ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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今回も短いですがご容赦ください。


第八十五話 王道と覇道

「うう、のど飴のど飴・・・」

 

今、のど飴を求めて全力疾走している僕は駒王学園に通うごく一般的な男の子。強いて違う所をあげるとすればオカンな神様に転生させてもらった事かナ。

 

何でのど飴かって? それはね、同じ学園の後輩の女の子達と一緒に行ったカラオケで延々歌わされたからなんだ。僕は“合いの手の神崎”の異名を持ってるけど、歌うのはあまり得意じゃなかったのに、最初にマイクを渡されちゃったからもう大変。断ろうとしたけど、彼女達の期待の込められた視線にノーと言えず、腹を括って俺の歌(騒音及び雑音)を聞けぇ! なノリで歌っちゃったんだ。

 

結果は散々。歌い終わって彼女達の方を見たら、なんかお通夜みたいな感じになってたんだ。なんか涙ぐんでた子までいた。泣きたいのはこっちなんだけどね。

 

しかも、その後が酷かった。謝りながらマイクを渡そうとしたらなんともう一度歌ってくれと言われちゃったんだ。おかしいよね。泣くくらい酷かった歌声を何でわざわざもう一度聞きたいんだろうね。

 

そっからはもうヤケクソ気味に歌いまくって、気付いたら終了時間になってたんだ。結局、後輩の子達は一曲も歌わなかった。なのに、店を出たら深々と頭を下げてお礼を言って来たんだ。何に対してのお礼だったんだろうね。

 

そんなわけで、彼女達と別れた僕は帰り道の途中にあるコンビニへとやって来たのだ。そして、目的ののど飴を購入してホクホクと店を後にした僕へ誰かが声をかけて来たんだ。

 

「初めまして、フューリー・・・いや、神崎君」

 

ウホッ!! いいおと・・・そろそろこのノリにも疲れて来たな。このくらいで止めとくか。

 

俺に声をかけて来たのは、見慣れない服装の黒髪の男性だった。初対面の人だが、俺の事をフューリーと呼ぶという事はあっち側の関係者だろうか。

 

少しだけでいいので話がしたいと言われ、押しに弱い俺はホイホイついて行った。アル=ヴァンセンサーが反応していないので、警戒する必要は無いと判断したからだ。断じていい男だと思ったわけでは無い。

 

のど飴を転がしながら歩く事数分。連れて来られたのは公園だった。その中心まで進んだ所で、彼は立ち止り振り返った。

 

そして、彼は自分の事を曹操と名乗った。曹操と言えば、知る人ぞ知る三国志のあの曹操だ。自分はその曹操の子孫で、英雄派に属しているのだと。

 

いきなりそんなぶっ飛んだ事を言われて戸惑ったが、つまり、この人はそういうキャラを演じているって事でいいのだろうか。って事は、レイヤーさんか? で、英雄派っていうのはコスプレのサークルの名前か! ふふふ、どうよこの名推理!

 

そうだとしたら、レイヤーさんが俺なんかに何の用があるのだろうと要件を尋ねたら、人間でありながら悪魔や堕天使に英雄と呼ばれている俺に興味が湧いたから会いに来たらしい。本当ならもう少し時間を空けて会いに来るつもりだったけど、俺とD達の戦いを見ていてもたってもいられなくなったのだとか。

 

答えた後に続けて質問された。あの力があればあらゆる物を思いのままにする事が出来る。なのになぜそうしないのだと。・・・俺ってそんなに悪人っぽく見えるのだろうか。

 

なので、そのイメージを払拭する為にも、俺は俺の大切なものの為にしか力は使わないと返したら、さらに重ねて質問された。

 

「人が英雄になる為にはどうすればいいと思う? 生まれか、能力か、それとも・・・」

 

さっきの質問と全然繋がりが無いけど、曹操さん(仮名)の顔は真剣だった。茶化せる雰囲気じゃなかったので、俺も真面目に答える事にした。

 

「英雄はなろうとしてなるものじゃない」

 

例えば世界を救った英雄や救世主がいたとして、彼等は最初から世界の為に戦うつもりだったのだろうか。そんな事は無い。彼等だって、最初は自分達の大切な人やものを守る為に立ち上がろうと決心したはずだ。きっかけはそんな当たり前の想いに突き動かされたからであって、世界を救ったのはあくまでも結果でしかない。理由なんて人それぞれ。中には借金を返す為に戦い続けた者だっているかもしれない。

 

・・・はい、そうです。またしてもスパロボの話です。でも、俺の中での英雄といえばやっぱりあのゲームの登場人物達なんだよな。史上最強の便利屋と揶揄されながらも、戦い続ける彼等は正に英雄だと思う。

 

「守りたいものの為に戦う。それだけで人は誰かの英雄になれるんだと思う」

 

「・・・なるほど。キミの言うそれは正に“王道”だな」

 

いいじゃないですか、王道。テンプレとか言われようとも俺は王道が好きです。

 

「だが、その道は本当に正しいのか。英雄に敗北は許されない。卑怯と言われようとも、外道に手を染めようとも、あらゆる手を使ってでも勝利する者こそが英雄ではないかな?」

 

「確かに、本当に守りたいのならば、手段など選んではいられないのかもしれない。逆に相手の卑劣な手によって窮地に陥るかもしれない」

 

「ならば」

 

「だが、例えどんな敵が立ち塞がろうと、決して己を・・・信念を曲げずに戦い勝利する。少なくとも、俺の知る英雄達はそうだった」

 

「ッ・・・!」

 

ホント、たまにはこっちも人質とかとっても文句は言われないと思うんだけどな。まあ、正義の味方がそんな事するわけにもいかないか。それに、やっぱりピンチからの大逆転の方が盛り上がるしな。

 

「・・・眩しいな。“覇道”を歩む俺にはキミの“王道”は眩し過ぎる。けれど、おかげで決心がついた。俺の“覇道”とキミの“王道”・・・英雄に相応しいのはどちらの道か、いずれハッキリさせよう。・・・その結果次第で、英雄派はその在り方が大きく変わりそうだが、それも面白いかもしれないな」

 

納得しちゃってる所悪いんですけど、俺にもわかるように説明してくれませんか? ハッキリさせるって何? テンプレが良いか悪いかディベートでもさせるつもりですか?

 

「話が出来てよかった。また会おう、神崎君」

 

満足そうな表情を見せながら、曹操さん(仮名)は俺の前から静かに去って行った。・・・とりあえず、帰ったら彼の演じてたキャラの出典でも調べてみようかな。

 

あ、そうだそうだ。お礼の事も忘れない様にしないと。今日で花戒さん達までが済んだから、後は仮眷属として一緒に戦ってくれた黒歌、レイナーレさん、カラワーナさん、ミッテルトさん、そしてカテレアさんの五人だな。

 

ええっと・・・確か次の休みの日にカテレアさんが家に来るんだったな。なんかセラフォルーさんの計画がどうとか言ってたけど、一体何を頼まれる事やら。

 

そんな事を思いつつ、家に帰って来た俺が扉を開けると、ちょうど黒歌が二階から降りて来た所だった。

 

「あ、ご主人様。お帰りなさい」

 

「ああ、ただいま黒歌」

 

お、ちょうどいい。彼女に言わないといけない事があったんだ。

 

「黒歌。そろそろ悪魔の駒を・・・」

 

「ッ! え、ええっと、私、今からお風呂に入るから!」

 

そう言うなり風呂場へ早足で向かう黒歌。どうしたんだろう。まあ、今すぐ返してもらわないといけない物でもないし、また言えばいいか。

 

そう判断し、俺は荷物を置きに自室へと向かうのだった。




謎の声が曹操もTSしろと囁いて来たがなんとか踏みとどまったぜ!

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