ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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お久しぶりです。前回まで書ききって燃え尽き症候群になってしまい、全然書く事が出来てませんでした。

しかしまあ、前回の感想のほぼ全てでフリードについて触れて頂けるとは思ってませんでした。嬉しかったです。




幕間その四 トップは辛いよ※ただし一名は除く

サーゼクスSIDE

 

『禍の団』による襲撃事件から早一週間。ようやく全ての事後処理が完了したこの日、僕とアザゼル、そしてミカエルは事件についての話し合いの場を設けた。

 

「では、そろそろ始めましょうか」

 

「つっても、事の顛末は既に俺達も十分理解しているからな。事件後から今までの間についての話しをしようぜ。色々わかった事があるんだろ?」

 

「そうだな。ならばまずはディオドラ・アスタロトについてだが、『禍の団』のメンバーを拘束後、崩壊した神殿を調べたら彼の死体が発見された。死因は瓦礫に押し潰された事による圧死かと思われたが、彼の胸に何かに貫かれた様な痕があったことから、おそらく何者かによって殺されたのだと結論づけた」

 

「その何者というのはフューリー殿。もしくは・・・」

 

「シャルバ・ベルゼブブのどちらかだろうが、俺はこっちの方が殺ったと思うぜ。何だかんだで、フューリーは甘い所があるからな」

 

確かに、神崎君はあの場においても“不殺”を貫いていた。それを甘さと斬ってしまうのは容易いが、僕はそれでいいと思う。命を奪わずに敵を戦闘不能にする。それはある意味究極の戦術ではないだろうか。

 

「アスタロト家には処分を下した。現当主は解任、魔王輩出の権利も剥奪した」

 

「へえ、お優しいこって。てっきり一族郎党全員処断でもすると思ってたぜ」

 

「・・・キミは私を何だと思ってるんだ」

 

「まあまあ、今のはアザゼルなりの冗談ですよ。ですから気にせず話を続けてください」

 

ミカエルの言う通りだ。彼の軽口に一々付き合っていたらこちらの身が持たない。なので、話が脱線しないよう、僕は次の話題に触れた。

 

「続いてシャルバ・ベルゼブブの処遇だ。今回の件の首謀者の一人という事で処刑せよとの声が上げられたが、判決は地獄行きとなった。既に身柄は送られている」

 

「おいおい、いいのかよ。もしかしたら抜け出して来てまた何かやらかすかもしれないぜ?」

 

「その心配は無い。もうシャルバは何もしない。・・・いや、何も出来ないよ」

 

「何故ですか?」

 

「彼はもう彼ではなくなってしまった。あの最終局面において、神崎君の壮絶な攻撃をその身に受けたシャルバは精神に異常をきたしていた。地獄行きを言い渡した時、彼はその場で飛び上がって喜んだよ。これであの化物と二度と会わないで済む・・・と言ってね」

 

「・・・」

 

「くく、情けをかけてもらったおかげで生きてる癖にそれを化物呼ばわりかよ。今アイツに会わせてやったらどんな反応するんだろうな」

 

そんな事をすれば、今度こそ間違い無くシャルバの精神は崩壊するだろうな。ともかく、今回の事件で『禍の団』の一派だった旧魔王派はほぼ壊滅したと言ってもいいだろう。

 

「とはいえ、手放しで喜べはしないんだけどね。アザゼル、ミカエル、単刀直入に聞かせてもらう。キミ達は神崎君が発現させたあの力を見て何を思った?」

 

ディオドラやシャルバについての話はただの前置きに過ぎない。僕達が本当に話し合いたかったのは彼等ではなく神崎君についてだ。レーティングフィールドそのものを揺るがし、結界すらも容易く破壊した上、何十、何百もの上級・中級悪魔を瞬く間に地へ堕としていったあの力・・・。戦闘中の彼の言葉から察するに、元々持っていたものでは無く、あの場で初めて発現させた力のようだが・・・。

 

「・・・正直に言わせてもらいますと、私はあの時のフューリー殿の姿を見て、畏怖の念を抱くと共に不安を感じました。発現するだけで世界を揺るがせてしまうほどの強大な力・・・オーフィスやグレートレッドまでとは言いませんが、それでも規格外には違いありません。今のフューリー殿はまさしく英雄、騎士としての正道を歩んでいますが、今後、万に一つの可能性でその道から外れ、悪に身を堕としてしまった時・・・果たして私達に彼を止める術はあるのでしょうか」

 

ミカエルの懸念は僕も思っていた事だ。これまでの出来事を通じて、神崎君が素晴らしい人格者だという事はみんなわかっている。力に溺れず、守るべきものの為に戦う彼の姿は誰もが英雄と褒め称えるだろう。だが、僕達は知っている。人間というのはいとも簡単に心変わりする生物だと。ひょっとしたら神崎君も、これから何かをきっかけにして悪の道へ進んでしまうかもしれない。そうなってしまった時・・・僕は、僕達はどうすればいいのだろう。

 

「あの映像を見た一部の上級悪魔達からは、神崎君を封印するべきだという声もあがっている。旧魔王派ほどでは無いが、元々神崎君をあまりよく思っていない者達の集まりでね、これ幸いとばかりに陳情して来たよ」

 

「アホかその連中は。んな事しでかしたら自分達の首を絞める事になるってわかってんのか?」

 

冷めた口調でそう言うアザゼルだが、確かに彼の言う通りだ。中には彼等と同じように不満を持つ者もいるだろうが、その何百、何千、何万倍もの悪魔達が神崎君という存在を最大限の好意で受け入れている。そもそも、神崎君は先の大戦で悪魔を救った英雄なのだ。そんな彼を封印でもしようものなら・・・それは冥界そのものを敵に回すのと同じだろう。

 

「にしても、たった一人の人間に悪魔と天使が振り回される時代が来るとはなぁ」

 

「何を他人事の様に。キミ達堕天使だって同じだろう」

 

「さあな。少なくとも、俺はもうヤツが何をしようが全部受け入れるつもりだぜ?」

 

「堕天使の長であるあなたがそんな投げ槍になってはいけませんよ」

 

「別に投げ槍になってるわけじゃねえよ。俺はただ悟っただけさ。考えてみろ。そもそも、異世界なんて理解の範疇を越えている様な所からやって来た存在に、俺達の常識や概念が通用すると思っていること事態が間違いなんだよ。お前等だって見て来ただろう? 人間であるはずのフューリーが、これまで幾度と無く俺達の常識を覆して来た場面をよ。その馬鹿どもがほざいた通りに封印したとしても、アイツなら何の苦も無く解いちまうんじゃねえか」

 

そんな馬鹿な・・・と言いかけて口を噤む。あるいは神崎君なら本当に・・・。

 

「もちろん根拠なんてねえがな。俺が言いたいのは、ヤツの力はそう思わせるほどのものだって事だ。オーフィスをしてグレートレッドを倒せる存在だと言われたんだぜ? 下手な小細工なんざするだけ無駄さ」

 

「それは・・・確かにそうかもしれないが・・・」

 

「それによ、お前等はフューリーが道を間違える事が不安だとか言うが、かつての世界で闘争に塗れた人生を送っておきながら、あそこまでのお人好しでお節介な人格を保ち続けたあの野郎が今さら変わっちまうと思うか?」

 

「「・・・」」

 

答えない僕達に、アザゼルは思い出したかのように笑みを浮かべながら再びしゃべり始めた。

 

「アイツが最近何してるか教えてやろう。今回の件で世話になった連中へのお礼だとか言って、アイツに叶えられる範囲で一人ずつの願い事を叶えて回ってるんだぜ。リアス達は当然として、ソーナの眷属達、果ては俺にまで願い事を聞いて来たんだぞ。俺なんか、適当な鍛練場所を提供してやっただけなのにだぜ? 「アザゼル先生。あなたのおかげで自分を鍛え直す事が出来ました。本当にありがとうございました。もし、何か俺に出来る事がありましたら、いつでも声をかけてください」・・・なんてド真面目な顔で言われた時は最初なんの事を言ってんのかと思ったわ」

 

・・・その場面が容易に想像出来てしまう。いかにも彼らしい言葉だ。・・・確かに、アザゼルの言う通り、僕の気にし過ぎなのかもしれない。

 

今回の事だってそうだ。神崎君は敵を滅ぼす為にあの力を発現させたわけじゃない。彼の目的はただ一つ・・・アーシアさんを守る事だけだった。

 

「・・・“日常”を守る為に戦う。確か、フューリー殿はそう言っていましたね」

 

「かつて失ったであろうものを再び得る事が出来た。それだけでヤツにとっては十分なんだろうよ。それを脅かさない限り、ヤツの剣が俺達に向けられる事はねえだろうさ」

 

「では、私達は今後・・・」

 

「今まで通り、仲良くやればいいんじゃねえか。今さら付き合い方を変えた所でこっちの為にはならねえだろう」

 

「そうですね。先程懸念を口にした私が言える事ではありませんが、私は今後も彼と親交を深める事が出来ればいいと思っています」

 

「・・・私もだ。よく考えれば、彼はもしかしたら義理の弟になるかもしれないのだ。むしろ望む所じゃないか」

 

「あー、どうだろうなぁ。アイツ、病気どころか最早呪いレベルで鈍感だからなぁ。さっきの願い事の件の事なんだが、リアスやら朱乃が買い物に誘ったり、ソーナの眷属達にカラオケに誘われたり、もう誰がどう見てもデートの誘いってわかる事でも「みんな色々やりたい事があった中で俺に付き合ってくれてたんだな。俺でよければ荷物持ちでもカラオケの利用料金でも何でも任せてくれ」とか普通に言うんだぜ? ああいうタイプはハッキリと「好きだ」と伝えないと一生向けられてる好意に気付かないだろうな」

 

「そ、そこまでなのか・・・? だが、キミがそう言うのなら確かなのだろうな」

 

「おや、そういう事ならば、現在最もフューリー殿の関心を集めているのはイリナという事になるのですかね」

 

「あ? 何でそこでイリナの名が出るんだ?」

 

「彼女から聞きましたが、どうもエクスカリバーの事件の時にフューリー殿に口説かれたらしいですよ。思い出しただけで堕天しかけていたのが印象的でしたからよく憶えています」

 

「いや、それだけじゃ判断出来ないな。自覚無しに口説くなんてアイツにとっちゃ日常茶飯事だぞ。どうせその時もそうだったんじゃねえか」

 

「・・・イリナには黙っておきましょう」

 

「ははは・・・」

 

おかしいな。真面目な話をしていたはずなのに、いつの間にかあの子達の恋愛の話になってしまった。ここにセラフォルーやカテレアがいたら大騒ぎしそうだな。

 

先程までの張り詰めていたものとはうって変わった和やかムードに、僕はつい笑い声をもらすのだった。




前話で六章は終わりのはずだったのですが、新章がいきなり幕間はどうかと思ったので今回も六章に入れさせてもらいました。これが本当の六章最終話です。

まだ色々説明出来てませんが、次回以降で少しずつ補足していきます。

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