

アーカードはそれを的確に撃ち落とします。

 

「やつめ・・・本当にバーサーカーか?」

 

「狂化して理性を失って・・・おらんのか?だがバーサーカーにしてはえらく芸達者なやつよのぉ」

 

「セイバー・・・あれだけの傷を負って現界したままでいられるの?」

 

「いえ・・・あれはありえません。あれほど深いキズを負えば消滅するはずです。おそらく特殊な宝具を所有している可能性が高い。あのサーヴァントは最低でも3つは宝具をもっています。ですがあの黄金のサーヴァントも・・・」

 

「ええ、あの武器は全部宝具のようね・・・認めたくはないけれど。やっかいなサーヴァントが増えたってことね」

 

「ちぃ、狂狗風情が我の攻撃を防ぐだと!!」

 

攻撃が弱まった隙にアーカードの黒銀の銃が街灯に向けられました。

金属と金属がぶつかり合う甲高い音を立てて街灯は真っ二つになりました。

黄金のサーヴァントは飛び上がり、危なげもなく地に降り立ちました。

 

「・・・痴れ者が。天に仰ぎ見るべきこの俺をーー同じ大地に立たせるかっ!!その不敬は万死に値する!!そこな雑種よ。もはや肉片一つも残さぬぞ!!」

 

展開される必殺武器の数々。

アーカードはそれすら愉しむように嗤う。

 

「ーーっ!!貴様ごときの官言で王たる我に退けと?大きく出たな・・・時臣」

 

「とき・・・おみ」

 

黄金のサーヴァントが手をふると向けられた武器は消えました。

退くということでしょうか。

私はそのことに安心しましたがそれ以上にあのサーヴァントが言った言葉に動揺していました。

時臣。

それは私がこの世で2番めに嫌いな人物。

縁を切った怨敵。

言葉から察するにあのサーヴァントのマスターのようです。

だとすればあのサーヴァントは許しません。

いつの間にか私は歯を噛み締めていたようです。

落ち着かなければいけませんね。

 

「命拾いしたな狂狗・・・。雑種共、次までに有象無象を間引いておけ。我と見(まみ)えるのは真の英雄のみで良い」

 

それだけ言って消えて生きました。

 

「ううむ・・・どうやらあれのマスターはアーチャー自身ほど豪気な質では無かったようだな」

 

ライダーが終わったとばかりにため息をつきます。

アーカードは逃げていった黄金のサーヴァントーーアーチャーが去ったことで興味の対象がセイバーへと変わったようです。

じっと紅い瞳でセイバーを見つめています。

 

「・・・バーサーカーで間違いはないか?」

 

セイバーが警戒しながらこちらを見ていました。

アーカードはそれには答えず私を見ます。

 

「桜、オーダーを寄越せ」

 

「・・・全部消して。私達を邪魔するありとあらゆるものを叩いて潰して壊して」

 

「フフフッ、そうだそれでこそ我が主だ。ならば打って出るぞ、とくとご覧あれ。桜」

 

私の命令(オーダー)を待っていたと鬼は言う。

私は震えた。

この頼もしい吸血鬼を美しいと感じてしまったから。

 

夜はまだまだ続きそうです。

目指すは目の前の敵。

今はそれだけを考えましょう。

 

 

 


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