よろしいならば桜ハッピーエンドだ。我々は満身の力をこめて今まさに打ち込まんとする作者だ。だがこの暗い桜ルートで何年もの間耐え続けてきた我々にただの桜ハッピーエンドではもはや足りない!!原作すら無視する桜ルートを!!一心不乱な桜ルートを!!この作品わずか千人強。千人をようやく超えたお気に入り作品に過ぎない。だが諸君は私の作品を超える作品を生み出す一騎当千の古強者だと私は信仰している。ならば我らは諸君と私で千人と一人の作者となる。我々を忘却の彼方へと追いやり眠りこけている連中を叩き起こそう。パソコンを起動させfateを起動し眼を明けさせ思い出させよう。連中に桜の可愛さを思い出させてやる。連中に我々の桜の美しさを思い出させてやる。原作と2次作品との狭間には奴らの哲学では思いも寄らぬ事があることを思い出させてやる。一千人の桜好きで世界を桜愛にしてやる!!
最後ですのでやりたかったんです申し訳ございません。
順番にライトが点灯していき部屋の全体が見渡せるようになりました。
真っ白な空間に佇む真っ黒な存在。
言峰綺礼。
聖職者でありながら人の不幸を笑う男。
そのことに愉悦を感じる男。
『フッ』と不敵に笑い十字架のネックレスにキスをしています。
次の瞬間どこからか剣を取り出しました。
持ち方が独特で右左に3本ずつ指の間に挟むように持ち、手を交差させています。
距離があるはずなのですが一瞬にして距離をつめてきました。
アーカードは懐から白銀、黒銀の銃を取り出すと、白銀の銃を発砲しました。
それを剣を重ねてガードしました。
6本の剣は砕けましたが言峰は今だ勢いが止まりません。
今度は黒銀の銃を撃つと身を屈めて回避、どこからか取り出した6本の新たな剣をもって接近します。
「はぁぁぁあああ!!」
滑るように接近し剣を突き出しました。
アーカードはそれを避けずに黒銀の銃を撃ちます。
言峰の左腕に命中した弾丸は言峰の腕の機能を奪うには十分な威力です。
対してアーカードに刺さった剣は大した威力ではないと、私はそう思っていました。
お互いに距離をとって様子を見ているようですがアーカードの様子がおかしいです。
「・・・なんだと?」
「やはり吸血鬼にはこれが有効なようだ」
「・・・なるほど概念武装か。私の概念を上書きするとはな。この世界には私を倒しうるものが存在するようだ」
「私程度では突き刺すのが精一杯だがな。令呪のバックアップがあってこの程度。一流になれないことをこんなにも悔やむ日が来るとは思いもよらなかった」
アーカードは白銀の銃を発砲しますが言峰の服にはじかれてしまいます。
その隙に言峰は距離を詰めて拳を突き出します。
ありえないことに吹き飛び壁に叩きつけられました。
もはや人間の領域を超えた一撃の後に言峰は3本の剣を再び取り出しアーカードに投げつけました。
「人の身で良くぞここまで練り上げた・・・。だが、足りない!!」
アーカードは投げられた剣を銃で全て撃ち落とし最後に接近してくる言峰に発砲しました。
右肩に命中した弾丸。
これで剣を持つことはできません。
膝を付く言峰にゆっくりとアーカードが近づいていきます。
「なぜ私に挑んだ?負けることなど分かりきっていたはずだ」
「ふっ、本来であれば衛宮切嗣と戦うはずだったのだがな・・・欲が出たようだ」
他人の不幸を観たいという欲望以外に欲などあったのですか。
自嘲気味に言峰は息をつきます。
「問いたかったのだよ。神に狂信し、愛も夢も失ったお前が何を手にしたかを」
「くだらないな。お前はおもちゃを手に入れてはしゃぐだけのクソガキだ。クソガキに教えてやろう。お前の進む道には何も残らない。何も得られない。最後は惨めに死ぬか、人間であることに耐え切れず化物になるだけだ」
「ふっ、なるほど本当にくだらないな」
アーカードは銃の引き金に指を置くと戸惑いなくその指に力を加えました。
弾丸は言峰の心臓と捉え、言峰綺礼は床に倒れました。
ぶちまけられた血。
倒れた言峰にアーカードは黄色の槍を突き刺しました。
その槍には腕が残っており私にはそれが歪な十字架に見えました。
「言峰ーーお、お前たちは!!」
突然現れた衛宮切嗣。
手に持った銃はすでに私に向けられていました。
「・・・あっ」
撃たれた。
私は人事のようにそれを感じました。
ああ、やっぱり私は間違っていたのでしょう。
一体どこで間違えたんでしょうか。
アーカードのマスターになったこと?
舞弥さんを助けたこと?
アイリスフィールさんを言峰に渡したこと?
それとも・・・おじさんを吸血鬼(ばけもの)にしてしまったこと?
走馬灯のように駆け巡る後悔と疑念。
そして天井に穴が空き私は黒い泥に飲み込まれました。
「おかえり桜ちゃん」
雁夜おじさんが微笑みながら私を迎えてくれています。
「今日は遅かったのね桜。今日は雁夜くんが来るから早く帰ってきてって言ったのに」
え、お母さん?
「桜見てみて!!これおじさんが買ってきてくれたのよ!!似合うでしょう!?」
姉さん?
「桜は私の自慢の娘だからな。いくらお土産で桜の気を引こうとしても私が許さんぞ」
お父さん。
ーーここは貴方の理想の世界。
理想?
ーーそう、本来はありえない世界。でも私はそれを叶えてあげられる。奇跡を起こしてね。
本当にこんな幸せな世界にいられるの?
ーーもちろんだよ。聖杯は君にこそふさわしい。さぁ、僕と契約して聖杯の担い手になってよ!!
「ここは・・・どこ?」
見渡す限りの瓦礫の山。
荒廃しきった世界に私は一人存在していました。
瓦礫の奥から垣間見える明かりは火災でしょうか。
思い出したように胸に手を当てると鼓動がありません。
私は死んでしまったのでしょうか。
歩けども歩けども聞こえる助けてと叫ぶ声。
道に転がる人間だったもの。
特別何かを感じるわけではありません。
今はただおじさんの安否を確認したいだけです。
「アーカード、いないんですか?」
試しに呼んでみましたが返事がありません。
婦警さんも見当たりませんし二人とも消えてしまったのでしょうか。
間桐邸にたどり着くまでに衛宮切嗣を見かけましたが形を保っているだけで魂が抜けていました。
宛てもなく彷徨うさまは撃たれた私から見ても異様でした。
何はともあれ間桐邸にたどり着きました。
玄関の鍵を開けて私の部屋に入ります。
ベッドの上に寝かせていたおじさんは未だ眠ったままですが、様子からグールになる心配もなさそうです。
やっと、やっと終わりました。
私は雁屋おじさんの横に入り込んで目を閉じました。
ーー良い夢が観られるようにお祈りを、エイメン。
あれから十年が経とうとしています。
聖杯戦争が終わった一週間後に来た魔法使いさんにお話という名の事情聴取を受けまして、過去のことも話したら『じゃあ、戻してあげる』と軽い言葉と共に私の体が間桐に来る前の姿に戻っていました。
この矛盾のしわ寄せがいつ来るのか今更ながら怯える毎日です。
さて、現在私は魔法使いさんに紹介して頂いた魔法使いさんのお姉さんの下で魔術を習っています。
間桐の『吸収』は失われましたので私が本来持っていた『虚数』を伸ばしているのですが扱いが難しいです。
それでも師匠からはokサインを頂きましたので少し自身を持っていたりします。
それから雁夜おじさんですが、めでたくドラキュラになれました。
もちろん血は私のものしか飲ませていません。
他の人の血を吸ったら絶対に許しません。
高校生活ですが、特に問題もなく過ごしています。
たまにすれ違う遠坂先輩に胸を恨めしそうに見られたりするくらいですね。
婦警さんの胸を拝んだかいがありました。
今日も弓道部の部活が終わって帰路に着きます。
すっかり夜も更けてしまっておじさんには迷惑をかけっぱなしです。
元の姿に戻ったとはいえ日中に買い物は大変でしょうに。
せっかく衛宮先輩からお料理を習っているのに作って上げられないなんて・・・。
アーカードの消息は分からないままです。
聖杯が破壊されたことで消滅してしまったというのが私とおじさんの考えです。
食事を済ませて自室のドアを開けました。
昔とくらべて私物の増えた部屋の椅子に誰かが座っています。
ーーまさか。
「フッフッフ・・・フフフフフフッ」
「アー、カード?」
「その通りだ桜」
「今まで何をしていたんですか?」
「殺し続けていた私を。聖杯の泥に飲み込まれていく私の中のものに引っ張られぬように殺して殺して殺し続けた。そして唯一になった私は受肉を果たし今ここにいる」
遅いですよ。
待っていたんですよ。
貴方にありがとうと伝えたかった。
私を護ってくれてありがとうと。
でもまずは言いたいことがあるんです。
「ーーおかえり伯爵」
「ーーただいま伯爵・・・いや間桐桜」
わたしの物語は続いていきます。
きっとこれからもずっと。
雁夜おじさんとアーカードと共に。
ずっとずっとーー。