ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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そろそろ他の作品も進めたいのに、気付けばこればかり書いてる・・・。


第九十三話 新たな力の可能性

イッセーSIDE

 

まさかこの街にオーディンのじいさんがやって来るとは思わなかったぜ。けどまあ、難しい話はアザゼル先生に任せよう。何かあればいつもみたいに先生から指示があるだろうしな。

 

というわけで、俺はいつもの様にトレーニングを行う為、アザゼル先生の作ったトレーニング用の疑似フィールドへやって来た。ここは前回神崎先輩がディオドラとのゲーム前に利用していた所だが、今じゃすっかり俺もお世話になっている。

 

「やあ、イッセー君。今日も来たんだね」

 

先にトレーニングをしていた木場が俺に気付き剣を降ろす。俺は片手を上げながら木場に近づいた。

 

「へ、そういうお前こそ結局来てるじゃねえか」

 

「あはは。アザゼル先生からは適度に休めと言われてるんだけど、時間が出来るとつい・・・ね」

 

「ところで木場よ・・・あっちでイリナ相手にデュランダルの刀身を伸ばして振り回しているゼノヴィアは何があった?」

 

「ああ、いつものアレだよ」

 

「そっか・・・アレならしょうがないな」

 

「負けない・・・私はもう二度と天井などに負けはしない! 薙ぎ払えデュランダル!」

 

「ちょっ! まっ! 落ち着いてゼノヴィア! これはトレーニング! トレーニンひゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「・・・ゼノヴィアの相手は彼女に任せよう」

 

「・・・だな」

 

頑張れイリナ。後でジュースくらいならおごってやるからな。

 

「あ、イッセー先輩! こんにちはですぅ!」

 

そこへギャスパーが手に小さなロボットを持ってやって来た。ちなみにロボットはアザゼル先生が神器の練習用に作った。

 

「よおギャスパー。調子はどうだ?」

 

「えへへ、順調です。見ててくださいね」

 

ギャスパーがロボットの背中にあるスイッチを押すと、ロボットがギャスパーの手を離れ空へ舞い上がる。

 

「いきます・・・ザ・ワールド!」

 

ギャスパーが掛け声を放つと同時に、ロボットはその場でピタリと停止した。おお、すげえ! 制御出来てるじゃん!

 

「やるじゃねえかギャスパー!」

 

「・・・貧弱貧弱ぅ」

 

ボソリと何かを呟くギャスパー。その顔に俺は言い様もない凄みを感じてしまった。

 

「ギャスパー君?」

 

「はい? 何ですかぁ?」

 

木場が声をかけるといつものギャスパーに戻った。・・・俺の気のせいだったのかな?

 

「いや、見事だったよ。キーワードを設定するっていうのは大成功だったみたいだね」

 

「はい! 自分でもびっくりしてます!」

 

キーワード云々は神崎先輩のアイディアなんだよな。ほんと、こんな効果的な案をあっけなく考えつくなんてすげえぜ。

 

「にしても、変わったなギャスパー。初めて見た頃に比べたら顔に自信があるように見えるぜ」

 

「そ、そそそそそんな事無いですぅ! 僕なんてまだまだ全然で! みなさんのおかげでなんとかやって来れただけですよ!」

 

「んな事ねえよ。木場もそう思うだろ?」

 

「うん。イッセー君の言う通り、ギャスパー君は変わったよ。まあ、僕から見ればキミも変わったけどね」

 

「俺が? 別に変わった所は無いと思うんだが」

 

「いや、変わったよ。女の子の事ばかり考えていた昔のキミとは大違いだ」

 

なん・・・だと・・・!? いや、そんな馬鹿な事があってたまるか! 俺は兵藤一誠だぞ! エロをこよなく愛する健全な男の子だぞ! 確かに、最近はエロ本やエロDVDに手を出すよりもこうやって体を動かす方が楽しいし、松田や元浜から付き合いが悪いとか言われてるが、俺の本質は変わってないはずだ!

 

「は、ははは、何を言ってるんだい木場君。俺は今もおっぱい大好き兵藤一誠ですよ?」

 

「なら聞くけど、Hな本を読む時間と、神崎先輩から戦い方についてのアドバイスをもらう時間ならどっちを選ぶ?」

 

「そんなん先輩の方に決まってるだろ。先輩直々のアドバイスなら絶対ためになる・・・し・・・」

 

俺は自分の答えに絶句した。い、いやいやいや待てよ俺! 迷うどころか即決だと!? エロよりも強くなる事の方が大事とかありえんだろう!

 

「ほら、やっぱりキミは変わったよ。以前のキミなら間髪入れずに前者を選んでいただろうからね」

 

「う、嘘だ・・・。俺はそんな熱血キャラなんかじゃないはずだ」

 

「え?」

 

「え?」

 

「え?」

 

な、なんだよその反応。何でそんな今さらだろ的な顔してんだよ二人とも。

 

「まさか・・・自覚無かったのかい?」

 

「イッセー先輩は暑苦しいくらい熱血ですぅ」

 

「何だとこの野郎!」

 

「ひいぃ! ごめんなさいぃ!」

 

まずい・・・俺のアイデンティティがクライシスする前にこの話題から離れよう。そうとも、おしゃべりする為にここに来たんじゃないのだよ俺は!

 

「うっし! そんじゃ、ギャスパーに負けない様、俺もいっちょ始めるとすっか!」

 

「なら僕もそろそろ再開させてもらうよ。イッセー君、体が温まったら模擬戦お願いしていいかな」

 

「望む所だ!」

 

そうして、俺は『禁手』を発動させ、少しだけ体を動かした後、木場と模擬戦を始めるのだった。

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

制限時間一杯まで木場とやりあった後、俺は『禁手』を解いた。にしても、木場のヤツまた強くなったな。普通に戦っても速いくせに、風を操る魔剣を使っての『風刃閃』って技はそれ以上で今の俺じゃ対処どころか目で追う事すら出来ない。それにあの風圧を使っての束縛も厄介だ。ブースターを全開にすれば抜け出せるが、もたもたしていれば剣で貫かれて終わりだ。にゃろう、先輩から教えてもらった技をここまでものにしてやがるとは。

 

お返しに俺が教えてもらった『ジェットマグナム』を叩き込んでやろうと思ったけど、かすりもしなかった。俺がこの技をマスターするのはまだまだ先になりそうだ。

 

「くそう・・・また俺の負けか。やっぱりやるな木場」

 

「いや、こっちもヒヤヒヤものだったよ。キミの攻撃は一発一発が致命傷になりかねないからね」

 

「それも当てなきゃ意味がねえんだよなぁ。俺もパワーだけじゃなくてスピードについても考えないといけないのかもしれない」

 

「あはは、そうなると僕のいる意味が無くなっちゃうから止めて欲しいな」

 

それから互いに今の模擬戦の感想を言い合った後、俺達はそれぞれの自主練を始める事にした。さて、それじゃあ今日も“先輩方”に挨拶に行きますか。

 

俺はその場に座り込み、目を閉じてゆっくりと意識を静めていった。これから俺は『赤龍帝の籠手』の中へ俺の意識を送り、『赤龍帝の籠手』に記録されている歴代の所有者達の思念と会話をする。目的は一つ、『覇龍』と呼ばれる力を発動させる為だ。

 

―――そろそろ試してみてもいいかもしれんな。

 

会長とのレーティングゲームの後、俺はドライグにさらなる強さを手に入れる為に何かいい方法は無いか尋ねた。もちろん、楽して強くなるつもりは無い。今の努力で足りないのなら、もっともっと頑張るつもりだった。

 

そんな俺にドライグが提示したのが『覇龍』だった。確か、ヴァーリちゃんも『覇龍』が使えたよな。見た事は無いけど。

 

―――『覇龍』発動の条件はただ一つ。この『赤龍帝の籠手』の中に存在する歴代の所有者達に認められる事だけだ。彼等の一人一人が楔なのだ。そしてそれらが全て外れる事により、『禁手』を越えた真の『禁じ手』が発現する。

 

『覇龍』が具体的にどんなものなのかはわからない。だけど、『禁手』を越えるというドライグのその言葉に、俺は躊躇い無くその方法を実行する事にした。

 

・・・っと、そんな回想をしている間に目的地に到着しそうだ。暗かった視界が急に真っ白になり、いつの間にか俺の目の前には巨大なテーブル席が置かれていた。

 

「あら、また来たのね」

 

そこへ座っていた金髪スレンダー美女が俺を見てにっこりしながら立ち上がった。

 

「ども、エルシャさん! 懲りずにまた来ちゃいました!」

 

彼女の名前はエルシャさん。彼女もまたかつての『赤龍帝の籠手』の所有者だ。ついでに言うと、歴代の中でも一、二を争うほど強かったらしい。女性限定で言えば最強だったのだとか。

 

こうやって歴代の先輩達の所へ来るのも十回は越えている。だけど、未だに俺はエルシャさんともう一人別の先輩にしか認められていない。

 

「ふふ、ベルザードもあなたが来て嬉しいみたい」

 

気がつくと、俺のすぐ横にダンディな男性が無表情で立っていた。

 

「うおお!? びっくりした・・・。驚かせないでくださいよベルザードさん!」

 

文句を言う俺に、ベルザードさんは僅かだけど唇を半月状に変えた。表情が乏しい人だけど、これは笑っているのだとわかった。

 

ベルザードさん・・・俺を認めてくれたもう一人の先輩。エルシャさんと並んで歴代最強と称される人で、白龍皇を二度も倒したとんでもない人だ。

 

―――その二人に最初に認められる相棒も大概だよ。

 

ドライグの言う通り、どういうわけか、俺を最初に認めてくれたのはこの最強の二人だった。なんでも、俺が駒王協定の時にアルビオンの力を命がけで手にした時にはすでに俺の事を認めてくれていたらしく、初めてここに来た時は「待ってたわよ」なんて言って抱きしめられてしまった。・・・あれは良かった。

 

「にしても・・・まだ二人だけッスか」

 

俺達以外存在しない空間を見て溜息を吐く。エルシャさん曰く、他の先輩達はここからさらに奥にいて、俺を認めてくれた人だけがこの空間に姿を現すらしい。

 

「これじゃ、全員に認めてもらえるのはいつのなるのやら・・・」

 

「そこまで落ち込む事は無いわよ。何となくだけど、もう一歩の所まで来ていると思うわ。後は何かきっかけが・・・あなたがさらなる“覚悟”を抱く何かが起これば・・・」

 

どうやら“覚悟”というのが鍵のようだ。“覚悟”か・・・。俺も神崎先輩が『禍の団』との戦いで見せたアーシアを絶対に守るという“覚悟”くらいのものを持てば残りの先輩達も認めてくれるのだろうか。

 

「さ、それじゃあ堅苦しい話はこれくらいにして、そろそろ“彼”の話を聞かせてちょうだいよ」

 

「またですか? て言っても、もうディオドラ達との戦いまで話しちゃいましたし、ネタが・・・」

 

「何でもいいのよ。結局、私達の代で現れなかった“彼”がようやく姿を見せたんですもの。かつての赤龍帝としては興味深々なんだから」

 

はあ・・・しょうがないな。なら・・・インタビューで女性陣を撃沈させた話でもしようかな。

 

今さら確認するまでも無いが、エルシャさんの言う“彼”とは神崎先輩の事だ。赤龍帝と白龍皇。いつか出会うであろうかつての仇の為に互いを高め合い続けた両者はその仇がどんな存在だったのか凄く興味があるらしい。ヴァーリちゃんの方もひょっとしたら歴代の白龍皇達に色々聞かれているのかもしれない。

 

「ほら、早く早く」

 

席に着き、子どもみたいにテーブルをバンバン叩くエルシャさん。・・・ちゃっかりベルザードさんも同じ事してた。見た目ダンディなのにそんな事しないでくださいよ・・・。

 

そんな感じで、俺は『赤龍帝の籠手』の中でひっそりとした時間を過ごすのだった。

 

そしてその翌日から、俺達はアザゼル先生と共に、オーディンの爺さんの日本観光の護衛として振り回される事となるのだった。




改めて説明させて頂きますが、この作品においてはドライグとアルビオンはめっちゃ仲良しです。歴代の所有者達も純粋なライバル同士で仲がいいです。なので、この作品の『覇龍』は原作みたいな危険なものではありません。この『覇龍』を起点にして、イッセーは原作とは異なる力を身につかせていく・・・といいなあ。

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